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2022年6月号
特集

DHLサプライチェーン 輸送の「見える化タワー」を日本市場に適用

荷主ごとに専属チームを組成  DHLサプライチェーン(DSC)のグローバル本部は2019年に、「コネクテッド・コントロール・タワー(CCT)」の提供を開始した。
輸送を戦略製品として強化するため構築したサービスで、現在までに世界50カ国以上で展開しており、1万8千人以上の専門スタッフを投入している。
 ドライバーをはじめ「コントロールタワーオペレーター」「トランスポートプランナー」「トランスポートソリューションデザイナー」「品質・コンプライアンスエキスパート」「データアナリスト」の計6分野の担当者が荷主ごとにチームを組成、全プロセスを一元化・可視化する。
荷主が求めるKPIをモニタリングする他、ビッグデータ分析によるプロセスやコストの改善も手掛ける。
 ドライバー以外のメンバーはDSCの物流センター内に専用ルームを開設して、人員を配備している。
荷主はチームの規模や各担当者をどこまで自社専属に近い形でアサインするか、予算や物量の波動に合わせて調整できる。
 こうしたサービスを開始した背景には、グローバル荷主の強い可視化需要がある。
DSCのランス・パイパー執行役員トランスポート日本・韓国担当は「発送した荷物が翌日には届く日本国内と違い、世界には紛争、脆弱なインフラ、過酷な自然環境、制度や習慣の違いなど種々の障壁に阻まれ『届くだけでもすごい』という国や地域が少なくない」という。
近年はESGの観点からも、サプライチェーン全体の透明性が求められている。
 物流の外部委託に伴うブラックボックス化は、洋の東西を問わない荷主の懸念材料だ。
そのため同社は従来から「LLP(Lead Logistics Provider)」などのSCMソリューションに、荷主向けのシングルポイント(単一窓口)、物流サプライヤーのコントロール、輸送のトラッキング、KPIの測定・改善といった可視化機能を盛り込んできた。
 日本でもコニカミノルタホールディングス(当時)が13年に、それまで部門ごとにサイロ化していた自社物流を効率化するためDSCとLLP契約を締結し、子会社物流事業を譲渡したことが、「物流の脱ブラックボックス化需要における、一つの転機となった」と同社の松島重雄トランスポート ディベロップメント&プランニング ネットワークオペレーション ディレクターは自負している。
 LLPを通じてコニカミノルタは、業務プロセスや運送契約の標準化、新たなKPIに基づく品質管理システムの構築などを実現した。
これを受けて15年には中国でもDSCとLLP契約を締結した。
 その後、DSCは18年4月に日東電工から社内物流部門の譲渡を受け、20年10月にはOKIからOKIプロサーブのロジスティクス部門を買収している。
いずれも物流部門の譲渡に伴い、LLP契約を締結している。
LLPの導入によってブラックボックス化に陥ることを回避した格好だ。
 そしてSCMにフォーカスしたLLPに対して輸送に焦点を当てたサービスがCCTだ。
日本では21年9月に東京都品川区八潮のDSC物流センター内にCCT専用ルームを開設して提供を始めた。
 CCTの特徴の一つに、現場の管理担当者と、ソリューション開発などの開発・分析分野の担当者が、同一ルームで働いていることが挙げられる。
現場管理担当者が日々の運用を通じて把握する顧客情報は、拠点数や取扱商品など事業面での変化から、物流の相談や悩みまで、書類やデータに記録されにくい内容も多い。
松島ディレクターは「現場管理担当者と開発・分析担当者が同じルームにいれば、生の会話を通じて厚みある顧客情報を共有でき、実効性あるソリューションを創出しやすくなる」という。
 輸送オーダーはEDI経由でTMSに取り込み、DSCの各種ソリューションと連携させている。
そのデータを活用して共同配送も実現した。
現在、全国9カ所(北海道、東北、関東、中部、北陸、近畿、中国、四国、九州)の配送ターミナルで、トラック2千台超を投じて共同配送を運営している。
 DSCが実運送を委託している協力運送会社とはレギュラー料金、想定されるイレギュラーの内容と追加料金などを綿密に取り決めている。
パイパー執行役員は「3PLの料金体系を把握せずに外注して、請求書の内容も精査できない荷主は少なくないが、当社は提携先の料金体系も含めて明示している」と、ガバナンスやコンプライアンス面での信頼性を強調する。
 協力運送会社とはデータ連携している。
荷主は貸し切りはもちろん、協力会社の混載便に積まれた荷物も、DSCのシステムで一括して配送状況を追跡できる。
送り状番号ではなく基幹システムのオーダー番号で追跡するため、複数の輸送業者が交替で運んでいる場合も一度の番号入力で済む。
日本市場の主要荷主が軒並み導入  CCTのユーザー企業は具体的に何を可視化することを望んでいるのだろうか。
和田貴三テクノロジー事業本部サプライチェーン トランスフォーメーション ディレクターは「グローバル共通で関心が高いBIレポートは、納品順守率や積載効率といった輸送のパフォーマンスと、二酸化炭素排出量などサスティナビリティ面のKPI指標」と説明する。
 自社の物流パフォーマンスの阻害要因や、それを受けてオペレーションを変更する必要があるのか、判断材料となるKPIや分析を求める利用者も多い。
「チャータートラックに対するオーダー積載率が低いのはなぜか」、「特定の配送エリアでKPIで定められた配送納期が順守できないのは何が原因か」といったリクエストだ。
 日本固有の需要として和田ディレクターは、「輸送の専門家から見た最適な拠点立地の分析など、自社サプライチェーンに対する診断が、特に求められている」という。
最適立地場所は輸送トンキロが最少となる地点とは限らない。
荷の形状や梱包の有無、配送先が工場なのか雑居ビルなのか、エレベーターの有無、搬入の作業環境や想定される作業量など種々の要因に左右される。
豊富な実輸送データを用いたシミュレーションが欠かせない。
 「現実性のあるシミュレーションを行うには、どのようなデータ項目が必要で、相互にどう関連付ければよいのか。
それらを把握した上で分析できることが当社の差別化になっている。
例えば荷主が自社でも輸送している場合、その実績データも精度向上に必要だ。
荷主と物流業者が互いのデータを持ち寄って、より良い輸送体制を構築していく双方向の脱ブラックボックス化が、新しい物流の形となる可能性がある」と松島ディレクターは展望する。
 既に同社の日本市場における収益の4割を占める主要荷主が全てCCTのユーザーとなっている。
さらにDSCは現在、それらの主要荷主とのシナジーを見込める企業を対象に提案を進めている。

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