2021年5月号
特集
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海外論文 スマートファクトリーの調達物流戦略
1.イントロダクション
インダストリー4・0の時代を迎えるとともに、「スマートファクトリー」への関心が、メーカーを中心にますます高まっている。
スマートファクトリーにおいては、生産システム・ツール・運搬器具などの各エージェント(*編集部注 マルチエージェントシステム論ではこれらを“エージェント”と呼ぶ)が、それぞれ独自にコミュニケーションを行い、自律的な生産およびロジスティクスの環境をつくり出す。
生産予測・資源計画・生産管理・パフォーマンス分析などは、「サイバーフィジカルシステム(CPS)」によって遂行される。
手作業による入出庫などのプロセスは自動化される。
発注・輸配送・荷下ろし・保管などのやり方が大きく変わると予想される。
それに伴い調達物流のプロセスはどのように変化するのか。
またそれに関連して、本編ではサプライチェーンメンバー同士のコラボレーションの在り方や、インターフェースソリューションについても言及する。
調達・生産・流通のロジスティクスプロセスは、その多くが外部の3PLプロバイダーによって遂行されている。
デジタルサプライチェーンへの統合に必要な要件を整えるという役割も、それを実際に担うことになるのは3PLに他ならない。
スマートファクトリーにおける3PLの役割をあらためて考え直す必要があるのは、そうした事情による。
3PLは果たして未来のコンセプトにおいても引き続き必要とされるのか、あるいはCPSが3PLに取って代わるのか、3PLがもし必要とされるのであれば彼らはどのような領域を担うことになるのか──それについても以下に見ていくことにする。
2.研究方法(省略) 3.スマートファクトリーロジスティクス 3-1.それは何か 第四次産業革命の影響はビジネスモデルだけでなく、生産とロジスティクスのプロセス、マネジメント戦略の変革にまで及ぶ。
インダストリー4・0がもたらすこの新たな機運は、ビジネスと社会のどちらにも良い影響を与える形で運営管理される必要がある。
そもそもインダストリー4・0とは、既存の工場を“スマートファクトリー”へと変貌させるプロセスを意味している。
そこでは製品・ワークステーション・運搬機器同士が、インターネットを介してリアルタイムで直接コミュニケーションをとり合う。
その環境を整えるため、生産システムとロジスティクスシステムは、人手を介すことなく自らをCPSとして立ち上げる。
この構想において生産工程をコントロールするのは、製品自身である。
すなわち、生産情報をRFIDチップのような機械判読が可能な形に加工して、製品自体がそれを伝達する。
一つ一つの製品が自分の物理的性質や生産の進捗状況を把握し、そのデータを使って生産工程および工場内を移動していくのである。
スマートファクトリーを理解するため具体例を見てみよう。
ここでは建設資材メーカーを取り上げる。
インダストリー4・0の影響を受けて大きな変化が生じている分野だからである。
建設資材関連のスマートファクトリーでは、住宅リノベーション用の資材一式が、新たに開発された技術によって自律的に生産できるようになる。
この事例では、生産している製品はファサード(建物正面)と屋根の部分であり、窓や扉だけでなく太陽光パネル・換気装置なども含む。
規格化された住宅用リノベーションパッケージを、従来の方法より安く早く生産することが、このスマートファクトリーの目的である。
そのために生産計画においては、入荷・保管・生産・出庫の各プロセスが、CPSによって自動制御されるようにしなければならない。
図表1はファサードパネルの自動製造プロセスを表したものである。
まず初めに、発泡スチロールなどの断熱材を家の寸法に合わせてカットし、扉・窓・暖房・換気装置などが収まるように穴を開け、それらをつなぎ合わせて一枚の断熱パネルとして成形する。
次いでそのパネルに木材・石膏プラスター・煉瓦などの外装材を貼り合わせた後、暖房・換気装置を設置する。
最後に扉と窓をパネルにはめ込み、乾燥工程を経て完成となる。
生産システムと工程のデジタル化に当たっては、スマートファクトリーの入出荷と構内物流のプロセスに対応することも重要である。
ここで注意を要するのは、「ロジスティクス4・0」と「スマートファクトリーロジスティクス」の概念は、それぞれ意味する範囲が異なることである。
両者を区別する必要がある(図表2参照)。
ロジスティクス4・0が意味しているのは、インダストリー4・0および物流業界とSCMのメガトレンドがロジスティクスに及ぼす影響である。
もっと広く捉えるとすれば、企業と物流機能の枠を越えてインダストリー4・0を支えるものといってもいいだろう。
それはモノと情報のロジスティクスを司る効率的な組織体への道であり、デジタルテクノロジーの潜在能力を引き出す前提条件でもある。
そこで最も重視される技術はRFID、人工知能(AI)、無人搬送車(AGV)、ビッグデータ、モノのインターネット(IoT)である。
ロジスティクス4・0においては、垂直方向のさまざまなバリューチェーンのメンバーが、水平方向のバリューネットワークへと再編される。
ところがこのロジスティクスネットワークは、予測不能で変転極まりない環境に置かれている。
これからのロジスティクス・システム・デザインに、堅牢性・柔軟性・レジリエンス(復元力)が求められるのはそのためだ。
また集めたデータを集積することも、ロジスティクス4・0の大事な側面である。
スマートファクトリーとロジスティクス4・0から成るスマート・ファクトリー・ロジスティクスは、工場内の構内物流と情報プロセスを一体化するところから始まり、それをSCMにおけるマルチエージェントシステムとして具現化したものである。
各エージェントは発生するイベントに反応し、自分の置かれた環境を認識し、意思決定を行い、他のエージェントとコミュニケーションをとることで、工場の生産性と効率を向上させる。
前述の通り、スマートファクトリーのワークステーションと運搬車両は互いにリンクしており、キャパシティの多寡に応じて各々が適切な生産指示を出す。
実際のモノの動きは図表2の通り入荷・倉庫保管・生産・出荷の各工程に分けられるが、全体的な生産フローは従来型の工場と何ら変わりはない。
スマートファクトリーロジスティクスで大事なのは、こうした工程が、ロジスティクス4・0の技術を用いてデジタルでつながっていることである。
オペレーションの視点からすれば、運搬器具の役割は、必要な材料を生産現場に正しい時間と順番で供給し、工程が完了次第、迅速に次のステップに運ぶことである。
ここでわれわれは、スマート・ファクトリー・ロジスティクスを次のように定義することを提案したい。
すなわち「スマート・ファクトリー・ロジスティクスとは、ロジスティクス4・0テクノロジーの活用によってスマートファクトリーにおける分散制御を実現した、輸送および情報プロセスの全体のことを指す」。
3-2.調達物流の変容 調達物流は、サプライヤー側の納品物流とメーカー側の生産物流システムによって構成される。
メーカーの必要に応じて、原材料・資材・製品などを利用できるようにすることがその目的である。
ロジスティクスサプライチェーンにおいて、情報フローがスマートファクトリー化の一環としてデジタル化していくのに伴い、調達物流も変化を迫られる。
変化の一つはスマートファクトリー側の発注プロセスであり、そしてもうひとつはサプライヤーによる貨物の配送と荷下ろしである。
将来的にこれらをどうするべきかが問われている。
ここで再び建設資材を例にとる。
建設資材のスマートファクトリーにおける原材料の発注は、プル型の原則に基づき、ERPシステムやクラウドベースのカンバンシステムが自動で行う。
在庫が基準値の最低(発注)ラインに達した時点か、あるいは顧客からの注文が入った時点で、それぞれの住宅タイプに合わせた発注がなされる。
原材料(発泡スチロールなど)や資材(接着剤、プラグ、ガラスマットなど)などは、主に在庫補充システムが発注する。
一方、換気装置や太陽光パネルなどの比較的高価な製品は、ファサードや屋根のパネルなどと一緒に別途発注される。
それぞれの製品をどこから調達するかについては、IoTベースのカンバン方式を用いて、各サプライヤーがその時点で保有する購入可能な在庫品や生産キャパシティを調べた上で決定する。
こうしたプロセスは、水平および垂直方向のバリューチェーン全体にわたるデータの透明性とアクセシビリティが、どれほどの重要性を持つのかを物語っている。
スマートファクトリーの生産スケジュールは、仕掛品在庫がほぼ発生しないように調整される。
保管コストの発生を回避して受け入れプロセスを単純化するために、生産に必要な原材料や製品は、生産ラインに直接搬入される。
サプライヤーは、注文時に指定された納品数量・品質・時間・場所などの厳守を求められる。
スマートファクトリーが、十分な使い勝手の良さとリアルタイムのコントロールを手に入れるためには、プロセスはできる限り透明であることが望ましい。
スマートファクトリーからの注文が入り次第、サプライヤーは指定された品々を取りまとめる。
ここで最も大事なのは、注文をファサードや屋根のパネルの在庫に直接割りあてることができるよう、一つ一つの個体を明確に区別・認識することである。
そのための選択肢の一つがRFIDチップである。
トラックへの積み込みと梱包材もおろそかにはできない。
プロセスをシンプルにして迅速に済ませるために、スマートファクトリー側では一般的に、荷受時の開梱作業を想定していない。
したがってサプライヤーは納品に当たり、必要最小限の梱包と、積荷をしっかりと固定するという条件を満たさなければならない。
自律的な輸送プロセスの基本は、弾力的なスケジュール運用とGPSによる追跡機能を用いて、輸送フローを安定的に維持することである。
トラックの追跡はサプライヤーの施設で荷物が積み込まれた時点から始まる。
スケジュールの時間的な誤差は従業員が調整するのではなく、システムがリアルタイムで認識して修正する。
スマートファクトリーに向けてトラックが出発すると、もともとの予定時刻と実際の到着予定時刻が照合される。
そこで遅れが検知された場合には、その便のために確保されていた時間枠をキャンセルして、それを他のトラックが利用できるように開放する。
そうした修正によって荷下ろしのキャパシティを効率的に利用するのである。
納品予定の連絡はトラックが工場に到着するより前に、システムによって荷受けの担当部署に伝達されているはずである。
納品トラックが受付に立ち寄りもせず、最初に荷下ろしをする場所へ直接乗り入れることができるのはそのためである。
荷下ろしの風景も大きく変化する。
スマートファクトリーでは一般的に、荷捌きエリアに設置された各種のローラーなどを利用して、トラック自身が荷下ろしを行う。
従来のように荷受け担当者がフォークリフトなど既存のシステム使って荷下ろしをしたり、あるいはトラックに乗り入れたりするようなことはしない。
コンベアベルト類が、ローラーと荷受フロアの間を結んでいるからである。
その結果、荷下ろしは数分間で完了して、仕分けと検品の工程へと進む。
自動荷下ろしには、ピッキングロボットや自動フォークリフトなど他の方法もある。
荷下ろしの自動化は、サプライヤーが荷下ろしの方法について事前に知らされた上で、そのやり方に対応できるように荷積みをしておくことで初めて可能になる。
特に建設資材は素材のサイズ・体積・重さなどに極端なばらつきがあるため、カテゴリーごとに異なる荷下ろし方法が必要になる。
また、予め貨物に埋め込まれたRFIDチップが、到着時に工場にある製品や搬送機器とコンタクトをとるため、荷下ろし後はすみやかに生産ラインへ運ぶことが可能になる。
この時点で生産ラインに空きがない場合は、暫定的な保管プロセスが自動で発動する。
4.スマートファクトリーの行方 一般的な工場の入出荷プロセスは、外部の3PLによる調達および流通のネットワークとリンクしていることが普通である。
さらに3PLのネットワークは、各種のサービスプロバイダーを介してサプライヤーやカスタマーとリンクしている。
スマートファクトリーのロジスティクスが相応の機能を果たさなければ、サプライチェーン全体にわたるロジスティクス4・0のコンセプトそのものが成立しなくなる。
スマート・ファクトリー・ロジスティクスにおける3PLの将来的な役割を分析することは、そうした理由からも重要である。
スマートファクトリーの調達が目指すのは、入荷および輸送プロセスの全てをCPSにコントロールさせることで、オペレーションから人の手を完全に排除することにある。
将来的には、人間のすべきことはコントロールとプログラミングだけになるだろう。
前節で述べたように、荷下ろしはメーカー側の自動化システムが担う。
だとすれば、スマートファクトリーにおける荷受けと倉庫というコンセプトにおいて、3PLと彼らが現在提供しているサービスは不要になる。
そこで問題となるのは、将来的に3PLが担うべき新しい領域はどういったものになるかということである。
スマートファクトリーは、生産工程に向けた下準備としての開梱・仕分け・保管の各プロセスを、サプライチェーンの上流に位置する外部のロジスティクスセンターに依存せざるを得ない。
RFIDチップの装着や開梱済み素材の供給が、サプライヤーの手に余るほど複雑である場合には、スマートファクトリーが自らそれを行う必要が出てくる。
RFIDチップの装着、開梱および選別、品質チェック、保管、ジャスト・イン・シーケンス(JIS)向け事前ソーティングなど、サプライヤーやスマートファクトリーが直接手がけることができない全てのプロセスは、3PLが工場至近のサプライセンターにおいて代行するようになるだろう。
製品自体から素材提供の注文が入り次第、3PLが梱包を解いて要求通りの数量・順序・条件で納品するのである。
3PLを含むスマートファクトリーの調達物流のコンセプトを図表3に示す。
調達プロセスにおける物理的なモノの流れと、各構成要素による反対方向からの発注プロセスを整理した全体像である。
この発注プロセスは、各構成要素がいかなる通信技術を用いてお互いにコミュニケーションをとり合っているかを示している。
3PLによるプル型のオーダーから始まるのは、全体の正確な生産状況を彼らが常に把握しているからである。
ロジスティクスセンターにおいて出庫およびRFIDチップの装着が済むと、その素材はコミュニケーションの準備が整ったことになる。
そしてインテリジェントプロダクトからの指示を待って一時保管された後、JISでスマートファクトリーに納品される。
トラックからの荷下ろしは、前述の通りCPSによって梱包材なしで行われ、一時保管を経ずに無人搬送車が製造ラインへと直接運んでいく。
スマートファクトリーのロジスティクスサプライチェーンにとっては、開梱済み素材をJISでサプライヤー自身に納品してもらうことが望ましい。
それによりメーカーは、サプライヤーおよび納入される素材をコントールしやすくなる。
介在するものがないためにコミュニケーションに要する時間も短くなる。
これを図示したシナリオ1において、スマートファクトリーへの1次輸送はサプライヤーからの直行便となっている(図表4)。
しかし本稿のこれまでの検討からすると、これはいささか非現実的と言わざるを得ない。
将来的には3PLが、納品前の最終段階としてロジスティクスセンターを運営するようになる可能性がある。
これを図示したシナリオ2においては、輸送工程が2段階に分かれ、スマートファクトリーと3PLがコミュニケーションをとる(図表5)。
なおスマートファクトリーからカスタマーへの配送は必ずしもロジスティクスセンターを必要としないため、シナリオ1との違いは生じない。
どちらのシナリオが採用されて実現するのかについて、現段階で結論を下すことは難しい。
シナリオ1ではメーカーはサプライヤーと直にやり取りせざるを得ない。
それに対してシナリオ2の物理的プロセスは3PLにアウトソーシングすることが可能である。
コミュニケーションプロセスが問題なく行われるのであれば、アウトソーシングには拡張性など他の利点もある。
長期的にはシナリオ2の方がより現実的かもしれない。
5.結語 スマートファクトリーが調達物流に及ぼす今後の影響について、本稿では建設資材メーカーの例を参照しながら考察を行った。
それに加えロジスティクスネットワークにおける3PLの役割と責任に関しても、一定のコンセプトを提示することができたとわれわれは考えている。
将来的に3PLが工場の現場で活動する余地はなくなるかもしれない。
しかし、工場に近接するロジスティクスセンターの運営を通じて、スマートファクトリーの自律性を下支えする新しい役割を果たしていくことになるのではないだろうか。
メーカーは3PLを統合することによって、工場におけるプロセスをできるだけリーンかつ効率的なものにし、生産の自動化だけに専念することが可能になる。
もしメーカー側がサプライヤーに対して、梱包なしの直接納品、輸送中の積荷の安定性確保、RFIDチップの事前装着などを求めるとなると、そこではインターフェースの問題が発生する。
ハンドリングおよび輸送の複雑性の問題は簡単に解決できるものではない。
アウトソーシングプロセスを考慮せずにスマートファクトリーが作られてしまうと、メーカーは自分の手で荷役などを行わなければならない。
そのための人員も必要になる。
スマートファクトリーが目指す完璧な自律性は遠のくばかりとなってしまう。
このトピックに関する研究はまだ緒に就いたばかりである。
スマートファクトリーとロジスティクス4・0が調達物流に与える影響については、さらなる実証研究と概念分析を進め、理解をより深める必要がある。
しかしながら、スマートファクトリーへの理解が実際に進むにつれて、この分野の研究は自ずと厚みを増していくことであろう。
(翻訳構成 大矢英樹)
スマートファクトリーにおいては、生産システム・ツール・運搬器具などの各エージェント(*編集部注 マルチエージェントシステム論ではこれらを“エージェント”と呼ぶ)が、それぞれ独自にコミュニケーションを行い、自律的な生産およびロジスティクスの環境をつくり出す。
生産予測・資源計画・生産管理・パフォーマンス分析などは、「サイバーフィジカルシステム(CPS)」によって遂行される。
手作業による入出庫などのプロセスは自動化される。
発注・輸配送・荷下ろし・保管などのやり方が大きく変わると予想される。
それに伴い調達物流のプロセスはどのように変化するのか。
またそれに関連して、本編ではサプライチェーンメンバー同士のコラボレーションの在り方や、インターフェースソリューションについても言及する。
調達・生産・流通のロジスティクスプロセスは、その多くが外部の3PLプロバイダーによって遂行されている。
デジタルサプライチェーンへの統合に必要な要件を整えるという役割も、それを実際に担うことになるのは3PLに他ならない。
スマートファクトリーにおける3PLの役割をあらためて考え直す必要があるのは、そうした事情による。
3PLは果たして未来のコンセプトにおいても引き続き必要とされるのか、あるいはCPSが3PLに取って代わるのか、3PLがもし必要とされるのであれば彼らはどのような領域を担うことになるのか──それについても以下に見ていくことにする。
2.研究方法(省略) 3.スマートファクトリーロジスティクス 3-1.それは何か 第四次産業革命の影響はビジネスモデルだけでなく、生産とロジスティクスのプロセス、マネジメント戦略の変革にまで及ぶ。
インダストリー4・0がもたらすこの新たな機運は、ビジネスと社会のどちらにも良い影響を与える形で運営管理される必要がある。
そもそもインダストリー4・0とは、既存の工場を“スマートファクトリー”へと変貌させるプロセスを意味している。
そこでは製品・ワークステーション・運搬機器同士が、インターネットを介してリアルタイムで直接コミュニケーションをとり合う。
その環境を整えるため、生産システムとロジスティクスシステムは、人手を介すことなく自らをCPSとして立ち上げる。
この構想において生産工程をコントロールするのは、製品自身である。
すなわち、生産情報をRFIDチップのような機械判読が可能な形に加工して、製品自体がそれを伝達する。
一つ一つの製品が自分の物理的性質や生産の進捗状況を把握し、そのデータを使って生産工程および工場内を移動していくのである。
スマートファクトリーを理解するため具体例を見てみよう。
ここでは建設資材メーカーを取り上げる。
インダストリー4・0の影響を受けて大きな変化が生じている分野だからである。
建設資材関連のスマートファクトリーでは、住宅リノベーション用の資材一式が、新たに開発された技術によって自律的に生産できるようになる。
この事例では、生産している製品はファサード(建物正面)と屋根の部分であり、窓や扉だけでなく太陽光パネル・換気装置なども含む。
規格化された住宅用リノベーションパッケージを、従来の方法より安く早く生産することが、このスマートファクトリーの目的である。
そのために生産計画においては、入荷・保管・生産・出庫の各プロセスが、CPSによって自動制御されるようにしなければならない。
図表1はファサードパネルの自動製造プロセスを表したものである。
まず初めに、発泡スチロールなどの断熱材を家の寸法に合わせてカットし、扉・窓・暖房・換気装置などが収まるように穴を開け、それらをつなぎ合わせて一枚の断熱パネルとして成形する。
次いでそのパネルに木材・石膏プラスター・煉瓦などの外装材を貼り合わせた後、暖房・換気装置を設置する。
最後に扉と窓をパネルにはめ込み、乾燥工程を経て完成となる。
生産システムと工程のデジタル化に当たっては、スマートファクトリーの入出荷と構内物流のプロセスに対応することも重要である。
ここで注意を要するのは、「ロジスティクス4・0」と「スマートファクトリーロジスティクス」の概念は、それぞれ意味する範囲が異なることである。
両者を区別する必要がある(図表2参照)。
ロジスティクス4・0が意味しているのは、インダストリー4・0および物流業界とSCMのメガトレンドがロジスティクスに及ぼす影響である。
もっと広く捉えるとすれば、企業と物流機能の枠を越えてインダストリー4・0を支えるものといってもいいだろう。
それはモノと情報のロジスティクスを司る効率的な組織体への道であり、デジタルテクノロジーの潜在能力を引き出す前提条件でもある。
そこで最も重視される技術はRFID、人工知能(AI)、無人搬送車(AGV)、ビッグデータ、モノのインターネット(IoT)である。
ロジスティクス4・0においては、垂直方向のさまざまなバリューチェーンのメンバーが、水平方向のバリューネットワークへと再編される。
ところがこのロジスティクスネットワークは、予測不能で変転極まりない環境に置かれている。
これからのロジスティクス・システム・デザインに、堅牢性・柔軟性・レジリエンス(復元力)が求められるのはそのためだ。
また集めたデータを集積することも、ロジスティクス4・0の大事な側面である。
スマートファクトリーとロジスティクス4・0から成るスマート・ファクトリー・ロジスティクスは、工場内の構内物流と情報プロセスを一体化するところから始まり、それをSCMにおけるマルチエージェントシステムとして具現化したものである。
各エージェントは発生するイベントに反応し、自分の置かれた環境を認識し、意思決定を行い、他のエージェントとコミュニケーションをとることで、工場の生産性と効率を向上させる。
前述の通り、スマートファクトリーのワークステーションと運搬車両は互いにリンクしており、キャパシティの多寡に応じて各々が適切な生産指示を出す。
実際のモノの動きは図表2の通り入荷・倉庫保管・生産・出荷の各工程に分けられるが、全体的な生産フローは従来型の工場と何ら変わりはない。
スマートファクトリーロジスティクスで大事なのは、こうした工程が、ロジスティクス4・0の技術を用いてデジタルでつながっていることである。
オペレーションの視点からすれば、運搬器具の役割は、必要な材料を生産現場に正しい時間と順番で供給し、工程が完了次第、迅速に次のステップに運ぶことである。
ここでわれわれは、スマート・ファクトリー・ロジスティクスを次のように定義することを提案したい。
すなわち「スマート・ファクトリー・ロジスティクスとは、ロジスティクス4・0テクノロジーの活用によってスマートファクトリーにおける分散制御を実現した、輸送および情報プロセスの全体のことを指す」。
3-2.調達物流の変容 調達物流は、サプライヤー側の納品物流とメーカー側の生産物流システムによって構成される。
メーカーの必要に応じて、原材料・資材・製品などを利用できるようにすることがその目的である。
ロジスティクスサプライチェーンにおいて、情報フローがスマートファクトリー化の一環としてデジタル化していくのに伴い、調達物流も変化を迫られる。
変化の一つはスマートファクトリー側の発注プロセスであり、そしてもうひとつはサプライヤーによる貨物の配送と荷下ろしである。
将来的にこれらをどうするべきかが問われている。
ここで再び建設資材を例にとる。
建設資材のスマートファクトリーにおける原材料の発注は、プル型の原則に基づき、ERPシステムやクラウドベースのカンバンシステムが自動で行う。
在庫が基準値の最低(発注)ラインに達した時点か、あるいは顧客からの注文が入った時点で、それぞれの住宅タイプに合わせた発注がなされる。
原材料(発泡スチロールなど)や資材(接着剤、プラグ、ガラスマットなど)などは、主に在庫補充システムが発注する。
一方、換気装置や太陽光パネルなどの比較的高価な製品は、ファサードや屋根のパネルなどと一緒に別途発注される。
それぞれの製品をどこから調達するかについては、IoTベースのカンバン方式を用いて、各サプライヤーがその時点で保有する購入可能な在庫品や生産キャパシティを調べた上で決定する。
こうしたプロセスは、水平および垂直方向のバリューチェーン全体にわたるデータの透明性とアクセシビリティが、どれほどの重要性を持つのかを物語っている。
スマートファクトリーの生産スケジュールは、仕掛品在庫がほぼ発生しないように調整される。
保管コストの発生を回避して受け入れプロセスを単純化するために、生産に必要な原材料や製品は、生産ラインに直接搬入される。
サプライヤーは、注文時に指定された納品数量・品質・時間・場所などの厳守を求められる。
スマートファクトリーが、十分な使い勝手の良さとリアルタイムのコントロールを手に入れるためには、プロセスはできる限り透明であることが望ましい。
スマートファクトリーからの注文が入り次第、サプライヤーは指定された品々を取りまとめる。
ここで最も大事なのは、注文をファサードや屋根のパネルの在庫に直接割りあてることができるよう、一つ一つの個体を明確に区別・認識することである。
そのための選択肢の一つがRFIDチップである。
トラックへの積み込みと梱包材もおろそかにはできない。
プロセスをシンプルにして迅速に済ませるために、スマートファクトリー側では一般的に、荷受時の開梱作業を想定していない。
したがってサプライヤーは納品に当たり、必要最小限の梱包と、積荷をしっかりと固定するという条件を満たさなければならない。
自律的な輸送プロセスの基本は、弾力的なスケジュール運用とGPSによる追跡機能を用いて、輸送フローを安定的に維持することである。
トラックの追跡はサプライヤーの施設で荷物が積み込まれた時点から始まる。
スケジュールの時間的な誤差は従業員が調整するのではなく、システムがリアルタイムで認識して修正する。
スマートファクトリーに向けてトラックが出発すると、もともとの予定時刻と実際の到着予定時刻が照合される。
そこで遅れが検知された場合には、その便のために確保されていた時間枠をキャンセルして、それを他のトラックが利用できるように開放する。
そうした修正によって荷下ろしのキャパシティを効率的に利用するのである。
納品予定の連絡はトラックが工場に到着するより前に、システムによって荷受けの担当部署に伝達されているはずである。
納品トラックが受付に立ち寄りもせず、最初に荷下ろしをする場所へ直接乗り入れることができるのはそのためである。
荷下ろしの風景も大きく変化する。
スマートファクトリーでは一般的に、荷捌きエリアに設置された各種のローラーなどを利用して、トラック自身が荷下ろしを行う。
従来のように荷受け担当者がフォークリフトなど既存のシステム使って荷下ろしをしたり、あるいはトラックに乗り入れたりするようなことはしない。
コンベアベルト類が、ローラーと荷受フロアの間を結んでいるからである。
その結果、荷下ろしは数分間で完了して、仕分けと検品の工程へと進む。
自動荷下ろしには、ピッキングロボットや自動フォークリフトなど他の方法もある。
荷下ろしの自動化は、サプライヤーが荷下ろしの方法について事前に知らされた上で、そのやり方に対応できるように荷積みをしておくことで初めて可能になる。
特に建設資材は素材のサイズ・体積・重さなどに極端なばらつきがあるため、カテゴリーごとに異なる荷下ろし方法が必要になる。
また、予め貨物に埋め込まれたRFIDチップが、到着時に工場にある製品や搬送機器とコンタクトをとるため、荷下ろし後はすみやかに生産ラインへ運ぶことが可能になる。
この時点で生産ラインに空きがない場合は、暫定的な保管プロセスが自動で発動する。
4.スマートファクトリーの行方 一般的な工場の入出荷プロセスは、外部の3PLによる調達および流通のネットワークとリンクしていることが普通である。
さらに3PLのネットワークは、各種のサービスプロバイダーを介してサプライヤーやカスタマーとリンクしている。
スマートファクトリーのロジスティクスが相応の機能を果たさなければ、サプライチェーン全体にわたるロジスティクス4・0のコンセプトそのものが成立しなくなる。
スマート・ファクトリー・ロジスティクスにおける3PLの将来的な役割を分析することは、そうした理由からも重要である。
スマートファクトリーの調達が目指すのは、入荷および輸送プロセスの全てをCPSにコントロールさせることで、オペレーションから人の手を完全に排除することにある。
将来的には、人間のすべきことはコントロールとプログラミングだけになるだろう。
前節で述べたように、荷下ろしはメーカー側の自動化システムが担う。
だとすれば、スマートファクトリーにおける荷受けと倉庫というコンセプトにおいて、3PLと彼らが現在提供しているサービスは不要になる。
そこで問題となるのは、将来的に3PLが担うべき新しい領域はどういったものになるかということである。
スマートファクトリーは、生産工程に向けた下準備としての開梱・仕分け・保管の各プロセスを、サプライチェーンの上流に位置する外部のロジスティクスセンターに依存せざるを得ない。
RFIDチップの装着や開梱済み素材の供給が、サプライヤーの手に余るほど複雑である場合には、スマートファクトリーが自らそれを行う必要が出てくる。
RFIDチップの装着、開梱および選別、品質チェック、保管、ジャスト・イン・シーケンス(JIS)向け事前ソーティングなど、サプライヤーやスマートファクトリーが直接手がけることができない全てのプロセスは、3PLが工場至近のサプライセンターにおいて代行するようになるだろう。
製品自体から素材提供の注文が入り次第、3PLが梱包を解いて要求通りの数量・順序・条件で納品するのである。
3PLを含むスマートファクトリーの調達物流のコンセプトを図表3に示す。
調達プロセスにおける物理的なモノの流れと、各構成要素による反対方向からの発注プロセスを整理した全体像である。
この発注プロセスは、各構成要素がいかなる通信技術を用いてお互いにコミュニケーションをとり合っているかを示している。
3PLによるプル型のオーダーから始まるのは、全体の正確な生産状況を彼らが常に把握しているからである。
ロジスティクスセンターにおいて出庫およびRFIDチップの装着が済むと、その素材はコミュニケーションの準備が整ったことになる。
そしてインテリジェントプロダクトからの指示を待って一時保管された後、JISでスマートファクトリーに納品される。
トラックからの荷下ろしは、前述の通りCPSによって梱包材なしで行われ、一時保管を経ずに無人搬送車が製造ラインへと直接運んでいく。
スマートファクトリーのロジスティクスサプライチェーンにとっては、開梱済み素材をJISでサプライヤー自身に納品してもらうことが望ましい。
それによりメーカーは、サプライヤーおよび納入される素材をコントールしやすくなる。
介在するものがないためにコミュニケーションに要する時間も短くなる。
これを図示したシナリオ1において、スマートファクトリーへの1次輸送はサプライヤーからの直行便となっている(図表4)。
しかし本稿のこれまでの検討からすると、これはいささか非現実的と言わざるを得ない。
将来的には3PLが、納品前の最終段階としてロジスティクスセンターを運営するようになる可能性がある。
これを図示したシナリオ2においては、輸送工程が2段階に分かれ、スマートファクトリーと3PLがコミュニケーションをとる(図表5)。
なおスマートファクトリーからカスタマーへの配送は必ずしもロジスティクスセンターを必要としないため、シナリオ1との違いは生じない。
どちらのシナリオが採用されて実現するのかについて、現段階で結論を下すことは難しい。
シナリオ1ではメーカーはサプライヤーと直にやり取りせざるを得ない。
それに対してシナリオ2の物理的プロセスは3PLにアウトソーシングすることが可能である。
コミュニケーションプロセスが問題なく行われるのであれば、アウトソーシングには拡張性など他の利点もある。
長期的にはシナリオ2の方がより現実的かもしれない。
5.結語 スマートファクトリーが調達物流に及ぼす今後の影響について、本稿では建設資材メーカーの例を参照しながら考察を行った。
それに加えロジスティクスネットワークにおける3PLの役割と責任に関しても、一定のコンセプトを提示することができたとわれわれは考えている。
将来的に3PLが工場の現場で活動する余地はなくなるかもしれない。
しかし、工場に近接するロジスティクスセンターの運営を通じて、スマートファクトリーの自律性を下支えする新しい役割を果たしていくことになるのではないだろうか。
メーカーは3PLを統合することによって、工場におけるプロセスをできるだけリーンかつ効率的なものにし、生産の自動化だけに専念することが可能になる。
もしメーカー側がサプライヤーに対して、梱包なしの直接納品、輸送中の積荷の安定性確保、RFIDチップの事前装着などを求めるとなると、そこではインターフェースの問題が発生する。
ハンドリングおよび輸送の複雑性の問題は簡単に解決できるものではない。
アウトソーシングプロセスを考慮せずにスマートファクトリーが作られてしまうと、メーカーは自分の手で荷役などを行わなければならない。
そのための人員も必要になる。
スマートファクトリーが目指す完璧な自律性は遠のくばかりとなってしまう。
このトピックに関する研究はまだ緒に就いたばかりである。
スマートファクトリーとロジスティクス4・0が調達物流に与える影響については、さらなる実証研究と概念分析を進め、理解をより深める必要がある。
しかしながら、スマートファクトリーへの理解が実際に進むにつれて、この分野の研究は自ずと厚みを増していくことであろう。
(翻訳構成 大矢英樹)
