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2022年6月号
特集

3PL依存からの脱却を図る4社の事例

ユニクロの物流自前化戦略  荷主企業から「協力会社や3PLに物流を丸投げしている現状を改めたい」といった相談を受ける機会が増えている。
その多くは2000年初頭から2010年代の中頃にかけて3PLを導入した荷主だ。
物流をコストセンターと位置付け、本業に集中するためにアウトソーシングを実施したものの、当時は予想していなかった環境の変化や課題に直面し、あらためて物流管理機能の再構築を迫られている。
 その背景をわれわれは大きく以下の三つに整理している。
①将来の事業環境に対する懸念 ・ 国内市場の縮小やグローバル化の進展 ・ 労働力不足に対応するための自動化・省人化 ・ 気候変動やサステナビリティ、サーキュラーエコノミー(循環経済)などに対応した新たな物流体制の構築 ②競争優位性を生む新サービスの必要性 ・ ネット通販などのECの進展や需要家ニーズの多様化に伴い、物流がコア領域に位置付けられる ③荷主企業主導での物流改善が困難 ・ 協力会社からタイムリーに情報が収集できず、物流現場の実態や問題点を把握できない ・ 協力会社への丸投げを続けた結果、荷主側の物流ノウハウが消失し、自社による改善施策の検討ができない ・ 協力会社に改善を依頼しても荷主側の意向が反映されない  これらの課題を克服するために荷主が採用する対策は大きく四つに分類できる。
それぞれ事例を挙げて以下に解説する。
さらには、荷主が物流への関与を深めていくトレンドに対して、物流企業がどう対応すべきかを提案する。
 荷主の対応策の一つ目は、物流の「自前化」だ(事例1)。
「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングの事例が広く知られている。
同社は、ダイフクとの戦略的グローバルパートナーシップ契約を発表した18年10月の会見でその経緯を以下のように説明している。
 ユニクロは15年に物流の大混乱を経験した。
同社は物流パートナーに業務を丸投げしていたため、実際に現場で何が起きているのかを把握できていなかった。
しかも、物流の混乱を物流部だけで解決しようとしていた。
企業として物流のあるべき全体像や戦略を考えることができていなかった。
 その反省に立ち、同社は16年9月から本格的な物流改革をスタートした。
第一フェーズでは物流部を解体して、新たに「グローバルサプライチェーンマネジメント部」を立ち上げた。
物流の実務経験者だけでなく、企画・計画・生産・物流・販売などのサプライチェーンに関わる幅広い人材をそこに投入した。
 第2フェーズでは、グローバルサプライチェーンマネジメント部のスタッフが現場に入り、現物・現実の観察を通して本質的な問題をあぶり出した。
その結果、サプライチェーンに関する重要な数値やモノの流れが見えないこと、販売と連動しない早期・大量入庫、物流パートナーに依存した不統一なオペレーション、コスト管理の不徹底などが課題として挙げられた。
 第3フェーズでは協力物流会社との関係性を再構築して、荷主と物流パートナーが一体となって課題の解決に取り組む体制を整えた。
「経営コックピット」「SCM情報センター」と呼ぶ二つの可視化チームを組織、さらに物流に関わる経営管理チームを立ち上げて、協力物流会社との契約体系やオペレーションの統一を図った。
 それと並行して同社は16年12月から、総合マテハンメーカーのダイフク、ロボットベンダーのMUJINなどをパートナーに、AIやRFIDなどの最新技術を用いた自動化センターの開発に取り組み、省人化率90%を誇る「有明倉庫」を東京都・有明に稼働した。
さらに総額1千億円規模を投じて同様の自動化を全世界・全拠点に横展開する計画だ。
 同社の物流改革は、現場の混乱がきっかけであったが、物流の自前化にまで踏み込むことになったのは、労働力不足や事業環境の変化への対応を協力物流会社任せにしておくわけにはいかないという経営判断であった。
実際、物流会社はオペレーションに長けてはいても、将来を見据えた展開という点で頼りになるとは言い難い。
 とはいえ、荷主に高度な物流ノウハウが備わっているわけでもない。
従って自前化の成否は、物流の企画から管理までのソリューションを提供できる最適なパートナーの選定にかかっていた。
そのためにファーストリテイリングは、世界のありとあらゆるマテハン関連企業とコンタクトをとったという。
その上でグローバルパートナーに選んだのが日本のダイフクだったというわけだ。
物流パートナーとの役割分担を再定義  二つ目のパターンは、物流テクノロジー企業ではなく、物流企業を伴走パートナーに選定するケースである(事例2)。
当社のクライアントのX社の事例を紹介する。
同社は国内市場の縮小する環境下で売り上げを維持していくために高付加価値化につながる物流改革を志向していた。
 しかし、やはり物流企業に業務を丸投げしてきたことから現場の実態が把握できず、現状のどこに課題があるのか、何を改善すべきなのか、今後どういう対応が必要になるのか、まったく見えていない状態だった。
そこでまずは物流の見える化に取り組み、管理スキームを構築した。
 しかし、改革の実行には物流企業のサポートが必要と判断した。
そこで既存の協力物流会社のうち最も能力の高いA社を選び、X社の改革に伴走するパートナーと位置付けた。
X社が改革を主導しながらも、A社はX社のニーズを受けて提案を行い、プロジェクトの推進役も担う。
 A社はX社に代わって他の協力物流会社はもちろん、マテハンやロボティクス、システムなどのベンダーも統合管理する。
そのためにX社は物流オペレーションの委託料とは別に月額でA社にフィーを支払うというスキームだ。
4PLもしくはLLP(リード・ロジスティクス・プロバイダー)と呼んでもいいのかもしれないが、業務内容としてはコンサルティングに近い。
 荷主の対応策の三つ目は「②競争優位性を生む新サービスの必要性」を背景としたEC物流の構築である。
これも当社のクライアントの小売業Y社の事例を取り上げる(事例3)。
 これまでY社は店舗販売をメーンにしてきた。
物流機能も店舗納品ができればよかった。
しかし、市場ではECシフトが急速に進んでいる。
この傾向は今後さらに加速すると見て、Y社は個人向けに商品を届ける物流機能をあらためてコア領域として定義した。
 ECの顧客は当日配送を求めている。
しかし、既存の大手宅配会社ではニーズに対応できないことから、Y社独自のラストワンマイル配送網を構築することで差別化するという戦略である。
 ECの物流ニーズや配送要件には都市部と地方で違いがある。
そのため配送形態も都市型・地方型に切り分けて設計している。
大都市圏では新興の地域宅配会社と手を組んでネットワークの整備に動いている。
 それ以外の地域や地方では、ラストワンマイル配送のマッチングプラットフォームや複数の事業者を組み合わせてサービスを組み立てる方針だ。
そのために現在、条件に応じた配送形態を自動選択するシステムの開発に取り組んでいる。
 そして荷主の対応策の四つ目が、物流管理機能だけを自前化するパターンである(事例4)。
これも当社が関わっている案件だが、荷主企業Z社は営業倉庫会社から賃借している既存の物流施設が契約更改期を迎えたことから、これを機に中長期的な国内物流のあるべき姿を打ち出し、アウトソーシングの方針を見直した。
 Z社もやはり物流のブラックボックス化を問題視していた。
そこで物流管理およびオペレーションにおける自社と協力会社の役割分担の現状を全て洗い直して、それぞれの役割を再定義した。
それに基づいてKPIとターゲットも設定した。
既存倉庫の賃借契約は更新することになったが、新たに荷主の担当者を現場に投入して管理機能を大幅に強化した。
“脱・丸投げ”の三つの選択肢  このように先進的な荷主は、自社の事業戦略に基づいて最適なパートナーを選定した上で、物流管理機能の強化に向けて本格的に動き出している。
しかしながら、そうした荷主はまだ数えるほどにすぎない。
多くは“脱・丸投げ”を推進したくても、どこから着手すべきなのか、模索しているのが現状であろう。
 実際、物流アウトソーシングの方向性は、荷主の業界特性や各社の投資余力などによっても変わってくる。
そこで以下に現在のトレンドを踏まえながら“脱・丸投げ”のパターンを分類してそれぞれのポイントを述べていく。
 まず荷主に必要な物流管理機能は大きく以下の四つに整理できる。
・ 物流戦略の企画立案:物流の競争優位性、あるべき物流戦略・企画の立案。
サプライチェーンの川上の企画や生産、川下の販売も巻き込んだ全社的な視点が求められる。
・ 物流管理:KPIの設計と可視化した物流情報に基づく運用管理、現場改善の方向性の検討。
見える化した情報を、経営層への報告、事業部との共有・調整、物流現場に対する改善指示の3方向で活用することが重要。
・ システム/テクノロジー活用:AIやロボティクスなどの先進技術の調査、物流戦略への反映。
事業環境やテクノロジーが変化するスピードを踏まえ、導入後の柔軟性や拡張性を考慮する。
「マイクロサービス化」は現在の有効な手段の一つ(図1)。
・ オペレーション:各拠点・配送におけるオペレーションの設計・見直し。
需要変動に合わせた配員確保や最適配置などのシェアリングの仕組みが重要。
 この四つの機能をそれぞれ自前化するか、アウトソーシングするかという場合分けにより、アウトソーシングのパターンに次のA~Dのバリエーションが生じる(図2)。
A.自社中心の運営:オペレーションの設計まで自前化する B.オペレーションのみ外部活用:システム/ロボティクスまで自前化する C.物流管理のみ自社運営:物流管理および戦略・企画立案のみを自前化する D.外部活用中心:全てを外部委託している丸投げ状態  このうち「D 外部活用中心」は完全な丸投げである。
アウトソーシングによって物流を変動費化することはできるが、コントロールが効かない。
環境の変化にも対応できない。
多くの荷主の現状であろう。
 また、理論的にはA〜D以外に「戦略・企画立案のみ自社運営」というパターンも存在する。
実際、LLPや4PLは「物流管理」のアウトソーシングを提案している。
しかし、日本企業の現状を見る限り「戦略・企画立案」と「物流管理」は実際には切り離せないとわれわれは考えている。
従ってA、B、Cの三つのパターンのうち、どれを選ぶかという選択になる。
 物流による差別化を狙う場合、労働力不足・サステナビリティ対応などに対する危機感が強く、早期に打ち手を講じたい場合には、パターンAの自前化を選ぶことになる。
社内にノウハウが蓄積されて、環境の変化に即応できる。
ただし、大規模投資を伴うことが多く、一定の管理コストが固定費として発生する。
 パターンBは、物流をコア領域と定義して、オペレーションのみをアウトソーシングするケースである。
その場合には荷主が主体的に物流DXを推進することになる。
管理ノウハウが蓄積できるほか、データマネジメントの強化も図れる。
ただし、システム投資とパターンAと同様に一定の管理コストが発生する。
 パターンCは、業界最大手クラス以外の多くの荷主にとっての現実解であろう。
物流コストを変動費化したまま、可視化とKPI管理によって物流管理機能を強化する。
ただし、改善の主体は物流企業側にあり、ITやロボティクスなどへの投資も物流企業に委ねることになる。
交渉の主導権は物流企業側が握る。
物流企業の事業リスクと対応策  荷主が物流への関与を強める現在のトレンドは、物流企業にとって事業リスクである。
荷主主導で物流の可視化とKPI管理が進むと、物流会社は指示された通りにオペレーションを実行するだけの下請けから立ち位置を変えることができなくなる。
あるいはオペレーションに必要な労働力を提供するだけの存在になってしまう。
収益の悪化が避けられない。
荷主が物流の自前化まで進めば、下請けの地位さえ危うくなる。
 物流の自動化が進むことで単純輸送や単純保管の付加価値はこれから逓減していく。
物流企業が十分な利益を得て成長を続けていくには、サービスの高付加価値化が必要だ。
荷主の経営課題に資するソリューションを提供する存在にポジションを上げる。
その場合には、荷主の経営管理階層を縦軸、サプライチェーンを横軸にとって、物流企業の役割とソリューションを設計するというアプローチが有効である。
 このうち縦軸においては、戦略的パートナーとして荷主に伴走する存在になることを目指す。
具体的には以下の四つの役割を果たすことがその条件になる。
・ 物流KPIを活用した経営層への報告支援および中期経営計画策定時のあるべき物流の提案 ・ 営業部門へ物流コストの根拠を提示し、必要に応じて販売戦略を修正することを支援する ・ 荷主の物流部と一体になり、業界の将来動向も踏まえた中長期施策の具体化および推進を支援する ・ 物流協力会社への改善施策(生産性・品質など)をより現場に近い立場から支援する  一方、横軸においては、輸送や保管だけに注目するのではなく、荷主の業務範囲全域を視野においてソリューションを設計する(図3)。
視座を一つ引き上げることにより物流以外の課題が見えてくる。
物流企業がメーカー機能、商社機能、卸機能にスコープを拡大していくことができる。
物流企業がオペレーションの受託を通して培ってきたノウハウや物流情報がそのよりどころとなる。
 まずは特定の荷主1社に対象を絞り、コンサルティング機能の提供を目指すのが現実的であろう。
その業界の「Tier1」の荷主を押さえることで、同じ業界のTier2、Tier3に顧客層を広げていくことができる。
業界を面で捉えた事業展開が可能になる。
その業界の物流プラットフォームを構築して、蓄積したデータやデジタルノウハウを活用したサービスの高付加価値を実現できる。
その結果、労働力不足、環境負荷低減等の社会課題や、各荷主業界特有の業界課題の解決につながる取り組みとなる。
 われわれも社会課題・業界課題の解決につながるこのような取り組みを荷主企業・物流企業と伴走していく考えだ。

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