2022年11月号
特集
特集
平準化を切り口にした改善の考え方・進め方
現場作業の自動化・省人化も
「バラつき」の解消が大前提
物流DX、あるいはロボット物流など、自動化や無人化の流れが加速している。
「先進的な情報システムやマテハン機器の導入で物流現場の省人化や無人化を実現し、効率化を一挙に実現する」という考え方が広まっている。
しかし、物流の非効率性を改善するためには、いきなりシステムやロボットを導入するのではなく、その前に現場で発生しているバラつきやムラを解消しておく必要がある。
一連の作業とそのプロセスが標準化されていなければ、効率化も高度化もスムーズには進まない。
あらゆる時間軸で物流は変動する。
日々の入荷時間や作業時間、曜日や月単位、季節単位の波動もある。
さらには、特定の製品の需要が急速に高まったり、反対に急速に萎んでいくこともある。
入荷量や出荷量が日によって大きく変動する現場は、人員配置や作業ローテーション、配車、傭車計画などの調整に日々、悩まされることになる。
具体的には、例えば次のような問題が生じる。
● 原材料・部品などの調達先からの1回当たりの入荷量に大きなバラつきがあるために、作業時間や作業者数の見込みが立てられない。
● 入荷検品にかかる作業時間などが日によって異なるため、作業者のシフトが組みにくくなる。
● 格納・保管のスペース不足に陥る。
● チャーター便などの手配が複雑になり、コストもかさむ。
● トラックの出発時刻が安定せず、納品時間のバラつきが生じる。
物量の大きな変動はミスの頻発や作業の遅れなどのトラブルの原因にもなる。
それを避けるために、現場のムダ、ムラ、ムリを可能な限り取り除き、作業量や作業時間のバラつきを改善しておかなければならないわけである。
しかし、平準化に取り組めと言われても、「いったいどこから手をつければよいのか」という疑問が出てくるかもしれない。
生産現場における平準化への取り組みを見ると、各工程ごとの平準化がまず行われて、それが前後の工程と適時、同期化されているようである。
平準化の方針は終始一貫しているわけではなく、受注量や販売量などの変動を考慮して必要に応じて見直されている。
これは物流現場においても大きく変わらないであろう。
ただし、ボトムアップ型の平準化だけでは、現場ごとの取り組みがバラバラになりがちである。
それと並行して「毎日、決まった量だけ入荷して、決まった人数で、決まった作業時間、決まった段取りで処理していく」ことを原則として、物量や作業量の大きな変動を頻繁に発生させないためのグラウンドデザインが必要になってくる。
従って、改善活動は発注量の調整やリードタイム管理、在庫政策などの「平準化マネジメント」と、入荷作業や出荷作業の標準化といった現場単位の取り組みを並行して進めていく形になる。
(図1参照) 発注の方針を明確にする 平準化マネジメントの視点から発注の方針・方式を決めておくことで、それぞれの現場は対応しやすくなる。
発注担当者が原材料、部品、製品などのピーク需要を念頭に置き、発注をかけるというやり方は一般に広く行われている。
「大量発注すれば、細かい補充は不要になるし、コスト節約にもつながる」という考え方である。
しかし、その結果として、ピーク時に対応した大きな波動を作ることになり、入荷処理後のオペレーションはムラだらけ、バラつきだらけとなってしまう。
それに対して、必要量をそのまま発注するのではなく、発注コストと在庫維持コストのバランスを見定めてトータルコストが最小となるように調整した1回当たりの発注量が「経済的発注量」(EOQ)である。
小ロットで発注すれば、発注の手間や輸送コストは大きくなる。
一方、大ロットで発注すると、発注の手間と輸送コストは小さくなるが在庫量が増える。
そこで発注コストと在庫コストが最小になる発注量、すなわち経済的ロットサイズを求めるのである。
実際にEOQを計算するには、発注コストと在庫維持コスト、出荷数量、安全在庫数などを把握する必要があり、また定量発注方式を採用していても需要変動や市場の変化などがあるため、必ずしも机上の計算通りに最適化を実現できるわけではないだろう。
それでも、経済的発注量を意識しながら、発注量をコントロールすることで入荷量、入荷作業は平準化される。
さらには在庫量を平準化することにもつながっていくのである。
リードタイムの平準化 時間を切り口にして平準化にアプローチすることもできる。
物流プロセスでリードタイムが長くなるのは、作業の停滞や逆戻りが生じているためである。
どうして手待ちが生じているのか、その原因を究明して対策を講じつつ、リードタイムの平準化を進めていく。
やはり生産管理における平準化の取り組みが参考になる。
生産ラインのオペレーションは、バッチ処理ではなく、リアルタイム処理がセオリーとなっている。
ここでいうリアルタイム処理とは「1個流し」といわれる手法である。
トヨタ生産方式では「タクトタイム」という概念も用いられる。
タクトタイムとは「品物一つ当たりの処理時間」のことである。
図2のようにタクトタイム、1個流し、サイクル表などの概念が各現場で共有され、それを前提に平準化が進められる。
これを物流現場に適用すると、例えば箱詰めや袋詰めなどの流通加工において、標準作業時間を測定してタクトタイムに設定し、リアルタイム処理を行うことでリードタイムの調整と平準化を進めていく、ということになる。
平準化と同時並行で現場改善を進める 続いて「現場単位の取り組み」を作業区分別に見ていくことにする。
現場レベルの平準化に当たっては、いきなり「理想像」を目指すのでなく、まずはコストやKPIなどの現場の現状を把握して、その分析に基づいて活動のロードマップを策定して、平準化マネジメントと現場単位の取り組みを整理した上で、ステップを踏んで進めていくのが有効である。
図3はその一例としてのイメージである。
平準化が目的化してしまうと、「平準化を遂げたものの、作業効率は大きく低下した」ということにもなりかねない。
平準化と現場改善を同時進行させることが望ましい。
ボトルネックを探し出す 平準化が達成されていない作業工程は、ラインバランスが不自然になる。
すなわち、一連の流れの中で、いずれかの作業がボトルネックとなり、その他の作業で手待ちや荷待ちが発生する。
ボトルネック工程の作業効率化を図ることで、工程全体のピッチタイム(作業時間)の最適化が可能になる。
併せて作業工程別の工数比率をチェックすることで、どのような作業がボトルネック工程となっているのかを知ることができる。
「運搬」「仮置き」「歩行」「確認」などに時間がかかっている場合には、改善の余地が十分にありそうだという当たりがつく。
一連の作業工程の手順を整理して、それぞれの作業区分の所要時間や工数比率を割り出し、ボトルネック工程を探し出すことを「工程分析」という。
工程分析でボトルネックを発見したら、続いてその工程にどのようなロス時間があるのかを発見する。
作業にバラつきがある場合、作業区分を細かく分けたワークサンプリングを行い、制約条件は何なのかを探る。
現場を動画に撮り、作業区分ごとの時間を計り、何がムダ・ムリなのか、どうしてそれが発生しているのか、徹底的に分析する。
特定の作業区分が著しく大きな比重を占めているようならば、そこに改善の余地がありそうだとの仮説が立つ。
そして、関連する一連の作業工程にかかる時間との比較のもとに平準化を進める。
ある物流現場では、取引先工場から配送されてくる物品を入荷バースから運搬し、開梱、検品を経て、保管エリアに格納していた。
しかし、物品の開梱、検品に時間がかかっていた。
そこで運搬、開梱、検品、格納・保管の四つの作業区分のそれぞれの作業時間をあらためて調べてみたところ、開梱して入荷予定伝票と現物を突き合わせて検品するのにかかる時間が全作業時間の60%を占めていることが分かった。
ボトルネックが特定できたので、それを基に四つの作業区分にかかる時間の平準化に着手した。
物流KPIを活用する 平準化の達成度を把握するために「物流KPI(Key Performance Indicators:主要業績評価指標)を活用するのも有力な選択肢である。
物流KPIを用いれば平準化の導入状況を可視化できる。
データの収集が容易で、かつその数値を改善することで平準化の効果がはっきり現れる指標をKPIとして設定し、単発的にではなく継続的に測定する。
具体的な目標数値を設け、目標と現状にどれだけギャップがあるのか、目標数値に到達するのはどうしたらよいのか方策を錬る。
経験や勘だけに頼るのではなく、科学的な改善を実現することが可能になる。
⑴ 入荷量・入荷作業の平準化 A社の事例:「ノー入荷デー」を設定 入荷量に大きなバラつきのある現場は少なくない。
とりわけ、週末や週の始まりには入荷量が少なく、週の半ばに入荷量が増えるといった、曜日別のバラつきは、多くの業種に共通して見られる現象である。
前日に入荷したアイテムと同じアイテムが翌日にも続けて入荷する「重複入荷」が目立つような現場である。
A社はその平準化に取り組んだ。
入荷量の少ない曜日を思い切って週次レベルで「ノー入荷デー」に設定して、「1週間に一度は入荷なしの日を設ける」という対策を講じた。
これに併せて入荷ロットを原則としてパレット単位に統一した。
さらにはサプライヤーごとの入荷予定を発注担当者が話し合い、毎日発注から隔日発注に切り替えた。
ただし、当初設定されていた平均出庫数よりも実出庫数が多かったアイテムは、逆に発注頻度を増やして発注間隔を短くした。
なお、A社は入荷量の平準化を行うに当たり、事前に日次、週次、月次レベルのアイテムごとの入荷量を調査した。
そして曜日別、アイテム別などの入荷量をグラフで視覚化することで改善の方向性の検討材料とした。
「ノー入荷デー」を設けることで入荷業務の平準化のみならず、入荷トラックの負担も軽減された。
複数日にまたがる同一アイテムの重複入荷を回避することで、入荷トラックの積載率も向上した。
入荷トラックの手待ち、荷待ちなどの待機時間も短縮された。
⑵ 出荷量・出荷作業の平準化 B社の事例:受注翌日納品を翌々日に変更 入荷の平準化と同様に、出荷についても平準化を行う必要が出てくることもある。
出荷量が多い日と少ない日のムラが大きいケースである。
作業時間が極端に延びたり、反対に早く終わり過ぎたりして、人員配置にムダが生じる。
B社は受注後翌日納品を原則としていたが、納品トラックの積載率にはバラつきがあり、荷物が多い日には出荷作業が長引く傾向にあった。
曜日による出荷量の波動も大きく、作業量に合わせた適切な人員配置ができずにいた。
そこで受注後翌日納品を翌々日納品に切り替えた。
また受注処理についても人手に頼った業務や手間のかかるフローを見直した。
納期遅れを回避するため出荷指示も早めに出すようにした。
さらに作業指示を納期別・顧客別に分類することで、ピッキング作業、梱包作業などの効率化を目指した。
一連の改善によって、トラックの積載率のバラつきは解消されて、配車作業、傭車台数の平準化が進んだ。
それまで出荷業務にかかっていた負荷は低減されて、納品トラックの出発時間の遅れやそれに伴う納品遅れも回避できた。
納品リードタイムに余裕を持たせたことで、事前の出荷量や出荷アイテムの調整が可能になり、欠品率の低下という効果も表れている。
⑶ 出荷指示の平準化 C社の事例:月末集中を「月に数回」に分散 C社では出荷要請・出荷指示のバラつきが大きく、工場倉庫の現場が長時間残業に悩まされていた。
営業部門が多めに発注したり、追加発注したりすることが多く、物流部門はその後処理的な対応に振り回されていた。
当日の早朝になって営業から取引先への時間指定納品の指示が入ることも少なくなかった。
発注、出荷依頼が月末に集中する傾向もあった。
そのためピーク時には保管、仮置きスペースが大幅に不足していた。
そこで物流部門と営業部門で話し合いを行い、発注の締切時刻を明確化して、緊急出荷などの予定外の指示が発生しないように対策を打った。
また月末に集中していた出荷依頼を月次レベルで調整し、月に数回の発注に分散するよう要請した。
その一方、出荷指示に迅速に対応することで他の作業へのしわ寄せを避ける工夫を検討した。
例えば、送り状と納品書を入れ間違えないように新たに一体型の伝票を採用した。
ピッキングリストも送り状や納品書と同時に印刷できればさらに効率は向上するであろう。
C社のように波動が月末に集中する場合、そのまま月末集中を容認していると、物流サイドではピーク時に合わせて作業者やスペースを確保をしなければならなくなる。
月末に発注する顧客があらかじめ分かっている場合などには、物流部門から営業サイドに分散を提案することで平準化を進められる。
* * * * * * 平準化の実践には柔軟な対応も求められる。
例えば受注量の変動が想定を上回るほど大きかった場合に、平準化のために設定した変数やルールを固定的に捉えていると現場で対応できなくなる。
そのため実績値を基に平準化に関するデータを常に更新して、構成比を見直したり、平準化の方針自体を再検討したりする必要がある。
平準化の設定に、ある程度の変動性を持たせておくことが大切である。
「先進的な情報システムやマテハン機器の導入で物流現場の省人化や無人化を実現し、効率化を一挙に実現する」という考え方が広まっている。
しかし、物流の非効率性を改善するためには、いきなりシステムやロボットを導入するのではなく、その前に現場で発生しているバラつきやムラを解消しておく必要がある。
一連の作業とそのプロセスが標準化されていなければ、効率化も高度化もスムーズには進まない。
あらゆる時間軸で物流は変動する。
日々の入荷時間や作業時間、曜日や月単位、季節単位の波動もある。
さらには、特定の製品の需要が急速に高まったり、反対に急速に萎んでいくこともある。
入荷量や出荷量が日によって大きく変動する現場は、人員配置や作業ローテーション、配車、傭車計画などの調整に日々、悩まされることになる。
具体的には、例えば次のような問題が生じる。
● 原材料・部品などの調達先からの1回当たりの入荷量に大きなバラつきがあるために、作業時間や作業者数の見込みが立てられない。
● 入荷検品にかかる作業時間などが日によって異なるため、作業者のシフトが組みにくくなる。
● 格納・保管のスペース不足に陥る。
● チャーター便などの手配が複雑になり、コストもかさむ。
● トラックの出発時刻が安定せず、納品時間のバラつきが生じる。
物量の大きな変動はミスの頻発や作業の遅れなどのトラブルの原因にもなる。
それを避けるために、現場のムダ、ムラ、ムリを可能な限り取り除き、作業量や作業時間のバラつきを改善しておかなければならないわけである。
しかし、平準化に取り組めと言われても、「いったいどこから手をつければよいのか」という疑問が出てくるかもしれない。
生産現場における平準化への取り組みを見ると、各工程ごとの平準化がまず行われて、それが前後の工程と適時、同期化されているようである。
平準化の方針は終始一貫しているわけではなく、受注量や販売量などの変動を考慮して必要に応じて見直されている。
これは物流現場においても大きく変わらないであろう。
ただし、ボトムアップ型の平準化だけでは、現場ごとの取り組みがバラバラになりがちである。
それと並行して「毎日、決まった量だけ入荷して、決まった人数で、決まった作業時間、決まった段取りで処理していく」ことを原則として、物量や作業量の大きな変動を頻繁に発生させないためのグラウンドデザインが必要になってくる。
従って、改善活動は発注量の調整やリードタイム管理、在庫政策などの「平準化マネジメント」と、入荷作業や出荷作業の標準化といった現場単位の取り組みを並行して進めていく形になる。
(図1参照) 発注の方針を明確にする 平準化マネジメントの視点から発注の方針・方式を決めておくことで、それぞれの現場は対応しやすくなる。
発注担当者が原材料、部品、製品などのピーク需要を念頭に置き、発注をかけるというやり方は一般に広く行われている。
「大量発注すれば、細かい補充は不要になるし、コスト節約にもつながる」という考え方である。
しかし、その結果として、ピーク時に対応した大きな波動を作ることになり、入荷処理後のオペレーションはムラだらけ、バラつきだらけとなってしまう。
それに対して、必要量をそのまま発注するのではなく、発注コストと在庫維持コストのバランスを見定めてトータルコストが最小となるように調整した1回当たりの発注量が「経済的発注量」(EOQ)である。
小ロットで発注すれば、発注の手間や輸送コストは大きくなる。
一方、大ロットで発注すると、発注の手間と輸送コストは小さくなるが在庫量が増える。
そこで発注コストと在庫コストが最小になる発注量、すなわち経済的ロットサイズを求めるのである。
実際にEOQを計算するには、発注コストと在庫維持コスト、出荷数量、安全在庫数などを把握する必要があり、また定量発注方式を採用していても需要変動や市場の変化などがあるため、必ずしも机上の計算通りに最適化を実現できるわけではないだろう。
それでも、経済的発注量を意識しながら、発注量をコントロールすることで入荷量、入荷作業は平準化される。
さらには在庫量を平準化することにもつながっていくのである。
リードタイムの平準化 時間を切り口にして平準化にアプローチすることもできる。
物流プロセスでリードタイムが長くなるのは、作業の停滞や逆戻りが生じているためである。
どうして手待ちが生じているのか、その原因を究明して対策を講じつつ、リードタイムの平準化を進めていく。
やはり生産管理における平準化の取り組みが参考になる。
生産ラインのオペレーションは、バッチ処理ではなく、リアルタイム処理がセオリーとなっている。
ここでいうリアルタイム処理とは「1個流し」といわれる手法である。
トヨタ生産方式では「タクトタイム」という概念も用いられる。
タクトタイムとは「品物一つ当たりの処理時間」のことである。
図2のようにタクトタイム、1個流し、サイクル表などの概念が各現場で共有され、それを前提に平準化が進められる。
これを物流現場に適用すると、例えば箱詰めや袋詰めなどの流通加工において、標準作業時間を測定してタクトタイムに設定し、リアルタイム処理を行うことでリードタイムの調整と平準化を進めていく、ということになる。
平準化と同時並行で現場改善を進める 続いて「現場単位の取り組み」を作業区分別に見ていくことにする。
現場レベルの平準化に当たっては、いきなり「理想像」を目指すのでなく、まずはコストやKPIなどの現場の現状を把握して、その分析に基づいて活動のロードマップを策定して、平準化マネジメントと現場単位の取り組みを整理した上で、ステップを踏んで進めていくのが有効である。
図3はその一例としてのイメージである。
平準化が目的化してしまうと、「平準化を遂げたものの、作業効率は大きく低下した」ということにもなりかねない。
平準化と現場改善を同時進行させることが望ましい。
ボトルネックを探し出す 平準化が達成されていない作業工程は、ラインバランスが不自然になる。
すなわち、一連の流れの中で、いずれかの作業がボトルネックとなり、その他の作業で手待ちや荷待ちが発生する。
ボトルネック工程の作業効率化を図ることで、工程全体のピッチタイム(作業時間)の最適化が可能になる。
併せて作業工程別の工数比率をチェックすることで、どのような作業がボトルネック工程となっているのかを知ることができる。
「運搬」「仮置き」「歩行」「確認」などに時間がかかっている場合には、改善の余地が十分にありそうだという当たりがつく。
一連の作業工程の手順を整理して、それぞれの作業区分の所要時間や工数比率を割り出し、ボトルネック工程を探し出すことを「工程分析」という。
工程分析でボトルネックを発見したら、続いてその工程にどのようなロス時間があるのかを発見する。
作業にバラつきがある場合、作業区分を細かく分けたワークサンプリングを行い、制約条件は何なのかを探る。
現場を動画に撮り、作業区分ごとの時間を計り、何がムダ・ムリなのか、どうしてそれが発生しているのか、徹底的に分析する。
特定の作業区分が著しく大きな比重を占めているようならば、そこに改善の余地がありそうだとの仮説が立つ。
そして、関連する一連の作業工程にかかる時間との比較のもとに平準化を進める。
ある物流現場では、取引先工場から配送されてくる物品を入荷バースから運搬し、開梱、検品を経て、保管エリアに格納していた。
しかし、物品の開梱、検品に時間がかかっていた。
そこで運搬、開梱、検品、格納・保管の四つの作業区分のそれぞれの作業時間をあらためて調べてみたところ、開梱して入荷予定伝票と現物を突き合わせて検品するのにかかる時間が全作業時間の60%を占めていることが分かった。
ボトルネックが特定できたので、それを基に四つの作業区分にかかる時間の平準化に着手した。
物流KPIを活用する 平準化の達成度を把握するために「物流KPI(Key Performance Indicators:主要業績評価指標)を活用するのも有力な選択肢である。
物流KPIを用いれば平準化の導入状況を可視化できる。
データの収集が容易で、かつその数値を改善することで平準化の効果がはっきり現れる指標をKPIとして設定し、単発的にではなく継続的に測定する。
具体的な目標数値を設け、目標と現状にどれだけギャップがあるのか、目標数値に到達するのはどうしたらよいのか方策を錬る。
経験や勘だけに頼るのではなく、科学的な改善を実現することが可能になる。
⑴ 入荷量・入荷作業の平準化 A社の事例:「ノー入荷デー」を設定 入荷量に大きなバラつきのある現場は少なくない。
とりわけ、週末や週の始まりには入荷量が少なく、週の半ばに入荷量が増えるといった、曜日別のバラつきは、多くの業種に共通して見られる現象である。
前日に入荷したアイテムと同じアイテムが翌日にも続けて入荷する「重複入荷」が目立つような現場である。
A社はその平準化に取り組んだ。
入荷量の少ない曜日を思い切って週次レベルで「ノー入荷デー」に設定して、「1週間に一度は入荷なしの日を設ける」という対策を講じた。
これに併せて入荷ロットを原則としてパレット単位に統一した。
さらにはサプライヤーごとの入荷予定を発注担当者が話し合い、毎日発注から隔日発注に切り替えた。
ただし、当初設定されていた平均出庫数よりも実出庫数が多かったアイテムは、逆に発注頻度を増やして発注間隔を短くした。
なお、A社は入荷量の平準化を行うに当たり、事前に日次、週次、月次レベルのアイテムごとの入荷量を調査した。
そして曜日別、アイテム別などの入荷量をグラフで視覚化することで改善の方向性の検討材料とした。
「ノー入荷デー」を設けることで入荷業務の平準化のみならず、入荷トラックの負担も軽減された。
複数日にまたがる同一アイテムの重複入荷を回避することで、入荷トラックの積載率も向上した。
入荷トラックの手待ち、荷待ちなどの待機時間も短縮された。
⑵ 出荷量・出荷作業の平準化 B社の事例:受注翌日納品を翌々日に変更 入荷の平準化と同様に、出荷についても平準化を行う必要が出てくることもある。
出荷量が多い日と少ない日のムラが大きいケースである。
作業時間が極端に延びたり、反対に早く終わり過ぎたりして、人員配置にムダが生じる。
B社は受注後翌日納品を原則としていたが、納品トラックの積載率にはバラつきがあり、荷物が多い日には出荷作業が長引く傾向にあった。
曜日による出荷量の波動も大きく、作業量に合わせた適切な人員配置ができずにいた。
そこで受注後翌日納品を翌々日納品に切り替えた。
また受注処理についても人手に頼った業務や手間のかかるフローを見直した。
納期遅れを回避するため出荷指示も早めに出すようにした。
さらに作業指示を納期別・顧客別に分類することで、ピッキング作業、梱包作業などの効率化を目指した。
一連の改善によって、トラックの積載率のバラつきは解消されて、配車作業、傭車台数の平準化が進んだ。
それまで出荷業務にかかっていた負荷は低減されて、納品トラックの出発時間の遅れやそれに伴う納品遅れも回避できた。
納品リードタイムに余裕を持たせたことで、事前の出荷量や出荷アイテムの調整が可能になり、欠品率の低下という効果も表れている。
⑶ 出荷指示の平準化 C社の事例:月末集中を「月に数回」に分散 C社では出荷要請・出荷指示のバラつきが大きく、工場倉庫の現場が長時間残業に悩まされていた。
営業部門が多めに発注したり、追加発注したりすることが多く、物流部門はその後処理的な対応に振り回されていた。
当日の早朝になって営業から取引先への時間指定納品の指示が入ることも少なくなかった。
発注、出荷依頼が月末に集中する傾向もあった。
そのためピーク時には保管、仮置きスペースが大幅に不足していた。
そこで物流部門と営業部門で話し合いを行い、発注の締切時刻を明確化して、緊急出荷などの予定外の指示が発生しないように対策を打った。
また月末に集中していた出荷依頼を月次レベルで調整し、月に数回の発注に分散するよう要請した。
その一方、出荷指示に迅速に対応することで他の作業へのしわ寄せを避ける工夫を検討した。
例えば、送り状と納品書を入れ間違えないように新たに一体型の伝票を採用した。
ピッキングリストも送り状や納品書と同時に印刷できればさらに効率は向上するであろう。
C社のように波動が月末に集中する場合、そのまま月末集中を容認していると、物流サイドではピーク時に合わせて作業者やスペースを確保をしなければならなくなる。
月末に発注する顧客があらかじめ分かっている場合などには、物流部門から営業サイドに分散を提案することで平準化を進められる。
* * * * * * 平準化の実践には柔軟な対応も求められる。
例えば受注量の変動が想定を上回るほど大きかった場合に、平準化のために設定した変数やルールを固定的に捉えていると現場で対応できなくなる。
そのため実績値を基に平準化に関するデータを常に更新して、構成比を見直したり、平準化の方針自体を再検討したりする必要がある。
平準化の設定に、ある程度の変動性を持たせておくことが大切である。
