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65　　DECEMBER 2013 　「物流とは何か？」という素朴な疑 問に日通総合研究所の山田健取締役 がやさしく答えてくれる。
　我々人間社会にとって物流は不可欠 なものであることは言うまでもない。
しかし身近過ぎるゆえに関心が薄れて いることは否めないのではないだろう か。
本書では輸送・保管・荷役とい った一般的に知られている物流の基本 機能を始点に、物流改善や生産性の向 上、コスト管理に至る物流管理を分か りやすく解説していく。
　学術書のような原則・原理に終始す るのではなく、「現場で役に立つ」こ とを主眼とした著者の実務体験を踏ま えた内容・解説は、物流初心者や学生 だけでなく、ＩＴ産業や金融といった 異業種のビジネスマン向け入門書、ま た物流に長く携わっているベテランの 復習用としても活用できる。
　専門用語をかみ砕き、各テーマの要 点を簡潔に提示。
著者の体験に基づく 　大手ゼネコンの清水建設が、物流施 設の投資開発事業に注力している。
建 設請負に加え、用地取得や開発計画 作成なども積極的に手掛けるのが特徴 だ。
二〇一四年三月には圏央道延伸で 物流拠点候補地として注目が高まって いる埼玉県久喜市に自社開発物件が 完成する予定。
ネット通販の隆盛や投 資対象としての存在感の高まりを考慮 し、開発のアクセルを踏み込む構えだ。
　同社は〇二年設立の投資開発本部 が旗振り役となり、一〇〇〇億円の 投資枠を設定してオフィスビルや商業 施設などの案件を展開。
同本部の鷲見 晴彦プロジェクト推進二部長は「優良 資産は長期保有を視野に入れつつ、基 本的には竣工から数年以内に外部へ売 却し、次なる開発の資金に充てていく。
実例やコラムを織り交ぜながら、イメ ージしやすい写真、イラスト、作表な どを適宜使用しているのも特徴と言え るだろう。
　輸送ではトラック、船舶、鉄道、航 空機に分類し、トラックや船舶などの 種類から始まり、それぞれの仕組みや 特徴、課題について詳しく解説してい る。
　保管では在庫とキャッシュフローの 関係、保管手段である倉庫の種類、料 金体系と実数を用いた倉庫料金の計 算、また倉庫に関わる問題についても 触れている。
現在活況を呈している物 流センターでは機能や立地におけるポ イント、荷役ではフォークリフトの種 類にまでさかのぼる。
　今さら人には聞けないことをしっか り把握している点に、著者の物流業界 での豊富な経験と造詣の深さ、そして 読者の視点に立った細かい配慮にその 人柄を感じずにはいられない。
　「海外への生産シフトがいかに進ん でも、物流自体はなくならない」と 著者は言う。
時代や国が変わろうとも、 モノがなくなることは未来永劫あり得 ない。
経済ひいては社会の根幹を成す 重要な要素の一つとして、これからも 物流の存在はよりクローズアップされ ていくであろうと感じさせられる一冊 だ。
　　　　　　　　　　　 （鳥羽） 自社開発のほか、ＳＰＣへの出資や共 同事業などケースは多様だ」と説明す る。
〇四〜〇五年頃からはポートフォ リオに物流施設を加え、首都圏などで 開発を進めてきた。
　物流施設の開発強化の第一弾とな るのが、久喜市の「エスロジ久喜」だ。
清水建設が造成に参加している工業団 地の一角で用地を確保し、味の素物流 向け施設として開発。
地上三階建てで、 延べ床面積は約三万三〇〇〇平方メ ートルに上る。
　環境技術開発に熱心なゼネコンらし く、施設周辺にさまざまな生物が生息 できるビオトープを整備するなど、ユ ニークな取り組みも計画している。
同 本部の渡邉哲郎課長は「土木事業のノ ウハウや資金力などを持ち合わせてい るプレーヤーはそう多くない。
そこが 一つの我々らしいビジネスモデルかな と考えている」と指摘する。
　国内の物流施設開発は、市場開拓 をリードしてきた外資系プレーヤーや 国内の大手不動産、住宅メーカーなど に加え、財閥系の三井不動産や三菱地 所の参入で競争が激しさを増している。
鷲見部長は「分厚い営業ネットワーク を通じて集まる情報を活用し、ゼネコ ン独自の総合力を発揮する。
数ありき ではなく着実に開発実績を増やしてい きたい」と意気込んでいる。
（藤原） 初心者からベテランまで役立つ物流知識が満載 日通総研・山田健取締役が基礎から徹底解説 清水建設が物流施設の投資開発事業を加速 二〇一四年に埼玉・久喜で新倉庫が稼働 『すらすら物流管理』　山田健 二四〇〇円（税別）中央経済社 「エスロジ久喜」の完成予想図