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SEPTEMBER 2013 32
「システム物流」のパイオニア
──トナミ運輸は路線便(特別積合せ貨物自動車運
送事業:特積み)のイメージが強いだけに、3PL
事業を手広く展開していることはあまり知られてい
ないのでは。
「アピールが足りないのかもしれませんが、当社の
3PL事業は実は業界でも最も古いんです。 一九八〇
年代に大阪で大手産業機械メーカーから調達物流を
受託したのがきっかけでした。 調達した部品を在庫
し、生産の進捗に合わせてラインにジャスト・イン・
タイムで納品する仕事です」
「路線便ターミナルの上層階を保管庫に使いました。
法的には荷物の一時預かりという位置付けなのです
が、そこに集めた部品を生産指示に合わせてピッキン
グして、専用コンテナなどさまざまな方法を駆使し
てラインの指定された場所に納品する。 当時として
は画期的な取り組みで、業界の内外からたくさんの
見学者が訪れました。 ノウハウを知りたいと当社の
担当者が他の大手物流会社から講師に呼び出される
こともよくありました」
──路線便ターミナルを高層階にして、上層階を保管
庫にするというのは、現在、多くの路線会社が進め
ている施策ですね。 横持ち輸送を省略できるので輸
送費を大幅に削減できる。
「恐らく当社がその先駆けだと思います。 実際、当
社のターミナルはほとんどが上層階に保管庫を持って
います。 あるいは土地の安い場所であれば敷地内に
保管施設を併設させている。 我々は当初『システム
物流』と呼んでいたのですが、そうやって3PLの
ニーズに応えることで路線便の荷物も増えるという
相乗効果を狙ったものでした」
──資料を見るとトナミ運輸はコンピューターの導入
も業界で一番早かった。 一九七二年にオンラインシス
テムを稼働させています。 このシステムは後に運輸大
臣賞も受賞している。
「私の父(元社長で元衆議院議長の綿貫民輔氏)の
時代でしたが、父は『これからは情報の時代だ』と
周りのみんなが反対したのを押し切って当時としては
相当な資金を投じてコンピューターを導入しました。
その影響もあって当社はオフコン全盛の時代から個別
の荷主向けに物流情報システムの開発を行ってきま
した。 今で言うWMSですが、その荷主の物流プロ
セスに合わせたシステムを開発して現場を運営するん
です」
──業績もバブル崩壊の影響が出てきた九〇年代の中
ごろまでは常に増収増益だったと記憶しています。
「一七期連続の増収増益を達成しました。 当時は他
の路線会社も多少のアップダウンはあっても基本的に
は伸びていましたから、当社だけが特別良かったと
いうわけではありませんが、難しい案件になると当
社に指名が入ったりして、時代に一歩先んじていた
ところはあったと思います」
──その後、路線業界は長期にわたって低迷が続い
ています。 トナミ運輸の業績も右肩上がりとはいか
なくなった。
「とりわけこの一〇年は特積みも3PLも格段に競
争が厳しくなりました。 環境のせいにはしたくない
けれど、特積みはやはり物量が増えない中でたくさ
んの業者がやり合うのでどうしてもそうなってしま
う。 3PLにしても過当競争のきらいがある」
──足下の業績は減収増益基調です。 二〇一三年三
月期は売上高が二期連続の減少で利益は四期連続の
増益でした。
トナミホールディングス 綿貫勝介 社長
「常に一歩先を行くシステムを提供する」
1980 年代に大手産業機械メーカーから調達物流を任
されたのをきっかけに3PL 事業を開始。 路線便ターミナ
ルの上層階を在庫基地として活用する新しいモデルを作っ
た。 足下では広域の緊急輸送ニーズに対応したクラウド
型物流システムを開発し、大手外資系メーカーの保守サー
ビスを365 日24 時間稼働で運営している。
33 SEPTEMBER 2013
特集3PL白書 2013
「私が社長に就任した二〇〇五年当時までの当社は
売上至上主義的なところがありました。 売り上げが
増えれば後から利益も付いてくるだろうと。 しかし、
社長になって一年、二年、待ってみても、そうはな
らなかった。 そこで方針を改めました。 赤字になる
ような仕事は取るなと。 人事評価もそれまでは収入
と利益で九対一くらいだったのを逆転させて、利益
の比重を七くらいに上げました。 減収増益というの
はその結果で、幸い一三年三月期は利益が大きく伸
びた。 利益重視の意識が組織に根付いてきて、中期
経営計画に掲げた一五年三月期に営業利益率三%と
いう目標の達成も見えてきました。 そこで改めて売
り上げ拡大に向けて動こうと考えています」
──そのための戦略は?
「特積みと3PLという当社の二本柱の相乗効果を
狙っていきます。 当社は北陸ではトップシェアを握っ
ています。 そのため北陸に荷物のあるお客様には優
先していただける。 そこから入って関東や関西など
大消費地の仕事に広げていくというのが一つのパタ
ーンです。 また、これまでは比較的慎重だったM&
Aも今後は一つの選択肢になってきます」
広域緊急配送サービスを開発
「3PLではクラウド型の物流管理システムを売り
込んでいきます。 外資系大手情報機器メーカー向け
に開発した仕組みがそのベースになっています。 あら
ゆる輸送モードを使って、保守部品を全国どこでも
二時間から四時間のリードタイムで届ける緊急輸送サ
ービス網を構築し、三六五日・二四時間稼働で運営
しています」
「そのために二〇一〇年にTSM(トータル・サプ
ライ・メンテナンス)事業部を立ち上げました。 サー
ビス名には『TTMS(トナミ・トータル・マネジメ
ント・システム)』という名称を使っています。 各種
の保守部品をはじめ医薬品や医療機器など、潜在ニ
ーズは大きいと見ています」
──どういう仕組みなのですか。
「緊急性を要する広域配送サービスを当社が一元管
理します。 当社の受付センターで納品指示を受けた
ら、複数の拠点に分散している在庫の中から最適な
在庫を引き当て、必要なリードタイムに応じて配送手
段を選んで出荷指示を出します。 配送には全国にパ
ートナー企業を組織しています」
「出荷ミスや『予定通りに出荷されていない』、『予
定通りに届いていない』という異常が発生すれば自
動的にアラームを鳴らす機能も備えています。 アラー
ムをメールで現地の担当者や関係者に飛ばすことも
できる。 それによってトラブルを未然に防いだり、影
響を最小限に抑えることができます」
「クラウドシステムですので、ユーザーはインターネ
ット端末だけ用意すれば、在庫状況や作業ステータス
をいつでも確認できます。 見積書や納品書のプリン
トアウトもできます。 使用料は必要な機能をユーザー
が選ぶメニュー形式で、従来のパッケージソフトの利
用と比べて、コスト面、機能面ともに優位性があり
ます」
──ちなみに、そのモデルケースになったメーカーは
今の仕組みができるまで、どうやって保守部品を緊
急輸送していたのでしょうか。
「聞いたところによると、在庫や配送会社を探すの
に担当者が電話をかけまくるとか、手作業で全て処
理するとか、相当に大変だったようです。 それだけ
にTTMSは数々の失敗によって鍛えられた仕組み
になっています」
業績推移
08年
3月期
09年
3月期
10年
3月期
11年
3月期
12年
3月期
13年
3月期
(年度)
(売上高:百万円) (営業利益:百万円)
22,343 15,128 21,173 21,054 19,637 19,179
140,000
120,000
100,000
80,000
60,000
40,000
20,000
0
3,500
3,000
2,500
2,000
1,500
1,000
500
0
130,188
126,930
113,600
118,978
117,709
115,864
連結売上高
3PL 売上高
営業利益
1,887
1,198
1,403
2,767
669
734
システムの概要について
顧客企業
顧客企業の製品ユーザー
中核物流センター
物流拠点
保守業者
物流拠点
依頼
入庫情報
在庫管理
配送管理
web(インターネット)
配送
クラウドサービス
サーバー
電子データ
物の流れ
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