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DECEMBER 2013 26
公開情報から何が分かるか
花王、五・六%。 ライオン、四・七%。 両社の「売
上高物流コスト比率」です(両社の二〇一二年十
二月期の財務諸表から、花王は「荷造及び発送費」、
ライオンは「運送費及び保管費」を物流コストに
として筆者が算出)。 この数字から「ライオンの
方が約一ポイント比率が低いので物流コストが安い」
と理解して良いでしょうか。
ご承知の通り、花王は先進的なロジスティクス
で有名な企業です。 一方のライオンも、日用雑貨
品業界の共同配送の仕組みづくりを主導するなど、
物流には力を入れています。 商流については、花
王は販社経由、ライオンは卸経由の違いがあります。
従って、どちらの物流コストが安いかと言われても、
そう簡単に答えは出ないはずです。
それでも経営陣や上司から「なぜ当社の売上高
物流コスト比率は、ライバルのX社より一%も高
いのかね!」と詰問されて困ったことのある人は
多いのではないでしょうか。 整然と反論するため
には理論武装が必要です。 そもそも売上高物流コ
スト比率とは何なのか。 有価証券報告書から得た
物流コスト情報をどのように実務に活用したら良
いのか。 本稿ではそのポイントをご紹介します。
売上高物流コスト比率とは、文字通り物流コス
トを売上高で割った比率のことです。 代表的な物
流指標の一つとして知られていますが、それが必
ずしもその会社の物流の効率を示しているわけで
はないことに注意する必要があります。
第一の問題点として、物流コストに大きな影響
を与える「体積」や「重さ」が売上高物流コスト
比率には全く反映されていません。 価格が一〇〇
万円のさまざまな商品を想像してみてください。
同じ値段でも商品の大きさは、一〇tトラック一
台分から段ボール箱一つ分、指輪のようなごく小
さい箱に入るものまで多様です。 当然のことながら、
商品の大きさによって保管費用、配送費用、荷役
費用は全く異なります。 従って、「体積」や「重さ」
の違う商品の売上高物流コスト比率を単純に比較
することはできません。
第二の問題点は、「物流コスト」に何を用いるか
です。 冒頭の花王とライオンの比較では、有価証
券報告書の販売管理費の明細から、それぞれ物流
に関連する項目を抜き出しましたが、これは企業
の物流コストのうちの一部にすぎません(図表1)。
物流コストには、「支払物流費」と「自家物流
費」があります。 前者は物流事業者など社外に支
払った費用であり、後者は物流に携わる社員の人
件費や自社設備の物流センターの減価償却費など、
「売上高物流コスト比率」の使い方
財務諸表上の物流費は必ずしも実態を表していない。 だ
から売上高物流コスト比率は実務には使えない──そう考
えるのは早過ぎる。 売上高物流コスト比率は事実上、物流
ベンチマーキングを可能にする唯一の指標だ。 どうすれば
有効に活用することができるのか、そのポイントを解説する。
図表1 損益計算書の費目と物流コストとの関係
売上高
営業利益自家物流費
この一部が有報で開示される
物流費(全体)
工場倉庫関連費用等
調達物流費
販管費
物流管理費
経費
労務費
原材料費
原価
上村 聖(かみむら・しかと)
1993年、一橋大学社会学部卒業。
食品メーカーに入社。 その後、コンサ
ルティング会社、物流事業者のコンサ
ルティング部門を経て、コンサルティン
グ会社の設立に参画。 2008年、首
都大学東京MBA取得。 2012年より
現職。 城西大学経営学部非常勤講師。
上村 聖 上村コンサルティング事務所 代表
第 3 部
27 DECEMBER 2013
特 集
また、支払物流費にしても財務諸表に全てが公
開されているとは限りません。 調達に関連して発
生している物流費は、日本の商慣習では原材料費
または商品仕入費に含まれていることが多く、ブ
ラックボックスとなっています。 工場内で発生し
ている物流費も製造原価に紛れ込んでいるケース
がほとんどです。
つまり、財務諸表に記載されている「物流費」
は本来物流費として把握すべき費用の一部にすぎ
ず、また企業により記載している費用の範囲は異
なっているのです。
「だから、売上高物流コスト比率なんて使えない」
と考えてしまうのも無理はありません。 しかし、
物流コストをライバルと比較したり、その妥当性
を判断するための有効な指標が他にあるでしょうか。
JILSの物流コスト調査(三〇頁囲み記事参照)
にしても、企業全体の物流コストを対象にしてい
るなど精度は高いものの、調査協力企業数は二〇
〇社弱に限られています。 必ずしも全ての業種の
サンプルが十分だとは限りません。
一方で財務諸表の開示は株式会社の義務ですか
ら、売上高物流コスト比率は欲しい企業の情報を
手に入れやすいという大きな利点があります。 こ
れを切り捨ててしまうのは、あまりにももったい
ない。 「帯に短し、たすきに長し」の感はありますが、
他に使える指標がない以上、いかに売上高物流コ
スト比率を使いこなすかが物流マネージャーとし
ての腕の見せどころとなります。
コストの全体像を把握する
毎年、次年度予算編成の時期になると、他の部
署と同じように物流関連部署にも予算作成の指示
社内で物流のために発生している費用のことです。
日本ロジスティクスシステム協会(以下JILS)
の二〇一二年度の物流コスト調査によれば、企業
の物流コストのうち支払物流費の占める割合は全
体平均で八五・四%です(図表2)。
が下りてきます。 その際、どのような方法で物流
費の予算を算出しているでしょうか。
最近のトレンドと来年度の改善見通しに加え、
事業部門からの変動要素を織り込んで算出するの
がオーソドックスなやり方だと思います。 しかし、
苦労して予算を算出したものの、本社から経費の
一律五%削減を指示されて、無理やり変更させら
れたなどということもあるかもしれません。
そもそも金額のけたが全く異なる旅費や会議費
等と物流費を同類に扱うこと自体にかなり無理が
あるのですが、それ以上に物流費は自部署の責任
範囲内だけでは削減が難しいことから、本社から
の一律経費削減の号令にはなじまないと言えます。
予算達成のため、物流の都合だけで顧客への配送
頻度やロットを見直して配送費を削減するなどと
いうアプローチは全くナンセンスだからです。
単一現場の物流改善レベルではなく、サプライ
チェーンの複数段階に影響を及ぼす改革を進めよ
うとすると、全体の効率アップと引き替えにマイ
ナスの影響を受ける部分も出てきます。 そこで営
業や製造など他部門と調整を図り、会社としての
全体最適を目指す役割が物流部門、あるいはロジ
スティクス部門やSCM部門に期待されています。
部門を越えた利害関係を調整するには、物流コ
ストの全体像を把握しておく必要があります。 そ
れができていないと施策の実施によるメリットと
デメリットを算出できません。 しかし、物流コス
トの全体像を正確に把握できている企業は多くは
ありません。 この問題を乗り越えるには、次の三
つの切り口からアプローチするのが効果的です。
第一の切り口は物流費を支払形態別に、支払物
流費と自家物流費に分けて把握する方法です。 支
44.03 9.34 2.99 0.55 0.37 0.46 ── 57.75
7.26 1.51 ── 0.41 0.55 0.53 5.08 15.34
3.79 0.89 ── 0.38 0.06 0.03 ── 5.15
9.74 2.04 ── 2.94 0.48 0.15 ── 15.36
3.37 0.43 ── 1.94 0.42 0.25 ── 6.41
68.19 14.22 2.99 6.22 1.88 1.42 5.08 100%
●通常、有価証券報告書に記載されている「物流コスト」は、図の赤字枠の一部のみで、機能別・支払形態別明細は不明
支払形態別
図表2 荷主企業における物流コストの構造
輸送費
保管費
包装費
荷役費
物流管理費
合計
支払物流費(85.4%) 自家物流費(14.6%)
合計
対事業者対子会社みなし物流費物流人件費物流施設費減価償却費在庫費用
資本コスト、
陳腐化費用
等(在庫金
額×10%)
建物、施設、
車両等の減
価償却費、
リース料
建物、施設、
車両等の運
用・維持経
費
運転者、セ
ンター要員、
事務員等
仕入れ価格
に含まれる
支払運賃
物流子会
社への支払
運賃等
支払運賃、
保管料等
機能別
出典:2012JILS 物流コスト調査より
DECEMBER 2013 28
握して関連する経費の按分を行います。
調達物流費については、商慣習上、仕入れまた
は原材料費に含まれていることが多いため、調達
先に聞き取り調査を行ったり、自社の実績から想
定したりするなどして、おおよその比率を想定し
て活用することになります。 また最近では、顧客
へ配送したトラックの帰りのスペースを有効活用
するために、帰りに調達先に引き取りに寄るケー
スも増えています。 その場合はトラックの物流費
を販売と調達に按分する必要があります。
以上の三つの切り口を活用して、一〇〇%とは
言えないまでも物流費の全体像に迫ることができ
ると、社内のモノの動きとコストをひも付けるこ
とが可能になります。 物量と金額をひも付ければ、
各拠点や営業部のケース当たりの保管料、単位数
量当たりの輸送費を比較できます。 さらには数値
の変動を時系列で比較することでさまざまな分析
が可能となり、問題点の発見と改善策の検討に役
立ちます。
物流コストの全体像を把握していれば、売上高
物流コスト比率は社内の営業所間、事業部間のパ
フォーマンスを測る重要な指標の一つとして有効
に機能します。 前年対比や予算管理のツールに利
用できます。 しかし、それだけでは十分とは言え
ません。 予算をクリアしたからと言って、本当に
目指すべき水準を達成できているのかは判断でき
ません。 やはり、社内だけを見ていても限界があ
るのです。
皆さんが経営者の立場にあったらどうでしょう。
物流コストは一般的なメーカーで売上高の五%以
上を占める大きな費用項目です。 その妥当性や効
率性を判断するモノサシがどうしても欲しいはず
書を機能別に整理するところから始めます。 請求
書は特に依頼しなければ発生場所単位で発行され
るだけですから、物流コスト管理の観点からどの
ような区分で請求書を発行してもらうのが良いか、
物流事業者と相談してみるといいでしょう。
自家物流費についても地道に機能別に洗い出す
作業を行います。 保管と荷役など複数の機能に及
んでいる費目については、投入時間や稼働状況に
より按分します。
そして第三の切り口はサプライチェーンにおけ
る位置、つまり調達・生産・販売・返品等の領域
別に把握する方法です。 販売物流費については、
おおよそ把握できている企業が多いと思います。
しかし、商物一致の卸売企業等では、営業担当
者が物流も担うケースがあります。 その場合、営
業担当者への同乗調査やアンケート調査を実施し、
物流関連の業務時間と営業その他の業務時間を把
払物流費は物流事業者や物流子会社に対する運賃
や保管料等がメーンになります。 一方、自家物流
費には物流部門の直接雇用の人件費、工場内の倉
庫等の自社所有の物流関連の施設費・減価償却費
および在庫費用があります。
自家物流費をあぶり出す
物流会計の西澤脩先生は「物流氷山説」を提
唱されて、物流コストを氷山に例え、その水面下
に隠れている、つまり把握できていないコストが
通常考えられている以上に大きいことに警鐘を鳴
らしました。 この水面下に隠れているコストこそが、
自家物流費です。
自家物流費は、社内のどこで・いくら・どのよ
うな費目で発生しているか、さらにそれらのうち
物流費に算入すべき割合がどれくらいかはっきり
しません。 例えばメーカーの工場に隣接している
物流センターにおいて、全体の水道光熱費や人件
費のうち、どの部分が物流コストだとはっきり言
い切れる企業はどれだけあるでしょうか。
あるいは生産ラインの最後で製品が完成してか
ら仮置き場への移動や保管等に掛かっている費用
はどのように考えればいいでしょう。 部門間の境
界線を明確にする地道な作業を続けていかないと、
氷山の全体像を解明することはできないのです(図
表3)。
物流コストの全体像を把握するための第二の切
り口は機能別のアプローチです。 つまり、輸送・
保管・包装・荷役・物流管理ごとに掛かった費用
を把握するのです。 この切り口は第一の切り口と
併用して活用します。
支払物流費については、物流事業者からの請求
図表3 工場内物流コストの切り分け(例)
? ? ? ?
生産ライン
工場DC
積込積込
仮置き
仮置き
概要
●従来、工場内の物流コストは製造原価に分類していた。
●物流部が全体最適の観点から業務を設計しようとしても、工場管轄の
物流については手が付けられなかった。
●そこで、工場のラインを出た時点以降のコストを最適化すべく、管理会
計としての物流コストの再定義を行った。
●製造と物流の線引きをどこで行うかを決める
←どこで引くのが全体最適を目指しやすいか?
例)生産ラインの最終作業者が兼務できる程度か、別途構内物流専任
者が必要か、またその専任者の稼働率はどの程度か?
物流コスト把握のポイント
29 DECEMBER 2013
特 集
三つ目のポイントとして触れたように、事業領域
があまりに多岐にわたる企業は比較対象に選ばな
い方が賢明です。 補正が複雑になり過ぎて、使用
に耐えるレベルにならないことが多いからです。
反対に、事業が特定部門に集中している企業はベ
ンチマーキングに最適と言えるでしょう。
補正方法の二つ目として、物流サービスレベル
全般の違いについて考慮する必要があります。 例
えば、そのメーカーの配送先は卸や販社までか、
それとも小売りまで配送する必要があるのか、同
じ小売りでもセンターまでか、あるいは各店舗ま
でか等の違いで当然、物流コストに影響が出ます。
さらには受注してから顧客に配送するまでのリー
ドタイムや配送ロットや時間指定等の納品条件の
差も確認します。
第三に、物流に対する方針や組織体制について
も考慮すべきです。 物流を自社で運営している比
率が高いのか、それともアウトソーシングしてい
る率が高いのかは重要なポイントです。 アウトソ
ーシングの比率が高いほど、財務諸表上の物流コ
ストは数字が大きくなり、物流コスト比率も高く
なるからです。
以上三つの視点を中心に、他社の数値を補正し
ます。 例えば、ライバルA社の商品は当社と同じ
くらいの大きさだが金額が二割高いという場合は、
A社の売上高物流コスト比率を二割増やして比較
する必要があります。 また、B社は当社にない事
業部門の売り上げが半分含まれていて、その事業
部門の商品は金額当たりの重量(容積)がだいた
い当社の半分ぐらいかな、と考えていきます。
大雑把過ぎるように感じるかもしれませんが、
筆者のこれまでの経験から言えば、各社の物流担
数値を補正する
売上高物流コスト比率は指標の構成要素や対象
範囲に問題があり、精緻な比較には耐えないこと
は事実です。 しかし、使い道はあります。 あくま
でもベンチマーキングとして、あるべき姿に到達
するための目標、道しるべとして使うのです。
そのためには次のポイントを押さえることが重
要です。 ?ザックリとしたイメージでとらえる、
?目標として前向きに活用する、?あまり多くの
事業を展開している企業との比較は避ける──の
三点です。 この方針に基づいて数値を補正して使
う限り、売上高物流コスト比率は十分に価値のあ
る指標になり得ます。
それでは、補正のやり方を見ていきましょう。
第一に「重量・容積に対する商品単価の違い」を
考慮することです。 物流コストに大きく影響を与
える項目である商品の大きさと商品単価の関係に
ついて自社と比較します。
その際、事業や商品構成の違いに着目する必要
があります。 複数の事業部門から構成される大企
業の場合、同業他社と言っても事業部門の種類や
構成比率まで同じことはほとんどありません。 従
って、小さくて高額な商品群やその逆のかさばっ
て安い商品群の有無とその構成比率の差異をイメ
ージし、指標を補正する必要があります。
冒頭の花王とライオンの比較を例に取ると、花
王には小さくて高額な化粧品部門があるものの、
その一方でかさばるおむつや重い洗剤などの商品
の比重が大きいため、ライオンと比較して売上高
物流コスト比率を押し上げている可能性があります。
また、売上高物流コスト比率を利用する上での
です。 その点、売上高物流コスト比率は、数字を
そのまま他社と比較するのは問題があるとはいえ、
使い勝手の良さ、分かりやすさは魅力的です。
そこで、「売上高物流コスト比率なんて社内の
比較では使えたとしても、その他の使い道はやっ
ぱり想像がつかない」と懐疑的になるのをぐっと
こらえて、どうやったら使えるのか、前向きに考
えてみましょう。
まず手始めに、売上高物流コスト比率(%)の
算出式を見てみましょう。 公表されている「物流
コスト」÷売上高×一〇〇ですね。 この指標を下
げるには、次の四つの方策が考えられます。
?物流コストを下げる。
?売上高の増加比率より物流コストの増加比率
を抑える。
?売上高の減少比率より物流コストの減少比率
を増やす。
?売上高を増やす。
このうち?から?までは、物流部門の努力の範
疇に見えますが、「?売上高を増やす」はいかが
なものでしょう。 売上高物流コスト比率は、同じ
コストでも売上高により変動してしまいます。 同
じ商品を営業が高く売ったり、同じような大きさ
の商品でも価格の高い商品が増えれば、指標を下
げることができるのです。
下がるならいいのですが、残念ながらその逆の
ケースの方が多いのが実態です。 そうなると、い
くら物流部門が頑張って物流コストを削減しても、
販売単価が安くなったり、商品構成が変わったり
すれば成果が見えなくなってしまう。 物流マネー
ジャーの多くが売上高物流コスト比率を信用しな
いのはそのためです。
DECEMBER 2013 30
当者の“業界の土地勘”をベースにした補正は相
当に正確で十分に機能します。
さらなるレベルアップのために
マネジメントの基本の一つに、「測定できないも
のは管理できない」という原則があります。 完璧
な物流コストに関連する指標がない限り、可能な
範囲で補正を行い、目的を限定して公開情報から
得られる売上高物流コスト比率を使ってみてはい
かがでしょうか。
繰り返しますが、その際の活用方針は、「ザッ
クリとしたイメージでとらえ、目標として前向き
に活用すること」です。 ここを押さえれば、今ま
であまり活用しきれていなかった売上高物流コス
ト比率を十分に使いこなすことができるはずです。
最後に、今後の物流コスト管理の進め方として、
自社の物流コストの把握範囲を拡大して、さらな
る管理精度の向上を図る切り口を紹介します。
第一は「支払物流費から自家物流費へ」です。
自家物流費の把握はハードルが高くてもチャレン
ジするだけの価値はあります。 その際にはJIL
Sのフォーマットを活用することをお勧めします。
第二に、「販売物流費から社内・調達物流費へ」
です。 メーカーであれば生産部門、営業部門との
境目で発生している物流コストに大きな改善の余
地が眠っていることがよくあります。
そして第三に、「単位当たり(例:?当たり、
ケース当たり)物流コストの把握および活用へ」
です。 人間は金額や数量の場合、数字が大きくな
ると問題点が見えなくなってしまいます。 単位当
たりの物流コストに直すことにより、異常値に気
付きやすくなります。
JILSが1993年より毎年実施している物流コストに関す
る調査。 通商産業省(現経済産業省)作成の『物流コス
ト算定活用マニュアル』に準拠した回答表を基に、企業
各社の物流コスト(ミクロコスト)を集計し、業種業界別の
ベンチマークデータを提供しています。 この調査の良いと
ころは、支払い物流費だけでなく全ての物流コストを対
象にしている日本で唯一の調査であること、そして物流
コストの削減策も調査しており具体的な改善事例も知る
ことができる点です。
本誌で今回特集している公開情報から得られる売上高
物流コスト比率を押さえた上で、業界レベルの各費目単
位の比率などの詳細データを比較検討する材料として、
JILSの調査を組み合わせて活用するのが良いでしょう。
さらに、「?当たり物流コスト」も算出されているので、
他業種とも比較がしやすい点もメリットとして挙げられま
す。 ?単位がイメージしにくい場合は、ケース換算や㎥換
算するとよいでしょう。
この数値はサプライチェーン改革のベンチマーキング指
標としての活用が期待できます。 例えば、1拠点からトラ
ックで全国配送している?当たり物流コストが40円の企
業が、30円の他業界の水準を目指そうとし
てサプライチェーンの構造を調べてみるとし
ましょう。
この企業の幹線輸送費は、単価10万円の
10t車で行っているとすると、?当たりに
換算するとちょうど10円です。 ベンチマー
キングにより、?当たり物流コストが30円
の業界は、国内の拠点間の配送に船を活用
しており、さらに、20円の業界は国内の各
地方ごとに生産拠点を持っており、地方を
越えた配送を行っていませんでした。 この
ケースで物流コストを抜本的に見直すには、
幹線輸送モードか製品供給体制の見直しが
選択肢になるということが分かります。
なお、調査回答者には物流コスト報告書
が無料でもらえる特典もあります。 2013
年度調査も現在受付中ですから(締切12月
13日、問い合わせ先:JILS総研・久保田氏)、
この機会を利用して、自社の物流コストの
全体像を洗い出してみてはいかがでしょう。
「JILS物流コスト調査」を活用する
全産業(N=96)
製造業
食品(要冷・常温)(N=26)
繊維(N=2)
紙・パルプ(N=5)
プラスチック・ゴム(N=3)
石鹸・洗剤・塗料(N=3)
その他化学工業(N=8)
窯業・土石・ガラス・セメント(N=2)
鉄鋼(N=5)
非鉄金属(N=2)
金属製品(N=2)
一般機器(N=2)
電気機器(N=9)
精密機器(N=3)
物流用機器(N=2)
輸送用機器(N=3)
卸売業
卸売業(食品飲料系)(N=3)
その他卸売業(N=4)
小売業
小売業(量販店)(N=3)
重量当たり物流コスト
(2012 年度)
過去8カ年の平均
(単位:千円/トン)
=(円/ Kg)
(C)日本ロジスティクスシステム協会,2013
重量当たり物流コスト(業種小分類別)
61.8
27.4
77.2
22.8
41.2
41.7
19.6
13.4
9.7
19.5
98.5
25.0
107.4
296.1
106.9
28.7
7.4
50.0
320.5
|