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NOVEMBER 2013 26
三年で会員一万五〇〇〇件
独立系大手卸の国分グループは二〇一〇年十一
月、小売店など向けの会員制通販サイト「問屋
国分ネット卸」を立ち上げた(写真)。 飲料や加
工食品、菓子、酒類、パン、日用品、文房具な
ど約八五〇〇のアイテムを卸価格で販売。 サイト
運営は子会社でコンビニエンスストア「コミュニテ
ィ・ストア」を展開する国分グローサーズチェーン
(KGC)が手掛けている。
簡単な会員登録をすれば利用可能で、加盟料や
月額使用料の支払い、売買契約書の締結など面倒
な手続きは不要。 当日の午前十一時までに注文す
れば、原則として翌々日にはヤマト運輸の宅急便
で商品が手元に届く。 配送料は一回の受注で六三
〇〜一〇五〇円。 小ロットの一ケースから注文を
受け付けるなど、利便性に配慮していることが受
け入れられ、スタートから三年程度で会員数は約
一万五〇〇〇件に上っている。
こうしたネット通販を開始した狙いについて、
国分の黒崎雅人事業開発部Web統括チーム課長
は「全てのお客様に卸の機能、品質をきちんと提
供したいとの思いから、ネットを活用したビジネ
スを考えていた」と振り返る。
このサイトが利用者として念頭に置くのは、離
島や山間部などに位置する個人商店などの小規模
事業者だ。 通常、地方の顧客には二次卸を通じて
商品を供給している。 しかし、交通の便が悪いこ
とや取引量が少ないことなどが制約になり、欲し
い時に迅速に品物を仕入れることが難しかった。
国分がネット卸の事業化を検討するに当たって
各地の実態を調査したところ、「卸に注文しても
トラックを回してもらえるのは一週間後になる」
といった声が上がってきた。 すぐに商品が必要な
時は、遠隔地の現金問屋まで買い付けに走ったり、
一般の小売店で特売品を購入したりと、商品の確
保に苦心している現状が明らかになった。
国分は一五年までの第九次長期経営計画「QU
ALITY300」で、伝統的な「小商い」を
重視する姿勢を示している。 規模の大小を問わず、
地道にあらゆる小売りをカバーして卸の需要を獲
得していく「全方位外交」だ。 地方の小規模店の
ニーズを無視するわけにはいかなかった。
そこで数年前からインターネットを活用して小
規模事業者に商品供給できる仕組みを検討してき
た。 どんな顧客層が見込まれるかを念入りに分析
した結果、過疎地の小売店のほか、?企業や大学、
病院の中にある売店、?サークルや同好会、?珍
しい商品を探しているインターネット利用者──
なども顧客になり得ると判断した。
いずれも取引規模の小ささなどがネックとなり、
国分
「ネット卸」で地方の個人商店を支える
2010年に小規模事業者向けの会員制卸サイトを始めた。 地
方の個人商店の調達を支えることで、日常の買い物に困ってい
る高齢者ら「買い物難民」の解消にも一役買おうと意気込む。
そのインフラをヤマトグループが担っている。 物流だけでなく
決済でも掛け取引を可能にするなど利便性向上に貢献している。
(藤原秀行)
「問屋 国分ネット卸」のサイト。 国分の缶詰、調味料な
どのオリジナル商品も扱っている。
5 事例研究:バリュー・ネットワーキング
27 NOVEMBER 2013
クロネコヤマト独走
特集
そこに、ヤマト側がグループの持つ様々な機能
を包括的に提案した。 ネット通販サイトには、全
国の直産品や特産品を扱う卸サイトとしてヤマト
システム開発(YSD)が展開している「クロネコ・
バイヤーズダイレクト」の仕組みを応用。 受発注
の処理システムなども同社が担当した。 商品の仕
分けや梱包、発送はヤマト運輸が手掛ける。
ネット通販で掛け取引も可能に
さらに、代金の決済をヤマトフィナンシャル(Y
FC)が請け負うことで、卸サイトの会員は宅急
便受け取り時の代引き、クレジットカード支払い
に加え、「クロネコあんしん決済サービス」を利用
できる。
このサービスは、YFCが代金の請求から回収
までを一貫して担い、売掛債権を保証する(図表)。
利用者は審査を通過すれば掛け取引で商品を仕入
れることが可能だ。 国分は与信管理や代金請求な
どの手間が省け、債権回収のリスクも回避できる。
国分はネット卸を展開する意向を固めていたも
のの、実際にどれくらい需要があるのか、正確に
は分からなかった。 仮に自社で物流網を構築する
場合、現場にネット卸の要員をどの程度、配置す
ればいいのか、注文が集中した場合はどうすれば
いいのか等、課題は山積していた。
それらのインフラのほとんどをヤマトがグループ
として引き受け
ることで、国分
の不安を解消し
た。 国分グルー
プの担当者は品
揃えやサイトの
卸業者が取りこぼしていたゾーンだ。 地域の小規
模店舗の仕入れをネット経由でサポートし、営業
を後押しすることができれば、社会問題化してい
る、日々の買い物に苦労している高齢者ら「買い
物難民」の救済にもつながる。
しかし対応には、離島や山間部を含めて全国各
地をカバーできる配送網を持った物流業者との連
携が不可欠だった。 黒崎課長は「我々のビジネス
モデルをB
to
Bの物流で賄うのはまず無理。 当初
からヤマトさんが最も有力な候補だった」と明かす。
小規模事業者との「小商い」を確立したい国分と、
社会貢献を重視するヤマトは、ネット卸事業です
ぐに意気投合した。 もっとも、国分サイドとして
は、「当初は宅急便による商品配送を利用すると
のイメージにとどまっていた」(黒崎課長)という。
内容を充実する作業などに専念できた。
準備開始から半年程度という短期間でサイトの
立ち上げまでこぎ付けた。 黒崎課長は「国分サ
イドでいろいろビジネスモデルを考えていた時に、
ヤマトさんがITや物流、決済・代金回収に関す
る知見、ノウハウを駆使して、すっと横串を刺し
てくれた。 一連の仕組みがセットになっていたの
で追加のアセット投資もいらなかった。 大きなメ
リットだ」と評価する。
現在の作業フローは、午前十一時で締めた受注
データを本社から栃木県小山市にある国分子会社・
関東国分の汎用倉庫に送り、商品をアイテムごと
に注文の総量でピッキング。 その翌朝、ヤマト運
輸に商品を軒先渡しすれば、同社が栃木県鹿沼市
の主管支店に隣接した倉庫で仕分けや梱包を行い、
その日のうちに宅急便で全国に流れる。
サイトの取扱アイテム数はスタート当初の一〇
〇〇〜二〇〇〇のレベルから順次積み増し、現在
の規模まで拡大した。 変動はあるが、ネット卸の
一日当たりの平均出荷は一〇〇個ぐらいだという。
黒崎課長は「現状のアイテム数で一つの店舗の品
揃えを満たせるぐらいのレベルかなと考えている。
採算はかなりいい水準まで来ている」と手応えを
感じている。
企業物流への取り組みを強めるヤマト。 黒崎課
長は「利益率が高い分野に特化していくのか、食
品などあらゆる顧客層にわたってサービスを展開
していくのか。 どういう戦略で取り組まれるのか
は大変興味がある。 大都市間の当日配送といった、
汎用的なモデルの中に我々の荷物も載せていただ
けるようになればもっとコストメリットが出てくる」
と、ヤマトの動向に熱い視線を送っている。
国分の黒崎雅人事業開発
部Web統括チーム課長
ネット卸での「クロネコあんしん決済サービス」の流れ
出所)ヤマトホールディングスHPより
【国分グローサーズチェーン】【小売事業者】
?注文
?商品発送
?注文情報?請求
?精算?代金支払い
ヤマトグループ
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