ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
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2013年9号
ケース
モスフードサービス 組織改革 専任部署を設け在庫・コスト管理を強化共配を拡大し店舗へ毎日一括納品を実現

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

SEPTEMBER 2013  66 センターフィーを自社負担  モスフードサービスは全国に一四〇〇店余 りのハンバーガーショップをフランチャイズ展 開している。
二〇〇八年三月に実施した組織 改正で、同社は商品本部に物流拠点の配置や 在庫配分、物流コストの管理などを担当する 「物流グループ」を新設した。
物流管理専任 の部署を設けたのはこのときが初めてだ。
 同社では古くから商品本部(一時期の名称 は「マーケティング本部」)が商品開発ととも に食材の仕入れ・供給までサプライチェーン 全般の管理を担う体制を敷いてきた。
 同本部の「商品開発部」が店舗で販売する メニューを企画開発し、「商品流通部」が店舗 からの受注処理、仕入先(メーカー)への発 注、物流センターの在庫管理、在庫調整のた めのセンター間の移動・出荷指示などの業務 を担当。
〇八年の組織改正前までは商品流通 部の「商品管理グループ」に「物流担当」を 置いて物流コストを管理する体制だった。
 物流センターでの食材の保管や店舗への配 送業務は全て外部の物流事業者の倉庫に委託 している。
センター在庫を取引先メーカーや 卸などのベンダー持ちとする取引条件や、セ ンターの運営委託費をベンダーから徴収する センターフィー制度は採用していない。
 ベンダーから物流センターに食材が納入さ れた時点で仕入れを立て、センター運営費も 純粋な自社コストとして委託先に支払ってい る。
余計な思惑やあいまいさを排除して、自 社で物流管理を厳密に行うことでコスト低減 を図るという考え方が根底にある。
 だが、それを実践できるだけの組織体制が 整っていなかった。
複数の業務を兼務する物 流担当は、日々のルーティンワークに追われ、 物流コストや在庫内容を分析したり、拠点配 置や輸配送の方法を検証している余裕を持て ずにいた。
 そこで商品管理グループ傘下の物流グルー プを独立させて、物流戦略やコスト管理に専 任で当たる部隊を組織した。
その初代責任 者となった伊東清物流グループリーダー(現 購買物流グループリーダー)が目指したのは ?考える組織?をつくることだった。
 「それまでは委託先に指示だけ出し、後は任 せきりだった。
拠点間移動やセンターでの保 管になぜこんなにコストが掛かるのか誰も答 えられなかった。
自分たちで原因を探り、コ ストを下げるために何をすべきかを一人一人 が考える組織にしていく必要があった」と伊 東グループリーダーは強調する。
 新生した物流グループが真っ先に取り組む  2008年に物流管理の専任の部署を初めて設け、 委託先任せでなく自分たちで考える組織づくりを 進めてきた。
共同配送を拡大して、野菜を含む 全ての食材を店舗へ毎日一括配送する態勢を確立。
在庫・発注管理の適正化と業務の標準化を目指し、 情報システムのリニューアルにも取り組んでいる。
組織改革 モスフードサービス 専任部署を設け在庫・コスト管理を強化 共配を拡大し店舗へ毎日一括納品を実現 伊東清購買物流グループリー ダー 67  SEPTEMBER 2013 べき課題は在庫の適正化だった。
従来は欠品 を起こさないことを最優先してメーカーに対 して多めに発注する傾向があった。
在庫過剰 に陥りがちだった。
 これを修正するため、在庫回転率の大まか な目安を設け、在庫管理や発注の担当者が常 に回転率を意識しながら業務を行うように仕 向けた。
担当者の意識を変えることが在庫削 減への第一歩だと考えた。
 業務の見直しにも着手した。
同社では長い 間、在庫管理や発注の担当者を仕入先ごとに 固定していた。
ベテランが自身の経験を基に それぞれ担当する商品について独自のロジッ クを組み立て、在庫の推移を見ながら発注数 やセンター間の移動数量を決めていた。
その 人間以外には管理方法がまるで分からず、業 務がブラックボックス化していた。
 特定のベテランに依存せず、また仕入先ご とに専門化することもなく、誰でも業務を担 当できる体制にする必要があった。
そのため に業務を標準化して、情報システムでサポー トすることにした。
発注の仕組みを再構築  同社は商品本部の主導で比較的早い時期か らサプライチェーンに関わる情報システムの整 備を進めてきた。
 同社の物流センター(在庫基地)は全国一 〇カ所にあり、七社の協力会社に業務を委託 している。
かつては委託先が固有のシステム を運用していたため管理方法がまちまちで、 しばしば在庫数に差異が生じていた。
 これを解消するため一九九九年に既存のパ ッケージソフトを自社仕様に改良した「Ma riana」というWMS(倉庫管理システ ム)を開発。
全拠点に導入し、管理方法を統 一した。
これによって管理上の在庫と実在庫 のギャップがなくなり管理精度が向上した。
 〇二年には、Marianaで管理する在 庫情報を仕入先とも共有する「MOS─
裡 le」というWEB─
釘庁疋轡好謄爐魏堝 させた。
在庫情報や店の販売情報、販売予測 情報を仕入先メーカーに提供。
その情報を基 にメーカーが生産・在庫計画を立て、日々の 需要変動に応じて調整することで、販売数量 に急な変動があっても仕入先に欠品を起こさ ず食材を安定供給してもらうことを狙った。
 一方、店舗との間ではこれより前にPOS と連動した自動発注システムを導入している。
各店舗の基準在庫を基に毎日の販売実績から 食材の補充数量を計算して店が自動発注する システムだ。
補充数量はメニューに使われる 食材の使用量から算出する。
 これらのシステム構築によって仕入先や協 力物流会社、店舗との連携を強化し、サプラ イチェーンの効率化を目指してきた。
 しかし、全てが期待通りに進んでいたわけ ではなかった。
Nileによる仕入先とのE DIは請求データのやり取りに使われるばか りで、本来の目的を十分に果たせていなかっ た。
主要な取引先の多くは、既存の自社シス テムによる生産管理を優先し、Nileを生 産計画に利用することに消極的だった。
 
裡蕋譯紊メニューの多様化に対応できな い仕組みだったことも理由の一つに挙げられ る。
近年、モスはメニューの改廃サイクルを 速める傾向にあり、期間限定メニューも増や している。
しかし、Nileは過去の実績や 直近の販売・在庫情報を基に補充数量を予測 するシステムであるため、新商品や期間限定 販売品には適さない。
 定番商品の需要予測にも課題があった。
あ るメニューがテレビ番組で紹介されて一時的 に売り上げが増えた場合、その実績が翌年の 予測にそのまま反映されて、実態と乖離した 数量の補充が行われてしまうといった欠点を 抱えていた。
 こうした実情を踏まえてNileに代わる 新たな仕組みを構築することにした。
WMS のMarianaに自動補充の機能を追加す るというアプローチで開発に当たった。
物流センターや店舗への“物流監査”  伊東グループリーダーは「Nileは基本 的に仕入先側が補充数量を予測する仕組みだ った。
これまでと発想を変えて我々がきちん と在庫を管理してしっかり発注する仕組みに する。
そのためにMarianaをより進化 させるかたちを選択した」と説明する。
 需要変動の要因をできる限り指数化して、 それを基に発注数をシステムで割り出せるよ うにする。
これによってオペレーションの標 準化を実現する。
同社では今期中にシステム 開発を終える予定だ。
 ただし新システムは定番品だけに的を絞り、 新商品や期間限定品は対象から外す。
これら については定番品とは別の需要予測システム を開発することも検討したが、最終的にはシ ステム化自体を断念した。
ITを駆使しても 正確な予測は困難という結論に達した。
 システム化をあきらめる代わりに、新商品 と期間限定販売品については、社内で目標を 共有した上で欠品や余剰在庫が発生した場合 の責任の所在を明らかにするという方法によ って改善を進めることにした。
 物流グループが目安となる販売数量を提案 して、営業本部、マーケティング室、商品本 部のメンバーによる会議体でその中身を議論 し、全メンバーの合意の下で目標数値を決定 する。
この目標に対し各部門が仕入れ・販 売・在庫計画を立ててそれぞれの立場で目標 の達成を目指す。
従来は欠品や余剰在庫に関 して責任の所在があいまいだったのを改めた。
 店舗への配送は時間厳守が基本だが、共配 の拡大に当たり、納品時間の指定に関して店 側に柔軟な対応を要請した。
毎日配送するメ リットを説いた上で店の了承を取り付けた。
 こうして二〇一二年六月に配送態勢を一新 し、野菜を含む全ての食材を全国の店舗へ毎 日(三六四日)三温度帯車両で一括配送する かたちに切り替えた。
集荷センターを九カ所 に増やし、集荷センターで店別仕分けした野 菜を物流センターで他の食材とドッキングして 同じ車両で店に配送する。
 その配送効率を上げるために、物流グルー プでは配送時間帯の見直しも検討している。
コスト増を避け納品頻度を上げる  店舗に対する配送の適正化も在庫問題と並 ぶ重点課題だった。
 同社は従来、野菜以外の食材を全国一〇カ 所の物流センターと三カ所のTC(無在庫拠 点)から、冷凍・冷蔵・常温の三温度帯車両 で店舗に納品していた。
納品頻度は大都市圏 の店舗が週に六日、それ以外は週に三回の定 期配送だった。
一方、野菜は別に「集荷セン ター」を全国七カ所に設けて産地から集まっ た食材を店に毎日配送していた。
従って野菜 とそれ以外の食材が別便で、頻度もまちまち で店舗に届いていた。
 そのことが荷受け作業の負担だけでなく、 本部と店舗間の自動発注システムのスムーズ な運用の障害となっていた。
さらにはサプラ イチェーン全体の在庫回転率を上げるという 視点からも、全ての食材を毎日配送すること が望ましいと物流グループでは判断した。
 「とは言え、配送回数を増やせばコストも上 がる恐れがある。
我々にとっては大変な決断 だった」と伊東グループリーダーは振り返る。
 コストを上げずに毎日配送を実現するため、 実施まで二年近い準備期間を費やした。
その 間、協力物流会社と共同配送の拡大に取り組 んだ。
同社は九七年から外食チェーンとの共 同配送を実施している。
共配率を上げるため に、物流会社の提案を受け、新たに加工食品 卸を共配のパートナーに加えた。
SEPTEMBER 2013  68 在庫品供給拠点 在庫型拠点 通過型拠点 集荷センター =10 = 3 = 9 石狩DC 札幌集荷センター 仙台DC 仙台集荷センター 関宿DC 上尾DC 東扇島DC 金沢TC 沖縄集荷センター 名古屋 集荷センター 北九州 集荷センター 大阪 集荷センター 広島 集荷センター 静岡集荷センター 沖縄DC 舞洲DC 佐賀DC 田辺TC 平和島 集荷センター 小牧DC 高松TC 広島DC  また午前中以外の時間帯に配送をシフトす ると共配のパートナー探しが難しくなる。
物 流センター側の業務フローを変える必要も出 てくる。
このため物流グループでは慎重に検 討を進める考えだ。
集中しない時間帯に単独 で配送することを想定して、センターのオペ レーションを変更した場合のコストシミュレー ションを物流協力会社に依頼し、その結果を 見て判断する。
 物流グループは物流品質の向上にも真正面 から取り組んできた。
その集大成として一二 年四月に、倉庫管理・配送管理・緊急時の 対応などの項目から成る「モス物流スタンダ ード」を作成した。
 これに則って同月から物流拠点に対する ?物流監査?を開始した。
物流グループが年 に一度、全ての物流センターとTCを視察 し、庫内環境やロケーションの決め方、積み 付け方法などをチェックする。
同時に抜き打 ちで店舗への納品に立ち会い、ドライバーの 服装・あいさつ・荷降ろしの仕方・車の荷室 内の温度などを点検する。
 同社は昨年一〇月に食品安全管理の国際規 格ISO22000の認証を直営店などで取 得し、他店にも展開している。
物流グループ では品質管理部によるこの取り組みとも歩調 を合わせ、活動を進めている。
物流部門と購買部門を統合  発足から五年が過ぎ、物流グループは伊東 グループリーダーが目標とする?考える組織? の体を成してきた。
業務ごとに設けた「担当」 がそれぞれのコスト管理に責任を持ち、月に 一度のミーティングで各カテゴリーの物流コス トを前年と比較する。
その際に、「今回は期 間限定品が一カ所にしか納品されなかったた め拠点間移動に費用が掛かった」という具合 に、コストアップ要因を明確に答えられるよ うになった。
その分析を基に具体的な施策を 打つというプロセスが出来上がってきた。
 今年四月から物流グループは「購買戦略グ ループ」を吸収して「購買物流グループ」に 名称を変えている。
〇三年に商品開発グルー プの「購買担当」が購買戦略グループとして 独立。
〇八年に物流グループが発足した後は、 購買戦略グループが仕入先の選定や価格交渉 を、物流グループが仕入先に対する発注業務 をそれぞれ担当していた。
 購買部門は仕入れ値を下げることに主眼を 置くため、納品場所を一カ所に集約する傾向 があった。
だが、他のセンターへ横持ちする 費用まで含めると、集約が必ずしも低コスト とは限らない。
組織を一本化したことで、ト ータルコストの最適化を図れるようになった。
 モスフードサービスはアジアを中心に海外へ もハンバーガー事業を展開している。
伊東グ ループリーダーは「ゆくゆくは海外とも連携 してグローバルな視点で購買物流の構築を目 指したい」と意欲を示している。
(フリージャーナリスト・内田三知代) 同社の店舗では、スタッフが朝出勤してから ランチタイムが始まる前までの時間帯を納品 時間に指定している。
午前中に届いた食材を 仕込んでピークのランチタイムに備えるのが店 の業務慣行になっている。
だが、午前中は外 食チェーンに限らず多くの業態で納品が集中 する時間帯だ。
夜間や夕方に配送をシフトさ せることによって、車両の回転が上がりコス トダウンにつながると期待する。
 また同社は近年、朝食専用の「おはよう 朝モス」メニューの販売店舗を増やしている。
朝食時間帯の販売強化が狙いだ。
午前中に荷 受けがあると店は販売に専念できない。
配送 時間帯の見直しは、この販売戦略も念頭に置 いている。
 ただし時間帯の変更にはいくつかの課題 がある。
まず店側の受け入れ態勢の整備がい る。
店が無人となる夜間に配送する場合は、 ノー検品の仕組みを新たに構築する必要があ る。
配送管理担当の藤田政克チーフリーダー は「店には?検品はスタッフが立会って行う もの?という固定観念がある。
そこを変えて もらえるかどうかが一つの関門だ」と見る。
69  SEPTEMBER 2013 配送管理担当の藤田政克 チーフリーダー

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