ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2013年9号
特集
TOPInterview 日立物流 中谷康夫 社長 「成功体験を捨てグローバル市場に挑む」

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

SEPTEMBER 2013  28 成長の機会は海外にある ──六月に退任した鈴木登夫社長(現会長)時代の 七年間で日立物流は国内外でM&Aを重ね、事業規 模を大きく拡大させました。
新社長に就任された今、 その狙いを改めてどう受け止めていますか。
 「当社は中期経営計画『二〇一五年ビジョン』で売 上高七五〇〇億円の達成を目標に掲げています。
そ れが世界に挑戦するために必要な最低限の規模だと いう認識です。
しかし国内においても海外において も自律的な成長には限界がある。
そうした中でM& Aは有効な手段でした。
私自身、昨年の三月に米国 から帰国して以降は鈴木社長の下でM&Aを担当し てきました。
この路線は今後も続けていくつもりで す」 ──日本の3PL市場が曲がり角を迎えているとす る声があります。
 「曲がり角というほど落ち込んでいるとは思いませ ん。
市場規模はまだ拡大する。
ただし、一つ一つの 案件の規模は小さくなる傾向にある。
いったんアウ トソーシングした物流を再び内製化するケースも出始 めている。
どう考えても日本の国内市場はこれから 縮小を免れません。
3PLだけはバラ色の未来が待 っているということではない」  「我々は過去の成功体験を捨てる必要があります。
二〇一五年ビジョンの達成はこれまでの延長線上に はない。
成長のチャンスは海外にあります。
当社は 現在の売上高約五五〇〇億円のうち一五〇〇億円程 度を海外事業で稼いでいますが、これを一五年度に は約三〇〇〇億円にまで伸ばす計画です。
特に景気 が回復し製造業の回帰が進んできた米国市場は極め て重要になると見ています」 ──日本と海外では競争のかたちは違いますか?  「日本だと当社は、ノンアセット型の3PLと言わ れることが多いのですが、海外、特に欧米ではアセ ットを持たないと事業が広がっていかない。
いくら 当社の3PLのコンセプトが優れていても、その地域 で実行できる現場力がなければ相手にしてもらえま せん。
日本の3PLは、荷主のニーズを聞いてハンド メイドでサービスを造り上げていきますが、欧米の場 合は我々プロバイダー側がアセット型のスタンダード サービスを用意して、それを荷主に利用してもらうと いうアプローチが一般的なんです。
米国のC.H.ロ ビンソンなどがその典型です」 ──それは荷主が日系ではなく、欧米企業の場合で すよね。
 「欧米市場ではグローバル企業やその一次サプライ ヤー、二次サプライヤー等をメーンのターゲットにし ています。
従って我々の競争相手はグローバルメジャ ーや現地の有力3PLということになる。
彼らと戦 うために一定の事業規模やアセットが必要になるんで す」 ──現在のM&A戦略を展開する前まで、日立物流 の海外事業は日立グループがメーンで外販にはそれほ ど積極的とは言えませんでした。
 「その意味では自己否定から入ることになります。
マインドセットを変える。
これにはある反省がありま す。
もうずいぶん前のことですが、当社はアメリカの サンディエゴとメキシコを結ぶボーダー物流を展開し ていました。
荷主はテレビ関連の日系企業です。
し かし、その荷主がメキシコから撤退することになり、 後には何も残らなかった。
その時、やはり日系荷主 だけで海外事業をやっては駄目だとハッキリ認識した んです。
現地の荷主に評価されなければ、その地域 日立物流 中谷康夫 社長 「成功体験を捨てグローバル市場に挑む」  国内外でM&A を重ねて事業規模を急拡大させた。
新 体制発足後も拡大路線は継続し、2015 年度に売上高 7500 億円の達成を目指す。
その約4 割を海外で稼ぐ計画 だ。
グローバルメジャーを相手に戦うために、これまでの 成功体験は捨て去り、事業モデルの転換を急ぐ。
29  SEPTEMBER 2013 特集3PL白書 2013 のビジネスが確固たるものにならない。
つまりグロー バル化などできないと」  「そのため例えばアメリカでは〇九年に『JPホー ルディングス(JPH)社』という自動車物流に強 みのある会社にグループに入ってもらいました。
欧米 ではゼロからビジネスを構築するより、彼らのように 現場力があり、意欲的な企業に投資をする方が効率 的なんです。
実際、買収以降、JPHはトラックの 増強やクロスドックセンターの設立などを継続してい る。
アメリカの自動車産業が好調ということもあり、 その効果が業績に表れ始めています。
同様のM&A を、チェコなどでも行っている」 ──日本以外のアジア市場も欧米と同じですか?  「いや、中国を含むアジアは今後も日本型の3PL をベースに、その延長線上で展開していきます。
日 本でお世話になっている荷主がアジアにどんどん進出 しています。
日本で評価された当社のサービスがアジ ア市場でも求められている。
まだまだ伸びる余地が ある」 3PL型フォワーディングを展開 ──近年のM&Aを見ていると、フォワーディング機 能の強化が目立ちます。
 「フォワーディングで言うと、一〇年にインドの『フ ライジャック社』、今年五月には香港を事業ベースと するアメリカの『JJB社』、七月に同じ香港の『C DS社』を取得しました。
さらに、一〇月にはトル コの『Mars社』の当社グループ入りが決定して います。
これにバンテックと日立物流のフォワーディ ング機能を集約して昨年七月に発足させた『日立物 流バンテックフォワーディング』を合わせると、売上 規模は一〇〇〇億円を超えてきます。
当初は一五年 度にフォワーディングの売上高一〇〇〇億円の達成を 目標に置いていましたが、大きく前倒しすることに なりそうです」 ──日本の大手フォワーダー三社とも渡り合っていけ そうな規模です。
 「日本のフォワーディング市場で一定の存在感を発 揮できることは大きなプラスですが、当社は規模で 競争しようと考えているわけではありません。
日系 の大手フォワーダーが日本発着の航空貨物輸送にビジ ネスのベースを置いているのに対して、我々のベース はあくまで3PLです。
3PLに必要な機能として フォワーディングを強化している。
事業モデルが違い ます」  「世界のメガフォワーダーと同じ土俵に上がり、彼 らに正面から挑むつもりもありません。
当社がフォ ワーディング機能の強化を図っているエリアを見ても らえば分かると思います。
中国や香港、インド、中 近東など、今後、貿易のトレンドとなりそうなエリ アに対象を絞っている。
日本から見たときの『OU T─
錬妝圈戮硫拱の流れに対応できる体制を整え ている。
そのためフォワーディング機能のヘッドクオ ーターを日本から香港に移設することも検討してい ます」  「さらに、今後はこれまでに揃えてきたフォワーデ ィング会社と、アメリカのJPHのようなドメスティ ックの3PLに強い会社を、つなぎ合わせていく。
必 要なプレーヤーは既に揃いつつあるので、それをうま く?配線?していくんです。
先ほど説明したような 地元の荷主に評価される3PLと、グローバルネット ワークをうまくリンクさせることで、より質の高いサ ービスが提供できるようになる。
そう確信していま す」 業績推移 07 年 08 年 09 年 10 年 11 年 12 年 (年度) (売上高:億円) (営業利益:億円) 6,000 5,000 4,000 3,000 2,000 1,000 0 250 200 150 100 2,477 2,522 3,382 3,319 3,528 2,576 3,688 2,869 5,539 4,639 5,475 4,577 140 142 127 159 231 195 システム物流 (3PL 事業)売上高 売上高 営業利益 近年の主なM&A 2007 年4 月 2008 年2 月 2009 年7 月 2009 年10 月 2010 年4 月 2011 年1 月 2011 年2 月 2011 年4 月 2011 年4 月 2013 年3 月 2013 年5 月 2013 年7 月 2013 年10 月 (予定) 資生堂の物流子会社「資生堂物流サービス」 (現・日立物流コラボネクスト) チェコの物流会社「ESA社」 内田洋行の物流子会社「オリエント・ロジ」 (現・日立物流オリエントロジ) 米国の物流会社「JPH社」 インドのフォワーディング会社「Flyjac 社」 DICの物流子会社「DICロジテック」 (現・日立物流ファインネクスト) ホーマックの物流子会社「ダイレックス」 (現・日立物流ダイレックス) 「バンテック」 タイの物流会社「ETG社」 「日立電線ロジテック」(現・日立物流フロンティア) 米国のフォワーディング会社「JJB社」 香港のフォワーディング会社「CDS社」 トルコの物流会社「Mars社」 時期対象企業

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