2021年7月号
特集
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海外論文 ロジスティクス専攻学生のインターンシップ
イントロダクション
大学のロジスティクス教育プログラムは、ロジスティクスとサプライチェーンに関する基本的な知識とスキルを備えた人材を輩出する。
そのロジスティクス教育で一番大事なことは、稼げる仕事を得るのに必要不可欠なスキルを授けるということである。
多くの企業が抱える最大の課題の一つは人材確保である。
そこで実務家だけでなく教育者にとっても重要なことは、ロジスティクスのキャリアを希望する学生たちが何を求めているのか、それをしっかりと把握することである。
そうすることが、ロジスティクスとサプライチェーンという職種に、最良の人材を惹きつけることにつながる。
サプライチェーンの人材確保で障害となるのが、職業選択に影響を与える要因に関する情報があまりないことである。
より正確に言えば、サプライチェーンの人材に関する研究のほとんどは、企業側が必要とするスキルを対象にしているのである。
タレントマネジメントにはサプライチェーンスキルの研究が必要不可欠であるとしても、ある重大な問いへの回答の役には立たない。
その問いとはつまり、サプライチェーンを志す学生は何を求めているのかということである。
また就職希望者のニーズを知ることは、タレントマネジメントにも寄与することになる。
企業側はこの情報を利用することで、インターンシップや入社後のポジションを、できるだけ学生の希望に近づけることができるようになるからである。
先行研究 ロジスティクスのキャリア SCM分野のキャリアに関する研究の大半は、雇用側が求めるスキルに焦点を当てている。
そこに含まれるものは問題解決、コミュニケーション、企画、学習能力、意思決定、チームワーク、社会的スキル、時間管理、モチベーション、リーダーシップ、顧客サービスなどである。
ところがロジスティクス志望者が実際に身につけているスキルは、雇用側の求めるそれとは必ずしも一致しない。
そのことが、研究により明らかになっている。
ロジスティクスキャリアの職業選択に関する数少ない研究では、企業文化、昇進、初任給など、職業選択に関わるいくつかの要因が特定されている。
ロジスティクス志望の新卒者がこうした要因を重要視していることを踏まえつつ、個々の希望に沿ったキャリアプログラムを整備することが、企業側には求められている。
インターンシップ インターンシップの経験を通じ、学生たちは職務特性の重要性を学ぶことになる。
しかしそれに関する先行研究はあまり例がない。
学生たちはインターンシップを活用することで、大学に籍を置きながら仕事の知識を習得したり、OJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)を経験することができる。
他にも就業のチャンスやオファーが増える、昇進が早まる、組織コミットメントが強化される、などのメリットがある。
学校で学んだ理論を実際の現場において検証することで、職場で必要なスキルを向上させるだけでなく、職業選択の方向性についての示唆まで得ることになる。
インターンシッププログラムは、企業側にもさまざまな利点をもたらす。
新しいスキルと斬新なアイデアが外部から流れ込んでくることで、企業のナレッジとイノベーションが強化される。
正式な雇用契約という義務を負わずに、実際の職場において候補者の“試運転”をするチャンスを得られるというメリットもある。
面接に基づく厳密な選考プロセスよりも、この「try-before-you-buy(まずはお試し)」アプローチの方が、採用に成功する確率ははるかに高いことが明らかになっている。
またインターンシッププログラムは、企業と大学のどちらにとってもメリットのある関係性を構築する絶好の機会となる。
こうした関係性があれば、企業側は有望な人材の宝庫へのアクセスが容易になり、それが採用プロセスの効率と有効性を高めることにつながる。
一方の大学側は、就職率やデータ評価の向上、現役のプロフェッショナルたちによるカリキュラムへの協力、紹介された人材を高く評価する雇用主からの資金援助、などが見込める。
激しい人材争奪戦が繰り広げられているロジスティクスのような業界で、それでも優秀な人材を得たいと望むなら、インターンシップはほとんど必要不可欠な制度だとする向きもある。
インターンの中でも特に優れた学生には、専門課程(大学3〜4年)が始まるあたりで企業が早々に内定を出す、いわゆる「青田買い」が盛んに行われるからである。
インターンシッププログラムが有益であることに異論はないというのに、ロジスティクス業界の実例を取りあげた研究はそう多くない。
その中の一つであるKnemeyerとMurphyの研究(2001)は、ロジスティクス関連のインターンシップについて、企業側からの情報を集めている。
学生たちにインターンシップが必要なのは、企業側が“青田買いの下見”をするためである、というのがそこでの結論である。
言い方を変えれば、企業側はインターンシップを、めぼしい正社員候補の当たりをつけて採用につなげる目的で利用していると言ってもよい。
同じ研究者が、雇う側とインターンの両方を調べた別の研究では、インターンが外在的な価値(報酬)より内在的な価値(経験、スキル向上)を重視するとしている。
さらに、インターンが不満を感じるのは、インターンシップに期待していたものが満たされない場合であると結論づける。
つまりインターンシップに何を求めるかということを、雇用主・インターンともにしっかりと理解しておく必要があるというのである。
そしてこの研究で何より重要な部分は、インターンシップに参加するのと正社員として就職するのとでは、その意思決定に関わる要因が異なるということである。
そこで本稿では、ロジスティクス分野のインターンと正社員の職業選択においては何が重視されるのか、その問題に答えを出していきたい。
研究手法 米中西部の大学でロジスティクスを専攻する総数100名の学生にアンケート調査を実施した。
回答者の属性を表1に示す。
68%が男性であり、女性の割合は32%にすぎない。
学生の過半数は、過去にロジスティクス関連のインターンシップを経験している(66%)。
インターンシップで経験した職種は最も多いのが輸送(33%)で、次いで現場作業(26%)、そして購買と企画がともに17%で同率となっている。
(編集部注:同調査には「MaxDiff法(maximum difference scaling)」が用いられた。
回答者は用意された選択肢の中から、最も重要なもの(ベスト)と、最も重要でないもの(ワースト)を一つずつ選ぶ。
その結果を合計が100点になるようにリスケーリングする。
スコアが大きいほど重要度が高い。
その他、研究手法の詳細は省略する) 調査結果 表2は、インターンシップが重視する要因を重要度の順に並べたものである。
インターンシップで重視されるのは次のような項目である。
・職場環境/雰囲気(12・72) ・昇進の可能性(12・35) ・自分の性格に合った企業文化(10・75) ・有意義な仕事(10・09) ・専攻に見合った仕事(9・62) ・面白い仕事(9・23) 逆にあまり重視されていないのが以下である。
・仕事量(1・68) ・オンボーディング・プロセス(1・21) ・社外での社会的活動(0・95) ・企業規模(0・30) ・服装規定(0・06) 一方、表3は正社員の場合である。
正社員として入社するにあたり、最も重視されるのは以下の項目である。
・昇進の可能性(15・08) ・職場環境/雰囲気(11・67) ・自分の性格に合った企業文化(11・23) ・給与(10・75) ・有意義な仕事(8・41) 低スコアは次のようになっている。
・仕事量(1・91) ・オンボーディング・プロセス(1・40) ・社外での社会的活動(0・52) ・企業規模(0・50) ・服装規定(0・05) インターンシップと正社員を比較すると、絶対値と重要性のランクのどちらにも若干の違いが見られる。
両者で同じ項目に違いがあるかどうか確かめるため、t検定の手法を用いて検証を行った(表4)。
その結果、17項目のうち9項目に有意差があるが、重要度の高い項目で特に著しい相違が認められた。
例えば正社員では「昇進の可能性」の重要度が最も高い一方、それがインターンシップでは有意に低い。
あるいは「給与」は、インターンシップよりも正社員の方の重要度が高い。
それとは対照的に、インターンシップを志望するロジスティクス専攻の学生は、「職場環境・雰囲気」、「有意義な仕事」、「面白い仕事」、「専攻に見合った仕事」などを重視しているという結果が得られた。
考察 昇進の可能性 予想された結果とはいえ、正社員を志望する学生の最も重視する項目は、昇進の可能性であった。
インターンにもそれなりに大事なことではあるが、正社員にとっては何にも増して大きな要素なのである。
彼らは自分たちのキャリアを始めるに当たり、明確な昇進の道筋が用意されていることを望んでいる。
人材獲得にはキャリア開発や昇進資格の整備が極めて有効であることを、採用側の企業は肝に銘じておく必要がある。
サプライチェーン関連のキャリアとして、リーダーシップ開発プログラムが近年普及してきたことなどは、その好例と言えよう。
ただし、昇進資格制度をただ整備すればいいというわけではなく、それが実際にどのように運営されるのか、何を期待できるか、時間・期間はどれくらいか、などに関して対象者に明確に伝えることも重要である。
これは正社員にとって最も大切なことである一方、長期のインターンシッププログラムにも同様の昇進制度を検討すべきである。
キャンパスに通いながら仕事をする学生たちに、昇進制度とそのタイムスパンを知ってもらうことで、彼らの就職意欲をかき立てることがその狙いである。
当然のことながら学生の側にも、複数の企業のさまざまな昇進制度の情報を、積極的に収集する姿勢が求められる。
SCMのリーダーシップ開発プログラムの中には、社内の主な部署と機能を一通り習得するのに最長4年もかかるものさえある。
昇進にはそれなりの時間がかかることをはっきりと理解することは、キャリアを形成する上で必要不可欠である。
職場環境・雰囲気 職場の環境と雰囲気はどちらにとっても大事な要因であることに変わりはないが、正社員よりはインターンの方がより重要度が高い。
これはインターンには経験が欠如していることが原因の一つであろう。
多くの学生にとっては、インターンシップこそが人生において企業に身を置く初めての機会である。
どのような環境であるのか想像もつかない状態では、それが気になる項目の上位に来るのも当然のことであろう。
SCM業界における人材争奪戦が続く状況下、この要因が特にインターンにとって重要であることに実務家たちは留意すべきだろう。
明るく楽しく協力的な環境づくりに配慮したインターンプログラムが、多くの企業によって導入され始めている。
具体的な取り組みとしては“インターン・オリンピック(社内および社外)”、旅行、チャリティーイベントへの参加、社外での集まり、などがある。
ここで挙げたいずれのプログラムも、会社への帰属意識を醸成することにつながる。
また、こうした試みを実施している数多の企業は、インターンシップ期間中に正社員への登用を打診することで、この制度を正社員獲得の機会として活用している。
見習いレベルのポジションで就職するミレニアル世代の多くは、そのような楽しくエキサイティングかつユニークなインターンシップを経験している。
現実の企業文化の側が、彼らが正社員の職に抱く期待に充分に応えられるとは限らない。
企業側は大卒者たちが正社員の職に望むものを認識すべきであるとともに、インターンと正社員それぞれの期待の間にあるギャップを埋める方法をも見いだす必要がある。
ここで学生が知っておくべき事柄も二つほど挙げておこう。
まず一つは、それぞれのパーソナリティーに見合う職場環境とはどのようなものかについて、理解を深めておくことである。
例えば物流センターの運営に携わる仕事と本社の購買とでは、その役割がまったく異なる。
二つ目は、インターンの職場環境が将来的にそのまま続く保証はないことである。
正社員になってしまうと、インターン向けに特別に企画されたイベントには参加できないこともある。
こうした種類の質問(インターンと正社員の役割の違いなど)を事前に雇用主に質問しておくことを、学生たちにはお勧めしておく。
給与 正社員がインターンと比べて給与を重要視するのは当然のことであろう。
学生たちがインターンシップに求めるものは、給与よりも経験だからである。
無給であるにもかかわらず志望者が毎年引きも切らないインターンシップも珍しくない。
学生がSCM分野のキャリアと正社員の職へと一歩を踏み出す決心をする時にこそ、給与という要素が大きな意味を持つようになる。
魅力的な給与システムを用意することが、ここでの実務家の仕事である。
さらには社会保険や退職金制度その他を含む給与パッケージについて、時間をかけて丁寧に伝えることも大事なことである。
学生側は通常、直接的な給与以外のフリンジ・ベネフィットに関しては大した知識を持っていない。
これは研究者にとっても同じように重要なことである。
給与体系の透明性を保証するには、ベンチマークとなるデータが必要であり、それには研究者の協力が欠かせない。
有意義な仕事・面白い仕事 この二つの項目に関しては、正社員よりもインターンにとって重要度が高いという結果が出た。
これは“お茶汲み”や“コピー取り”といった、インターンシップのステレオタイプのイメージによるものと思われる。
インターンを希望する学生たちは、有意義で面白くて刺激的な仕事を望む。
ところが現実は、心躍る華やかな仕事ばかりが待っているわけではない。
そのことに対する学生側の理解が重要である。
例えばメーカーが在庫の棚卸に夏期のインターンを受け入れることがある。
これなどは、決して理想的とはいえない環境における長時間労働である。
希望者たちの期待を現実に即したものにするには、大学のキャンパスにいる研究者たちの力を借りることが有効である。
一見ぱっとしない地味な仕事の意義と重要性について、学生たちにあらかじめ教育しておいてもらうのである。
企業側にも、インターンを巻き込む何らかのプログラムを用意することで、その重要性を認識させることが求められる。
インターンシップの期間中、インターン向けの大規模なプロジェクトを立ち上げる企業は数多い。
ちなみにこうしたプロジェクトは、普段の企業活動とは別に新たに付け加えられるものである。
インターンの協力を得ながら一緒にプロジェクトを進めていくことで、各人それぞれの興味がかき立てられる。
こうした取り組みには結果報告を兼ねた経営層へのプレゼンテーションが含まれていることが多く、それがプロジェクトにさらなる重みを加えることになる。
専攻に見合った仕事 サプライチェーンと一口に言っても、大学ではその名の下に調達、オペレーションマネジメント、サプライチェーン、輸送、ロジスティクス、マーケティングなど、多種多様な科目が含まれる。
学生は面白そうな、あるいは楽しそうな科目に飛びつく傾向がある。
しかし実際の現場は教科書や教室の雰囲気とはまったく異なる。
仕事の現実を教える方法としてはRJP(リアリスティック・ジョブ・プレビュー=現実的な仕事情報の事前開示)、仕事環境を模したケーススタディ、ゲストによる講演などが考えられる。
ストレス 正社員志望者にとって、ストレスはより大きな問題である。
インターンシップ期間中、キャリアにまつわるストレスを実感することもあろう。
例えばある学生がインターンとして製造現場で働くとなると、彼は生産ラインを止めずに稼働させ続けることの重要性を思い知ることになり、それがしばしばストレスの原因となる。
つまり職場のストレスの理解を深めることは、インターンが正社員の志望を固める過程により大きく影響するのである。
ここでもやはり、実務家や研究者たちによるRJPの整備が求められることになる。
社外での社会的活動 社外活動に対するインターンの重要度が高いのは、職場の経験が無いためであろう。
最初のキャリア関連の経験としてインターンが望むのは、自分がその企業やキャリアに属しているという感覚である。
そういった感覚を学生たちに与える機会が、社外活動なのである。
企業規模 正社員志望者にとって企業の規模は大事な要素である。
企業規模が大きければ大きいほど、昇進の機会も増えるからである。
もしくはインターンシップでの経験が寄与している可能性もある。
インターンと正社員の採用を比較すると、前者は中小企業が多いという傾向が見られる。
規模の小さい企業は通常インターンを受け入れることはできても、次々と正社員を採用するほどの余裕はない。
こうした理由から、小さな企業でインターンを経験するケースが多くなり、そのことが将来的なキャリアを検討し始める彼らに影響を与えるのである。
大学における教育が大企業に偏っていることは否めない。
クラスの授業では、ケーススタディやニュース記事をしばしば取りあげる。
しかしこうした機会に登場するのは、たいていは有名企業か日常生活で身近なブランドである。
しかも大企業には、採用やタレントマネジメントに関する充実したプログラムが当然のように整備されている。
大学の教員に課せられているのは、中小企業についてもきちんとした知識を提供することである。
そのことはSCMのキャリアパスにおいて極めて重要である。
運送業者の大半は比較的小規模な企業だからである。
いかなる企業にもそれぞれの規模に応じた長所と短所があり、そのことがキャリアを選択する上でとても大事になってくる。
研究者たちは、学生と中小企業の間を取り持つ役割をも果たすべきである。
採用に潤沢な予算を割けない中小企業にとって、それは死活問題ともなり得る。
このことは、地元に中小企業が多い都市部から離れた地域の大学にとっても同じような重要性をもつ。
(翻訳構成 大矢英樹)
そのロジスティクス教育で一番大事なことは、稼げる仕事を得るのに必要不可欠なスキルを授けるということである。
多くの企業が抱える最大の課題の一つは人材確保である。
そこで実務家だけでなく教育者にとっても重要なことは、ロジスティクスのキャリアを希望する学生たちが何を求めているのか、それをしっかりと把握することである。
そうすることが、ロジスティクスとサプライチェーンという職種に、最良の人材を惹きつけることにつながる。
サプライチェーンの人材確保で障害となるのが、職業選択に影響を与える要因に関する情報があまりないことである。
より正確に言えば、サプライチェーンの人材に関する研究のほとんどは、企業側が必要とするスキルを対象にしているのである。
タレントマネジメントにはサプライチェーンスキルの研究が必要不可欠であるとしても、ある重大な問いへの回答の役には立たない。
その問いとはつまり、サプライチェーンを志す学生は何を求めているのかということである。
また就職希望者のニーズを知ることは、タレントマネジメントにも寄与することになる。
企業側はこの情報を利用することで、インターンシップや入社後のポジションを、できるだけ学生の希望に近づけることができるようになるからである。
先行研究 ロジスティクスのキャリア SCM分野のキャリアに関する研究の大半は、雇用側が求めるスキルに焦点を当てている。
そこに含まれるものは問題解決、コミュニケーション、企画、学習能力、意思決定、チームワーク、社会的スキル、時間管理、モチベーション、リーダーシップ、顧客サービスなどである。
ところがロジスティクス志望者が実際に身につけているスキルは、雇用側の求めるそれとは必ずしも一致しない。
そのことが、研究により明らかになっている。
ロジスティクスキャリアの職業選択に関する数少ない研究では、企業文化、昇進、初任給など、職業選択に関わるいくつかの要因が特定されている。
ロジスティクス志望の新卒者がこうした要因を重要視していることを踏まえつつ、個々の希望に沿ったキャリアプログラムを整備することが、企業側には求められている。
インターンシップ インターンシップの経験を通じ、学生たちは職務特性の重要性を学ぶことになる。
しかしそれに関する先行研究はあまり例がない。
学生たちはインターンシップを活用することで、大学に籍を置きながら仕事の知識を習得したり、OJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)を経験することができる。
他にも就業のチャンスやオファーが増える、昇進が早まる、組織コミットメントが強化される、などのメリットがある。
学校で学んだ理論を実際の現場において検証することで、職場で必要なスキルを向上させるだけでなく、職業選択の方向性についての示唆まで得ることになる。
インターンシッププログラムは、企業側にもさまざまな利点をもたらす。
新しいスキルと斬新なアイデアが外部から流れ込んでくることで、企業のナレッジとイノベーションが強化される。
正式な雇用契約という義務を負わずに、実際の職場において候補者の“試運転”をするチャンスを得られるというメリットもある。
面接に基づく厳密な選考プロセスよりも、この「try-before-you-buy(まずはお試し)」アプローチの方が、採用に成功する確率ははるかに高いことが明らかになっている。
またインターンシッププログラムは、企業と大学のどちらにとってもメリットのある関係性を構築する絶好の機会となる。
こうした関係性があれば、企業側は有望な人材の宝庫へのアクセスが容易になり、それが採用プロセスの効率と有効性を高めることにつながる。
一方の大学側は、就職率やデータ評価の向上、現役のプロフェッショナルたちによるカリキュラムへの協力、紹介された人材を高く評価する雇用主からの資金援助、などが見込める。
激しい人材争奪戦が繰り広げられているロジスティクスのような業界で、それでも優秀な人材を得たいと望むなら、インターンシップはほとんど必要不可欠な制度だとする向きもある。
インターンの中でも特に優れた学生には、専門課程(大学3〜4年)が始まるあたりで企業が早々に内定を出す、いわゆる「青田買い」が盛んに行われるからである。
インターンシッププログラムが有益であることに異論はないというのに、ロジスティクス業界の実例を取りあげた研究はそう多くない。
その中の一つであるKnemeyerとMurphyの研究(2001)は、ロジスティクス関連のインターンシップについて、企業側からの情報を集めている。
学生たちにインターンシップが必要なのは、企業側が“青田買いの下見”をするためである、というのがそこでの結論である。
言い方を変えれば、企業側はインターンシップを、めぼしい正社員候補の当たりをつけて採用につなげる目的で利用していると言ってもよい。
同じ研究者が、雇う側とインターンの両方を調べた別の研究では、インターンが外在的な価値(報酬)より内在的な価値(経験、スキル向上)を重視するとしている。
さらに、インターンが不満を感じるのは、インターンシップに期待していたものが満たされない場合であると結論づける。
つまりインターンシップに何を求めるかということを、雇用主・インターンともにしっかりと理解しておく必要があるというのである。
そしてこの研究で何より重要な部分は、インターンシップに参加するのと正社員として就職するのとでは、その意思決定に関わる要因が異なるということである。
そこで本稿では、ロジスティクス分野のインターンと正社員の職業選択においては何が重視されるのか、その問題に答えを出していきたい。
研究手法 米中西部の大学でロジスティクスを専攻する総数100名の学生にアンケート調査を実施した。
回答者の属性を表1に示す。
68%が男性であり、女性の割合は32%にすぎない。
学生の過半数は、過去にロジスティクス関連のインターンシップを経験している(66%)。
インターンシップで経験した職種は最も多いのが輸送(33%)で、次いで現場作業(26%)、そして購買と企画がともに17%で同率となっている。
(編集部注:同調査には「MaxDiff法(maximum difference scaling)」が用いられた。
回答者は用意された選択肢の中から、最も重要なもの(ベスト)と、最も重要でないもの(ワースト)を一つずつ選ぶ。
その結果を合計が100点になるようにリスケーリングする。
スコアが大きいほど重要度が高い。
その他、研究手法の詳細は省略する) 調査結果 表2は、インターンシップが重視する要因を重要度の順に並べたものである。
インターンシップで重視されるのは次のような項目である。
・職場環境/雰囲気(12・72) ・昇進の可能性(12・35) ・自分の性格に合った企業文化(10・75) ・有意義な仕事(10・09) ・専攻に見合った仕事(9・62) ・面白い仕事(9・23) 逆にあまり重視されていないのが以下である。
・仕事量(1・68) ・オンボーディング・プロセス(1・21) ・社外での社会的活動(0・95) ・企業規模(0・30) ・服装規定(0・06) 一方、表3は正社員の場合である。
正社員として入社するにあたり、最も重視されるのは以下の項目である。
・昇進の可能性(15・08) ・職場環境/雰囲気(11・67) ・自分の性格に合った企業文化(11・23) ・給与(10・75) ・有意義な仕事(8・41) 低スコアは次のようになっている。
・仕事量(1・91) ・オンボーディング・プロセス(1・40) ・社外での社会的活動(0・52) ・企業規模(0・50) ・服装規定(0・05) インターンシップと正社員を比較すると、絶対値と重要性のランクのどちらにも若干の違いが見られる。
両者で同じ項目に違いがあるかどうか確かめるため、t検定の手法を用いて検証を行った(表4)。
その結果、17項目のうち9項目に有意差があるが、重要度の高い項目で特に著しい相違が認められた。
例えば正社員では「昇進の可能性」の重要度が最も高い一方、それがインターンシップでは有意に低い。
あるいは「給与」は、インターンシップよりも正社員の方の重要度が高い。
それとは対照的に、インターンシップを志望するロジスティクス専攻の学生は、「職場環境・雰囲気」、「有意義な仕事」、「面白い仕事」、「専攻に見合った仕事」などを重視しているという結果が得られた。
考察 昇進の可能性 予想された結果とはいえ、正社員を志望する学生の最も重視する項目は、昇進の可能性であった。
インターンにもそれなりに大事なことではあるが、正社員にとっては何にも増して大きな要素なのである。
彼らは自分たちのキャリアを始めるに当たり、明確な昇進の道筋が用意されていることを望んでいる。
人材獲得にはキャリア開発や昇進資格の整備が極めて有効であることを、採用側の企業は肝に銘じておく必要がある。
サプライチェーン関連のキャリアとして、リーダーシップ開発プログラムが近年普及してきたことなどは、その好例と言えよう。
ただし、昇進資格制度をただ整備すればいいというわけではなく、それが実際にどのように運営されるのか、何を期待できるか、時間・期間はどれくらいか、などに関して対象者に明確に伝えることも重要である。
これは正社員にとって最も大切なことである一方、長期のインターンシッププログラムにも同様の昇進制度を検討すべきである。
キャンパスに通いながら仕事をする学生たちに、昇進制度とそのタイムスパンを知ってもらうことで、彼らの就職意欲をかき立てることがその狙いである。
当然のことながら学生の側にも、複数の企業のさまざまな昇進制度の情報を、積極的に収集する姿勢が求められる。
SCMのリーダーシップ開発プログラムの中には、社内の主な部署と機能を一通り習得するのに最長4年もかかるものさえある。
昇進にはそれなりの時間がかかることをはっきりと理解することは、キャリアを形成する上で必要不可欠である。
職場環境・雰囲気 職場の環境と雰囲気はどちらにとっても大事な要因であることに変わりはないが、正社員よりはインターンの方がより重要度が高い。
これはインターンには経験が欠如していることが原因の一つであろう。
多くの学生にとっては、インターンシップこそが人生において企業に身を置く初めての機会である。
どのような環境であるのか想像もつかない状態では、それが気になる項目の上位に来るのも当然のことであろう。
SCM業界における人材争奪戦が続く状況下、この要因が特にインターンにとって重要であることに実務家たちは留意すべきだろう。
明るく楽しく協力的な環境づくりに配慮したインターンプログラムが、多くの企業によって導入され始めている。
具体的な取り組みとしては“インターン・オリンピック(社内および社外)”、旅行、チャリティーイベントへの参加、社外での集まり、などがある。
ここで挙げたいずれのプログラムも、会社への帰属意識を醸成することにつながる。
また、こうした試みを実施している数多の企業は、インターンシップ期間中に正社員への登用を打診することで、この制度を正社員獲得の機会として活用している。
見習いレベルのポジションで就職するミレニアル世代の多くは、そのような楽しくエキサイティングかつユニークなインターンシップを経験している。
現実の企業文化の側が、彼らが正社員の職に抱く期待に充分に応えられるとは限らない。
企業側は大卒者たちが正社員の職に望むものを認識すべきであるとともに、インターンと正社員それぞれの期待の間にあるギャップを埋める方法をも見いだす必要がある。
ここで学生が知っておくべき事柄も二つほど挙げておこう。
まず一つは、それぞれのパーソナリティーに見合う職場環境とはどのようなものかについて、理解を深めておくことである。
例えば物流センターの運営に携わる仕事と本社の購買とでは、その役割がまったく異なる。
二つ目は、インターンの職場環境が将来的にそのまま続く保証はないことである。
正社員になってしまうと、インターン向けに特別に企画されたイベントには参加できないこともある。
こうした種類の質問(インターンと正社員の役割の違いなど)を事前に雇用主に質問しておくことを、学生たちにはお勧めしておく。
給与 正社員がインターンと比べて給与を重要視するのは当然のことであろう。
学生たちがインターンシップに求めるものは、給与よりも経験だからである。
無給であるにもかかわらず志望者が毎年引きも切らないインターンシップも珍しくない。
学生がSCM分野のキャリアと正社員の職へと一歩を踏み出す決心をする時にこそ、給与という要素が大きな意味を持つようになる。
魅力的な給与システムを用意することが、ここでの実務家の仕事である。
さらには社会保険や退職金制度その他を含む給与パッケージについて、時間をかけて丁寧に伝えることも大事なことである。
学生側は通常、直接的な給与以外のフリンジ・ベネフィットに関しては大した知識を持っていない。
これは研究者にとっても同じように重要なことである。
給与体系の透明性を保証するには、ベンチマークとなるデータが必要であり、それには研究者の協力が欠かせない。
有意義な仕事・面白い仕事 この二つの項目に関しては、正社員よりもインターンにとって重要度が高いという結果が出た。
これは“お茶汲み”や“コピー取り”といった、インターンシップのステレオタイプのイメージによるものと思われる。
インターンを希望する学生たちは、有意義で面白くて刺激的な仕事を望む。
ところが現実は、心躍る華やかな仕事ばかりが待っているわけではない。
そのことに対する学生側の理解が重要である。
例えばメーカーが在庫の棚卸に夏期のインターンを受け入れることがある。
これなどは、決して理想的とはいえない環境における長時間労働である。
希望者たちの期待を現実に即したものにするには、大学のキャンパスにいる研究者たちの力を借りることが有効である。
一見ぱっとしない地味な仕事の意義と重要性について、学生たちにあらかじめ教育しておいてもらうのである。
企業側にも、インターンを巻き込む何らかのプログラムを用意することで、その重要性を認識させることが求められる。
インターンシップの期間中、インターン向けの大規模なプロジェクトを立ち上げる企業は数多い。
ちなみにこうしたプロジェクトは、普段の企業活動とは別に新たに付け加えられるものである。
インターンの協力を得ながら一緒にプロジェクトを進めていくことで、各人それぞれの興味がかき立てられる。
こうした取り組みには結果報告を兼ねた経営層へのプレゼンテーションが含まれていることが多く、それがプロジェクトにさらなる重みを加えることになる。
専攻に見合った仕事 サプライチェーンと一口に言っても、大学ではその名の下に調達、オペレーションマネジメント、サプライチェーン、輸送、ロジスティクス、マーケティングなど、多種多様な科目が含まれる。
学生は面白そうな、あるいは楽しそうな科目に飛びつく傾向がある。
しかし実際の現場は教科書や教室の雰囲気とはまったく異なる。
仕事の現実を教える方法としてはRJP(リアリスティック・ジョブ・プレビュー=現実的な仕事情報の事前開示)、仕事環境を模したケーススタディ、ゲストによる講演などが考えられる。
ストレス 正社員志望者にとって、ストレスはより大きな問題である。
インターンシップ期間中、キャリアにまつわるストレスを実感することもあろう。
例えばある学生がインターンとして製造現場で働くとなると、彼は生産ラインを止めずに稼働させ続けることの重要性を思い知ることになり、それがしばしばストレスの原因となる。
つまり職場のストレスの理解を深めることは、インターンが正社員の志望を固める過程により大きく影響するのである。
ここでもやはり、実務家や研究者たちによるRJPの整備が求められることになる。
社外での社会的活動 社外活動に対するインターンの重要度が高いのは、職場の経験が無いためであろう。
最初のキャリア関連の経験としてインターンが望むのは、自分がその企業やキャリアに属しているという感覚である。
そういった感覚を学生たちに与える機会が、社外活動なのである。
企業規模 正社員志望者にとって企業の規模は大事な要素である。
企業規模が大きければ大きいほど、昇進の機会も増えるからである。
もしくはインターンシップでの経験が寄与している可能性もある。
インターンと正社員の採用を比較すると、前者は中小企業が多いという傾向が見られる。
規模の小さい企業は通常インターンを受け入れることはできても、次々と正社員を採用するほどの余裕はない。
こうした理由から、小さな企業でインターンを経験するケースが多くなり、そのことが将来的なキャリアを検討し始める彼らに影響を与えるのである。
大学における教育が大企業に偏っていることは否めない。
クラスの授業では、ケーススタディやニュース記事をしばしば取りあげる。
しかしこうした機会に登場するのは、たいていは有名企業か日常生活で身近なブランドである。
しかも大企業には、採用やタレントマネジメントに関する充実したプログラムが当然のように整備されている。
大学の教員に課せられているのは、中小企業についてもきちんとした知識を提供することである。
そのことはSCMのキャリアパスにおいて極めて重要である。
運送業者の大半は比較的小規模な企業だからである。
いかなる企業にもそれぞれの規模に応じた長所と短所があり、そのことがキャリアを選択する上でとても大事になってくる。
研究者たちは、学生と中小企業の間を取り持つ役割をも果たすべきである。
採用に潤沢な予算を割けない中小企業にとって、それは死活問題ともなり得る。
このことは、地元に中小企業が多い都市部から離れた地域の大学にとっても同じような重要性をもつ。
(翻訳構成 大矢英樹)
