2022年12月号
特集
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《海外論文》包括的アプローチによる外箱サイズの見直し
「持続可能な梱包ロジスティクス」
製品のパッケージングデザインは、それが及ぼす影響という観点から多面的に理解する必要がある。
さまざまなレベルの要件を満たした上で、製品の保護・販売・流通・環境などに起因する多種多様なニーズに応えなければならない。
多岐にわたる梱包の要件を理解することが重要であることは当然だが、それだけでは十分とは言えない。
梱包を一つのシステムとして捉える必要がある。
そのシステムは、次のように大きく三つのレベルに分けて考えることができる。
①一次梱包 個々の製品を保護するパッケージであり、通常は製品と直接接触する。
「インナーコンテナ」「ファーストコンテナ」「コンシューマーパッケージ」とも呼ばれる。
②二次梱包 流通や販売時の取り扱いを容易にするため、同一または異なる製品の一次梱包を複数個まとめて保護するもの。
このレベルは一般的に「アウターパッケージング」「リテールパッケージング」などの呼び名で知られる。
③三次梱包 二次梱包が施された複数のユニットをパレットやカゴ車に仕立て、取扱・保管・輸送を容易にするレベル。
「ユニットロード」「トランスポートパッケージング」ともいう。
こうした一次・二次・三次の各システムの設計要件がそれぞれ異なるとしても、三つのレベルの間には、ある程度の整合性がなくてはならない。
各レベルが密接に関係し合っていることを考えると、あるレベルのデザインはそれ単独ではなく、全体的・総合的な視点から評価されるべきである。
同時に、要件が多岐にわたるため、パッケージデザインを決める過程では社内外の調整が必要になる。
各設計要件の重要度は、サプライチェーンのどの地域・部門・企業がそれを評価するかによって異なる。
また設計要件は、梱包システムの各レベルやサプライチェーンの各ステージ、プロセス、タスクなどによって異なる。
どこでも同じように発生するものではない。
デザインの決定は、相互に密接な関係にある次の五つの側面を巡って行われることになる。
①素材の選択とフォーマット ②梱包プロセス(最初に製品が梱包される時点から倉庫での保管や輸送まで。
RFIDタグやバーコードなど識別技術を含む)に関連する技術の選択 ③見た目のデザイン(形、色、テキスト、シンボル、イメージなど) ④一次・二次・三次の梱包システム ⑤各レベルの寸法・サイズ この課題に対応するためのアプローチを、われわれは「サステナブル・パッケージング・ロジスティクス(SPL)」と名付けた。
その定義は「梱包・製品・サプライチェーンシステムを統合するためのデザイン・実行・コントロールのプロセスおよびその関連情報から成り、製品の安全安心かつ効率的な荷役・輸送・流通・保管・小売・消費・回収・再利用・廃棄を目的とする。
同時に、持続可能性という観点から、社会および消費者にとっての価値・売上・利益の最大化をも継続的に追求する」である。
この定義は関連プロセス、持続可能性の三つの側面(社会・経済・環境)、梱包に関わる五つのデザインについて明確に言及している。
また、関連する三つのシステム、すなわち梱包・製品・サプライチェーンを統合する必要性や、パッケージングデザインを企業の競争力向上につなげるというアイデアも盛り込まれている。
この文脈における“最良”の梱包とは、顧客にとって最も魅力的で便利なデザインであることと、最低限の総コストおよび環境負荷(ロスや不良品含む)を同時に兼ね備えたものである、と定義することが妥当であろう。
そうはいっても、多くの企業にとってパッケージングの変更を推し進める理由は、コスト削減につながるというだけで十分なようであり、あるパッケージング改良の“良さ”をコスト以外の面から評価しようとしても、確固たる方法論はまだあまり確立していない。
その意義を純粋に経済的な用語だけで説明することは容易ではない。
近年の研究においては、パッケージデザインがサプライチェーン全体に与える影響について、客観的に比較検討するシステムがほとんど存在しないことが指摘されている。
われわれが当論文を手がけた背景には、そうした事情がある。
ロジスティクスという面から見て、サプライチェーンの各段階に最も影響を与えるのは二次梱包である。
製品や一次梱包をひとまとめにする二次梱包には、さまざまなやり方(プラスチック容器や円筒形容器など)があるが、その中で最も一般的に利用されているのは段ボール箱である。
作るのもリサイクルも容易でさまざまな用途に使える段ボール箱は、そのメリットによって今やロジスティクスの主役となっている。
本稿の主旨は、二次梱包(段ボール箱)のパッケージングデザインをサプライチェーン全般の効率および持続可能性と関連付け、それを体系的に評価することである。
すべてのパッケージングデザインが、大なり小なり関係してくるのはもちろんなのだが、ここでは段ボール箱の寸法という面に限って考察を加えていきたい。
最適の箱を特定するための手法は、近年の研究においてさまざまな提案がされている。
しかし、今回われわれが提案するような包括的なアプローチをとっているものはない。
定量的な方法(ヒューリスティクス、メタヒューリスティクス、整数計画法)で箱のサイズや積載量の最適化に迫る試みはあるが、いずれもグローバルロジスティクスの文脈からは外れている。
また生産段階など、サプライチェーンの一部に限って論じた研究も存在する。
今回、われわれは理論的な方法論を提案するだけではなく、「アクションリサーチ」の手法を採用して複数の企業で検証を行った。
アクションリサーチとは、ワーキングチームに研究者たちが参加し、メソッドの実施を主導・調整するやり方である。
こうした関与のおかげで、われわれは単なる観察者としてではなく、実践やノウハウを集める過程における真の「変化を生じさせる主体」として、すべてのプロセスに立ち会うことができたのである。
最適なパッケージデザインを 選定するための六つのプロセス 前述したとおり、ここでわれわれが提案する方法論は、箱のパッケージデザイン(特に寸法関連)を、サプライチェーン全体の効率と持続可能性と関連づけようという試みである。
⃝ステージ1:ワーキングチームの結成 専門分野を異にするチームが、前述した五つの梱包デザインの決定を担う。
チームには実際に梱包を担当する企業だけでなく、梱包材メーカー・流通業者・物流企業など、それ以外の多様な立場の人々も参加する。
⃝ステージ2:ロジスティクスシステムの事前分析 この段階では、梱包に関係するサプライチェーンのロジスティクス面の分析を行う。
一次・二次・三次梱包に関わるデザインの要件およびコストを算出するのである。
各デザインを比較する指標となるのは、それにかかるコストであるため、分析は直接費と間接費の両方が対象となる。
直接費は、企業の原価計算表にそのまま載るものであり、通常は梱包材の購入費にあたる。
一方、間接費は、ロジスティクス関連(荷役や保管、特に輸送)費用である。
⃝ステージ3:容積と箱の種類に基づいたフレームワークの定義 このモデルの核心はこの段階にある。
なぜなら、先行するステージ1、2の段階で集めた情報に従って一次梱包を決定し、それをロジスティクスという側面から検討することで、箱(二次梱包)および三次梱包の形態が一定程度絞られることになるからである。
材質(段ボール材の品質などの特性を含む)、一次梱包の数、一箱に入れる製品の数、梱包技術、あるいは見た目や販売面を考慮したデザインもここに含まれる。
この段階での分析の主目的は、改良品の候補となる箱の寸法を決める上で必要な容積をはじき出し、選択肢をいくつかに絞ることである。
⃝ステージ4:選択肢の寸法分析 ステージ3で特定した選択肢を前提に、各選択肢がサプライチェーンの効率性と持続可能性に与える影響を、ステージ2で定義したコスト構造を参照しつつ分析する。
これは最適なデザイン案を選択する前の段階である。
そしてこのモデルでは、一般的に利用される3種のロジスティクスシステムのどれかをここで選択する。
すなわちパレットベースのロジスティクスシステム、コンテナベースのインターモーダル輸送、宅配便ベースのロジスティクスシステム、以上の三つである。
⃝ステージ5:検証、微調整、導入 さまざまな選択肢の影響を測定し終えたあとは、その中から選び出したものについて、実際のロジスティクスシステムに流通させて期待される効果を検証する。
こうした実証実験の結果として、ソリューションの微調整や変更が必要になれば、ステージ3や4をもう一度やり直すことになる。
ソリューションの実現可能性の検証が済めば、あとは導入という手順である。
⃝ステージ6:定期的な見直し 企業には、ダイナミックで継続的な改善を旨とするSPLのアプローチに従い、定期的に全体を見直すことが求められる。
製品需要、マーケティング、技術の進歩、新しい素材の登場、設備・規制・コスト・ロジスティクスシステムの手直しなどにより、設計要件が大幅に変化する可能性があるためである。
ケーススタディ① 冷凍シーフード製造 パレタイズシステムにおける効率化 一つ目のケースは、スペインの冷凍シーフードの製造販売会社だ。
設立は1990年。
自社工場で年間3万トンを取り扱っている。
従業員は300名以上、年間売上高は7500万ユーロである。
同社は市場競争力を高めるため物流コストの合理化に着手したが、その中でもパッケージングデザインの見直しが大きな課題となっていた。
工場で梱包される製品は、高さが最大で2・1メートル(パレット自体の高さを含む)のユーロパレットに載せられ、主に欧州向けに出荷される。
ワーキングチームは、袋詰めされた製品を収める箱の効率性と持続可能性の改善を主目的として結成された。
チームの顔ぶれはロジスティクス・製造・購買・販売各部門のトップ。
そこにわれわれ研究者チームが参加した。
この取り組みでは最大高2・1メートルというパレットを、最大限効率的に利用することを試みた。
今回は販売上の理由から、3種類の箱にそれぞれ異なる製品を入れたため、箱のフォーマットや寸法を規格化することは意図しなかった。
われわれは、もともと使われていた箱の容積を把握した上で、その改善案を箱の寸法・箱詰めのやり方・一次梱包・1箱当たりの袋の数(販売上の問題がないことが前提)など、さまざまな要素を組み合わせて試行錯誤するという方法をとった。
一つ目の箱(ボックス1、改良前)は、ユーロパレットおよび高さ制限には適合しているが、規格化されたものではなかった。
販売上の都合で1箱に詰める袋の数は変更できなかったが、寸法を見直した結果、箱(改良後)の容積は5・1%減少した。
箱の表面積は17・2%減り、逆に1パレット当たりの袋の数は6・7%(4050から4320袋へ)増加した。
表面積対体積比(㎡/㎥)は12・7%改善した(表1参照)。
二つ目の箱(ボックス2、改良前)は、ユーロパレットの底面と高さ制限をフル活用できる規格の寸法となっていた。
ここでの選択肢は、顧客の了解を得た上で1箱に詰める袋の数を増やすことであった。
その目的は、表面積対体積比およびパレットへの積載効率を改善することである。
このアプローチでは、箱の容積が14・3%増えることで、1箱当たりの袋数が20%(15から18)、パレット当たりでは5%(960から1008)それぞれ増加する。
段ボールの使用量は7・9%増やすだけで済む。
この改良により、表面積対体積比は5・7%、1袋当たりの表面積(㎡/袋)では10・1%減少する。
最後の三つ目(ボックス3、改良前)も規格化されていなかった。
このケースでは二つの改善案が検討された。
まず一つは、1箱当たりの袋数を維持しながら箱の数を増やす方法である。
1箱の袋数はそのままなので、変更点は段ボールの表面積を19・2%削減することに限られた。
もう一つは1箱当たりの袋数を62・5%(8から13)増やすことである。
段ボールの使用量は3%減少した。
それと同時にパレット当たりの袋数は21・9%(896から1092)増加、表面積対体積比は32%減、1袋当たり表面積は40・3%減となった。
経営的な視点から、より踏み込んだ後者の改革案が最終的に採用された。
このボックス3のケースでは、どちらの選択肢でも袋のサイズを小さくすることが可能であり、プラスチック(およびその廃棄物)を5%削減することにつながった。
この3種の箱の改善によって、年間の物流費は12万ユーロ以上削減されることになった。
同様に環境負荷も軽減し、使用する段ボール(および関連の廃棄物)は年間70トン削減された。
またボックス3の変更によりプラスチック、および関連の廃棄物はそれぞれ2・5トンずつ減少した。
パレタイジングの効率化により、輸送に伴う環境負荷も軽減された。
この一連の見直しで、箱が一段と経済的で持続可能(1袋当たりの段ボール使用量が減少)となる一方、サプライチェーンを通じて取り扱う箱の数が30万箱も減ることになった。
最終的には、パレタイジングの合理化によって年間1500パレット分の取扱・保管・輸送が不要となったのである。
ケーススタディ② アパレルブランド コンテナシステムにおける効率化 二つ目のケーススタディは、服とアクセサリーのデザインおよび製造を手がけている1980年創業のアパレルメーカーである。
年間の売上高は1300万ユーロであり、出荷先はスペインとポルトガルを中心とする欧州全域の140カ所である。
自社工場で作る製品も若干あるが、大半は中国を主とするアジアで製造している。
そのためコスト水準と環境負荷を軽減するにあたっては、国際輸送をいかに活用するかがポイントであり、輸送コスト合理化プロジェクトの焦点はアジア地域に絞られた。
ワーキングチームには、購買・ロジスティクス・マーケティングのそれぞれのトップに、われわれ研究者が加わった。
同社とアジアのサプライヤーは、規格化された段ボール箱(縦600㎜×横400㎜×高さ300㎜)をほぼすべてのオーダーで利用していた。
ズボン・下着・Tシャツ・ポロシャツ・ジャケット・水着などの服は一点ずつ袋詰め(一次梱包)されていて、一つの箱には同一のモデル・色・サイズの服を、平均20点(10点の二段重)入れる。
規格化された箱(600×400㎜)を採用していたのは、ユーロあるいは米国のパレットに積んだ際の効率性を考慮してのことである。
箱の高さには、折りたたまれた状態でサプライヤーから送られてくる服の容量を確保するという意味合いもあった。
ところがワーキングチームが詳しく調べたところ、製品はサプライチェーンのどの段階でもパレット積みされていないことが判明した。
供給段階での輸送はISOコンテナの利用が基本であった。
サプライヤーが位置する地域・需要・時期により20フィート、40フィートもしくは40フィートのハイキューブ(背高タイプ)が利用されていた。
通常のコンテナにはパレットを効率的に積むことができないため、箱を直接コンテナに入れて空間を有効利用していた。
同社の主要拠点であるスペインの倉庫およびピッキング場所においてもパレットは使われておらず、箱は棚に直接置かれていた。
最後の販売店への配送は宅配業者が行っていた。
服がどのように箱詰めされているかワーキングチームが調べたところ、折り畳んだ二列の服の間と箱の内部、特に底部に余剰スペースがあることが分かった。
そこで服のたたみ方を調べた上で、スペースをできるだけとらないたたみ方をサプライヤーと相談して、袋に使うプラスチックの量を3〜5%削減することに成功した。
パレタイジングの効率を考える必要はないため、改良したたたみ方に対応できる最大値(600×400㎜から580×390㎜)に箱の底面を調整し、それにより生じる効果を検討することにした。
また同時に、多くの服を収納できるよう高さを上乗せするケースについても、高さ310㎜、320㎜、330㎜、340㎜の4種類を調べた。
コンテナシミュレーションには以下の内寸を採用した。
・ 20フィートコンテナ─縦5898㎜×横2352㎜×高さ2393㎜ ・ 40フィートコンテナ─縦12035㎜×幅2352㎜×高さ2393㎜ ・ 40フィートハイキューブコンテナ─縦12053㎜×2352㎜×高さ2695㎜ 服の折りたたみ方法と袋のデザインの変更ということの対策を前提に評価した結果、580㎜×390㎜×340㎜の箱が最も効率的であることが分かった。
表面積対体積比は5・3%、1着に必要な表面積が15・7%改善し、1箱当たり4着分多く収納できた(表2)。
さらに、箱の改善によりコンテナ当たりの箱数が増え(約4%から7%)、コンテナ当たりの服の数も増加(約25%から28%)した。
この改善によって、物流コストが平均25%削減された。
ここには輸送費だけではなくハンドリングコスト(箱数の減少による)や梱包材の節約分も含んでいる。
(翻訳構成 大矢英樹)
さまざまなレベルの要件を満たした上で、製品の保護・販売・流通・環境などに起因する多種多様なニーズに応えなければならない。
多岐にわたる梱包の要件を理解することが重要であることは当然だが、それだけでは十分とは言えない。
梱包を一つのシステムとして捉える必要がある。
そのシステムは、次のように大きく三つのレベルに分けて考えることができる。
①一次梱包 個々の製品を保護するパッケージであり、通常は製品と直接接触する。
「インナーコンテナ」「ファーストコンテナ」「コンシューマーパッケージ」とも呼ばれる。
②二次梱包 流通や販売時の取り扱いを容易にするため、同一または異なる製品の一次梱包を複数個まとめて保護するもの。
このレベルは一般的に「アウターパッケージング」「リテールパッケージング」などの呼び名で知られる。
③三次梱包 二次梱包が施された複数のユニットをパレットやカゴ車に仕立て、取扱・保管・輸送を容易にするレベル。
「ユニットロード」「トランスポートパッケージング」ともいう。
こうした一次・二次・三次の各システムの設計要件がそれぞれ異なるとしても、三つのレベルの間には、ある程度の整合性がなくてはならない。
各レベルが密接に関係し合っていることを考えると、あるレベルのデザインはそれ単独ではなく、全体的・総合的な視点から評価されるべきである。
同時に、要件が多岐にわたるため、パッケージデザインを決める過程では社内外の調整が必要になる。
各設計要件の重要度は、サプライチェーンのどの地域・部門・企業がそれを評価するかによって異なる。
また設計要件は、梱包システムの各レベルやサプライチェーンの各ステージ、プロセス、タスクなどによって異なる。
どこでも同じように発生するものではない。
デザインの決定は、相互に密接な関係にある次の五つの側面を巡って行われることになる。
①素材の選択とフォーマット ②梱包プロセス(最初に製品が梱包される時点から倉庫での保管や輸送まで。
RFIDタグやバーコードなど識別技術を含む)に関連する技術の選択 ③見た目のデザイン(形、色、テキスト、シンボル、イメージなど) ④一次・二次・三次の梱包システム ⑤各レベルの寸法・サイズ この課題に対応するためのアプローチを、われわれは「サステナブル・パッケージング・ロジスティクス(SPL)」と名付けた。
その定義は「梱包・製品・サプライチェーンシステムを統合するためのデザイン・実行・コントロールのプロセスおよびその関連情報から成り、製品の安全安心かつ効率的な荷役・輸送・流通・保管・小売・消費・回収・再利用・廃棄を目的とする。
同時に、持続可能性という観点から、社会および消費者にとっての価値・売上・利益の最大化をも継続的に追求する」である。
この定義は関連プロセス、持続可能性の三つの側面(社会・経済・環境)、梱包に関わる五つのデザインについて明確に言及している。
また、関連する三つのシステム、すなわち梱包・製品・サプライチェーンを統合する必要性や、パッケージングデザインを企業の競争力向上につなげるというアイデアも盛り込まれている。
この文脈における“最良”の梱包とは、顧客にとって最も魅力的で便利なデザインであることと、最低限の総コストおよび環境負荷(ロスや不良品含む)を同時に兼ね備えたものである、と定義することが妥当であろう。
そうはいっても、多くの企業にとってパッケージングの変更を推し進める理由は、コスト削減につながるというだけで十分なようであり、あるパッケージング改良の“良さ”をコスト以外の面から評価しようとしても、確固たる方法論はまだあまり確立していない。
その意義を純粋に経済的な用語だけで説明することは容易ではない。
近年の研究においては、パッケージデザインがサプライチェーン全体に与える影響について、客観的に比較検討するシステムがほとんど存在しないことが指摘されている。
われわれが当論文を手がけた背景には、そうした事情がある。
ロジスティクスという面から見て、サプライチェーンの各段階に最も影響を与えるのは二次梱包である。
製品や一次梱包をひとまとめにする二次梱包には、さまざまなやり方(プラスチック容器や円筒形容器など)があるが、その中で最も一般的に利用されているのは段ボール箱である。
作るのもリサイクルも容易でさまざまな用途に使える段ボール箱は、そのメリットによって今やロジスティクスの主役となっている。
本稿の主旨は、二次梱包(段ボール箱)のパッケージングデザインをサプライチェーン全般の効率および持続可能性と関連付け、それを体系的に評価することである。
すべてのパッケージングデザインが、大なり小なり関係してくるのはもちろんなのだが、ここでは段ボール箱の寸法という面に限って考察を加えていきたい。
最適の箱を特定するための手法は、近年の研究においてさまざまな提案がされている。
しかし、今回われわれが提案するような包括的なアプローチをとっているものはない。
定量的な方法(ヒューリスティクス、メタヒューリスティクス、整数計画法)で箱のサイズや積載量の最適化に迫る試みはあるが、いずれもグローバルロジスティクスの文脈からは外れている。
また生産段階など、サプライチェーンの一部に限って論じた研究も存在する。
今回、われわれは理論的な方法論を提案するだけではなく、「アクションリサーチ」の手法を採用して複数の企業で検証を行った。
アクションリサーチとは、ワーキングチームに研究者たちが参加し、メソッドの実施を主導・調整するやり方である。
こうした関与のおかげで、われわれは単なる観察者としてではなく、実践やノウハウを集める過程における真の「変化を生じさせる主体」として、すべてのプロセスに立ち会うことができたのである。
最適なパッケージデザインを 選定するための六つのプロセス 前述したとおり、ここでわれわれが提案する方法論は、箱のパッケージデザイン(特に寸法関連)を、サプライチェーン全体の効率と持続可能性と関連づけようという試みである。
⃝ステージ1:ワーキングチームの結成 専門分野を異にするチームが、前述した五つの梱包デザインの決定を担う。
チームには実際に梱包を担当する企業だけでなく、梱包材メーカー・流通業者・物流企業など、それ以外の多様な立場の人々も参加する。
⃝ステージ2:ロジスティクスシステムの事前分析 この段階では、梱包に関係するサプライチェーンのロジスティクス面の分析を行う。
一次・二次・三次梱包に関わるデザインの要件およびコストを算出するのである。
各デザインを比較する指標となるのは、それにかかるコストであるため、分析は直接費と間接費の両方が対象となる。
直接費は、企業の原価計算表にそのまま載るものであり、通常は梱包材の購入費にあたる。
一方、間接費は、ロジスティクス関連(荷役や保管、特に輸送)費用である。
⃝ステージ3:容積と箱の種類に基づいたフレームワークの定義 このモデルの核心はこの段階にある。
なぜなら、先行するステージ1、2の段階で集めた情報に従って一次梱包を決定し、それをロジスティクスという側面から検討することで、箱(二次梱包)および三次梱包の形態が一定程度絞られることになるからである。
材質(段ボール材の品質などの特性を含む)、一次梱包の数、一箱に入れる製品の数、梱包技術、あるいは見た目や販売面を考慮したデザインもここに含まれる。
この段階での分析の主目的は、改良品の候補となる箱の寸法を決める上で必要な容積をはじき出し、選択肢をいくつかに絞ることである。
⃝ステージ4:選択肢の寸法分析 ステージ3で特定した選択肢を前提に、各選択肢がサプライチェーンの効率性と持続可能性に与える影響を、ステージ2で定義したコスト構造を参照しつつ分析する。
これは最適なデザイン案を選択する前の段階である。
そしてこのモデルでは、一般的に利用される3種のロジスティクスシステムのどれかをここで選択する。
すなわちパレットベースのロジスティクスシステム、コンテナベースのインターモーダル輸送、宅配便ベースのロジスティクスシステム、以上の三つである。
⃝ステージ5:検証、微調整、導入 さまざまな選択肢の影響を測定し終えたあとは、その中から選び出したものについて、実際のロジスティクスシステムに流通させて期待される効果を検証する。
こうした実証実験の結果として、ソリューションの微調整や変更が必要になれば、ステージ3や4をもう一度やり直すことになる。
ソリューションの実現可能性の検証が済めば、あとは導入という手順である。
⃝ステージ6:定期的な見直し 企業には、ダイナミックで継続的な改善を旨とするSPLのアプローチに従い、定期的に全体を見直すことが求められる。
製品需要、マーケティング、技術の進歩、新しい素材の登場、設備・規制・コスト・ロジスティクスシステムの手直しなどにより、設計要件が大幅に変化する可能性があるためである。
ケーススタディ① 冷凍シーフード製造 パレタイズシステムにおける効率化 一つ目のケースは、スペインの冷凍シーフードの製造販売会社だ。
設立は1990年。
自社工場で年間3万トンを取り扱っている。
従業員は300名以上、年間売上高は7500万ユーロである。
同社は市場競争力を高めるため物流コストの合理化に着手したが、その中でもパッケージングデザインの見直しが大きな課題となっていた。
工場で梱包される製品は、高さが最大で2・1メートル(パレット自体の高さを含む)のユーロパレットに載せられ、主に欧州向けに出荷される。
ワーキングチームは、袋詰めされた製品を収める箱の効率性と持続可能性の改善を主目的として結成された。
チームの顔ぶれはロジスティクス・製造・購買・販売各部門のトップ。
そこにわれわれ研究者チームが参加した。
この取り組みでは最大高2・1メートルというパレットを、最大限効率的に利用することを試みた。
今回は販売上の理由から、3種類の箱にそれぞれ異なる製品を入れたため、箱のフォーマットや寸法を規格化することは意図しなかった。
われわれは、もともと使われていた箱の容積を把握した上で、その改善案を箱の寸法・箱詰めのやり方・一次梱包・1箱当たりの袋の数(販売上の問題がないことが前提)など、さまざまな要素を組み合わせて試行錯誤するという方法をとった。
一つ目の箱(ボックス1、改良前)は、ユーロパレットおよび高さ制限には適合しているが、規格化されたものではなかった。
販売上の都合で1箱に詰める袋の数は変更できなかったが、寸法を見直した結果、箱(改良後)の容積は5・1%減少した。
箱の表面積は17・2%減り、逆に1パレット当たりの袋の数は6・7%(4050から4320袋へ)増加した。
表面積対体積比(㎡/㎥)は12・7%改善した(表1参照)。
二つ目の箱(ボックス2、改良前)は、ユーロパレットの底面と高さ制限をフル活用できる規格の寸法となっていた。
ここでの選択肢は、顧客の了解を得た上で1箱に詰める袋の数を増やすことであった。
その目的は、表面積対体積比およびパレットへの積載効率を改善することである。
このアプローチでは、箱の容積が14・3%増えることで、1箱当たりの袋数が20%(15から18)、パレット当たりでは5%(960から1008)それぞれ増加する。
段ボールの使用量は7・9%増やすだけで済む。
この改良により、表面積対体積比は5・7%、1袋当たりの表面積(㎡/袋)では10・1%減少する。
最後の三つ目(ボックス3、改良前)も規格化されていなかった。
このケースでは二つの改善案が検討された。
まず一つは、1箱当たりの袋数を維持しながら箱の数を増やす方法である。
1箱の袋数はそのままなので、変更点は段ボールの表面積を19・2%削減することに限られた。
もう一つは1箱当たりの袋数を62・5%(8から13)増やすことである。
段ボールの使用量は3%減少した。
それと同時にパレット当たりの袋数は21・9%(896から1092)増加、表面積対体積比は32%減、1袋当たり表面積は40・3%減となった。
経営的な視点から、より踏み込んだ後者の改革案が最終的に採用された。
このボックス3のケースでは、どちらの選択肢でも袋のサイズを小さくすることが可能であり、プラスチック(およびその廃棄物)を5%削減することにつながった。
この3種の箱の改善によって、年間の物流費は12万ユーロ以上削減されることになった。
同様に環境負荷も軽減し、使用する段ボール(および関連の廃棄物)は年間70トン削減された。
またボックス3の変更によりプラスチック、および関連の廃棄物はそれぞれ2・5トンずつ減少した。
パレタイジングの効率化により、輸送に伴う環境負荷も軽減された。
この一連の見直しで、箱が一段と経済的で持続可能(1袋当たりの段ボール使用量が減少)となる一方、サプライチェーンを通じて取り扱う箱の数が30万箱も減ることになった。
最終的には、パレタイジングの合理化によって年間1500パレット分の取扱・保管・輸送が不要となったのである。
ケーススタディ② アパレルブランド コンテナシステムにおける効率化 二つ目のケーススタディは、服とアクセサリーのデザインおよび製造を手がけている1980年創業のアパレルメーカーである。
年間の売上高は1300万ユーロであり、出荷先はスペインとポルトガルを中心とする欧州全域の140カ所である。
自社工場で作る製品も若干あるが、大半は中国を主とするアジアで製造している。
そのためコスト水準と環境負荷を軽減するにあたっては、国際輸送をいかに活用するかがポイントであり、輸送コスト合理化プロジェクトの焦点はアジア地域に絞られた。
ワーキングチームには、購買・ロジスティクス・マーケティングのそれぞれのトップに、われわれ研究者が加わった。
同社とアジアのサプライヤーは、規格化された段ボール箱(縦600㎜×横400㎜×高さ300㎜)をほぼすべてのオーダーで利用していた。
ズボン・下着・Tシャツ・ポロシャツ・ジャケット・水着などの服は一点ずつ袋詰め(一次梱包)されていて、一つの箱には同一のモデル・色・サイズの服を、平均20点(10点の二段重)入れる。
規格化された箱(600×400㎜)を採用していたのは、ユーロあるいは米国のパレットに積んだ際の効率性を考慮してのことである。
箱の高さには、折りたたまれた状態でサプライヤーから送られてくる服の容量を確保するという意味合いもあった。
ところがワーキングチームが詳しく調べたところ、製品はサプライチェーンのどの段階でもパレット積みされていないことが判明した。
供給段階での輸送はISOコンテナの利用が基本であった。
サプライヤーが位置する地域・需要・時期により20フィート、40フィートもしくは40フィートのハイキューブ(背高タイプ)が利用されていた。
通常のコンテナにはパレットを効率的に積むことができないため、箱を直接コンテナに入れて空間を有効利用していた。
同社の主要拠点であるスペインの倉庫およびピッキング場所においてもパレットは使われておらず、箱は棚に直接置かれていた。
最後の販売店への配送は宅配業者が行っていた。
服がどのように箱詰めされているかワーキングチームが調べたところ、折り畳んだ二列の服の間と箱の内部、特に底部に余剰スペースがあることが分かった。
そこで服のたたみ方を調べた上で、スペースをできるだけとらないたたみ方をサプライヤーと相談して、袋に使うプラスチックの量を3〜5%削減することに成功した。
パレタイジングの効率を考える必要はないため、改良したたたみ方に対応できる最大値(600×400㎜から580×390㎜)に箱の底面を調整し、それにより生じる効果を検討することにした。
また同時に、多くの服を収納できるよう高さを上乗せするケースについても、高さ310㎜、320㎜、330㎜、340㎜の4種類を調べた。
コンテナシミュレーションには以下の内寸を採用した。
・ 20フィートコンテナ─縦5898㎜×横2352㎜×高さ2393㎜ ・ 40フィートコンテナ─縦12035㎜×幅2352㎜×高さ2393㎜ ・ 40フィートハイキューブコンテナ─縦12053㎜×2352㎜×高さ2695㎜ 服の折りたたみ方法と袋のデザインの変更ということの対策を前提に評価した結果、580㎜×390㎜×340㎜の箱が最も効率的であることが分かった。
表面積対体積比は5・3%、1着に必要な表面積が15・7%改善し、1箱当たり4着分多く収納できた(表2)。
さらに、箱の改善によりコンテナ当たりの箱数が増え(約4%から7%)、コンテナ当たりの服の数も増加(約25%から28%)した。
この改善によって、物流コストが平均25%削減された。
ここには輸送費だけではなくハンドリングコスト(箱数の減少による)や梱包材の節約分も含んでいる。
(翻訳構成 大矢英樹)
