2005年2号 |
値段 アルプス物流 |
*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。 FEBRUARY 2005 56海外ビジネスの高い収益力アルプス物流の前身である 渡駒 は一九六四年に包装資材取扱業務をスタ トした その後 六七年に現・親会社であるアルプス電気から資本参加を受け 七〇年には社名を アルプス運輸 に変更 八七年に現社名とな た 運輸 から 物流 への社名変更は 従来の単純輸送にとどまらず 倉庫管理や流通加工など幅広い業務に対応できる物流会社に転身しようという意識の表れだ た 実際 同社は運送会社から物流会社へ業態転換することに成功している 同社の急成長を支えてきたのは複数荷主の貨物を混載して目的地に届ける 共同配送 事業だ 共同配送には荷主が単独でモノを運ぶ場合に比べ 積載効率が高まるため 物流コストを大幅に削減できるというメリ トがある アルプス物流は電子部品に特化した共同配送サ ビスを展開 この戦略が奏功し業績の拡大につなが た 共同配送の拡がりは 物流子会社が自立しているかどうかの一つの目安となる外販比率の引き上げに大きく貢献した アルプス電気グル プ向け以外の売上高は年を追うごとに拡大しており 九七年三月期には全体の約五〇%を占めるまでに至 た それが現在 二〇〇四年三月期 では約七〇%にまで膨らんでいる 日本国内には電子部品会社が約一六〇〇社あると言われているが このうちの約八割が同社と物流で何らかの取引があるという 同社が築いてきた共同配送ネ トワ クはいまや電子部品業界の物流プラ トフ ムとして機能している 親会社のアルプス電気や取引のある組み立てメ カ の生産移管を受けて 海外進出にも力を注いできた マレ シアやシンガポ ルなど東南アジア諸国をはじめ 経済発展の進む中国 天津 上海 広東 大連など に営業拠点や倉庫を構えている 最近では航空貨物需要の拡大を背景に北米への拠点展開も積極化している 海外ビジネスで特筆すべきは同業他社に比べ営業利益率が高い点であろう 例えばアジア地域 輸出入取扱業務をメ ンとする航空貨物フ ワ ダ や海運会社のアジアビジネスでの営業利益率が五%前後 そしてトラ ク運送をメ ンとする大手陸運会社が四%前後であるのに対して 同社は二〇〇一年三月期で約一七% 二〇〇四年三月期には二〇%超の高水準を確保している 1電子部品メ カ による海外生産の拡大や デジタル家電製品向け電子部品の需要拡大で取扱物量が大幅な伸びを示している 2海外でも日本と遜色のないVMI VenderManagedInventoryベンダ による納品先の在庫管理 サ ビスを提供できている 3電子部品に関する専門知識の豊富なスタ フを揃えることで 物流品質の面で同業他社よりも優位に立 ている ことなどが海第9回アルプス物流アルプス物流にと て昨年一〇月に実施したTDK物流との合併は大きな転機となりそうだ 重複するネ トワ クの解消などでコスト削減が進み 今後は利益の大幅な伸びが期待できる 二〇〇〇円台前半で推移している株価には割安感がある 土谷康仁三菱証券アナリスト57 FEBRUARY 2005外ビジネスの高収益を支えている TDK物流との合併効果一方 日本国内でのビジネスでは九六年に連結子会社化した 流通サ ビス の躍進ぶりが目をひく 市況変動の影響を受けやすい電子部品物流とは対照的に 食品関係の荷主をタ ゲ トとした流通サ ビスの業績は安定した動きを示している とりわけ近年は生協から受託している 食料品を個人宅へ配送する業務が好調だ 生協の個人宅配事業は九〇年代後半からマ ケ トの拡大が続いている 女性の社会進出を背景に この分野は今後も大きな成長が見込まれている 現在 流通サ ビスは首都圏を中心に個配サ ビスを展開しており 首都圏で培 たノウハウを将来の需要拡大が期待される地方中核都市での展開に活かすチ ンスがありそうだ 昨年一〇月に実施した TDK物流 との合併はアルプス物流にと て大きな転換点となりそうだ アルプス物流とTDK物流は納入先がほぼ共通しており 統合によるメリ トは大きい 三菱証券では今回の合併によ て1積載効率ア プや 管理費など共通コストの削減を通じた収益の改善 2TDK本体の物流業務の取り込みや 外販強化による売り上げの拡大 とい たシナジ 効果を期待している そもそもTDK物流との合併話は現場サイドから発生したアイデアだ た ここ数年 物流業界ではアライアンスが盛んだが アライアンスありきで現場が対応できず 十分なシナジ 効果が発揮されていないケ スが少なくない これに対して 今回の合併は現場の声を出発点としていることもあり 今後の統合作業はスム ズに進んでいくと見られている 三菱証券が今下期の業績予想に織り込んでいるのは 二社の重複ネ トワ クの解消や TDK物流が外部委託していたトラ ク輸送をアルプス物流と混載することで傭車費の削減が進むことだ こうしたコスト抑制効果とともに 前下期並みの取扱数量増加を見込んでおり 二〇〇五年三月期には営業利益で会社計画を約一億円上回ると予想している 合併効果は翌二〇〇六年三月期になるとさらに顕在化する 三菱証券では二〇〇六年三月期の業績を売上高五四三億円 今期予想比一六%増 営業利益五七億円 同二一%増 経常利益五六・五億円 同二二%増 当期利益三〇億円 同二二%増 と見込んでいる 営業利益率は今期同様の一〇・五%を確保できると予想する 大幅な増収増益は TDK物流が手掛けていないTDK本体の航空輸出入業務とその他国際物流業務の獲得などによる増収効果や 今下期同様に収益性改善などの効果を見込むためである これに対して業績が伸び悩むリスクとしては売上高の約七割を占める電子部品の市況悪化などが想定されるが 合併によ て新たにコスト削減の余地が生まれること 流通サ ビスの利益貢献が従来に比べ大きいことなどからITバブル崩壊時のような取扱物量の減少による減益のリスクは小さいと見ている とはいえ 海外展開を加速していくうえで人手不足や人材教育の遅れが収益チ ンスを逃したり 成長スピ ドを鈍化させるリスクとなる可能性もありそうだ 上期の決算発表 昨年十一月五日 後のレポ トで 三菱証券はアルプス物流の株価判断を B+ 今後十二カ月間における投資成果がTOPIXを五 一五%上回る 継続としている 同業他社との相対比較でみたPER 株価収益率 を用いて株価判断を行うと 三菱証券予想の二〇〇六年三月期の予想PERは約一五倍の水準であり 運輸セクタ 内において相対的に割安感があると考えている アルプス物流の過去10年の株価推移つちや やすひと 九七年三月神戸大学大学院卒 九八年四月和光証券入社 その後いちよし証券を経て 二〇〇一年三月国際証券 現三菱証券 入社 現在 リサ チ本部エクイテ リサ チ部のアナリストとして活躍中 著者プロフ ル |