2021年7月号
特集
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流通経済大流通情報学部の産学連携プログラム
客員講師の実務家90人が講義
流通経済大の流通情報学部ではロジスティクスを柱とする体系的な教育課程を構築している。
同学部は1996年の設置当初から流通、物流、情報を軸とした科目群を整備し、2000年には「ロジスティクス」の概念を学部の指導方針の中心に据えた。
同年には大学院修士課程、02年には博士後期課程を開設している。
学部の開設以来、社会的な環境変化や学生のニーズに合わせる形でカリキュラムの見直しを行ってきた。
1996年に学部を開設した時点では「物的流通論」「物流事業論」など、科目名に物流という言葉を使用するとともに「海運論」「航空輸送論」「倉庫論」など、物流の事業分野別に講座を編成していた。
それを2000年にロジスティクスの概念を強く意識した科目構成に再編した。
2年生以上の演習に全て「ロジスティクス」を冠したほか、1年生の必修科目として「ロジスティクス概論」を設けた。
さらに分類も従来の物流事業ごとではなく、荷主企業、物流企業、国際といったテーマ別に再編している。
この科目構成の考え方は現在も継続されている。
2回目の大きな見直しが現在の流通情報学部の最大の特徴でもある産学連携プログラムに基づいたカリキュラムの導入だ。
それまでは一般的な座学が中心だったため、学生にはイメージがつかみにくく、ロジスティクスの面白さが十分伝わらないという課題があった。
そこで新たに独自の産学連携プログラムを開発。
同プログラムに基づく実践科目などを08年度から大幅に拡充した。
この取り組みは経済産業省の産学連携人材育成事業としても認定を受けた。
「サプライチェーン・ロジスティクス人材育成プログラム」として具体的な講義内容や産学連携の進め方や教育方法の検討を行い、10年度から「ロジスティクス産学連携プログラム」として正式に運用されている。
さらに11年度には企業と大学が緊密に情報交換を行い、授業内容の見直しを常に行うための組織体制「ロジスティクス産学連携コンソーシアム」を構築している。
流通情報学部の産学連携プログラムの柱は大きく三つある。
一つは総勢90人にも達する客員講師が講義を担当する実践講座だ。
最新動向を実例に基づいて学べることが最大の特徴だ。
主に次のような講座を開設している。
・ 「物流マネジメント実践講座」 トラックや鉄道、3PLなどの物流事業者や有識者を招いてロジスティクス管理の現状を学ぶ。
・ 「国際物流実践講座」 国際物流に関わる経営者や実務経験者を講師とし、国際物流の最新動向や事例について学ぶ。
・ 「情報システム実践講座」 物流分野で利用されている情報システムや要素技術について実務家が講義する。
・ 「ダイレクトマーケティング実践講座」 ネット通販などのダイレクトマーケティングをテーマに通販業界の実務家が教壇に立つ。
18年度から始まった新しい実践講座もある。
「IoTロジスティクス実践講座」と「地域ロジスティクス実践講座」だ。
「IoTロジスティクス実践講座」はIoT、ロボット、AIなどのロジスティクス活用について客員講師が最新動向を解説する。
19年度の同講座の内容と講演者は表1の通り。
「地域ロジスティクス実践講座」は流通経済大が龍ヶ崎キャンパスを置く茨城県を中心としたロジスティクス事例を講義する内容で荷主企業のカスミやアダストリアなどから講師を招いている(表2)。
「流通情報学部は一般的な他の学部と比較すると非常勤講師が少なく、企業から招いた実務家を中心とする客員講師の数が非常に多い。
意識してそうしている」と流通情報学部長の矢野裕児教授は語る。
企業現場訪問や現場改善演習も実施 産学連携プログラムの二つ目の柱は「ロジスティクス企業訪問講座」だ。
企業がロジスティクスをどのように捉えてシステムを構築しているのかを企業訪問を通じて考察する。
20年度は新型コロナの影響によって非開講となったが、例年は授業期間中の土曜日や夏季休暇中の8月から10月ごろまでの集中講義方式で開講している。
同プログラムの三つ目の柱「ロジスティクス改善演習」では物流現場で発生する具体的な課題を題材として取り上げ、現状の問題点の整理を行い、改善案を提案する。
演習形式で行うことで物流システムに関する理解を深めるとともに分析手法を習得する。
ミニチュアシミュレーターを用いた倉庫内のラック配置の計画立案と作成、サプライチェーンゲームを活用した分析、事例データを活用したモーダルシフトによるCO2排出量の削減計算などを行っている。
産学連携の新しい講義の試みの一つとして、20年度からは日本貿易振興機構(ジェトロ)の協力を得てケースメソッド型の新たな科目「プロジェクト学習」を開始した。
ジェトロから講師を招き、グループワークで特定テーマのプロジェクトの進行について実践形式で発表し、講評を受ける。
初年度のテーマは「千葉県産品の輸出」だった。
初めての試みのため、グループワークでは主に輸出産品や輸出先の選定までだったが、今後は輸出先までの物流や決済、流通ルートを含めた内容まで深堀りしていく方針だ。
流通情報学部にはロジスティクス教育課程を目的に入学してくる留学生も多い。
グループワークでは中国や韓国、ベトナム、モンゴルなどからの留学生と日本人学生によるディスカッションも行われている。
内容に関する試行錯誤を続けるとともに、第2弾としてロジスティクスのイノベーションをテーマとしたグループワークの実施を検討している。
「高度な物流人材の育成は非常に重要なテーマではある。
ただ、大事なのは物流業界や企業のロジスティクスについて学生に興味を持ってもらうこと。
これが第1段階。
高度な物流人材の育成はその次の段階だ。
ロジスティクスの世界はこんなに高度なことをやっていて、こんなにも面白いのだということを学生に伝える必要がある。
そして興味を持った学生が具体的に学ぶ際には実践講座や演習、企業の現場訪問は非常に効果があると考えている」と矢野教授は説明する。
研究拠点形成と人材育成を推進 流通経済大の流通情報学部は18年に独自色を打ち出した取り組みを進める私立大学を文部科学省が支援する「私立大学研究ブランディング事業」に選定されている。
高度なロジスティクス実現に向けた研究拠点としての役割と人材育成が主なテーマとなる。
社会システムとロジスティクスに関する研究拠点に関しては「ロジスティクスの高度化」「社会、生活を支えるロジスティクス」「新たな分野でのロジスティクス展開」の三つを掲げている。
そのうちの「ロジスティクスの高度化」についてはIoTやAI、物流ロボットの発展がロジスティクスにどのような変革をもたらすか、さらにロジスティクス変革が経済や産業全体に与える影響などについて検討する。
外部の企業関係者が委員として参画するワーキンググループを設置するとともに、座談会や「ロジスティクス×社会システム研究会」を定期開催し、その内容をオンラインで発信した。
さらにロジスティクス分野以外の講師も招いて、ロジスティクスイノベーションのロードマップ作成も進めている。
「『物流、ロジスティクス教育の流通経済大』というのは、一定程度浸透してきたと思う。
その次の段階に進むため『ロジスティクスの未来をつくる大学』としてのブランドを確立することを目標に掲げた。
研究拠点としての役割を果たし、主導的に情報を発信するとともに、人材育成の取り組みを推し進める。
現役の大学生に対しては産学連携プログラムを軸に構築した企業講師による実践講座を引き続き拡充していくとともに、高校生などに向けた取り組みも進めたい」と矢野教授は明かす。
既に実施している高校生や小中学生向けの取り組みも複数ある。
流通情報学部の教員がロジスティクスを解説する10分程度の動画コンテンツを作成し、ウェブサイトなどで公開。
さらに新聞社とも連携し、小学生向け出版物での物流に関するコンテンツ作成に携わり、その第1弾も発刊された。
流通情報学部の今後については産学連携プログラムをさらに拡充する方針だ。
「産学連携プログラムは流通情報学部の最大の特徴なので、この仕組みを大前提としつつロジスティクスの最新動向にカリキュラムを対応させていきたい。
流通情報学部の教育課程には流通系、物流系と情報系という大きな柱があり、それぞれを学べることが特色だ。
ただ、これからの時代は流通・物流と情報をかけ合わせること、つまりリアルとバーチャルが融合した部分が非常に重要になる。
具体的には『流通・物流×情報』を核としたロジスティクスカリキュラムの姿を描いている。
社会が変わることでロジスティクスも変わる。
その動きに対応した新しい教育課程を練り上げるための取り組みをこれから本格的に始めたい」と矢野教授は今後のロジスティクス教育の展望を語った。
同学部は1996年の設置当初から流通、物流、情報を軸とした科目群を整備し、2000年には「ロジスティクス」の概念を学部の指導方針の中心に据えた。
同年には大学院修士課程、02年には博士後期課程を開設している。
学部の開設以来、社会的な環境変化や学生のニーズに合わせる形でカリキュラムの見直しを行ってきた。
1996年に学部を開設した時点では「物的流通論」「物流事業論」など、科目名に物流という言葉を使用するとともに「海運論」「航空輸送論」「倉庫論」など、物流の事業分野別に講座を編成していた。
それを2000年にロジスティクスの概念を強く意識した科目構成に再編した。
2年生以上の演習に全て「ロジスティクス」を冠したほか、1年生の必修科目として「ロジスティクス概論」を設けた。
さらに分類も従来の物流事業ごとではなく、荷主企業、物流企業、国際といったテーマ別に再編している。
この科目構成の考え方は現在も継続されている。
2回目の大きな見直しが現在の流通情報学部の最大の特徴でもある産学連携プログラムに基づいたカリキュラムの導入だ。
それまでは一般的な座学が中心だったため、学生にはイメージがつかみにくく、ロジスティクスの面白さが十分伝わらないという課題があった。
そこで新たに独自の産学連携プログラムを開発。
同プログラムに基づく実践科目などを08年度から大幅に拡充した。
この取り組みは経済産業省の産学連携人材育成事業としても認定を受けた。
「サプライチェーン・ロジスティクス人材育成プログラム」として具体的な講義内容や産学連携の進め方や教育方法の検討を行い、10年度から「ロジスティクス産学連携プログラム」として正式に運用されている。
さらに11年度には企業と大学が緊密に情報交換を行い、授業内容の見直しを常に行うための組織体制「ロジスティクス産学連携コンソーシアム」を構築している。
流通情報学部の産学連携プログラムの柱は大きく三つある。
一つは総勢90人にも達する客員講師が講義を担当する実践講座だ。
最新動向を実例に基づいて学べることが最大の特徴だ。
主に次のような講座を開設している。
・ 「物流マネジメント実践講座」 トラックや鉄道、3PLなどの物流事業者や有識者を招いてロジスティクス管理の現状を学ぶ。
・ 「国際物流実践講座」 国際物流に関わる経営者や実務経験者を講師とし、国際物流の最新動向や事例について学ぶ。
・ 「情報システム実践講座」 物流分野で利用されている情報システムや要素技術について実務家が講義する。
・ 「ダイレクトマーケティング実践講座」 ネット通販などのダイレクトマーケティングをテーマに通販業界の実務家が教壇に立つ。
18年度から始まった新しい実践講座もある。
「IoTロジスティクス実践講座」と「地域ロジスティクス実践講座」だ。
「IoTロジスティクス実践講座」はIoT、ロボット、AIなどのロジスティクス活用について客員講師が最新動向を解説する。
19年度の同講座の内容と講演者は表1の通り。
「地域ロジスティクス実践講座」は流通経済大が龍ヶ崎キャンパスを置く茨城県を中心としたロジスティクス事例を講義する内容で荷主企業のカスミやアダストリアなどから講師を招いている(表2)。
「流通情報学部は一般的な他の学部と比較すると非常勤講師が少なく、企業から招いた実務家を中心とする客員講師の数が非常に多い。
意識してそうしている」と流通情報学部長の矢野裕児教授は語る。
企業現場訪問や現場改善演習も実施 産学連携プログラムの二つ目の柱は「ロジスティクス企業訪問講座」だ。
企業がロジスティクスをどのように捉えてシステムを構築しているのかを企業訪問を通じて考察する。
20年度は新型コロナの影響によって非開講となったが、例年は授業期間中の土曜日や夏季休暇中の8月から10月ごろまでの集中講義方式で開講している。
同プログラムの三つ目の柱「ロジスティクス改善演習」では物流現場で発生する具体的な課題を題材として取り上げ、現状の問題点の整理を行い、改善案を提案する。
演習形式で行うことで物流システムに関する理解を深めるとともに分析手法を習得する。
ミニチュアシミュレーターを用いた倉庫内のラック配置の計画立案と作成、サプライチェーンゲームを活用した分析、事例データを活用したモーダルシフトによるCO2排出量の削減計算などを行っている。
産学連携の新しい講義の試みの一つとして、20年度からは日本貿易振興機構(ジェトロ)の協力を得てケースメソッド型の新たな科目「プロジェクト学習」を開始した。
ジェトロから講師を招き、グループワークで特定テーマのプロジェクトの進行について実践形式で発表し、講評を受ける。
初年度のテーマは「千葉県産品の輸出」だった。
初めての試みのため、グループワークでは主に輸出産品や輸出先の選定までだったが、今後は輸出先までの物流や決済、流通ルートを含めた内容まで深堀りしていく方針だ。
流通情報学部にはロジスティクス教育課程を目的に入学してくる留学生も多い。
グループワークでは中国や韓国、ベトナム、モンゴルなどからの留学生と日本人学生によるディスカッションも行われている。
内容に関する試行錯誤を続けるとともに、第2弾としてロジスティクスのイノベーションをテーマとしたグループワークの実施を検討している。
「高度な物流人材の育成は非常に重要なテーマではある。
ただ、大事なのは物流業界や企業のロジスティクスについて学生に興味を持ってもらうこと。
これが第1段階。
高度な物流人材の育成はその次の段階だ。
ロジスティクスの世界はこんなに高度なことをやっていて、こんなにも面白いのだということを学生に伝える必要がある。
そして興味を持った学生が具体的に学ぶ際には実践講座や演習、企業の現場訪問は非常に効果があると考えている」と矢野教授は説明する。
研究拠点形成と人材育成を推進 流通経済大の流通情報学部は18年に独自色を打ち出した取り組みを進める私立大学を文部科学省が支援する「私立大学研究ブランディング事業」に選定されている。
高度なロジスティクス実現に向けた研究拠点としての役割と人材育成が主なテーマとなる。
社会システムとロジスティクスに関する研究拠点に関しては「ロジスティクスの高度化」「社会、生活を支えるロジスティクス」「新たな分野でのロジスティクス展開」の三つを掲げている。
そのうちの「ロジスティクスの高度化」についてはIoTやAI、物流ロボットの発展がロジスティクスにどのような変革をもたらすか、さらにロジスティクス変革が経済や産業全体に与える影響などについて検討する。
外部の企業関係者が委員として参画するワーキンググループを設置するとともに、座談会や「ロジスティクス×社会システム研究会」を定期開催し、その内容をオンラインで発信した。
さらにロジスティクス分野以外の講師も招いて、ロジスティクスイノベーションのロードマップ作成も進めている。
「『物流、ロジスティクス教育の流通経済大』というのは、一定程度浸透してきたと思う。
その次の段階に進むため『ロジスティクスの未来をつくる大学』としてのブランドを確立することを目標に掲げた。
研究拠点としての役割を果たし、主導的に情報を発信するとともに、人材育成の取り組みを推し進める。
現役の大学生に対しては産学連携プログラムを軸に構築した企業講師による実践講座を引き続き拡充していくとともに、高校生などに向けた取り組みも進めたい」と矢野教授は明かす。
既に実施している高校生や小中学生向けの取り組みも複数ある。
流通情報学部の教員がロジスティクスを解説する10分程度の動画コンテンツを作成し、ウェブサイトなどで公開。
さらに新聞社とも連携し、小学生向け出版物での物流に関するコンテンツ作成に携わり、その第1弾も発刊された。
流通情報学部の今後については産学連携プログラムをさらに拡充する方針だ。
「産学連携プログラムは流通情報学部の最大の特徴なので、この仕組みを大前提としつつロジスティクスの最新動向にカリキュラムを対応させていきたい。
流通情報学部の教育課程には流通系、物流系と情報系という大きな柱があり、それぞれを学べることが特色だ。
ただ、これからの時代は流通・物流と情報をかけ合わせること、つまりリアルとバーチャルが融合した部分が非常に重要になる。
具体的には『流通・物流×情報』を核としたロジスティクスカリキュラムの姿を描いている。
社会が変わることでロジスティクスも変わる。
その動きに対応した新しい教育課程を練り上げるための取り組みをこれから本格的に始めたい」と矢野教授は今後のロジスティクス教育の展望を語った。
