2013年12月号
ケース

NTTロジスコ 現場改善 物流センターの生産性向上にTPS導入啓蒙・定着を経て独自の取り組みに進化

DECEMBER 2013  70 専任スタッフを十二人配置  NTTロジスコは全国一六カ所に物流セン ターを展開し、オペレーションを担当する子 会社のNTTロジスコサービスと一体で事業 を運営している。
NTTロジスコの全国一〇 支店の支店長がそれぞれ担当エリアのNTT ロジスコサービスのセンター長を兼務する体制 を取っている。
 NTTロジスコは二〇〇八年九月から、物 流センター業務の品質改善や生産性向上を図 るために、TPS(トヨタ生産方式)を採り 入れた「品質・2S改善活動」にグループを 挙げて取り組んできた。
 開始当初は外部コンサルタントを活用した プロジェクト形式による活動だった。
各セン ターから参加したプロジェクトメンバーがコン サルタントの指導を受け、「千葉物流センタ」 をモデルにまず「整理」「整頓」の「2S」活 動を学び、その体験を基にそれぞれの拠点で 活動を立ち上げる形で、一年を掛けて全セン ターに展開した。
 二年目からは同様のやり方で「現状把握」 「問題点の抽出」「データ収集」「対策立案」と いう改善活動のプロセスを実地で学んだ。
各 センターに「改善チーム」を設けて、それぞ れテーマを決めて活動に取り組んだ。
業務部 の「業務推進担当品質向上チーム」のメンバ ーがコンサルタントと共にセンターを回って現 地の活動を支援した。
 品質・2S改善担当の吉田啓之課長は「こ こまでは現場にTPSの概念の浸透を図るス テップで、(品質向上チームの)メンバーにと っては現場へ同行するコンサルタントからノ ウハウを吸収する過程でもあった」と位置付 ける。
 この段階を経て、NTTロジスコグループ は一二年四月に物流センターの安全・品質改 善や収支改善のツールとしてTPSを正式に 導入し、TPSにのっとった本格的な改善活 動をスタートした。
 センターの設計や収支管理などを担うNT Tロジスコサービスの「LE(ロジスティク ス・エンジニアリング)部門」に専任の「品 質・2S改善担当」を設けて、コンサルタン トに頼らず主体的にセンターの活動を支援で きる体制を整えた。
 それから一年後の今年四月、NTTロジス コグループはセンターの改善活動にTPSが ほぼ定着したと判断し、TPSを物流会社の 業務実態にあった内容に改めて、グループの オリジナルな改善活動「LGPS(Logi sco Production Syst  物流センターの生産性向上を目的に、グルー プでトヨタ生産方式(TPS)に基づく「2S改善 活動」に取り組んできた。
専任部署を設けてス キルを蓄積。
活動が定着してきたことから、今 年4月にはTPSを物流会社向けにカスタマイズし て、グループのオリジナルな改善活動に進化させ る方針を打ち出した。
現場改善 NTTロジスコ 物流センターの生産性向上にTPS導入 啓蒙・定着を経て独自の取り組みに進化 品質・2S改善担当 吉田啓之課長 71  DECEMBER 2013 em)」に進化させる方針を打ち出した。
 これ以降、NTTロジスコの中川雅行社長 が自ら物流センターを視察して指導を行うな ど、トップレベルのテーマとして改善活動に 臨んでいる。
改善担当のスタッフの数も大幅 に増やし推進体制を強化した。
現在はセンタ ーを定期的に巡回するメンバーが六人、これ 以外に特定のセンターに常駐して活動を支援 するメンバーなど総勢十二人の体制だ。
 活動の成果については、半期に一度の「物 流センタ改善報告会」で評価を行う。
「LE 部門」の課長クラスが審査員を務め、各セン ターの選抜チームの中から上位五チームを選 ぶ。
 審査では改善活動に「一個流し」「多能工 化」「平準化」「後工程引き取り」といったTP Sの主要な要素をどれだけ採り入れているか、 正しいプロセスを踏んでいるかについて厳し くチェックする。
これらの要件を満たした上 で、改善による成果を具体的な数値で示せた かどうかが上位チームに選ばれるための決め 手となる。
これに発表内容を加味して最終の 評価が決まる。
日常の提案にインセンティブも  通算で七回目となる今年九月の報告会に は一六センターから二三のチームが参加した。
今回の報告会で表彰されたチームの中から、 二位にランクインした「小牧物流センタ」の チームの取り組みを以下に紹介する。
 小牧物流センタは一一年五月に稼働した新 しい拠点だ。
四階建てで倉庫面積は五二〇〇 坪。
東海支店の管轄下にあり、医療機器な どグループ外の一般貨物をメーンに扱ってい る。
 NTTロジスコは近年、一般貨物の拡大に 力を注いでおり、その売り上げ構成比は四割 に迫る。
中でも医療機器や化粧品など薬事法 による規制対象の商品は、IT機器・精密機 器、通販商品と並ぶ一般貨物事業の主力分野 で顧客の数も多い。
 医療関連分野に参入したのは一〇年ほど前。
〇五年四月の改正薬事法施行後は、規制対 象商品の物流業務受託に必要な包装・表示・ 製造業などの許可を各地の拠点で積極的に取 得し、業容拡大を図ってきた。
これまでに六 カ所の物流センターで各種のライセンスを取得 している。
 小牧物流センタでは薬事法対象の四分野の うち医療機器・医薬部外品・化粧品の三分 野で包装・表示・製造業許可を取得している。
このうち医療機器は、不具合が生じた場合の 人体に対するリスクに応じて四つのクラスに 分類され、業許可も分かれる。
小牧物流セン タはこの分類で、ガーゼや包帯などリスクの 少ない「クラス?」と、最もリスクの高い高 度管理医療機器の「クラス?」の業許可を持 つ。
さらにクラス?については、薬事法にの っとり出荷判定の後の商品を保管する際に必 要な高度管理医療機器販売業・賃貸業の許 可も取得している。
 小牧物流センタの改善活動はパート社員を 含む六〜七人のチームで週に一度行う。
改善 チームの活動以外でも、パート社員の日常的 な改善提案に対し、件数や効果に応じて給与 にインセンティブを付与する制度を設け、活 動の輪を広げている。
 NTTロジスコサービス小牧物流センタ長 を兼務するNTTロジスコ東海支店の牧道徳 支店長は「提案された内容については必ず回 答することを心掛けている。
改善意欲を引き 出し持続させるために社員へのフィードバッ クは重要だ」と強調する。
 改善活動の対象は荷主二社の医療機器(ク ラス?)、化粧品、医薬部外品のオペレーシ ョン。
いずれも輸入品で、コンテナが小牧 物流センタに到着した後のデバンニング・検 品・入出庫・ピッキング・梱包などの通常の 物流業務のほか、薬事法に基づいた製造業と してのラベル表示や外観のチェックなどの出 荷判定業務を含む。
 九月の報告会で小牧が高い評価を得た理由 の一つは?改善の継続性?にあった。
審査員 NTTロジスコ東海支店 牧道徳支店長 を務めた吉田課長は「半期ごとの完結型の活 動ではなく、毎回?残課題?を意識して次の ステージで最優先して取り組み、そこから新 たな改善のテーマを見つけている。
改善が途 切れないから効果も分かりやすい」と評価す る。
 前回の第六ステージでは作業の標準化をテ ーマに入荷業務の改善に取り組んだ。
 小牧物流センタでは商品コード・製造ロッ ト番号による入出庫・在庫管理を実施するた め、デバンニング後、商品コード・製造ロッ ト番号別にパレットへ積み付けて入庫してい る。
入庫作業をスムーズに行うためパレット には入荷予定情報を基に作成した「搬送指示 看板」を貼付する。
 この「看板」に「パレットへの積み付けパ ターン」を追加表示したのが前回の改善点の 一つだ。
WMSでは商品ごとに一パレット分 のケース数が設定されている。
その数をパレ ットに積む際の正しい積み方を看板に明示し た。
作業者が迷ったり、人によって積み方が まちまちになることを防ぐためだ。
 また外箱の破損状況を検査して出荷判定 を行う際の?不良判定基準の見える化?も図 った。
荷主との間では、箱の角の凹みがどの 程度なら不良品になるかといった出荷判定基 準について、具体的な数字で取り決めている。
だが箱の状態によっては作業者が判断に迷う ケースもある。
その都度、リーダーに相談し ていると生産性が落ちる。
そこで不良品と判 でアイテム数やケース数によってコンテナ一本 当たりの作業時間がどのように変わるかとい うデータ分析を行っていた。
そのデータを算 出に利用した」と説明する。
 入荷業務の平準化ではこれ以外に、パレッ トへの積み付け・検品・入庫の各工程を分析 して、それぞれの作業が三割まで進捗した段 階で次の工程を開始し、並行して作業を進め るという改善も実施している。
ビデオ映像を基に作業分析  この積み残し課題とともに第七ステージで 新たに取り組んだのは出荷業務の改善だ。
ビ デオ撮影した映像を基に作業のチャート分析 を行うソフトを新たに導入、一つ一つの作業 工程に要する時間を計測して問題点の抽出を 行った。
 この手法による成果の一つがバラ出荷品の 梱包作業の改善だ。
ビデオ分析の結果、?ピ ッキングの済んだオリコンを梱包作業台にセ ッティングし、?梱包資材を取り出して組み 立て、?商品と緩衝材を中に入れて梱包する ──という各工程で、梱包資材や緩衝材の配 置の悪さから無駄な作業動作が発生している ことが分かった。
 資材が作業台に向かう人の後ろ側にあるた め振り向いて資材を取らなければならない。
緩 衝材を取るにも移動が必要で、しかも緩衝材 自体がオリコンをセッティングする動線の障害 になっていた。
定される破損状態の現物を作業場に掲示して、 一目で判断できるようにした。
 これに続く今回の第七ステージでは、入荷 業務改善の残課題となっていた?平準化?に 挑んだ。
 入荷コンテナの本数が曜日によってまちま ちで、多い日は作業者の早出残業で対応しな ければならなかった。
この問題を荷主へ相談 したところ、荷主側で海外からのコンテナ輸 送のスケジュール調整が可能なことが分かっ た。
そこで作業がオーバーフローしない基準 の数量を定め、入荷本数が基準を上回る場合 はなるべく少ない曜日に入荷日をシフトして もらうことにした。
 ただしデバンニングや検品の作業時間はコ ンテナの中身によって異なり、商品のアイテ ム数が多いほど時間が掛かる。
このため事前 にインボイスの情報を入手して入荷数量をア イテム別に把握し、これを基に作業時間を算 出、毎日の作業量を平準化できるよう入荷コ ンテナの曜日別の割り振りを行った。
 NTTロジスコサービス小牧物流センタの 大江宏輔グループリーダは「過去の改善活動 DECEMBER 2013  72 NTTロジスコサービス小牧物 流センタの大江宏輔グループ リーダ たるS・A物品のケースピッキングが半径一 五メートル圏内で可能になった。
 ケース保管エリアからバラ保管エリアへの補 充の動線も見直した。
同センターではバラ保 管エリアに対し出荷分だけ補充する方法を採 っており、デイリーにケース保管エリアから の補充作業が発生する。
ケース保管エリアは 一〜四階に分散し各階から二階のバラ保管エ リアへ補充する。
 二階には出荷場があるためS・A物品を中 心に保管している。
しかし、ケース単位の出 荷頻度に基づいてS・A物品に区分されたア イテムが、バラ出荷の頻度も高いとは限らな い。
バラで出荷するものはむしろケースでの 出荷頻度が低い。
 このため従来は一、三、四階から二階への 補充が多く非効率だった。
そこで補充頻度の ランク付けを行い、高頻度の商品については バラ保管エリアのロケーションの近くに補充用 の保管棚を設け最短の動線で補充できるよう にした。
次は品質向上に力点  ケースピッキングする際の無駄な積み替え作 業も改善した。
多品種少量化によって重量や 形状の異なるものを少量ずつパレット上にピ ッキングするケースが増え、ピッキングした後 で荷姿を安定させるために積み替え作業が発 生していた。
これを解消するために重量・形 状を分析してカテゴリーに分け、重いもの・ 形状の安定したものから順にピッキングする 配置になるよう保管エリアを設定し直した。
 バラエリアで重量品が上段に保管されてい たり、棚板との隙間がないためピッキング時 に箱を引き出さなければならない問題も改善 した。
データ分析によって重量品の保管に必 要な間口数を割り出し下段にロケーションを 固定、下段の棚板の位置を上げて箱を引き出 さずに作業ができるようにした。
 小牧物流センタでは今年四月に荷主がBC P(事業継続計画)対応で在庫を東西二拠点 へ分散化し、これに伴い小牧の出荷量が大幅 に減少する見込みになった。
数量が減っても アイテム数は変わらず、むしろ出荷が多品種 少量化する傾向にあるため、収支の悪化が懸 念された。
こうした背景から今回の改善活動 では大きな目標を掲げて課題に取り組んだ。
 牧支店長は「活動の成果で何とか生産性の 悪化を避けることができた。
今後もさらにセ ンター全体のレベルアップを図る」と意欲を示 す。
次のステージではWMSの改修、荷主別 業務エリアの見直し、スキル評価に基づく多 能工化の推進などを新たな課題に取り組む。
 LGPSへ進化させるためにNTTロジス コグループは今後の2S改善活動で品質向上 に力点を置く。
吉田課長は「作業の手順書が 作業者一人一人に十分浸透しているかまで踏 み込む。
品質の向上が収支の安定につながる よう体制を強化したい」と話している。
(フリージャーナリスト・内田三知代)  改善策として作業台の前面に資材や緩衝材 を置く棚を設け、作業台に向かったまま定位 置で作業を完結できるようにした。
これで作 業の停滞がなくなり生産性が向上した。
棚板 の位置は作業者の背丈に合わせて上下にずら したり奥行きを調整できるよう工夫。
誰もが 作業を行える環境をつくり、業務の標準化と 合わせて「多能工化」を実現した。
 ピッキングや補充の動線も改善した。
まず 同センターで「S・A物品」とランク付けし ている出荷頻度の高い商品のケース保管エリ アを見直し、最短の動線でピッキングできる よう再配置した。
その結果、全体の七割に当 73  DECEMBER 2013 バラ出荷品の梱包作業を改善 変更前変更後 ●振り向き作業が発生する資 材レイアウト ●使用量に見合わない資材の 過剰保管 ●緩衝材が2 種類あるため、 オーダー品の移動動線をふさ ぎ歩行を長くする ●梱包箱を前面配置、振り向 き作業を排除 ●梱包箱の使用量を分析し必 要数に絞る ●緩衝材2種を前面上部から 使用できるように配置

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