2021年8月号
特集
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アリババ集団「菜鳥」のスマート物流
1日当たり平均500万件配達
菜鳥(Cainiao:ツァイニャオ)は、中国のアリババグループの物流子会社だ。
アリババのほかに、流通大手の銀泰集団、工業大手の富春集団、投資会社の復星集団、そして宅配大手の順豊(SF)、中通(ZTO)、円通(YTO)、申通(STO)、韵逹(Yunda)などが出資して2013年5月に深圳に設立した。
アリババグループにおいて菜鳥は、「Taobao(淘宝)」や「Tmall(天猫)」などのEC事業、「アリペイ(支付宝)」などのフィンテック事業、「アリババクラウド」のクラウド事業に続く、新たな中核事業として位置付けられている。
アリババグループが未来を託しているといっても過言ではない。
菜鳥の2021年3月期の売上高は、前年比68%増の372・58億元(約6334億円)で、アリババグループの売上高全体の約5%を占めている。
中国の民間調査機関大手、胡潤研究院(Hurun Report)の「2020年Hurunグローバル・ユニコーン・ランキング」で、菜鳥の企業価値は1900億元と評価されている。
前年より600億元増加して世界9位にランクした。
昨年度の菜鳥の取扱貨物量は1日平均500万件以上に達した。
菜鳥とは中国語で「新人」や「初心者」を意味しているが、創業から8年余りを経た今、同社は既にグローバル物流市場の一角を担い、一部の領域では業界をリードする存在となっている。
なぜ短期間でここまで成長することができたのか。
今年6月に菜鳥の主催で開催された2021年度の「Global Smart Logistics Summit」で、菜鳥の万霖(Lin Wan)CEOはその理由を次のように説明している。
●デジタル・スマート・イノベーション 物流・配達のデジタル化とスマート化を実現するイノベーションを励行する。
菜鳥の革新的な電子伝票(E-shipping Label)の発行枚数は今や1千億件に達し、「IoTスマート・デバイス・サービス」を3億人の消費者に届けている。
●マーケットの新規開拓 社会の需要を満足させる製品とサービスを開発して、新しいマーケットを創造する。
菜鳥のグローバル物流ネットワークは今や世界4位の規模であり、そのインテリジェント・サプライチェーン・サービスを生かして荷物の80%を翌日配達している。
●「インクルーシブサービス」の提供 誰もが便利に利用できるコストパフォーマンスの高いサービスを提供する。
荷物の集荷、宅配、一時保管などを、都市、住宅街、キャンパスなどで便利に行えるステーションやアプリを現在3億人に提供している。
●グローバルコラボレーションの推進 コラボレーションをグローバルレベルで推進し、より効率的な物流・配達サービスを提供する。
現在は世界3千社以上とパートナーシップを結んでいる。
菜鳥は自らを「顧客価値駆動型グローバル・インダストリアル・インターネット・カンパニー」と定義している。
顧客のニーズとバリューに立脚して、物流オペレーション、シナリオ、インフラとテクノロジーを融合し、中国物流産業のDXを推進する。
物流オペレーションそのものに重点を置くのではなく、「Taobao」や「Tmall」などのアリババのECプラットフォームと同様に、物流業に情報インフラやサプライチェーンシステムを提供するプラットフォーム型のビジネスモデルを取っている(図1、図2)。
アリババグループのEC業務から発生する膨大な物流トラフィックを武器にしながら、パートナーの物流会社とどうWin-Winの関係を構築できるか、利益共有の仕組みと協業の深さが、菜鳥のビジネス拡大のポイントとなると思われる。
ちなみに菜鳥に出資する宅配会社の持ち株比率はそれぞれ1%程度に限られている。
そのサービスとソリューション 現在、菜鳥は「中国全土24時間、全世界72時間」に配達するネットワークの実現を目指し、消費者向け、ネット通販ショップ向け、物流パートナー向けに、それぞれ以下のようなサービスを提供している。
●消費者向けサービス 宅配アプリ「菜鳥裹裹(Cainiao Guoguo)」と宅配ステーション「菜鳥駅站(Cainiao Post)」を組み合わせて、クラウドソーシングを利用した宅配サービスと荷物のピックアップサービスを提供している。
菜鳥裹裹は荷物の集荷や配達を指示するアプリ。
菜鳥ステーションは荷物の受け取りと発送ができる施設。
全国各地の商業施設や路面店、学校などに設置されている。
ラストマイル基地としての役割を果たす。
●ネット通販ショップ向けサービス ネット通販ショップのオーナーに、B2Cのフルフィルメントの他、O2O向け域内サービス、越境ECの国際物流サービス、金融サービス等を提供している。
中国国内の7カ所にハブセンターを置き、230カ所以上の倉庫をネットワークしている。
総保管面積は3千万平米以上。
総車両台数は23万台以上に上る。
●物流パートナー向けサービス 物流パートナー向けには、ハブセンターや倉庫などの物理的なリソースのほか、物流情報プラットフォーム、電子伝票、各種の物流指数や業界インサイトなどのシステムやデータを提供している。
決済や融資、ローンなどの金融サービスも提供している。
同社のロジスティクスクラウドに組み込まれた、通信、データ、地図情報、ロジスティクスアルゴリズム、IoTサービスの機能によって、これらのサービスが提供される。
さらに宅配、輸送、倉庫、生鮮・冷凍食品向け、ショップオーナー向けなどの各種のソリューションなどが提供されている。
これらの菜鳥のサービスやソリューションは、独自の「スマート・ロジスティクス・インフラストラクチャー」、「デジタル・ロジスティクス・サプライチェーン・システム」およびさまざまなロジスティクステクノロジーによって支えられている。
以下にそれぞれ紹介する。
そのインフラストラクチャー 菜鳥のスマート・ロジスティクス・インフラストラクチャーは、物理的なプラットフォームであり、中国国内においては「ロジスティクスパーク」「荷物中継パーク」「物流産業パーク」などの施設で構成されている。
一方、海外においては大型物流拠点「eHub」を、杭州、香港、クアラルンプール、バンコク、ドバイ、モスクワ、レーヨンなどに設置して、さらに「ローカル倉庫」を展開している。
日本でも既に、東京・大阪・横浜・神戸などに拠点を設けてサービスを提供している。
菜鳥は「世界中のどこへでもコーヒー1杯分の費用で届けるサービスを提供する」ことをミッションに掲げ、現在、世界各都市に「5ドル10日間以内・2ドル20日間以内」で配送する格安の国際輸送サービスを提供している。
デジタル・ロジスティクス・ サプライチェーン・システム スマート・ロジスティクス・インフラストラクチャーが、ハードウエア寄りのプラットフォームであるのに対して、デジタル・ロジスティクス・サプライチェーン・システムは、ソフトウエア寄りのプラットフォームである。
菜鳥は倉庫や物流センターのスペース、棚、設備、貨物の情報をリアルタイムに収集してデジタル空間上に物理空間を再現している。
いわゆる「デジタルツイン」を構築している。
その運用は中国の国内向けと、海外向けの二つに分けられる。
中国国内向けでは、輸送・在庫・宅配・セールス・ファイナンシングなどの機能を一体化して、データ分析やAI技術を活用した倉庫プランニング、需要予測、在庫最適化、商品スケジューリング、プロモーション連動などのソリューションを提供している(図3)。
海外向けには、海外各都市の「eHub」をベースに、トラック輸送、倉庫管理、通関手続き、現地集配など、ファーストマイルからラストマイルまでエンド・ツー・エンドのロジスティクスサービスをシステム上にまとめあげている(図4)。
AI活用と「アポロ計画」 菜鳥は、物流領域のAI企業と言ってもいいほどAIの活用に積極的に取り組み、物流・配達業界向けに「ロジスティクス・ブレイン」を開発している。
荷物、車両、倉庫、配送員などの物流・配送状況をオンライン化して作業の最適化を図り、物流コストの低減と配達効率の向上を目指す。
需要分布、全チャネル在庫、オペレーションを可視化して、計画・在庫・配送を分析、商品補充・連動予測・在庫合理性チェック・ルートプランニングなどの意思決定を下す。
ロジスティクス・ブレインには菜鳥が開発した無人倉庫、ビデオ監視システム「天眼システム」、AR物流システム、スマート梱包システム、AGVロボット(無人搬送車)、配送ロボット「菜鳥小G」などの多くの製品や技術が組み込まれている。
ネット通販ショップオーナー向けには「デジタル・サプライチェーン・センター(DSCC)」が重要な役割を果たす(図5)。
需要予測、在庫診断、物流・宅配の監視と追跡、消費者体験の提供などの場面において、異常検知、データ分析、意思決定支援などのサービスをワンストップで提供する。
DSCCを利用することにより、フルサプライチェーンにわたるオンラインデータとオフラインデータの融合、商流と物流の融合およびサプライチェーンの総合的な効率アップを実現できる。
スマホなどのモバイル端末で、いつでもどこでも自社のサプライチェーンの状況を確認することができるので、ショップオーナーにとって非常に重要なビジネスツールとして重宝されている。
菜鳥は昨年、東南アジア・南アジアの11カ国にロジスティクス・ブレインを提供する「アポロ計画」を遂行した。
6カ月間にわたり600名のエンジニアを投入して、10億人をカバーするシステムをスピーディーに構築した(図6)。
ロジスティクス・ブレインを導入した国々では中国と同様に、ショップオーナー、物流会社、配達会社、倉庫会社、コンシューマーがシステムでつながった。
オーダーの自動配分、発送ルートのスマートプランニング、重量・サイズの自動測定、発送費用のワンクリック調整などが実現した。
荷物にはユニークなデジタルIDが付けられるようになり、購買・物流・配達のフルプロセスで認識・管理されるようになった。
いつでもどこでもリアルタイムに荷物の搬送・配達状況を確認することが可能になった。
スマート・ロジスティクス・テクノロジー 菜鳥のスマート・ロジスティクス・テクノロジーには、前述したデジタル・ロジスティク・サプライチェーン・システム、ロジスティクス・ブレインなどのほかに、各種のスマートデバイスの開発も含まれる。
現在、IoTデバイス、自動化デバイス、無人化デバイスなどの製品ポートフォリオを提供している(図7)。
そのうちIoTデバイスには「PDA(Personal Digital Assistant)」、ウェアラブルデバイス、スタンドスキャナー、ドローン、電子伝票プリンターなどがある。
「CAINIAO LEMO」は物流情報を効率的に収集・連動するPDAデバイスだ。
Bluetooth AoA(Angle of Arrival)技術と菜鳥のデジタル・スペース・マネジメント・システムを利用し、オンラインとオフラインのデータをリアルタイムに融合することにより、庫内の作業員の作業効率を大幅に向上できる。
LEMOを通じて、各地の物流センターや倉庫に作業タスクが自動的に配分されて、振動や光などの案内により、経験のない作業員でも荷物のピッキングや商品の補充などを簡単に行える。
作業員はLEMOを持って顔認識で物理空間に入ると、システムが自動的にPDAチップを検知、作業タスクを配分する。
アクーストオプトエレクトロニクス(Acousto-Optoelectronic)技術で対象貨物を自動的に認識したり、WMSシステムに自動的に登録したりすることにより、作業員の作業負荷を大幅に低減する。
LEMOには、菜鳥が自社開発した軽量型IoTオペレーティングシステム「CAINIAO LEMO OS=CNThings」が搭載されている。
倉庫や物流センターで利用する各種デバイスと菜鳥のデジタル・ロジスティクス・サプライチェーン・システムとのつながりをサポートし、PDAデバイスのパフォーマンスを最大限に引き出す。
こうして菜鳥は最新テクノロジーを駆使してグローバルな物流基幹網とサプライチェーン・システムを構築している。
その成長は果たしてどこまで続くのか。
その動向を引き続き注視したい。
アリババのほかに、流通大手の銀泰集団、工業大手の富春集団、投資会社の復星集団、そして宅配大手の順豊(SF)、中通(ZTO)、円通(YTO)、申通(STO)、韵逹(Yunda)などが出資して2013年5月に深圳に設立した。
アリババグループにおいて菜鳥は、「Taobao(淘宝)」や「Tmall(天猫)」などのEC事業、「アリペイ(支付宝)」などのフィンテック事業、「アリババクラウド」のクラウド事業に続く、新たな中核事業として位置付けられている。
アリババグループが未来を託しているといっても過言ではない。
菜鳥の2021年3月期の売上高は、前年比68%増の372・58億元(約6334億円)で、アリババグループの売上高全体の約5%を占めている。
中国の民間調査機関大手、胡潤研究院(Hurun Report)の「2020年Hurunグローバル・ユニコーン・ランキング」で、菜鳥の企業価値は1900億元と評価されている。
前年より600億元増加して世界9位にランクした。
昨年度の菜鳥の取扱貨物量は1日平均500万件以上に達した。
菜鳥とは中国語で「新人」や「初心者」を意味しているが、創業から8年余りを経た今、同社は既にグローバル物流市場の一角を担い、一部の領域では業界をリードする存在となっている。
なぜ短期間でここまで成長することができたのか。
今年6月に菜鳥の主催で開催された2021年度の「Global Smart Logistics Summit」で、菜鳥の万霖(Lin Wan)CEOはその理由を次のように説明している。
●デジタル・スマート・イノベーション 物流・配達のデジタル化とスマート化を実現するイノベーションを励行する。
菜鳥の革新的な電子伝票(E-shipping Label)の発行枚数は今や1千億件に達し、「IoTスマート・デバイス・サービス」を3億人の消費者に届けている。
●マーケットの新規開拓 社会の需要を満足させる製品とサービスを開発して、新しいマーケットを創造する。
菜鳥のグローバル物流ネットワークは今や世界4位の規模であり、そのインテリジェント・サプライチェーン・サービスを生かして荷物の80%を翌日配達している。
●「インクルーシブサービス」の提供 誰もが便利に利用できるコストパフォーマンスの高いサービスを提供する。
荷物の集荷、宅配、一時保管などを、都市、住宅街、キャンパスなどで便利に行えるステーションやアプリを現在3億人に提供している。
●グローバルコラボレーションの推進 コラボレーションをグローバルレベルで推進し、より効率的な物流・配達サービスを提供する。
現在は世界3千社以上とパートナーシップを結んでいる。
菜鳥は自らを「顧客価値駆動型グローバル・インダストリアル・インターネット・カンパニー」と定義している。
顧客のニーズとバリューに立脚して、物流オペレーション、シナリオ、インフラとテクノロジーを融合し、中国物流産業のDXを推進する。
物流オペレーションそのものに重点を置くのではなく、「Taobao」や「Tmall」などのアリババのECプラットフォームと同様に、物流業に情報インフラやサプライチェーンシステムを提供するプラットフォーム型のビジネスモデルを取っている(図1、図2)。
アリババグループのEC業務から発生する膨大な物流トラフィックを武器にしながら、パートナーの物流会社とどうWin-Winの関係を構築できるか、利益共有の仕組みと協業の深さが、菜鳥のビジネス拡大のポイントとなると思われる。
ちなみに菜鳥に出資する宅配会社の持ち株比率はそれぞれ1%程度に限られている。
そのサービスとソリューション 現在、菜鳥は「中国全土24時間、全世界72時間」に配達するネットワークの実現を目指し、消費者向け、ネット通販ショップ向け、物流パートナー向けに、それぞれ以下のようなサービスを提供している。
●消費者向けサービス 宅配アプリ「菜鳥裹裹(Cainiao Guoguo)」と宅配ステーション「菜鳥駅站(Cainiao Post)」を組み合わせて、クラウドソーシングを利用した宅配サービスと荷物のピックアップサービスを提供している。
菜鳥裹裹は荷物の集荷や配達を指示するアプリ。
菜鳥ステーションは荷物の受け取りと発送ができる施設。
全国各地の商業施設や路面店、学校などに設置されている。
ラストマイル基地としての役割を果たす。
●ネット通販ショップ向けサービス ネット通販ショップのオーナーに、B2Cのフルフィルメントの他、O2O向け域内サービス、越境ECの国際物流サービス、金融サービス等を提供している。
中国国内の7カ所にハブセンターを置き、230カ所以上の倉庫をネットワークしている。
総保管面積は3千万平米以上。
総車両台数は23万台以上に上る。
●物流パートナー向けサービス 物流パートナー向けには、ハブセンターや倉庫などの物理的なリソースのほか、物流情報プラットフォーム、電子伝票、各種の物流指数や業界インサイトなどのシステムやデータを提供している。
決済や融資、ローンなどの金融サービスも提供している。
同社のロジスティクスクラウドに組み込まれた、通信、データ、地図情報、ロジスティクスアルゴリズム、IoTサービスの機能によって、これらのサービスが提供される。
さらに宅配、輸送、倉庫、生鮮・冷凍食品向け、ショップオーナー向けなどの各種のソリューションなどが提供されている。
これらの菜鳥のサービスやソリューションは、独自の「スマート・ロジスティクス・インフラストラクチャー」、「デジタル・ロジスティクス・サプライチェーン・システム」およびさまざまなロジスティクステクノロジーによって支えられている。
以下にそれぞれ紹介する。
そのインフラストラクチャー 菜鳥のスマート・ロジスティクス・インフラストラクチャーは、物理的なプラットフォームであり、中国国内においては「ロジスティクスパーク」「荷物中継パーク」「物流産業パーク」などの施設で構成されている。
一方、海外においては大型物流拠点「eHub」を、杭州、香港、クアラルンプール、バンコク、ドバイ、モスクワ、レーヨンなどに設置して、さらに「ローカル倉庫」を展開している。
日本でも既に、東京・大阪・横浜・神戸などに拠点を設けてサービスを提供している。
菜鳥は「世界中のどこへでもコーヒー1杯分の費用で届けるサービスを提供する」ことをミッションに掲げ、現在、世界各都市に「5ドル10日間以内・2ドル20日間以内」で配送する格安の国際輸送サービスを提供している。
デジタル・ロジスティクス・ サプライチェーン・システム スマート・ロジスティクス・インフラストラクチャーが、ハードウエア寄りのプラットフォームであるのに対して、デジタル・ロジスティクス・サプライチェーン・システムは、ソフトウエア寄りのプラットフォームである。
菜鳥は倉庫や物流センターのスペース、棚、設備、貨物の情報をリアルタイムに収集してデジタル空間上に物理空間を再現している。
いわゆる「デジタルツイン」を構築している。
その運用は中国の国内向けと、海外向けの二つに分けられる。
中国国内向けでは、輸送・在庫・宅配・セールス・ファイナンシングなどの機能を一体化して、データ分析やAI技術を活用した倉庫プランニング、需要予測、在庫最適化、商品スケジューリング、プロモーション連動などのソリューションを提供している(図3)。
海外向けには、海外各都市の「eHub」をベースに、トラック輸送、倉庫管理、通関手続き、現地集配など、ファーストマイルからラストマイルまでエンド・ツー・エンドのロジスティクスサービスをシステム上にまとめあげている(図4)。
AI活用と「アポロ計画」 菜鳥は、物流領域のAI企業と言ってもいいほどAIの活用に積極的に取り組み、物流・配達業界向けに「ロジスティクス・ブレイン」を開発している。
荷物、車両、倉庫、配送員などの物流・配送状況をオンライン化して作業の最適化を図り、物流コストの低減と配達効率の向上を目指す。
需要分布、全チャネル在庫、オペレーションを可視化して、計画・在庫・配送を分析、商品補充・連動予測・在庫合理性チェック・ルートプランニングなどの意思決定を下す。
ロジスティクス・ブレインには菜鳥が開発した無人倉庫、ビデオ監視システム「天眼システム」、AR物流システム、スマート梱包システム、AGVロボット(無人搬送車)、配送ロボット「菜鳥小G」などの多くの製品や技術が組み込まれている。
ネット通販ショップオーナー向けには「デジタル・サプライチェーン・センター(DSCC)」が重要な役割を果たす(図5)。
需要予測、在庫診断、物流・宅配の監視と追跡、消費者体験の提供などの場面において、異常検知、データ分析、意思決定支援などのサービスをワンストップで提供する。
DSCCを利用することにより、フルサプライチェーンにわたるオンラインデータとオフラインデータの融合、商流と物流の融合およびサプライチェーンの総合的な効率アップを実現できる。
スマホなどのモバイル端末で、いつでもどこでも自社のサプライチェーンの状況を確認することができるので、ショップオーナーにとって非常に重要なビジネスツールとして重宝されている。
菜鳥は昨年、東南アジア・南アジアの11カ国にロジスティクス・ブレインを提供する「アポロ計画」を遂行した。
6カ月間にわたり600名のエンジニアを投入して、10億人をカバーするシステムをスピーディーに構築した(図6)。
ロジスティクス・ブレインを導入した国々では中国と同様に、ショップオーナー、物流会社、配達会社、倉庫会社、コンシューマーがシステムでつながった。
オーダーの自動配分、発送ルートのスマートプランニング、重量・サイズの自動測定、発送費用のワンクリック調整などが実現した。
荷物にはユニークなデジタルIDが付けられるようになり、購買・物流・配達のフルプロセスで認識・管理されるようになった。
いつでもどこでもリアルタイムに荷物の搬送・配達状況を確認することが可能になった。
スマート・ロジスティクス・テクノロジー 菜鳥のスマート・ロジスティクス・テクノロジーには、前述したデジタル・ロジスティク・サプライチェーン・システム、ロジスティクス・ブレインなどのほかに、各種のスマートデバイスの開発も含まれる。
現在、IoTデバイス、自動化デバイス、無人化デバイスなどの製品ポートフォリオを提供している(図7)。
そのうちIoTデバイスには「PDA(Personal Digital Assistant)」、ウェアラブルデバイス、スタンドスキャナー、ドローン、電子伝票プリンターなどがある。
「CAINIAO LEMO」は物流情報を効率的に収集・連動するPDAデバイスだ。
Bluetooth AoA(Angle of Arrival)技術と菜鳥のデジタル・スペース・マネジメント・システムを利用し、オンラインとオフラインのデータをリアルタイムに融合することにより、庫内の作業員の作業効率を大幅に向上できる。
LEMOを通じて、各地の物流センターや倉庫に作業タスクが自動的に配分されて、振動や光などの案内により、経験のない作業員でも荷物のピッキングや商品の補充などを簡単に行える。
作業員はLEMOを持って顔認識で物理空間に入ると、システムが自動的にPDAチップを検知、作業タスクを配分する。
アクーストオプトエレクトロニクス(Acousto-Optoelectronic)技術で対象貨物を自動的に認識したり、WMSシステムに自動的に登録したりすることにより、作業員の作業負荷を大幅に低減する。
LEMOには、菜鳥が自社開発した軽量型IoTオペレーティングシステム「CAINIAO LEMO OS=CNThings」が搭載されている。
倉庫や物流センターで利用する各種デバイスと菜鳥のデジタル・ロジスティクス・サプライチェーン・システムとのつながりをサポートし、PDAデバイスのパフォーマンスを最大限に引き出す。
こうして菜鳥は最新テクノロジーを駆使してグローバルな物流基幹網とサプライチェーン・システムを構築している。
その成長は果たしてどこまで続くのか。
その動向を引き続き注視したい。
