2021年1月号
特集
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加藤産業 物量予測と保管ロケーション最適化にAIを活用
予測の乖離率を24%から5%に改善
加藤産業は兵庫県西宮市に本社を置く総合食品卸だ。
2020年9月期の連結売上高は約1兆1046億円。
全国に80カ所の汎用センターおよび特定顧客向けの専用物流センターを配置している。
全国11支社にそれぞれ物流管理ユニットリーダーを置いて各エリアのセンターを管理している。
本社部門のロジスティクス部では全体を統括するほか、物流企画、業務プロセスの開発、改善指導などを行っている。
物流センターの管理レベルはセンター長の属人的なスキルや経験に多くを依存する。
全体の底上げを図るため、ロジスティクス部では以前から管理者育成に力を注いできた。
しかし、拠点による管理レベルのばらつきはなかなか埋まらない。
そこで新たに業務の標準化とシステム化に取り組んだ。
堂内寛章ロジスティクス部長は「課題の解決に向けて、AI活用を視野に入れたプロジェクトを推進していくことになった。
具体的な仕組みの検討を進める中でシステムベンダーとPoC(概念実証)を実施し、その結果から人員配置計画業務と庫内の生産性改善業務に効果がありそうだと分かった。
そこで、人員配置計画業務と生産性改善業務のそれぞれでシステムベンダーとタッグを組んで新たなシステムを開発していくことになった」と説明する。
人員配置計画とは、作業量に応じた適正な人数の作業員を各エリアに配置するための業務だ。
まず、過去実績や直近の傾向を基に作業エリア別に物量を予測する。
その予測物量を1人当たりの時間生産性の実力値で除算することで、作業エリア別の必要な人時を算出。
そして、必要人時をセンター稼働時間に応じてシフト配置する。
このプロセスで最も重要なのが、物量予測の精度だ。
予測よりも実際の物量が少なければ余剰人員となり、多ければ作業員の残業が発生する。
あるいは納品の遅れなどが発生する。
しかし、この物量予測の精度はセンター長によってばらつきがあった。
加工食品の売れ行きは販促活動やメディアの商品紹介などによって大きく変動する。
そのためさまざまな要素を考慮した上で物量を予測しなくてはならない。
ところが季節商品の変動や特売予定などを考慮せず、人員の配置を単純に曜日ごとに固定しているセンターもあった。
そうしたセンターでは人員の過不足が慢性化していた。
そこで、人員配置計画業務をシステム化するプロジェクトを18年から本格的にスタートした。
プロジェクトの初期段階でAIによる物量予測精度の検証を行なったところ、十分に波動を捉えられることが分かった。
要件定義を経て、18年9月からAIを組み込んだ人員配置計画業務システムのベータ版の開発に着手。
19年2月から試行運用を26拠点で実施した。
そのフィードバックを基に調整を行い、20年の春から全国の拠点を対象とする本格導入へと移行した。
新型コロナ感染拡大の影響で一時は導入がストップしたが、夏ごろから再開して、20年11月末までに全拠点での本稼働にこぎ着けた。
堂内部長は「AIが予測した物量予測は、波動が安定的なセンターにおいては、実績との乖離がほとんどなかった。
ただ、AIは過去実績データを学習して波動の特徴を捉えることで物量を予測する。
過去実績にデータが存在しない変動要因、例えば販促や新店、拠点移管などがある場合は、その点を考慮した人間による補正を行っている」という。
導入効果は数字にも表れている。
新システム導入前の予測と実績の乖離率は約24%だった。
それが導入後は約5%に改善された(図)。
物量予測のベースとなる業務をAIに任せられるようになったことで、センター長の作業負荷も低減した。
ロケーション変更の効果を見える化 もうひとつのAIシステムは、保管ロケーションの最適化がターゲットだ。
同社の各センターでは出荷業務の生産性を向上するため、保管ロケーションを定期的に見直している。
各SKUの出荷傾向を保管ロケーションに反映することでピッキングスタッフの移動距離を短縮する。
管理者はピッキング作業の効率を低下させている要因を突き止め、商品カテゴリー、商品特性、重量、容積、出荷頻度と量、季節波動といった各種のパラメーターと庫内の制約条件を考慮して最適な商品配置の入れ替え案を作成しなくてはならない。
やはりセンターによって顕著な差が生じている業務だった。
堂内部長は「当社の物流センターにおける取り扱いアイテム数は、この10年間で3割近く増加した。
約10年前まで1センター平均3800アイテムが、現在は5千アイテムに膨れ上がっている。
考慮すべき要素が増えたことが、管理レベルのばらつきをさらに拡大させていた」という。
そこでAIが入れ替え案を提案する新しいシステムの開発を18年にスタートした。
18年9月にその実地検証を量販専用センターで行った。
しかし、結果は約2%の生産性改善にとどまった。
目標値には届かなかった。
量販専用という特性上、カテゴリー配置が決められており、その範囲内でしか入れ替えを実施できなかったことがその理由だった。
翌10月に今度はカテゴリー制約のない汎用センターで検証したところ、約8%の生産性改善を確認できた。
この数値であれば導入効果が高いと判断した。
当初は全センターへの導入を計画していたが、当面は確実な効果を期待できる汎用センターに対象を絞ることにした。
19年4月から本稼働の準備に入り、実運用上の課題を整理。
同12月から在庫SKU数や出荷量などの面から導入効果が大きいと判断した20カ所の汎用センターを対象に順次導入を始めた。
20年11月現在、既に20拠点への導入は完了している。
新たに開発したAI商品配置最適化システムは、現状のセンター内のロケーションにおいて、どの商品とどの商品の位置を入れ替えると、ピッキングスタッフの移動距離が縮まり、出荷作業の効率を向上できるかという視点から入れ替えプランを提案する。
その際、重量定義や入れ替え不可商品などのパラメーターを管理者が設定する。
これによって容量や容積といった商品特性、出荷ミス注意品の集約、納品カテゴリーの集約などといった要素を反映できる仕組みとしている。
そして、どの商品の入れ替えを実施するかの最終判断は管理者が下す。
従来は管理者がエクセルを使って入れ替え候補を分析してリスト化していたため、業務の負荷も高かった。
新システム導入後は、AIが入れ替え候補を出荷効率の高い順にリストアップしてくれるようになった。
ロケーションの入れ替えを、より柔軟に行えるようになった。
入れ替え前後の効率の変化も見える化された。
ある商品とある商品を入れ替えたら、どれだけ生産性が変わるのか、その見込み値が事前に提示される。
実際に変更した後の実績値も確認できる。
新システムの導入前後でピッキングスタッフの移動距離は約9・5%短縮された。
ピッキング作業の生産性は約8・6%向上した。
各拠点で属人化していたプロセスを統一したことで、業務レベルのボトムアップも実現した。
今後は導入拠点をさらに拡大する方向で検討を進めている。
「現在も運用上の課題を吸い上げている。
現場の声をシステムに反映して仕組みを作り込んでいく。
操作性の改善にも取り組んでいる。
現時点ではまだ公表できないが、今回の二つのシステムの他にも、AIを活用した業務支援システムの導入を検討している」と堂内部長はさらに先をにらんでいる。
2020年9月期の連結売上高は約1兆1046億円。
全国に80カ所の汎用センターおよび特定顧客向けの専用物流センターを配置している。
全国11支社にそれぞれ物流管理ユニットリーダーを置いて各エリアのセンターを管理している。
本社部門のロジスティクス部では全体を統括するほか、物流企画、業務プロセスの開発、改善指導などを行っている。
物流センターの管理レベルはセンター長の属人的なスキルや経験に多くを依存する。
全体の底上げを図るため、ロジスティクス部では以前から管理者育成に力を注いできた。
しかし、拠点による管理レベルのばらつきはなかなか埋まらない。
そこで新たに業務の標準化とシステム化に取り組んだ。
堂内寛章ロジスティクス部長は「課題の解決に向けて、AI活用を視野に入れたプロジェクトを推進していくことになった。
具体的な仕組みの検討を進める中でシステムベンダーとPoC(概念実証)を実施し、その結果から人員配置計画業務と庫内の生産性改善業務に効果がありそうだと分かった。
そこで、人員配置計画業務と生産性改善業務のそれぞれでシステムベンダーとタッグを組んで新たなシステムを開発していくことになった」と説明する。
人員配置計画とは、作業量に応じた適正な人数の作業員を各エリアに配置するための業務だ。
まず、過去実績や直近の傾向を基に作業エリア別に物量を予測する。
その予測物量を1人当たりの時間生産性の実力値で除算することで、作業エリア別の必要な人時を算出。
そして、必要人時をセンター稼働時間に応じてシフト配置する。
このプロセスで最も重要なのが、物量予測の精度だ。
予測よりも実際の物量が少なければ余剰人員となり、多ければ作業員の残業が発生する。
あるいは納品の遅れなどが発生する。
しかし、この物量予測の精度はセンター長によってばらつきがあった。
加工食品の売れ行きは販促活動やメディアの商品紹介などによって大きく変動する。
そのためさまざまな要素を考慮した上で物量を予測しなくてはならない。
ところが季節商品の変動や特売予定などを考慮せず、人員の配置を単純に曜日ごとに固定しているセンターもあった。
そうしたセンターでは人員の過不足が慢性化していた。
そこで、人員配置計画業務をシステム化するプロジェクトを18年から本格的にスタートした。
プロジェクトの初期段階でAIによる物量予測精度の検証を行なったところ、十分に波動を捉えられることが分かった。
要件定義を経て、18年9月からAIを組み込んだ人員配置計画業務システムのベータ版の開発に着手。
19年2月から試行運用を26拠点で実施した。
そのフィードバックを基に調整を行い、20年の春から全国の拠点を対象とする本格導入へと移行した。
新型コロナ感染拡大の影響で一時は導入がストップしたが、夏ごろから再開して、20年11月末までに全拠点での本稼働にこぎ着けた。
堂内部長は「AIが予測した物量予測は、波動が安定的なセンターにおいては、実績との乖離がほとんどなかった。
ただ、AIは過去実績データを学習して波動の特徴を捉えることで物量を予測する。
過去実績にデータが存在しない変動要因、例えば販促や新店、拠点移管などがある場合は、その点を考慮した人間による補正を行っている」という。
導入効果は数字にも表れている。
新システム導入前の予測と実績の乖離率は約24%だった。
それが導入後は約5%に改善された(図)。
物量予測のベースとなる業務をAIに任せられるようになったことで、センター長の作業負荷も低減した。
ロケーション変更の効果を見える化 もうひとつのAIシステムは、保管ロケーションの最適化がターゲットだ。
同社の各センターでは出荷業務の生産性を向上するため、保管ロケーションを定期的に見直している。
各SKUの出荷傾向を保管ロケーションに反映することでピッキングスタッフの移動距離を短縮する。
管理者はピッキング作業の効率を低下させている要因を突き止め、商品カテゴリー、商品特性、重量、容積、出荷頻度と量、季節波動といった各種のパラメーターと庫内の制約条件を考慮して最適な商品配置の入れ替え案を作成しなくてはならない。
やはりセンターによって顕著な差が生じている業務だった。
堂内部長は「当社の物流センターにおける取り扱いアイテム数は、この10年間で3割近く増加した。
約10年前まで1センター平均3800アイテムが、現在は5千アイテムに膨れ上がっている。
考慮すべき要素が増えたことが、管理レベルのばらつきをさらに拡大させていた」という。
そこでAIが入れ替え案を提案する新しいシステムの開発を18年にスタートした。
18年9月にその実地検証を量販専用センターで行った。
しかし、結果は約2%の生産性改善にとどまった。
目標値には届かなかった。
量販専用という特性上、カテゴリー配置が決められており、その範囲内でしか入れ替えを実施できなかったことがその理由だった。
翌10月に今度はカテゴリー制約のない汎用センターで検証したところ、約8%の生産性改善を確認できた。
この数値であれば導入効果が高いと判断した。
当初は全センターへの導入を計画していたが、当面は確実な効果を期待できる汎用センターに対象を絞ることにした。
19年4月から本稼働の準備に入り、実運用上の課題を整理。
同12月から在庫SKU数や出荷量などの面から導入効果が大きいと判断した20カ所の汎用センターを対象に順次導入を始めた。
20年11月現在、既に20拠点への導入は完了している。
新たに開発したAI商品配置最適化システムは、現状のセンター内のロケーションにおいて、どの商品とどの商品の位置を入れ替えると、ピッキングスタッフの移動距離が縮まり、出荷作業の効率を向上できるかという視点から入れ替えプランを提案する。
その際、重量定義や入れ替え不可商品などのパラメーターを管理者が設定する。
これによって容量や容積といった商品特性、出荷ミス注意品の集約、納品カテゴリーの集約などといった要素を反映できる仕組みとしている。
そして、どの商品の入れ替えを実施するかの最終判断は管理者が下す。
従来は管理者がエクセルを使って入れ替え候補を分析してリスト化していたため、業務の負荷も高かった。
新システム導入後は、AIが入れ替え候補を出荷効率の高い順にリストアップしてくれるようになった。
ロケーションの入れ替えを、より柔軟に行えるようになった。
入れ替え前後の効率の変化も見える化された。
ある商品とある商品を入れ替えたら、どれだけ生産性が変わるのか、その見込み値が事前に提示される。
実際に変更した後の実績値も確認できる。
新システムの導入前後でピッキングスタッフの移動距離は約9・5%短縮された。
ピッキング作業の生産性は約8・6%向上した。
各拠点で属人化していたプロセスを統一したことで、業務レベルのボトムアップも実現した。
今後は導入拠点をさらに拡大する方向で検討を進めている。
「現在も運用上の課題を吸い上げている。
現場の声をシステムに反映して仕組みを作り込んでいく。
操作性の改善にも取り組んでいる。
現時点ではまだ公表できないが、今回の二つのシステムの他にも、AIを活用した業務支援システムの導入を検討している」と堂内部長はさらに先をにらんでいる。
