ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2004年5号
特集
ICタグは使えない 物流マン100人はこう考える

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

MAY 2004 26 ●ICタグに関して現状では一個当たりの値段が高いこ ともあり積極的に検討といった状況にはない。
しかし 当社の商品の性格上、一個の単価が一円のレベルにな るならば商品に添付する時代になると考えている。
そ こに行くのにどのくらいの時間が必要になるかが現時 点の関心事。
またICタグが実用化された時に当社と しての活用方法や対応について研究しておく必要があ り、個別に担当レベルで研究会等に参加し情報収集に 努めている。
将来的に考えると、商品の状況が見える環境を作る ことは必要だと思うし、場合によるとCRMを考える には単にハウスカードではなく、ICタグが必要にな るとも思う。
ただしその場合でも、個人のプライバシ ーと情報開示の問題は残る。
情報の高度活用を考えた 場合、まず見える環境が必要であるため、いずれは必 ず実用化される仕組みと考える。
(日用雑貨品メーカー) ●商品供給面で、顧客からの信頼度向上に役立ち顧客満 足度向上に貢献する大変有効な手段であると考える。
(家電メーカー) ●ほとんど普及しない。
?ICタグ自体の価格低下、? 消費者の安全・安心に対する訴求度合い、?サプライ チェーン全体でのインフラ投資(サプライチェーン上 の一部でも導入できなければ全く意味が無い)、これに ?インフラ整備のための補助金支出の四つが同時達成 できれば普及するだろう。
それも現行のバーコードシ ステムを凌ぐだけのメリット(効果)が打ち出せるこ とが前提。
サプライチェーン上には大企業もあれば中 小零細企業もあり、消費者の安全・安心を満たすため には、全ての流通経路において、ICタグが機能する 物流マン100人はこう考える 本誌緊急調査「ICタグと、どう向き合うか」 日本のロジスティクスの実務家たちは現在のブームをどの ように受け止め、ICタグと、どう向き合おうとしているのか。
それを探るため、本誌はこのたび電子メールによるアンケー ト調査を行った。
260人にメールを送付し、118人から回答 を得た。
その結果を報告する。
第4部 27 MAY 2004 インフラが構築されてはじめて意味をなす。
サプライ チェーンのどこかでスルーされてしまうと、物流と情 報流が合致せず、結果として信頼性に欠け、「使えない」 となってしまうだろう。
(食品メーカー) ●生産分野での活用を検討中。
物流分野での検討はして いないが、二〇年後を想定すれば、ICタグの普及は 確定した未来だと思う。
特に検討を要することもなく 導入する時期が二〇年以内にくるはずである。
(精密機械メーカー) ●ICタグに複雑な情報を持たせる必要がない。
?商品 の受発注会社、?メーカーまたは卸業者、?物流会社 (商品の配達会社)の三者が運用方法を決めれば、物流 効率アップ、スピードアップのための実用化自体はす ぐにでも可能だが。
(コンピュータメーカー) ●各企業・業界が情報不足。
(外資系食品メーカー) ●情報量が増える程度ではバーコードに対する優位性を 訴求できない。
トレーサビリティ取得についても現行 のバーコードによる履歴管理を構築しており、それで 支障を感じていないため、新規投資を全て自前で行っ てまで導入することは考えにくい。
(食品メーカー) ●?タグのコストが高くつく(使い捨てが多くなる予定)。
?タグシステム間の互換性、基準化が必要(ハード、 ソフト面の)。
?ミスリード時のリカバリー、物の最終 的認識のための、目視ラベルの貼付が必要となるので は? (食品メーカー) ●ほとんど普及しない。
米国のようなニーズが日本には ない。
(外資系食品メーカー) ●従来は不可能と思われていたことが可能となる。
ただ しコストがいかに安価になるか、周辺の整備、使用周 波数等が整うかが問題。
(自動車メーカー) ●サプライチェーン全体にまたがった付加価値サービス の大幅な向上を期待する。
現状では、読み取り性能・ 精度、費用負担の考え方(サプライチェーンに関わる 業界全体での費用分担が可能か?)など、まだまだ課 題は多い。
しかしそれも普及が進むにつれ少しずつ解 決されてくるものと考えている。
(コンピュータメーカー) ●期待することとしては、複数単位処理、データ有効活 用(ABC・ABM)、伝票レス等々による?物流生産 性の向上。
?トレーサビリティ。
?物流のみならず、 生産から回収に至るまでの経路把握→物流のみならず、 マーケティング・品質保持面での活用。
現状評価とし ては、?九〇〇MHzであれば部分的に活用可能な印 象あり。
ただし周波数の活用許可が前提。
?金属を通 さないという電波特性は大きな障害要因。
?価格的に はタグの単価がまだまだ高い。
(家電メーカー) ●物流現場での検収作業の正確性・効率性を求めれば活 用の余地あり。
またトレーサビリティの情報を多く持 てる点からも用途はあると思う。
しかし物流情報だけ ならば、二次元バーコードで十分。
メーカーとしては 卸・小売りがどのような対応をするかで活用するかど うか、つまり投資するかどうかが決まると思う。
(食品メーカー) ●今以上に性能が向上することを期待している。
液体は いけるが、レトルト製品(アルミ等)は機能しないのが現 状。
価格が下がることが重要。
五〜一〇円程度になら ないと普及しないと考える。
(食品メーカー) ●製品単価の安い食品に、使い捨てのワンウエイのタグ を付けるのは不可能。
したがって当社ではカートンに 二次元コードをジェットプリンターで印字し、それを 出荷時にハンディターミナルで読み込んで、出荷先を 検索できるようにしている。
現在貼り付けられている ラベルに二次元コードを付加するなどの工夫が必要。
(食品メーカー) ●導入にあたっては、企業の経営課題に対してどのよう なインパクトがあるかという観点で利用目的を明確に する必要がある。
物流分野においては、物流プロセス と業務プロセスの変革と連動して実施しないと効果的 ではない。
また一企業単独のものではなく、メーカー、 卸、小売りのサプライチェーン全体に寄与するもので ないと効果的ではない。
サプライチェーン内でその構 築、運用のコスト負担配分の取り決めが必要になる。
(アパレル) ●スクランブルのあるスマートカード用ICチップのよ うに、ある程度の暗号化されたセキュリティのかかる ICタグができればIDとして普及の可能性があると 思う。
(食品メーカー) ●クリアすべき項目は?規格統一、?セキュリティ、? コスト。
. 懸念としてはアメリカでの動向、大手販売店 等の導入に向けた動きなどが挙げられる。
その他とし てバーコードにとって代わるかに注目している。
(精密機械メーカー) ●日本でのICタグの標準仕様が早く決定し、流通され ることを期待する。
業界ごとに仕様が標準化されるこ とが導入の大前提。
(小売チェーン) ●利用形態は多岐にわたる。
標準化等の業界ルールも同 時に推進すべき。
(アパレル卸) ●規格の統一が最優先、インフラ整備のイニシアティブ を誰が取るかが問題。
(食品スーパー) ●現状では、活用に関しての効果が漠然としている。
し かし、データの活用如何では、より有効な、配送品質 向上の一助、また新たな配送サービスを生み出す可能 性を秘めていると考える。
(通販) MAY 2004 28 とを目的として試験研究をしている。
(産業機械メーカー系) ●課題はプライバシー問題に対する技術的解決と社会的 保障。
一括読み取り可能なレベルのアンテナ開発。
低 価格化。
一定の環境下での周波数枠規制緩和。
(家電メーカー系) ●ICタグの単価・読み取り方法・読み取り精度・個人 情報管理などバーコード同様の普及までには時間がか かると思う。
登録できるデータ量に関しては非常に魅 力的。
物流企業としては、上流工程でのICタグ取り 付けが望ましいが、荷主・顧客がどの程度対応してく れるのか。
またこのときに規格の統一が図れるのかな ど、解決しなければならない問題もたくさんある。
(自動車メーカー系) ●普及の第一は何をおいてもコスト。
カートン単位の貼 付としても、小売各社へのメーカー・問屋からの納品 はダンボールが主流であることを考えると、使い捨て にならざるを得ない。
一枚三〜五円程度になれば一気 に普及するのではないか。
結局はメーカー、問屋のコ スト負担となるので低コストでの普及が何より必要で ある。
また、セキュリティについても考慮する必要が ある。
原価・売価情報が記録されると、使用後のデー タ消去も必須となる。
(小売業系) ●タグ自体の単価はかなり早い段階で実用的なものにな ると思われる。
しかしながら、書き込み/読み取り装 置および必要なソフトウェアに一定のコストがかかる とすると、現状バーコードシステムの償却時期が導入 時期となる。
さらに標準化に手間取ると、普及時期の 遅延につながると思われる。
(総合物流) ●入荷検品・出荷・棚卸業務等の大幅な工数減が見込ま れる。
(日用雑貨卸) ●物流分野だけでなく、小売流通分野やメーカーのアフ ターサービスにも活用が期待できる。
データの読み取 りの精度や、簡便なシステムが構築されると、普及の スピードは加速度的に速まると思われる。
(家電販社) ●安価なICチップを要望。
リード&ライトの設備投資 を政府が援助すること。
また電波法の改正による利用 電波の増強とスキャニング距離の延長を望む。
(家電販社) ●技術先行型で、タグがあるから何に使おうか?ではな く、あくまで戦略ありきで、そのツールとしてタグの 利用があり得る。
生産、流通、顧客にわたるグローバ ルなSCMの視点に立ち、時間短縮や効率を追求する ツールとして活用することは考えられるが、現時点で はまだ具体的には不明確。
(専門商社) ●量産価格の改善、ICタグを使ってのITアプリケー ションの各社展開に期待したい。
(外資系アパレル) ●食品のトレーサビリティ等、緊急性のある分野から導 入されると考える。
(自動車部品メーカー系) ●タグそのものの単価が高いことはもちろん、どこでタ グを添付するのかという業際やインフラ投資の問題、 バーコードとは違い「非接触」であるというアドバン テージはあるものの、読み取り率・情報更新率などが まだ低いという問題がある。
昨今のトラックに関する 規制や、さらなる交通渋滞、また消費者の要求・企業 のサービス向上による商品の高回転率化などに伴い、 センターでの作業は今まで以上に時間を切り詰めてい かねばならない。
それら作業性、また付加価値は必要 であるが、単価・収受料金に反映できない現状を考え ると、正直まだまだバーコードに分があるように思う。
ただしタグ添付後の作業や応用について考えると、 物流を大きく変える力を持った技術であるとは思う。
弊社でもタグを活用したトレースが可能なビジネスモ デルを考えていきたい。
国も色々取り組んではいるが、 もっと社会インフラ化に向けた動きができないものか。
物流業者発信でタグのシステム構築をするのは時期尚 早では? という声も社内ではよく聞く。
(食品メーカー系) ●履歴管理を含め、ICタグは普及するものと思う。
J ANコード、ITFコードに対し、リアルタイムの情 報伝達が可能で、情報量が大きく利便性もあって、将 来の需要が見込まれる。
業界のみならず、日本、世界 共通のコード体系の確立が望まれる。
当社の場合、何 に採り入れるかにもよるが、貨物量が膨大であり、仮 にパレット単位としても、かなりのコストとなる。
コ スト面でさらに安価になることを期待する。
現状では 興味をもって研究はしているが、何に導入するかは模 索中。
(食品メーカー系) ●間違いなく一〇〇%読み取れることが実現できれば、 例えば、検品作業に大きく貢献する。
箱に入ったまま での検品も可能となり、物流に大きな革命をもたらす のではないか。
しかし、一方で「プライバシー」につ いてきちんとした対応をとっておかないと、消費者か らの大きな反発を受けてしまう恐れが十分にある。
価 格面でも、もっと安くする施策あるいは技術が必要で あろう。
物流面では大きな可能性を秘めており、どう うまく使っていくか知恵と工夫が必要であると考える。
(家電メーカー系) ●バーコードと同様の用途では、高価なICタグの魅力 はない。
ICタグならではの用途を顧客に提供するこ 29 MAY 2004 ●用途に対する期待は大きく、議論も熟成してきている。
今後は個人情報保護を含む秘匿情報の管理に関する法 整備や運用ガイドライン等が必要。
(宅配会社) ●今話題のトレーザビリティにおいて重要なカギになる。
ただし、セットするデータ項目の標準化が必要であり、 発行側独自で先行しても物流分野でのデータ活用が進 まないと思う。
(特積み運送) ●検品作業の合理化が図れる。
(人材派遣) ●現状での問題点は?読み込みの精度、?価格の二点だ が、どちらも二〜三年の内に解決すると思われる。
四 〜五年の間には一般的に普及するだろう。
牽引役とな る大手企業の使用実例や、各種プロジェクトが成果を 上げれば、一挙に進むと考えられる。
国土交通省や経 済産業省等の行政のバックアップも重要。
具体的な使 用例としては、RMA(Return Material Authorization: 返品物の識別)や貸し出し品等の循環 型物流分野での応用が期待できる。
(航空フォワーダー) ●ICタグは個別商品単位でのモノと情報の管理が必要 とされ、かつ当該情報が実際に活用可能な業種や業態 あるいはサプライチェーンでは、間違いなく導入が進 んでいくように思う。
ただし物流分野全体を俯瞰する と、そうした個別商品単位でのSCMが本当に必要と されるチャネル/チェーンは、実際はそれほど多くな い。
結論としては、偏りがあるものの、わが国では全 体としてはあまり普及しないと思う。
(倉庫会社) ●ほとんど普及しない。
理由は宅配の場合、荷物の滞留 時間が少ないわりにコストが高いから。
まず専用ハー ドが必要で、導入コストが高い。
ランニングコストと してもICタグの単価が高い。
規格の統一等で省庁の 意見を一本化してほしい。
またICタグから発する電 波の届く距離を、数センチから数メートルに長くして ほしい。
(宅配会社) ●ICタグの値段が一円以下になることが普及へのキー と考える。
現在の一〇〇円弱ではマーケットは受け入 れないと思う。
(国際インテグレーター) ●米国では一昨年のイラク戦争時にICタグを活用したと聞いている。
イラク戦争の米軍のロジスティクスに、 ウォルマートが協力したとか。
いずれにしても、湾岸 戦争と比較して飛躍的に生産性がアップしたと聞いて いる。
現在の問題はセキュリティとコストだと思う。
普及に関してもこのあたりがキーポイントになりそう。
(特積み運送) ●世界標準仕様の確定がカギ。
(物流ベンチャー) ●タグが高価であるため、繰り返し使用できることが条 件。
しかし、それもバーコードで十分。
(特積み運送) ●コストの問題は別にして、ICタグには情報貯蔵量の 増加により、すべての貨物の情報が瞬時にして取れる という優位性がある。
通関も貨物がセンサーを通過時 に済んでしまう時代がくるかもしれないし、倉庫での 事務処理がペーパレス化し格段に軽減されるかもしれ ない。
また、ものによっては誤配、ピックミス等々も 撲滅されるであろう。
次にトレースへの応用では、貨 物の現在位置を即時に知ることができるようになる。
ただし、例えば倉庫であれば、基本の業務が機械頼み でマニュアルワークを忘れてしまった人間が、なにか 故障があり自分で履歴を追わなければならなくなった ときに、どうするのだろうか。
(航空フォワーダー) ●物流専門業者というよりはメーカー主導となると思わ れる。
(特積み運送) ●ICタグの読み取り精度が向上し、コストダウンが進 んだ時点で、飛躍的に普及するのではないか。
ICタ グの普及により、トレーサビリティ、リードタイム短 縮、仕分け・荷役の効率化等、荷主の要求する物流サ ービスレベルは、さらに高度化すると考えられる。
従 って、当社もICタグ物流を早期に導入することによ り、差別化を図りたい。
(港湾運送) ●アパレル、マーケットリサーチを必要とする分野から 普及していくと思われる。
課題は読み取り認識ハード の価格と質がついてくるかどうか。
●タグよりもリーダーの精度をどこまで高めることがで きるのかが今後の課題。
また、物流的にはあくまで二 次元バーコードからの置き換えであり、一次元バーコ ードとは併用になると考える。
●最大の問題は使用周波数の国際統一、商品の生産、流 通がグローバル化している状況で利用地域が限定され るのでは意味が無い。
●メリット、デメリット、読取精度などのリスク等の議 論は尽くされたと思う。
情報のフォーマットなどの標 準化を先行させないと、後々混乱が起きるのではない か。
通い箱などクローズされたシステムの中での物流局面への応用はすぐにでもできる。
●ICタグは、在庫マネジメントでの活用に期待したい。
それでこそ元が取れるのではないか。
●メーカー・卸・強力な小売りが一斉に導入することが 条件であり、日本の商流ではまだまだ無理があると感 じている。
ICタグは活用方法によっては便利で画期 的なものであるが、どの領域で活用するのか、規模に よってかなり変動する。
また、タグそのものには大手 メーカーが参入しているが、肝心のアプリケーション レベルでは、ノーアイデアの場合が多いので普及には まだまだ時間がかかるのでは。

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