2021年6月号
特集
特集
日本郵便 楽天との物流事業統合で成長を加速させる
「JP楽天ロジスティクス」設立
──コロナ禍は中長期的に郵便・物流事業にどのような影響を与えますか。
「2020年度の『ゆうパック』と『ゆうパケット』の取扱個数は、いわゆる巣ごもり消費によるECの拡大で前年比11・9%伸びて10億9100個になりました。
今後、消費が全体としては落ち込んでも荷物の増加は続くとみています。
その一方で20年度の郵便物は6・8%減少しました。
従来は年率2%前後のペースで緩やかに減っていたものが、昨年1年で一気に減った。
今後も紙ベースの書類のやり取りは限界まで減っていくと予想しています。
われわれとしては危機感を抱かないわけにはいきません」 ──置き配の比率はどこまで上がってきましたか。
「正確な数字は持ち合わせていませんが、感触としては荷物全体に占める比率はまだ数%というレベルです。
それでも急速に伸びています。
それと同時に『ゆうパケット』をはじめとする受け箱投函型の荷物が増えています。
コロナ禍で『対面』から『非対面』へのシフトが加速しています。
郵便のネットワークを生かせる領域ですので、われわれにとって大きなビジネスチャンスです。
われわれが強みとする小さな荷物の非対面のサービスに磨きをかけていきます」 ──21年度〜25年度の中期計画では「データドリブンによる郵便・物流事業改革」をテーマにDXを推進するという戦略を打ち出しています。
「当面は、差し出しデータを活用して新しいサービスを開発したり、オペレーションを効率化することに取り組みます。
今日の荷物がどれだけあるのか、現状では区分局に全国からトラックが到着して荷台の扉を開けてみるまで分かりません。
今日は多いと分かれば、そこから急いで臨時便を手配したり、深夜から早朝にかけて必死に作業をして何とか処理している。
差し出しデータを集約して事前に全体像を把握することで、計画的に車両を手配したり作業を準備できるようにします。
ラストワンマイルの配り方もそれで大きく変わってくる」 ──日本郵便の末端配送は宅配便と郵便の2系統に分かれています。
それを統合できますか。
「可能性はあります。
例えば今はタワーマンションに朝一番で速達の配達員が行き、次に『通配』が一般郵便物をポストに投函して、3人目の配達員が宅配ボックスに荷物を届けている。
同じマンションに3人がそれぞれクルマを停めて中に入っていくという行為を繰り返しています。
1台のクルマ、一人の配達員にまとめることで格段に効率が上がります。
環境負荷も大幅に軽減される」 ──エリア内の全軒を固定ルートで回る郵便の配達ネットワークは、他の宅配会社にはない特徴です。
その強みを生かしたサービスを期待したい。
「そのためにラストワンマイルの配達員の装備を変えていく必要があります。
現在の主力は自動二輪ですが、郵便も『レターパック』やA4サイズの封筒が増えて大型化しています。
リヤカーを牽引するタイプの3輪や4輪をEV化と合わせて開発して導入していきます」 ──JP楽天ロジスティクスではどのように事業を展開していきますか。
「楽天市場の店舗のうち楽天スーパーロジスティクスがカバーしているのは現状では2〜3割と聞いています。
7〜8割は店舗自身で出荷の手配をしたり外部の物流事業者を利用しているわけです。
そこを取り込んでいきたい。
日本郵便のネットワークやJP楽天の複数拠点に在庫を分散して、届け先に近い拠点から出荷してリードタイムを短縮するといったサービスも視野に入れています。
ロジスティクスと配送を組み合わせた物流サービスによって、楽天さんにはEC自体の売り上げを伸ばしてもらう。
さらにJP楽天の利用率も伸ばすという掛け算で基盤整備を進めていきます」 ──これまで日本郵便はロジスティクス事業にそれほど積極的ではなかった印象です。
「そんなことはありません。
ロジスティクス事業の売り上げは年率2割、3割というペースで急ピッチで伸びています。
3桁億円に乗るようになってきた。
拠点数も増えています。
他社のように大規模な専用拠点を立ち上げるのではなく、地域区分局の上層階や区分局業務の集約で空いたスペースなどを利用して、投資を抑制しながら進めているのでインパクトとしては弱いのかもしれませんが着実に成長しています」 フィジカルインターネット型に転換 ──楽天から日本郵便に出荷する荷物を現状の約8千万個から22年度末には2億個、25年度末には3億〜5億個まで増やすという目標も打ち出しています。
処理能力を担保できますか。
「そのためにもデータ駆動型に転換して、現在のハブ・アンド・スポークを、物量に合わせて柔軟に幹線輸送車を走らせるかたちに変えていきます。
JP楽天の拠点で物量がまとまる場合には、発地の区分局を経由せず、仕向地の区分局に直行便を出すといった運用です。
そうしたフィジカルインターネット型のネットワークを、モデル地区を決めて実験する計画を進めています」 ──楽天JPの出資比率、日本郵便が50・1%、楽天が49・9%という配分はどのような判断に基づいて決定されたのですか。
「基本的には両社折半にしようというのが出発点でした。
しかし、楽天JPは物流にフォーカスしたジョイントベンチャーです。
楽天さんの基盤はECですが、当社にとって物流はど真ん中の事業です。
そのため当社がマジョリティを握らせてもらうことになりました。
それだけしっかりコミットしていきます」 ──ヤマト運輸は今年、全国の10道県で『クロネコDM便』の配達を日本郵便に委託しました。
競争相手に利する行為では。
「過疎地の配達は業界共通の課題です。
当社の配達用バイクの1日当たりの走行距離は都市部では25キロくらいなのですが、地方では100キロを超えてくるところもある。
そうしたエリアの配達密度が高まり、適切な料金をいただけるのなら、日本全国に安定したサービスを提供していくためにも、当社がやるのが合理的という判断です」 「ヤマトさんとはダブル連結トラックの共同輸送や館内物流などでもご一緒しています。
労働力不足もやはり共通の問題ですから競争はしていても、お互いにメリットがあることでは協調していく。
宅配市場は大手数社で寡占化していた時代から大きく変わりました。
今や当社の競争相手はヤマトさん・佐川さんだけではなくなっています。
従来よりも広い視野で競争市場を捉えることで、リソースをシェアして有効活用していく場面は今後も増えてくるとみています」
「2020年度の『ゆうパック』と『ゆうパケット』の取扱個数は、いわゆる巣ごもり消費によるECの拡大で前年比11・9%伸びて10億9100個になりました。
今後、消費が全体としては落ち込んでも荷物の増加は続くとみています。
その一方で20年度の郵便物は6・8%減少しました。
従来は年率2%前後のペースで緩やかに減っていたものが、昨年1年で一気に減った。
今後も紙ベースの書類のやり取りは限界まで減っていくと予想しています。
われわれとしては危機感を抱かないわけにはいきません」 ──置き配の比率はどこまで上がってきましたか。
「正確な数字は持ち合わせていませんが、感触としては荷物全体に占める比率はまだ数%というレベルです。
それでも急速に伸びています。
それと同時に『ゆうパケット』をはじめとする受け箱投函型の荷物が増えています。
コロナ禍で『対面』から『非対面』へのシフトが加速しています。
郵便のネットワークを生かせる領域ですので、われわれにとって大きなビジネスチャンスです。
われわれが強みとする小さな荷物の非対面のサービスに磨きをかけていきます」 ──21年度〜25年度の中期計画では「データドリブンによる郵便・物流事業改革」をテーマにDXを推進するという戦略を打ち出しています。
「当面は、差し出しデータを活用して新しいサービスを開発したり、オペレーションを効率化することに取り組みます。
今日の荷物がどれだけあるのか、現状では区分局に全国からトラックが到着して荷台の扉を開けてみるまで分かりません。
今日は多いと分かれば、そこから急いで臨時便を手配したり、深夜から早朝にかけて必死に作業をして何とか処理している。
差し出しデータを集約して事前に全体像を把握することで、計画的に車両を手配したり作業を準備できるようにします。
ラストワンマイルの配り方もそれで大きく変わってくる」 ──日本郵便の末端配送は宅配便と郵便の2系統に分かれています。
それを統合できますか。
「可能性はあります。
例えば今はタワーマンションに朝一番で速達の配達員が行き、次に『通配』が一般郵便物をポストに投函して、3人目の配達員が宅配ボックスに荷物を届けている。
同じマンションに3人がそれぞれクルマを停めて中に入っていくという行為を繰り返しています。
1台のクルマ、一人の配達員にまとめることで格段に効率が上がります。
環境負荷も大幅に軽減される」 ──エリア内の全軒を固定ルートで回る郵便の配達ネットワークは、他の宅配会社にはない特徴です。
その強みを生かしたサービスを期待したい。
「そのためにラストワンマイルの配達員の装備を変えていく必要があります。
現在の主力は自動二輪ですが、郵便も『レターパック』やA4サイズの封筒が増えて大型化しています。
リヤカーを牽引するタイプの3輪や4輪をEV化と合わせて開発して導入していきます」 ──JP楽天ロジスティクスではどのように事業を展開していきますか。
「楽天市場の店舗のうち楽天スーパーロジスティクスがカバーしているのは現状では2〜3割と聞いています。
7〜8割は店舗自身で出荷の手配をしたり外部の物流事業者を利用しているわけです。
そこを取り込んでいきたい。
日本郵便のネットワークやJP楽天の複数拠点に在庫を分散して、届け先に近い拠点から出荷してリードタイムを短縮するといったサービスも視野に入れています。
ロジスティクスと配送を組み合わせた物流サービスによって、楽天さんにはEC自体の売り上げを伸ばしてもらう。
さらにJP楽天の利用率も伸ばすという掛け算で基盤整備を進めていきます」 ──これまで日本郵便はロジスティクス事業にそれほど積極的ではなかった印象です。
「そんなことはありません。
ロジスティクス事業の売り上げは年率2割、3割というペースで急ピッチで伸びています。
3桁億円に乗るようになってきた。
拠点数も増えています。
他社のように大規模な専用拠点を立ち上げるのではなく、地域区分局の上層階や区分局業務の集約で空いたスペースなどを利用して、投資を抑制しながら進めているのでインパクトとしては弱いのかもしれませんが着実に成長しています」 フィジカルインターネット型に転換 ──楽天から日本郵便に出荷する荷物を現状の約8千万個から22年度末には2億個、25年度末には3億〜5億個まで増やすという目標も打ち出しています。
処理能力を担保できますか。
「そのためにもデータ駆動型に転換して、現在のハブ・アンド・スポークを、物量に合わせて柔軟に幹線輸送車を走らせるかたちに変えていきます。
JP楽天の拠点で物量がまとまる場合には、発地の区分局を経由せず、仕向地の区分局に直行便を出すといった運用です。
そうしたフィジカルインターネット型のネットワークを、モデル地区を決めて実験する計画を進めています」 ──楽天JPの出資比率、日本郵便が50・1%、楽天が49・9%という配分はどのような判断に基づいて決定されたのですか。
「基本的には両社折半にしようというのが出発点でした。
しかし、楽天JPは物流にフォーカスしたジョイントベンチャーです。
楽天さんの基盤はECですが、当社にとって物流はど真ん中の事業です。
そのため当社がマジョリティを握らせてもらうことになりました。
それだけしっかりコミットしていきます」 ──ヤマト運輸は今年、全国の10道県で『クロネコDM便』の配達を日本郵便に委託しました。
競争相手に利する行為では。
「過疎地の配達は業界共通の課題です。
当社の配達用バイクの1日当たりの走行距離は都市部では25キロくらいなのですが、地方では100キロを超えてくるところもある。
そうしたエリアの配達密度が高まり、適切な料金をいただけるのなら、日本全国に安定したサービスを提供していくためにも、当社がやるのが合理的という判断です」 「ヤマトさんとはダブル連結トラックの共同輸送や館内物流などでもご一緒しています。
労働力不足もやはり共通の問題ですから競争はしていても、お互いにメリットがあることでは協調していく。
宅配市場は大手数社で寡占化していた時代から大きく変わりました。
今や当社の競争相手はヤマトさん・佐川さんだけではなくなっています。
従来よりも広い視野で競争市場を捉えることで、リソースをシェアして有効活用していく場面は今後も増えてくるとみています」
