*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。
繰り返し説明してきたように、我々イーソ
ーコが展開している「物流不動産Biz」は
単なる倉庫仲介ではありません。 自社物件・
他社物件にこだわらず、顧客の物流をコンサ
ル的な視点から観察し、最適な物流施設を提
案するというのが最大のポイントです。
イーソーコはこの物流不動産Bizを自ら
行うだけでなく、全国の物流企業を対象に、
そのノウハウや知識を提供しています。
物流不動産Bizの営業マンには、不動
産だけでなく金融や建築、IT、そして何よ
り物流に関する知識やスキルが求められます。
そう聞くと皆さんの中には「そんな難しいビ
ジネスはバリバリのベテラン営業マンにしかで
きない」と思う人がいるかもしれません。
しかし、それは逆です。 物流不動産Biz
を導入する際は、ベテランの物流営業マンよ
りも、むしろ若手を起用するべきです。
ベテランは経験豊富な一方、既成概念や業
界常識に縛られる傾向があります。 それに引
き換え、若手は知らないことでも教えると素
直に吸収してくれます。 偏屈なプライドもなく、
周囲と協調して事業を進めることにも抵抗が
ありません。 実は物流不動産Bizでは、こ
の?素直さ?が意外に大切なんです。
ある運送会社に物流不動産Bizを導入
しようとして失敗した事例を紹介しましょう。
その運送会社が物流不動産Bizの営業担
当者に起用したのは、社内でも?エース?と
呼ばれるベテランでした。 滑り出しは絶好調。
みるみる売上と利益が伸びていきました。
しかし、次第に雲行きが怪しくなりました。
得意になった営業担当が案件を自分一人で抱
え込み、成約までの過程や交渉状況などを、
一切開示しなくなってしまったのです。
やっかみもあったのでしょう。 周囲から「何
をやっているのか分からない」「外回りと言
ってサボっているのではないか」などと噂さ
れるようになり、その営業マンは社内で孤立
を深めていきました。 私は彼にもっと周りに
配慮するようアドバイスしたのですが、実績
を上げている自信からか、全く聞く耳を持っ
てくれません。
結果的に、その営業マンは運送会社を去る
ことになりました。 私はこの苦い経験を通し
て、やはり物流不動産Bizは素直な若手の
方が向いていると確信しました。
ベテランよりも若手の方が良い理由がもう
一つあります。 それは、ITツールに慣れて
いること。 物流不動産BizではITの活
用が必須です。 単にパソコンで物件情報を集
めるだけでなく、例えば迅速に顧客対応する
ためにスカイプを使ってweb会議をしたり、
スマホの位置情報確認システムを駆使したり
する場面が多く訪れます。 そうしたIT機
能をゼロから覚えるよりも、子どもの頃から
ゲームや携帯、パソコンなどに親しんできた
?デジタルネイティブ?の方が、スムーズにな
じむことができるんです。
もちろん若手を起用しただけで全てが上手
くいくわけではなく、彼らに適切な教育を施
す必要があります。 イーソーコでは若手営業
マンを中心にした「第2営業部」というチー
ムを編成し、日々の実務と並行しながら、様々
な教育を行っています。
具体的には、資格予備校と組んで「宅地建
物取引主任者」の社内講座を開設したり、i
Padに入れた会社資料と契約書を使い、チ
ーム全員でプレゼンや会社説明のスキルを磨
いたりしています。 全員で行うのには、スキ
ルが属人化したり、情報がブラックボックス
化することを防ぐ意味合いもあります。
効果はてきめんです。 第2営業部に入社二
年目の吉野君という若手がいるのですが、彼
はおとなしい性格でしかも口下手。 入社当初
は、お客さんの前でプレゼンをさせると見当
外れな説明を延々と続ける始末でした。 私は
彼の行く末を案じたものです。
そんな彼も、教育と努力の甲斐あって今で
は若手のホープの一人です。 コンスタントに
仲介契約を取れるようになっただけでなく、
マスターリースなど高度な提案もできるよう
になりました。 時には社内研修の講師も務め
ています。 彼の成長が、今の私の楽しみの一
つになっています。
大谷巌一(おおたに・いわかず)
1957 年生まれ。 高千穂商科
大学卒。 81年東京倉庫運輸入
社。 同社物流部門、不動産部
門を経て2003 年イーソーコ副
社長就任(現職)。 2010年イ
ーソーコドットコム会長に就任。
現在に至る。 著書に『これから
は倉庫で儲ける!! 物流不動
産ビジネスのすすめ』(日刊工
業新聞社)など。
PROFILE
第8回 デジタルネイティブを起用しろ
NOVEMBER 2013 80
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