ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
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2013年9号
メディア批評
姑息な手段で憲法改正を目論む安倍晋三学ぶべきはタカ派保守より護憲派の思想

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

佐高 信 経済評論家 SEPTEMBER 2013  90  この夏、光文社から出す『この人たちの 日本国憲法』の原稿を書いていた。
副題が「宮 沢喜一から吉永小百合まで」。
一〇人の、い わば護憲派列伝である。
順に並べると、 ?宮沢喜一の「新・護憲宣言」 ?「戦争で得たものは憲法だけだ」の城山 三郎 ??異色官僚?佐橋滋の非武装論 ?頑固なハト派、後藤田正晴 ?野中広務の日本への遺言 ?徴兵を忌避しようとした三國連太郎 ?美輪明宏の「戦争は野暮の骨頂」 ?「憲法を変えるなどもってのほか」の宮 崎駿 ?吉永小百合の祈りと行動 ?アフガンの歩く日本国憲法、中村哲  護憲は決して革新派だけが主張している のではない。
むしろ、保守本流は護憲だっ た。
しかし、岸信介、中曽根康弘、小泉純 一郎の系譜につながる保守傍流が改憲を唱え、 安倍晋三が、今、それをやろうとしている。
 宮沢喜一は、保守は主義ではなく態度で あり、常識に立つと言っているが、残念ながら、 現在の保守は非常識、もしくは異常識だ。
 参議院公示後の七月一〇日に書店に並ん だスタジオジブリ発行の『熱風』七月号が話 題を呼んだ。
巻頭で宮崎駿が訴える。
「憲法 を変えるなどもってのほか」。
 「憲法を変えることについては、反対に決 まってます。
選挙をやれば得票率も投票率 も低い、そういう政府がどさくさに紛れて、 思いつきのような方法で憲法を変えような んて、もってのほかです。
本当にそう思い ます。
法的には 96 条の条項を変えて、その 後にどうこうするというのでも成り立つの かもしれないけれど、それは詐欺です。
国 の将来を決定していくことですから、で きるだけ多数の人間たちの意見を反映した ものにしなきゃいけない。
多数であれば正 しいなんてことは全然思っていないけれど、 変えるためにはちゃんとした論議をしなけ ればならない」  アベノミクスも早晩駄目になると予言する 宮崎は、徴兵制をやればいいなどという馬 鹿をたしなめた上で、さらにこう語る。
 「憲法は目標であって、条文をよくしたら 貧乏人がいなくなるとか、そんなことはあ り得ない。
でも、戦後の日本は、その憲法 に守られながら行ってきた経済建設のお陰で、 他の国の人から収奪したお陰もあるかもし れないけども、飢え死にしている人を見か けることなどはほとんどない国になれました。
もし、健康保険制度がなかったら、医者に かかれない人がものすごくいっぱい出てく ると思うんです。
アニメーションの関係者は ほとんど歯医者さんにかかれないでしょう (笑)。
本当にある時期までは、戦後立てた 目標を実施しようと、公平な社会をつくろ うと、右翼の政治家たちも随分やってきた と思いますよ」  この間の選挙の自民党のスローガンは「日 本を取り戻す」だった。
取り戻したい「日本」は、 たとえば小泉純一郎と竹中平蔵によっても たらされた格差のある日本なのか、それとも、 「公平な社会」なのか。
 最近、最も驚いたのは日本郵政がアフラ ックの手先となることが決まったことだった。
TPPは農業だけでなく、国民皆保険制度 を壊して、アメリカの巨大保険会社に日本 の市場を提供する危険があると言われてき たが、すでにそれが現実のものとなってき たわけである。
 美輪明宏は『週刊金曜日』八月九日、 一六日合併号で、私のインタビューに答えて、 日本国憲法は自由民権運動の思想なども取 り入れており、アメリカの押しつけなどでは ないとして、こう言っている。
 「こんな素晴らしい憲法は世界に類がありま せん。
誇って自慢してればいいわけです」 姑息な手段で憲法改正を目論む安倍晋三 学ぶべきはタカ派保守より護憲派の思想

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