ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2013年9号
現場改善
第126回 巨大企業グループの物流子会社問題

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

91  SEPTEMBER 2013 親会社が子会社の診断を依頼  
船哀襦璽廚脇本有数の事業規模を誇る企業 集団である。
多くの上場企業を輩出し、物流子 会社だけでも一〇社近くをグループ内に抱えて いる。
 我々日本ロジファクトリー(NLF)は数年 前にも同グループのコンサルティングを行ってい る。
その内容は日本の高度経済成長期に同グル ープの成長を支えてきた伝統ある事業部門(会 社)の物流改革をサポートすることであった。
 それに対して今回は別の事業会社からの要 請だった。
ここでは仮にB社とする。
B社はグ ループの次の五〇年を支える柱と位置付けられ、 グループを挙げて資金と人材が投入されている 有力部門であり、また強い国際競争力を有する グローバル企業であった。
そして今回のコンサ ルティングのテーマはB社の物流子会社C社の テコ入れであった。
 これまでB社は工場内の調達(入荷)から構 内配送・荷役、格納、保管、梱包、出荷、輸 配送管理までの一連の生産物流をC社に任せて きた。
一方のC社は親会社向けの物流業務に集 中する傾向が強く、一定の事業規模と安定した 収益を維持してきたが、親会社をはじめグルー プ会社との取引に収入を依存していた。
 
端劼離僖侫ーマンスに対して、B社内で問 題が提起された。
現状のC社は果たして、B社 あるいはAグループに貢献していると言えるの か。
他社の物流を知らないC社は、?井の中の 蛙?になってはいないか。
さらにはグローバル 化が進む中、C社は今後も生き残り、成長して いくことができるのか。
懸念の声が上がったの である。
 それをきっかけに、我々のような外部の専門 家を招き、中立的な第三者によってC社の現状 を客観的に評価し、さらには物流子会社の今後 の方向性についてアドバイスを受けようという 流れになった。
 
村劼撚罅垢鮟亰泙┐討れたのは、今回のプ ロジェクトリーダーを務める経営企画部長のD 氏、そして物流本部長のH氏の二人であった。
いずれも本社で物流子会社を管理する立場にあ る。
打ち合わせの途中から両部門の部下や上司 が次々と部屋に入ってきて、最終的には六名の メンバーが我々との初顔合わせに参加すること となった。
 この段階において早くも大きな課題が見つか 事例で学ぶ 現場改善 日本ロジファクトリー 青木正一 代表  親会社は物流子会社のパフォーマンスと将来に懸念を抱い ていた。
本格的にテコ入れして競争力を養い自立を促すか、 グループへの貢献に特化させて機能を見直すか、あるいは売 却してしまうか、関係者の意見は割れていた。
社内の意思 統一を図るためにも、外部の第三者に評価と意見を求める ことにした。
巨大企業グループの物流子会社問題 第126 回 あおき・しょういち  1964年生まれ。
京都産業 大学経済学部卒業。
大手運送 業者のセールスドライバーを経 て、89年に船井総合研究所入 社。
物流開発チーム・トラッ クチームチーフを務める。
96 年、独立。
日本ロジファクトリー を設立し代表に就任。
現在に 至る。
主な著書に『経営のテ コ入れは物流改善から』(明日 香出版社)、『物流のしくみ』(同 文館出版)などがある。
HP:http://www.nlf.co.jp/ e-mail:info@nlf.co.jp PROFILE SEPTEMBER 2013  92 った。
メンバー各人のC社に対する現状認識と 方向性についての思惑がそれぞれ違っていたの である。
コンサルタントを起用したのも社内の 意思統一が狙いの一つであることが見え隠れし ていた。
実際のその後のプロジェクトは各メン バーの同床異夢の中で進められていくことにな った。
 この日から二週間後、ようやくコンサルティ ング契約の稟議が下り、現場調査を開始するこ とになった。
調査対象となる四カ所の工場は全 て半径三〇?圏内に集中して立地していた。
 それを取り囲むように数十カ所に上る外部倉 庫を賃借していた。
そのうちおよそ半分は物流 子会社C社が使用していた。
残りはC社を経由 せずに親会社が直接、外部の物流会社と契約し て使用している倉庫であった。
そのことからも 分かるように、B社とC社の関係、役割分担に は一貫したルールや線引きがなかった。
 この現場調査と担当者へのヒアリング、物流 関連の実績データ、そして我々がコンサルティ ングに入る前に実施された、サプライヤーを対 象に行われたアンケート調査の資料を持ち帰り、 分析を行った結果、以下のような課題が浮かび 上がってきた。
?低い生産性 ?コストダウン意識の欠如、改善活動の不在 ?現場スタッフの高齢化 ?親会社のスペック、ルールに基づいたオペレ ーション ?WMS不在 ?低い外販比率 ?営業力および活動量の不足 ?外販に向かない社名  このうち「?低い生産性」は一人一時間当た りの売上金額を見るだけでも察しはついた。
実 際、保管機能を中心とした工場併設拠点一カ所 を除き、どの現場も人で溢れていた。
ほとんど の作業工程がツーマン対応で、我々の視察中に も私語を話しているものがいた。
明らかに人員 過剰である。
 庫内には本日の仕上がり個数がデジタル表示 されるボードがあった。
生産性目標も設けられ ていた。
しかし、運用は形骸化していた。
 庫内レイアウトは入り組んでいた。
保管棚を 継ぎ足しで増設してきたためだろう。
それによ り作業動線が長くなっていた。
 また入荷検品とピッキング後の出荷検品はい ずれもトリプルチェックが基本となっており、品 質に関しても過剰と言わざるを得なかった。
 現場の「?コストダウン意識は欠如し、改善 活動は不在」だった。
親会社への見積り金額は 基本的に了承されることになっており、料金交 渉はタブーとされていた。
そのためC社から見 れば生産性を上げる必要がなかった。
 結果として、親会社の物流コストは下がらず、 物流子会社としても外販に耐えるコスト競争力 を養うことができないという厳しい状況であっ た。
外販営業のお粗末な実態  「?現場スタッフの高齢化」も目立っていた。
ベテラン正社員が現場労働力の中核でその平均 年齢は五〇歳を超えていた。
しかも技術修得の 目的から、外国人労働者を登用していたが、高 齢化した日本人スタッフ達は彼らを戦力化する だけのスキルを持ち得ていなかった。
 「?親会社のスペック、ルールに基づいたオペ レーション」がその一つの理由であった。
親会 社から言われたことだけをミスなく遂行してい れば十分であったため、?自ら考え、工夫する? という風土や習慣が根付いていなかった。
そこ に長く安住してきた職人的なベテラン社員と外 国人労働者という組み合わせは、我々から見れ ば最悪の運営体制であった。
物流子会社管理の考え方 ●支払物流費における構成比と物流子会社の自社構成比を検証 物流子会社 親会社売上 構成比 親会社 支払物流費 子会社シェア 70%以上 70%以上 30〜70% 30〜70% 30%未満 30%未満 物流「子」会社 として改革要 物流「別」会社 として理想的 93  SEPTEMBER 2013  作業ノウハウがあったとしても属人的で、人 に伝えられるものではなかった。
従って会社の ノウハウになっていなかった。
親会社の生産管 理システムをベースにセンターを運営し、「?W MS不在」であることも、その現れだった。
物 流ノウハウの多くはシステムによって下支えさ れる。
とりわけ外販を強化するにはWMSをベ ースにした物流のシステム化が不可欠になるが、 C社はそれを欠いていた。
 「?低い外販比率」は当然であった。
数字の 上では二〇%弱を親会社以外から売り上げてい た。
しかし、その中身は全てグループ内の、い わば身内の仕事であり、純粋な外販は皆無に等 しかった。
外販用の営業拠点として東京と大阪 にスタッフを常駐させているが、機能していな かった。
 「?営業力および活動量」が圧倒的に不足し ていた。
営業専門組織は五年以上も前に設けら れていた。
しかし、東西の営業拠点をそれぞれ 訪れて驚いた。
同業他社の物流センターに一〇 坪ほどの事務所を間借りしており、デスクが一 人分だけポツンと置かれていた。
まるでレンタ ルオフィスである。
 営業担当者からヒアリングを行ったところ、一 日のうちのほとんどをその事務所で過ごし、営 業先候補のホームページをチェックすることに 費やしているという。
直近一年間で提出した提 案書数はゼロ、見積書は二件でいずれも逸注と いう活動実態であった。
 親会社やC社による営業活動の後押しもなか った。
明確な営業方針や計画、戦略が経営層か ら示されることはなく、営業ノルマもなかった。
つまり、事実上、放置されていた。
今回のプロ ジェクトメンバーでさえ、C社のホームページを 見たこともないという有り様であった。
 そもそもC社は「?外販に向かない社名」で あった。
ここで実名を挙げることはできないが、 特定の分野、取扱品を象徴する名称であるため、 外販ターゲットを限定させてしまっているとこ ろがあった。
たかが社名とはいえ、やはりマイ ナスである。
社名を決定した当事者たちが、外 販のことなど全く考えていなかったことは明ら かだった。
 このようにC社が物流会社として自立し、生 き残っていくために越えなければならないハー ドルは高く、抱えている課題はいずれも難問で あった。
どうしてもC社の?強み?を見出すこ とができず、筆者は頭を抱えていた。
そんな中、 最後に訪れた工場の物流業務で、ようやく一筋 の明かりが見えた。
梱包設計である。
物流子会社の売却へ  製品マスターの情報を用いて、あらかじめ設 定されている基準値に対して、使用する梱材資 材の種類、サイズ、強度、梱包画像を表示し、 その内容に問題がなければ、発行ラベル、送り 状、納品伝票まで対応する梱包・出荷自動化連 動システムを構築していた。
いわゆる?3D版 梱包シミュレーションシステム?である。
 前工場長の時代に親会社主導でシステムベン ダーとともに開発したものとのことだった。
当 時としては画期的なシステムで見学依頼まであ ったという。
しかし、それから時間が経ってい る。
今となってはどうであろうか。
我々は調べ てみることにした。
すると同様のシステムを既 に数社が開発して一般に販売されていることが 分かった。
 それでも、まだ希望はあった。
競合の物流会 社がその機能を持っていなければ、C社の売り の一つにはなる。
しかし我々はそれ以上の調査 をあきらめた。
仮にそれが多少のアピールポイン トになったとしても、総合的に判断すれば、C 社に競争力があるとは言い難かった。
物流子会 社としてグループの?お荷物?になっている事 実は変わらなかったからだ。
 現在、C社は売却の方向で話が進んでいる。
C社を買収すれば一定期間の親会社向け業務の 営業権が担保されるはずであり、物流専業者に とっては魅力的だ。
現状のオペレーションが効率 的とは言えない分だけ、現場の生産性を上げて、 収益性を改善する余地は大きいことから、売却 先は間もなく見つかるであろう。
我々としては、 何とかC社が再生・自立の道を選び、改善を進 めていきたかったところであるが致し方あるま い。
 これから親会社はC社を長年甘やかしてきた 代償を支払うことになる。
それでも物流子会社 の売却は必ずしも後退ではない。
売却後の新体 制の下でC社が生まれ変わることができれば親 会社はコストダウンを享受できる。
 こうしてプロジェクトはいったん終了となり、 C社の売却先が決まるまでの間、我々は待機す ることになったのである。

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