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2021年11月号
特集

JR貨物 鉄道を軸にした総合物流企業へ転換

10本の「ブロックトレイン」を運行  日本貨物鉄道(JR貨物)は2021年1月、「JR貨物グループ長期ビジョン2030」(長期ビジョン)を公表した。
その中でJR貨物グループが目指す姿として「鉄道を基軸とした総合物流企業グループ」への発展を掲げている。
 実現に向けて重要な鍵となるのが鉄道貨物輸送サービス、物流不動産施設、そしてJR貨物グループ企業が持つトラックや倉庫といった各種アセットやノウハウを組み合わせた総合的な物流サービスの提案だ。
横断的な体制を構築するため、21年6月には新たに総合物流部を設置した。
 総合物流の展開においてもやはり大きな柱となるのは鉄道貨物輸送だ。
JR貨物は全国241の貨物駅を結び、1日当たり約420本の列車を運行している。
長期ビジョンの中で新たな輸送サービスの展開として打ち出しているのが「ブロックトレイン」の拡大だ。
 ブロックトレインは、特定の物流事業者や荷主企業が列車1編成のうち半数以上の輸送力をブロック(区画)で貸し切り、往復輸送するコンテナ列車のことを指す。
1編成全てを1社・1団体で貸し切るパターンと、列車1編成のうち半数以上が貸し切りで残りを一般販売する形式を設定している。
複数年の長期契約が基本で現在、10本のブロックトレインが運行している(図表)。
 往復買い切りのブロックトレインはJR貨物にとっては収益拡大や安定化につながる利点がある。
一方、利用者側も希望に沿った固定のダイヤでの鉄道コンテナ輸送を行うことができる。
繁忙期であっても輸送枠を確実に確保できる。
環境対応の取り組みアピールにもなる。
 最初のブロックトレインは04年に運行を開始した特急コンテナ列車「スーパーレールカーゴ」。
佐川急便がモーダルシフトの一環として活用を開始したもので、電車型貨物列車で東京(東京貨物ターミナル駅)─大阪(安治川口駅)間を結んでいる。
 続いて06年にトヨタ自動車関係の部品輸送専用列車の「TOYOTA LONG PASS EXPRESS 1号」が名古屋(名古屋南貨物駅)と盛岡(盛岡貨物ターミナル駅)間で運行を開始した。
しかし、貨物列車を専用で利用するには往復での安定した荷量が必須なため、その後は新たな事例がなかなか出てこなかった。
 そうした状況が2010年代に入って顕在化したドライバー不足によって変化した。
長距離トラック不足への対応策の一つとして、大手物流会社がブロックトレインの利用を開始した。
 福山通運は13年に東京(東京貨物ターミナル駅)─大阪(吹田貨物ターミナル駅)間で「福山レールエクスプレス1号」をスタート。
福山通運は15年、17年、そして21年3月にも区間を追加し、現在4本のブロックトレインを利用している。
 西濃運輸は18年から大阪(吹田貨物ターミナル駅)と宮城(仙台港駅)を結び、福島(郡山貨物ターミナル駅)を経由するブロックトレイン「カンガルーライナーSS60」の利用をスタートしている。
21年の3月と10月には「カンガルーライナーNF64」と「カンガルーライナーTF60」を加え、現在は3本のブロックトレインを利用している。
西濃運輸のブロックトレインは編成の一部が一般利用枠のタイプとなっている。
 今後のブロックトレインの展開について和氣総一朗執行役員鉄道ロジスティクス本部営業部長は「24年にはトラックドライバーの時間外労働の上限規制も控えており、鉄道は引き続きトラックなどからの有力なモーダルシフト先となるだろう。
お客さまの要望を聞きながら鉄道コンテナ輸送の選択肢の一つとしてブロックトレインの営業を進めていきたい」と語る。
 鉄道コンテナによる定温輸送にも力を入れていく計画だ。
現在、鉄道の定温輸送用コンテナは、エンジン式の冷凍機を搭載して約25度からマイナス25度までの温度設定が可能なコンテナサイズの冷凍庫、コンテナ内壁に断熱材を使用した冷蔵コンテナのURコンテナやスーパーURコンテナなどを使っている。
 JR貨物は今後、食品や医薬品などを中心に温度管理が必要な貨物輸送ニーズが増えると想定し、新たな輸送サービスの一つとして列車1編成全て定温コンテナとする「定温貨物列車」の新設を構想している。
定温貨物列車の新設に向けて利用荷主や往復での定温輸送ニーズがある区間の調査などを進めていく。
 環境負荷の低い輸送モードである鉄道の利点を前面に打ち出した新たな営業活動も開始している。
それが「貨物鉄道へのモーダルシフトによる効果シミュレーション」だ。
トラック輸送などから鉄道輸送に転換した場合のCO2排出量の削減効果に加え、欧州などの先行事例に基づいたカーボンプライシングに伴う潜在メリットを試算して提示する。
 和氣執行役員営業部長は「カーボンニュートラルやCO2削減がかつてないほど注目されている。
JR貨物としては環境負荷の低い輸送モードである鉄道のメリットを可能な限り広報しながら営業活動を展開していく」という。
マルチテナント型物流施設を展開  総合物流推進のもうひとつの柱が物流不動産施設だ。
JR貨物は貨物駅における物流結節点機能の強化を目的に「駅ナカ・駅チカ」物流施設の新たな展開を進めている。
貨物駅構内などに設置している物流施設の主力を従来のオーダーメード型からマルチテナント型へと転換する。
 JR貨物の物流施設開発は貨物駅構造の変化に伴う空きスペースの有効活用とともに始まった。
鉄道貨物輸送の主体が貨車から鉄道コンテナへ転換したことによって、貨車の運用で必要だった駅構内の設備の一部が不要になった。
そのスペースに物流施設を開発した。
荷捌き、保管、流通加工、積み替えなど総合的な物流機能を保有する大規模複合施設「エフ・プラザ」だ。
 1992年に本格的に開発がスタートした。
既に閉鎖した施設も一部あるが、これまでに札幌貨物ターミナル駅、隅田川駅、東京貨物ターミナル駅、梶ヶ谷貨物ターミナル駅、新座貨物ターミナル駅、京都貨物駅などで合計19物件、約14・5万坪のエフ・プラザを開発している。
 エフ・プラザは基本的に入居企業の要望に合わせた専用の施設を建設している。
オーダーメードのためそれぞれ仕様が異なる。
1棟1入居企業が基本となっている。
エフ・プラザはJR貨物にとっては十分な水準の賃料を収受できる反面、専用設計であるため退去後などに新たなテナントを見つけることが難しいという課題があった。
 そこで新たに開始したのがマルチテナント型物流施設「レールゲート」の開発だ。
その第1号物件が20年2月に東京貨物ターミナル駅構内で竣工した「東京レールゲートWEST」だ。
 敷地面積4万1802平方メートル、延べ床面積7万2039平方メートルの7階建て。
1フロア当たり24台のバースや4基のドックレベラーを配置した。
施設の両端には上りと下りの専用のランプウェイを設けている。
 1階と屋上は利用運送事業者のトラックや庫内スタッフの通勤車両などの駐車場となっており、2階から6階までがマルチテナント型物流施設となる。
BCP対応として各種免震装置や非常用発電機なども備える。
 小山靖仁事業開発本部開発部長は「東京レールゲートがある品川区八潮は東京港の国際ターミナルから目と鼻の先で、羽田空港からも近い。
陸の輸送に関しても鉄道はもちろん、首都高から全国に配送できる。
陸海空全てのモードを自由に選べる。
輸送モードの選択肢の広さは災害発生時などのリスク分散にも役立つ。
都心へアクセスしやすい立地なのでラストワンマイルの拠点にもなる。
こうした要素を入居企業から高く評価されている」と説明する。
 大手物流会社やJR貨物グループの日本運輸倉庫などが入居している。
東京貨物ターミナル駅は九州や関西方面の列車も多いため、入居テナントによる鉄道利用が増えるという効果も出てきているという。
 東京レールゲートWESTはテナント誘致もJR貨物が行っている。
そのため従来から鉄道輸送と縁のある企業が多く、JR貨物と接点がなかった顧客企業の利用拡大という点では成果が限定的だった。
 そこで、次の「東京レールゲートEAST」では三井不動産、「DPL札幌レールゲート」は大和ハウス工業との共同事業として進めている。
両社はリーシングも担当する。
「両社を事業パートナーとしたことで、われわれがこれまで接点がなかった会社の誘致が見込める」と小山開発部長は話す。
 DPL札幌レールゲートは22年5月に札幌貨物ターミナル駅構内で竣工する予定だ。
敷地面積5万348平方メートル、延べ床面積8万6916平方メートルの3階建て。
設備面の特徴としては降雪対応として、ランプウェイを屋根で覆う構造を採用する。
 東京レールゲートEASTは22年7月末の完成予定。
こちらは敷地面積7万6493平方メートル、延べ床面積17万4404平方メートルの5階建て。
既に稼働している東京レールゲートWEST以上の大規模施設となる。
 東京レールゲートEASTはダブルランプウェイ方式に加えて1階を両面バースとしているほか、1階北側の床には断熱材を入れることで冷蔵冷凍仕様に改良しやすい構造にしている。
CASBEE(建築環境総合性能評価システム)もAランクを取得する予定だ。
「レールゲート」の全国展開を構想  東京と札幌に続く施設についても検討が既にスタートしている。
時期は未定だが、仙台での開設について具体案を詰めていく方向だという。
仙台貨物ターミナル駅は移転計画が進んでおり、その移転先に新たなレールゲートを設置することを検討している。
 西日本エリアでも検討している。
現時点で候補に挙がっているのは九州と関西だ。
九州は福岡貨物ターミナル駅などが有力視されている。
関西については大阪と京都だけでも吹田貨物ターミナル駅、大阪貨物ターミナル駅、百済貨物ターミナル駅、安治川口駅、京都貨物駅など候補地が多く、本格的な選定はこれからの予定だ。
 レールゲートの開発に加えて、貨物駅の物流結節点機能向上策として「積替ステーション」の整備も進める。
こちらは倉庫施設ではなく鉄道コンテナの中身を通常のトラックの荷室に積み替えるための施設となる。
 駅間の鉄道コンテナ輸送の前後におけるトラック輸送では、コンテナを固定するための専用緊締装置を備えた特殊な車両(緊締車)が主に用いられている。
そのため利用できる車両が限定される。
貨物駅構内に積替ステーションを配置することで、通常のトラックでも鉄道コンテナ貨物の中身を運べるようになる。
鉄道輸送の使い勝手が向上する。
 新座貨物ターミナル駅(埼玉)の積替ステーションは積み替え用のフォークリフトも含めてJR貨物グループで運用しているフルスペックの施設だ。
東京に近いことから鉄道コンテナから2トン車や4トン車へ積み替えて、そのまま配送するといった運用も一部で行われている。
松山貨物駅(愛媛)では20年のリニューアル時に積替ステーションを新設した。
JR貨物各部門とグループ各社が連携  21年に新設された総合物流部は鉄道輸送サービス部門や物流施設部門と連携をとり、グループ会社が持つトラック輸送や倉庫機能なども含めたワンストップの物流サービスの提案を支援することを役割とする。
 五島洋次郎鉄道ロジスティクス本部総合物流部長は「JR貨物グループにはもともと鉄道輸送だけではない幅広い物流サービスを展開できる素地があった。
ただし、例えばトラック事業を展開するグループ会社の北海道の支店と倉庫事業を行うグループ会社の東京の倉庫が相互に連携するといったことは従来は難しかった。
これを改め、総合物流部が間に入ってつないでいく体制を整備した」という。
 総合物流部と開発部の連携から新たなビジネスに発展する事例も出てきつつあるという。
小山開発部長は「物流施設のテナントからは以前から鉄道輸送以外の物流サービスに関する要望が度々あがってきていた。
代表的な内容としては繁忙期の庫内作業の応援やトラック手配などだ。
しかし、従来の体制ではテナントから問い合わせが来ても、なかなか対応できなかった。
総合物流部が間に入って各部署やグループ会社を結びつける仕組みの整備によって、顧客のさまざまな要望に対応できるようになる」と話す。
 連携効果は鉄道輸送サービスにおいても発生している。
和氣執行役員営業部長は「これまでの営業活動は駅と駅の間の鉄道輸送が中心だった。
しかし、営業の仕方が変わりつつある。
各部門単位の枠組みでのビジネスではなく、物流に関わるお話ならまず全てご相談ください、そして提案するチャンスをくださいという形に変化している」という。
こうした「プラスアルファ」の提案を強化していくことで総合物流企業グループへの転換を推し進めていく方針だ。

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