2023年4月号
特集
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アイディーテンジャパン 日本酒を小口空輸の越境ECで世界に届ける
“届ける”までがブランディング
アイディーテンジャパン(id10 japan)は、日本の地域産品の海外向けブランディングを手掛けている。
創業者の澤田且成CEOは、市場リサーチ会社での30カ国にのぼる現地調査と、オランダ、カナダ、中国などでの海外生活を経験した。
その知見を生かして「日本の魅力を世界に伝えるブランディングに取り組みたい」と、2008年に同社を設立した。
市場調査の結果、海外の購買者たちは一様に日本の伝統的な職人技に魅了されていたことから、まずは伝統工芸品をブランディングの対象に選んだ。
15年〜16年に経済産業省のプロジェクトに参画、伝統工芸品の魅力を海外に伝えるストーリーブックを作成した。
150カ所以上の在外公館に配布され、ラグジュアリーブランドから追加送付を依頼されるなど高い評価を得た。
それと同時に、「ストーリーブックに掲載されている商品はどこで買えるのか」といった問い合わせが相次いだことから、ブランディングの先にある“届ける”というミッションを意識するようになった。
しかし、“届ける”には数多くのハードルがあった。
伝統工芸品は多様な素材が用いられており、輸出のたびに煩雑な申請手続きが発生する。
サイズや形状の違いも大きく、様々な梱包材を用意する必要がある。
しかし、リピート購入を期待できる商品ではないので、手間の割には収益性が低い。
そこで注目したのが日本酒だった。
工芸品と異なり、純米酒は原材料が米・米こうじ・水のみなので、輸出時の申請はシンプルだ。
ボトルはサイズも形状も似通っており、共通の梱包材を使用できる。
嗜好品なので繰り返し購入が期待できる。
調べてみると日本酒もまた、海外の愛好者たちが入手に苦労していた。
酒類の輸入には煩雑かつ専門的な手続きが必要なため、海外のレストランや酒販店は、輸入事業者や日系商社に頼ることが多い。
しかし、日本酒は他の高級酒と比べると高額では売りにくいので、輸入事業者や商社は銘柄を絞り、船便で大口輸送して輸入コストを抑えている。
その結果、海外の試飲会やSNSでの投稿、日本旅行などで知った日本酒を買いたいという、草の根の消費者ニーズに応えられないケースが生じていた。
「届けるインフラがないのなら、自分たちで作る」と澤田CEOは決意して、18年に日本酒越境ECサービスの準備に乗り出した。
個人が手軽に日本酒を輸入できるように航空便で小口配送するには、船便に比べ高額な輸送コストが課題となる。
同社が採ったアプローチは、自社でECサイトを立ち上げ、注文があれば酒蔵から直接仕入れ、消費者に直接配送する、というものだった。
越境EC事業者、酒販店、商社兼配送事業者の3役をワンストップでこなすことで作業工数を削減し、コストの低減を図る。
そのために18年、輸出酒類卸売業免許と通信販売酒類小売業免許を取得した。
また、小口空輸時の破損を防ぐため、段ボールの設計士と3〜4カ月実験を繰り返し、専用の梱包材を開発した。
瓶が破損しやすいのは首の付け根に上下から負荷が掛かったときなので、瓶の底の下に空間を設けて衝撃を逃がす構造にした。
19年9月にはJETROの協力を得て、中南米やアフリカを含めた世界50カ国に配送実証を実施した。
いくらまでの購入額なら免税となるのか、どれくらいの重量までなら通関時に個人消費用として認められるのか、酒の輸入をめぐる制度は国ごとに異なるため、1〜2カ月かけて現地の物流会社とも直接連絡を取り合って情報を収集。
すべての受取人に対して1本も破損することなく常温配送することに成功した。
配送実証の成果を踏まえたブラッシュアップを経て21年5月、バイヤーなどに対象を絞ってサービスを先行提供し始めた。
海外での日本酒の普及活動や、酒のコンペティションに出品するため、少量の日本酒を短時間で輸入するニーズに応えるためのもので、現在までに累計数百件の受注があった。
そして23年1月31日、越境ECサイト「Japanpage:Sake」のベータ版を公開、一般消費者向けサービスを開始した。
取扱銘柄は国内外で受賞歴のある酒蔵の日本酒に絞っている。
それぞれの酒蔵に、輸出申請に必要となる情報を事前に登録してもらい、受注から短時間で出荷できる体制を整えた。
日本国内からの注文も受け付けており、その場合はトラックなどで輸送する。
空輸費削減に軽量の缶入り版を開発 ベータ版の公開と合わせて、新たな挑戦もスタートさせた。
缶入り日本酒のリリースだ。
空輸は重量が大きなコスト要因となる。
通常の四合瓶(720ミリリットル)は自重が1・3キログラム前後あるため、運賃の4割以上をボトルのために費やしている計算になる。
容器にアルミ缶を使えば総重量を大幅に軽くできる。
試しにフランスに内容量が同じ酒を、ボトルと缶の両方空輸したところ、缶の輸送コストはボトルの半額で済んだ。
重量以外にもアルミ缶には利点があった。
日本酒の劣化につながる紫外線を遮断できる。
円筒形なので、積み上げることで輸送スペースの利用効率も高まる。
さらに、開栓して中身を別のものに入れ替えてから再度栓をするという偽装がボトルに比べて難しく、真贋担保になる。
「中身の詰替は海外では実際に発生しており、酒類販売時に真贋担保を求められるケースもあるが、缶ならば容易に対応できる。
それに、米国では缶入りワインの市場が急拡大している。
ボトルでなければ日本酒の魅力は損なわれてしまうのだろうか、との疑問が浮かんだ」と澤田CEO。
独自のアルミ缶の開発に乗り出した。
酒蔵の協力を得て、取り扱い銘柄ごとにボトルのラベルデザインのエッセンスを盛り込み、各銘柄のアイデンティティを反映させながら、全体としての統一感も持たせ、ブランドイメージの確立を図った。
表記は日英両言語。
好みの味を選びやすいよう、甘口度や辛口度、淡麗度や濃厚度といった味チャートも載せた。
各銘柄の詳細情報や販売店情報を自社アプリに掲載し、缶から2次元コードでアクセスできるようにした。
現在は国内外で受賞歴のある酒蔵の21銘柄を、180ミリリットル入りのアルミ缶日本酒「KURA ONE」としてラインナップ化し、Japanpage:Sake上で販売している。
このサイズを選んだのは、複数の銘柄を少量ずつ飲み比べしたいという需要に対応しやすいから。
澤田CEOは「酒類を輸送コストが安価なEMSで送る場合、輸入が認められる重量上限は国ごとに異なるが、1キロ以下であれば認められる場合が多い。
180ミリ缶ならば飲み比べ用に4本詰め合わせでも送れる。
缶だから可能な、日本酒愛好者の裾野拡大策だ」と、意義を強調する。
KURA ONEは詰め合わせ販売と、「米の違いで味が変わる酒」など月ごとのテーマに合わせて3〜4本のセットを月額制で送るサブスクリプションサービスで提供していく。
1月末の発売以降、日本を含む10カ国ほどから注文が入っている。
受注件数は非公表だが、現時点では日本国内からのオーダーが多い。
一方、海外からは詰め合わせの注文が多い。
特に台湾からの受注が伸びている。
海外の現地販促パートナーの開拓を進めて、日本酒文化の浸透を目指す。
創業者の澤田且成CEOは、市場リサーチ会社での30カ国にのぼる現地調査と、オランダ、カナダ、中国などでの海外生活を経験した。
その知見を生かして「日本の魅力を世界に伝えるブランディングに取り組みたい」と、2008年に同社を設立した。
市場調査の結果、海外の購買者たちは一様に日本の伝統的な職人技に魅了されていたことから、まずは伝統工芸品をブランディングの対象に選んだ。
15年〜16年に経済産業省のプロジェクトに参画、伝統工芸品の魅力を海外に伝えるストーリーブックを作成した。
150カ所以上の在外公館に配布され、ラグジュアリーブランドから追加送付を依頼されるなど高い評価を得た。
それと同時に、「ストーリーブックに掲載されている商品はどこで買えるのか」といった問い合わせが相次いだことから、ブランディングの先にある“届ける”というミッションを意識するようになった。
しかし、“届ける”には数多くのハードルがあった。
伝統工芸品は多様な素材が用いられており、輸出のたびに煩雑な申請手続きが発生する。
サイズや形状の違いも大きく、様々な梱包材を用意する必要がある。
しかし、リピート購入を期待できる商品ではないので、手間の割には収益性が低い。
そこで注目したのが日本酒だった。
工芸品と異なり、純米酒は原材料が米・米こうじ・水のみなので、輸出時の申請はシンプルだ。
ボトルはサイズも形状も似通っており、共通の梱包材を使用できる。
嗜好品なので繰り返し購入が期待できる。
調べてみると日本酒もまた、海外の愛好者たちが入手に苦労していた。
酒類の輸入には煩雑かつ専門的な手続きが必要なため、海外のレストランや酒販店は、輸入事業者や日系商社に頼ることが多い。
しかし、日本酒は他の高級酒と比べると高額では売りにくいので、輸入事業者や商社は銘柄を絞り、船便で大口輸送して輸入コストを抑えている。
その結果、海外の試飲会やSNSでの投稿、日本旅行などで知った日本酒を買いたいという、草の根の消費者ニーズに応えられないケースが生じていた。
「届けるインフラがないのなら、自分たちで作る」と澤田CEOは決意して、18年に日本酒越境ECサービスの準備に乗り出した。
個人が手軽に日本酒を輸入できるように航空便で小口配送するには、船便に比べ高額な輸送コストが課題となる。
同社が採ったアプローチは、自社でECサイトを立ち上げ、注文があれば酒蔵から直接仕入れ、消費者に直接配送する、というものだった。
越境EC事業者、酒販店、商社兼配送事業者の3役をワンストップでこなすことで作業工数を削減し、コストの低減を図る。
そのために18年、輸出酒類卸売業免許と通信販売酒類小売業免許を取得した。
また、小口空輸時の破損を防ぐため、段ボールの設計士と3〜4カ月実験を繰り返し、専用の梱包材を開発した。
瓶が破損しやすいのは首の付け根に上下から負荷が掛かったときなので、瓶の底の下に空間を設けて衝撃を逃がす構造にした。
19年9月にはJETROの協力を得て、中南米やアフリカを含めた世界50カ国に配送実証を実施した。
いくらまでの購入額なら免税となるのか、どれくらいの重量までなら通関時に個人消費用として認められるのか、酒の輸入をめぐる制度は国ごとに異なるため、1〜2カ月かけて現地の物流会社とも直接連絡を取り合って情報を収集。
すべての受取人に対して1本も破損することなく常温配送することに成功した。
配送実証の成果を踏まえたブラッシュアップを経て21年5月、バイヤーなどに対象を絞ってサービスを先行提供し始めた。
海外での日本酒の普及活動や、酒のコンペティションに出品するため、少量の日本酒を短時間で輸入するニーズに応えるためのもので、現在までに累計数百件の受注があった。
そして23年1月31日、越境ECサイト「Japanpage:Sake」のベータ版を公開、一般消費者向けサービスを開始した。
取扱銘柄は国内外で受賞歴のある酒蔵の日本酒に絞っている。
それぞれの酒蔵に、輸出申請に必要となる情報を事前に登録してもらい、受注から短時間で出荷できる体制を整えた。
日本国内からの注文も受け付けており、その場合はトラックなどで輸送する。
空輸費削減に軽量の缶入り版を開発 ベータ版の公開と合わせて、新たな挑戦もスタートさせた。
缶入り日本酒のリリースだ。
空輸は重量が大きなコスト要因となる。
通常の四合瓶(720ミリリットル)は自重が1・3キログラム前後あるため、運賃の4割以上をボトルのために費やしている計算になる。
容器にアルミ缶を使えば総重量を大幅に軽くできる。
試しにフランスに内容量が同じ酒を、ボトルと缶の両方空輸したところ、缶の輸送コストはボトルの半額で済んだ。
重量以外にもアルミ缶には利点があった。
日本酒の劣化につながる紫外線を遮断できる。
円筒形なので、積み上げることで輸送スペースの利用効率も高まる。
さらに、開栓して中身を別のものに入れ替えてから再度栓をするという偽装がボトルに比べて難しく、真贋担保になる。
「中身の詰替は海外では実際に発生しており、酒類販売時に真贋担保を求められるケースもあるが、缶ならば容易に対応できる。
それに、米国では缶入りワインの市場が急拡大している。
ボトルでなければ日本酒の魅力は損なわれてしまうのだろうか、との疑問が浮かんだ」と澤田CEO。
独自のアルミ缶の開発に乗り出した。
酒蔵の協力を得て、取り扱い銘柄ごとにボトルのラベルデザインのエッセンスを盛り込み、各銘柄のアイデンティティを反映させながら、全体としての統一感も持たせ、ブランドイメージの確立を図った。
表記は日英両言語。
好みの味を選びやすいよう、甘口度や辛口度、淡麗度や濃厚度といった味チャートも載せた。
各銘柄の詳細情報や販売店情報を自社アプリに掲載し、缶から2次元コードでアクセスできるようにした。
現在は国内外で受賞歴のある酒蔵の21銘柄を、180ミリリットル入りのアルミ缶日本酒「KURA ONE」としてラインナップ化し、Japanpage:Sake上で販売している。
このサイズを選んだのは、複数の銘柄を少量ずつ飲み比べしたいという需要に対応しやすいから。
澤田CEOは「酒類を輸送コストが安価なEMSで送る場合、輸入が認められる重量上限は国ごとに異なるが、1キロ以下であれば認められる場合が多い。
180ミリ缶ならば飲み比べ用に4本詰め合わせでも送れる。
缶だから可能な、日本酒愛好者の裾野拡大策だ」と、意義を強調する。
KURA ONEは詰め合わせ販売と、「米の違いで味が変わる酒」など月ごとのテーマに合わせて3〜4本のセットを月額制で送るサブスクリプションサービスで提供していく。
1月末の発売以降、日本を含む10カ国ほどから注文が入っている。
受注件数は非公表だが、現時点では日本国内からのオーダーが多い。
一方、海外からは詰め合わせの注文が多い。
特に台湾からの受注が伸びている。
海外の現地販促パートナーの開拓を進めて、日本酒文化の浸透を目指す。
