2022年3月号
特集
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物流現場の働き方改革─その光と影
荷主企業編─ドライバーをすぐ帰せ
2024年問題の元になった働き方改革関連法の内容については、厚生労働省や国土交通省から詳細なガイドラインが出されており、ここであらためて説明するまでもないだろう。
それが荷主に与える影響を一言にまとめれば「ドライバーに仕事を速やかに終えてもらわないといけない」ということである。
その具体的な対策を以下に挙げる。
◦手積み・手降ろしをやめる 食品メーカーN社は、商品のほとんどが容積勝ちで単価も安価なことから、トラックの積載効率を追求して、長年にわたりドライバーに手積みを強いてきた。
10t増トン車1台当たりの荷物の数は2千個〜3千個にも上る。
小型商品では5千個近くになる。
そのためN社の輸送は物流業界ではハードワークとして知られている。
積み込みを終えたドライバーが工場近くのパーキングエリアで熱中症の状態で発見されたといった話も何度か耳にしている。
地元の物流会社はそうした事情を知っているのでN社の仕事はまず受けない。
これを改善するには、バラ積みをパレット積みに替えて、手積み・手降ろしを解消すればいい。
ただし、パレットの分だけトラックの積載効率は悪化する。
N社に限らず容積勝ちの荷物を扱う荷主にとって深刻な問題だ。
そこで筆者としては、プラスチックパレットの高さを現在の約10cmから5cmにして、かつ必要な強度を備えた薄型パレットの開発が急務であると訴えたい。
◦車両待機時間を短縮する これも社名の公表は控えておくが、チェーンストアS社、大手卸P社、製造業U社の3社は物流業界では従来から“荷が下りない”会社として知られてきた。
“ロング3”と陰口を叩かれるほどドライバーから敬遠されており、普通に3〜4時間は待たされる。
物流会社の経営者は仕方なく、手当てを厚くすることで嫌がるドライバーを対応させている。
当然ながらロング3に納品する発荷主には割増運賃が要求されている。
今後は「待機時間=割増料金」の傾向がさらに強まる。
さすがにここに来て、流通業のセンターで車両待機時間の短縮を目的とした「(トラック)バース予約システム」の導入が広がっているが、発荷主からも納品先にかけあって早急に手を打つ必要がある。
◦ドライバーピッキングの廃止 卸や小売りの物流センターでは、納品に来たドライバーに店別仕分けまでやらせることが当たり前になっている。
その背景として、特に夜間から早朝にかけてのセンターの人員不足がある。
ドライバーとしても「何時間も待たされるくらいなら自分で捌いて早く帰りたい」と自分から手を出すので、本来はイレギュラーであったものがレギュラー化してしまった。
しかし、今後は契約通り“軒下渡し”でドライバーをすぐに帰さないといけない。
センター側に新たな荷役作業が発生する。
料率契約の場合には料率の見直しが必要になってくる。
◦受注締切時間の前倒し これまで荷主は顧客サービスのために受注時間(特に当日出荷分)を遅くまで引っ張る傾向があった。
現状の受注締め切り時間は12:00〜14:00に集中しているが、これから路線会社(特積み)の集荷時間の前倒しがさらに進むため、受注締切時間自体の前倒しが余儀なくされる。
そうしないと当日出荷が難しくなっている。
◦受注から出荷までのリードタイム短縮 受注締切時間の前倒しと並行して、受注から出荷までのリードタイム短縮に取り組む必要がある。
そのためにまず電子受注比率を引き上げる。
EOS、EDIだけでなく今やWEB受注システムが必須である。
バッチ処理の運用も見直す。
出荷便に間に合うように作業を終わらせるには、どのタイミングでバッチ処理(区切り)を設ければ現場が効率的に動けるのか、どう出荷量のかたまりを作るのか、その判断がカギになる。
現状では受注処理の工程で機械的にバッチを切っているケースが多いが、筆者としては現場の人員体制や生産性を掌握しているセンター側でバッチを判断して、必要に応じて出荷データを取りに行く方法がこれから主流になっていくと見ている。
そのためにシステムの改修も必要になってくるだろう。
◦自社輸送 右のような改善策を実施しても、まだ出荷が間に合わないという場合は、“最後の手段”をとるしかないだろう。
路線会社の営業所や基幹センターに自分で荷物を持ち込む。
これまでも繁忙時や作業遅れの際に緊急輸送を手配して持ち込みを行う現場は珍しくなかった。
それをレギュラー化する。
例えば16:00までの出荷分を従来通り路線会社に引き渡し、それ以降の出荷分は自社車両で持ち込む体制を組む。
その場合には荷主自身で車両を保有して社員が配送することも一つの選択肢となるだろう。
物流企業編─働き方改革は経営者改革 一方、物流企業に必要になってくるのは、「残業なしで荷主の製・商品の納期を維持する。
ただし、社員の手取りは減らないようにする」ことである。
特別な投資を必要としない、中小の物流会社にも可能な具体的な対策は以下の通りである。
◦24時間稼働 これから物流業は設備投資を必要とする装置産業としての性格が色濃くなっていく。
装置産業の胆は稼働率である。
物流企業も他の装置産業と同様に24時間稼働を目指すことになる。
朝・昼・夜の3交代制を組んで車両や倉庫の回転率を上げる。
そのために戦略的に仕事を獲得する。
例えば、ドラッグストアの店舗納品は夜間に行われるため、これを昼間の仕事と組み合わせて車両回転率を上げる。
筆者の知る年商7億円のS運輸は、タイムマーケティングに基づく荷主の獲得により、①卸売市場→②新聞・雑誌輸送→③乳製品→④和日配→⑤給食→⑥一般荷主という、車両の6回転を実現している。
◦ドライバーの副業解禁 残業代が事実上の固定収入となっている運送会社では、残業規制によってドライバーの手取りが減ってしまう。
それを補うために、ドライバーの副業を解禁すべきである。
抜本的な改革を実施できる会社なのであれば、裁量労働制への移行を検討すべきだ。
現場労働者ではなく、“タスク(任務遂行)型”としてドライバー職を設計する。
一方で年間休日120日を段階的に達成する。
そうすれば優秀な人材を獲得できるようになる。
◦中継輸送 幹線輸送は人員を交代できる中継地を増やすことで体制を整える。
通常はコストアップになるが、同業他社との共同中継センターの設置、既存のトラックターミナルの活用などでコストを抑制することはできる。
◦車両の大型化 さらに幹線輸送においては1車両当たりの輸送量を増やす。
増トン車からセミトレーラー、フルトレーラーにシフトすれば、ドライバーの収入を維持できる。
ただし、大型牽引免許の取得コストが発生して、重大事故の危険性も上がる。
安全管理指導および研修の徹底がセットになる。
◦原価管理 24年問題に限ったことではないが、これを機に物流会社としての当然の企業努力として車両別のコストを可視化し、改善を進めて、損益分岐点を下げることが重要である。
◦荷主への協力要請 右の改善策の実施を前提に、既存荷主にも改善への協力を要請する。
協力が得られない場合、あるいはやれることは全てやった上でも足が出る分については値上げを要請する。
◦システム化 配送ルートを見直す。
ゼロベースで抜本的に見直すことがポイントである。
そのツールとして配車管理システムを導入する。
それをWMSと連携させることで、輸配送の総合的なマネジメントを実現すれば、さらに大きな効果がある。
以上の通りである。
ドライバーの残業規制は物流業界において過積載に次ぐ規模の厳しい規制になるだろう。
他の業種と違って物流業に対しては特別に5年間の適用猶予期間を与えた以上、担当省庁も満を持して取り締まるはずだ。
物流の働き方改革はドライバーを働かせる運送業経営者の改革でもあるのだ。
それが荷主に与える影響を一言にまとめれば「ドライバーに仕事を速やかに終えてもらわないといけない」ということである。
その具体的な対策を以下に挙げる。
◦手積み・手降ろしをやめる 食品メーカーN社は、商品のほとんどが容積勝ちで単価も安価なことから、トラックの積載効率を追求して、長年にわたりドライバーに手積みを強いてきた。
10t増トン車1台当たりの荷物の数は2千個〜3千個にも上る。
小型商品では5千個近くになる。
そのためN社の輸送は物流業界ではハードワークとして知られている。
積み込みを終えたドライバーが工場近くのパーキングエリアで熱中症の状態で発見されたといった話も何度か耳にしている。
地元の物流会社はそうした事情を知っているのでN社の仕事はまず受けない。
これを改善するには、バラ積みをパレット積みに替えて、手積み・手降ろしを解消すればいい。
ただし、パレットの分だけトラックの積載効率は悪化する。
N社に限らず容積勝ちの荷物を扱う荷主にとって深刻な問題だ。
そこで筆者としては、プラスチックパレットの高さを現在の約10cmから5cmにして、かつ必要な強度を備えた薄型パレットの開発が急務であると訴えたい。
◦車両待機時間を短縮する これも社名の公表は控えておくが、チェーンストアS社、大手卸P社、製造業U社の3社は物流業界では従来から“荷が下りない”会社として知られてきた。
“ロング3”と陰口を叩かれるほどドライバーから敬遠されており、普通に3〜4時間は待たされる。
物流会社の経営者は仕方なく、手当てを厚くすることで嫌がるドライバーを対応させている。
当然ながらロング3に納品する発荷主には割増運賃が要求されている。
今後は「待機時間=割増料金」の傾向がさらに強まる。
さすがにここに来て、流通業のセンターで車両待機時間の短縮を目的とした「(トラック)バース予約システム」の導入が広がっているが、発荷主からも納品先にかけあって早急に手を打つ必要がある。
◦ドライバーピッキングの廃止 卸や小売りの物流センターでは、納品に来たドライバーに店別仕分けまでやらせることが当たり前になっている。
その背景として、特に夜間から早朝にかけてのセンターの人員不足がある。
ドライバーとしても「何時間も待たされるくらいなら自分で捌いて早く帰りたい」と自分から手を出すので、本来はイレギュラーであったものがレギュラー化してしまった。
しかし、今後は契約通り“軒下渡し”でドライバーをすぐに帰さないといけない。
センター側に新たな荷役作業が発生する。
料率契約の場合には料率の見直しが必要になってくる。
◦受注締切時間の前倒し これまで荷主は顧客サービスのために受注時間(特に当日出荷分)を遅くまで引っ張る傾向があった。
現状の受注締め切り時間は12:00〜14:00に集中しているが、これから路線会社(特積み)の集荷時間の前倒しがさらに進むため、受注締切時間自体の前倒しが余儀なくされる。
そうしないと当日出荷が難しくなっている。
◦受注から出荷までのリードタイム短縮 受注締切時間の前倒しと並行して、受注から出荷までのリードタイム短縮に取り組む必要がある。
そのためにまず電子受注比率を引き上げる。
EOS、EDIだけでなく今やWEB受注システムが必須である。
バッチ処理の運用も見直す。
出荷便に間に合うように作業を終わらせるには、どのタイミングでバッチ処理(区切り)を設ければ現場が効率的に動けるのか、どう出荷量のかたまりを作るのか、その判断がカギになる。
現状では受注処理の工程で機械的にバッチを切っているケースが多いが、筆者としては現場の人員体制や生産性を掌握しているセンター側でバッチを判断して、必要に応じて出荷データを取りに行く方法がこれから主流になっていくと見ている。
そのためにシステムの改修も必要になってくるだろう。
◦自社輸送 右のような改善策を実施しても、まだ出荷が間に合わないという場合は、“最後の手段”をとるしかないだろう。
路線会社の営業所や基幹センターに自分で荷物を持ち込む。
これまでも繁忙時や作業遅れの際に緊急輸送を手配して持ち込みを行う現場は珍しくなかった。
それをレギュラー化する。
例えば16:00までの出荷分を従来通り路線会社に引き渡し、それ以降の出荷分は自社車両で持ち込む体制を組む。
その場合には荷主自身で車両を保有して社員が配送することも一つの選択肢となるだろう。
物流企業編─働き方改革は経営者改革 一方、物流企業に必要になってくるのは、「残業なしで荷主の製・商品の納期を維持する。
ただし、社員の手取りは減らないようにする」ことである。
特別な投資を必要としない、中小の物流会社にも可能な具体的な対策は以下の通りである。
◦24時間稼働 これから物流業は設備投資を必要とする装置産業としての性格が色濃くなっていく。
装置産業の胆は稼働率である。
物流企業も他の装置産業と同様に24時間稼働を目指すことになる。
朝・昼・夜の3交代制を組んで車両や倉庫の回転率を上げる。
そのために戦略的に仕事を獲得する。
例えば、ドラッグストアの店舗納品は夜間に行われるため、これを昼間の仕事と組み合わせて車両回転率を上げる。
筆者の知る年商7億円のS運輸は、タイムマーケティングに基づく荷主の獲得により、①卸売市場→②新聞・雑誌輸送→③乳製品→④和日配→⑤給食→⑥一般荷主という、車両の6回転を実現している。
◦ドライバーの副業解禁 残業代が事実上の固定収入となっている運送会社では、残業規制によってドライバーの手取りが減ってしまう。
それを補うために、ドライバーの副業を解禁すべきである。
抜本的な改革を実施できる会社なのであれば、裁量労働制への移行を検討すべきだ。
現場労働者ではなく、“タスク(任務遂行)型”としてドライバー職を設計する。
一方で年間休日120日を段階的に達成する。
そうすれば優秀な人材を獲得できるようになる。
◦中継輸送 幹線輸送は人員を交代できる中継地を増やすことで体制を整える。
通常はコストアップになるが、同業他社との共同中継センターの設置、既存のトラックターミナルの活用などでコストを抑制することはできる。
◦車両の大型化 さらに幹線輸送においては1車両当たりの輸送量を増やす。
増トン車からセミトレーラー、フルトレーラーにシフトすれば、ドライバーの収入を維持できる。
ただし、大型牽引免許の取得コストが発生して、重大事故の危険性も上がる。
安全管理指導および研修の徹底がセットになる。
◦原価管理 24年問題に限ったことではないが、これを機に物流会社としての当然の企業努力として車両別のコストを可視化し、改善を進めて、損益分岐点を下げることが重要である。
◦荷主への協力要請 右の改善策の実施を前提に、既存荷主にも改善への協力を要請する。
協力が得られない場合、あるいはやれることは全てやった上でも足が出る分については値上げを要請する。
◦システム化 配送ルートを見直す。
ゼロベースで抜本的に見直すことがポイントである。
そのツールとして配車管理システムを導入する。
それをWMSと連携させることで、輸配送の総合的なマネジメントを実現すれば、さらに大きな効果がある。
以上の通りである。
ドライバーの残業規制は物流業界において過積載に次ぐ規模の厳しい規制になるだろう。
他の業種と違って物流業に対しては特別に5年間の適用猶予期間を与えた以上、担当省庁も満を持して取り締まるはずだ。
物流の働き方改革はドライバーを働かせる運送業経営者の改革でもあるのだ。
