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2021年1月号
特集

ヤマトホールディングス 独自のスキームでメディカル市場を効率化

遠隔処方に対応した新サービス開発へ  ヤマトホールディングスはヤマトロジスティクスを中核として医療機器・医薬品の物流事業を進めている。
ヤマトロジスティクスのメディカル物流への取り組みは2005年に東京都大田区の拠点で医療機器製造業の包装・表示・保管免許を取得したのが実質的なスタートだった。
 続く06年にヤマトロジスティクスのビジネスユニットとして専門組織のメディカルロジスティクスカンパニー(現ヘルスケアソリューションカンパニー)を設立。
ヤマトグループのインフラを活用して、医療機器および医薬品の調達から流通加工、トレース管理、配送などを提案する体制を整備した。
医療機器向け品質マネジメントシステムの国際標準規格も取得した。
 しかし、製薬会社のメーカー物流は既に財閥系倉庫や大手3PLが先行していた。
また医薬品流通も四大医薬品卸への集約が進み、物流企業が参入できる余地は限られていた。
そこで着目したのが医療用機器だった。
カテーテルや人工関節、手術用の機材といった医療機械の洗浄やメンテナンスを行うサービスに11年ごろから本格的に参入した。
 全国ネットワークを活用して、病院などへの配送だけでなく回収まで含めた動脈物流と静脈物流の両面をカバーするスキームを整備した。
医療機械の洗浄や機能点検などを行う拠点を東京、札幌、福岡などに設置、全国規模のサービス網を整えた。
ほかにもコンタクトレンズやライフサイエンス分野の試薬・機器、整形外科製品など、医療用機器メーカー向け物流では一定のシェアと認知を得ることに成功した。
 肝心の医薬品物流のハードルは依然として高い。
それでも、医薬品メーカーの医薬情報担当者(MR)の営業活動を支援する独自のソリューションを提供している。
MR向けのウェブ販促発注システムで販促品の在庫管理を行うとともに、指定場所への配送なども行う。
MRは販促品をどこからでも発注できる。
どこでも受け取ることができる。
ヤマトロジスティクスの拠点に設置されたオンデマンドプリンターで販促品を印刷したり、外部の印刷会社が作成した販促品を保管し、MRの事務所に輸送するといった利用法も可能だ。
 新型コロナ以降は販促品をMRの自宅に直接届けたり、病院のドクターに送付するといった運用も行われている。
その使い勝手の良さが、多くのMRに評価されて利用が広がっている。
 ヤマトロジスティクスが次に見据えているのが調剤薬局向けソリューションだ。
改正薬機法が19年に成立、20年9月からの関連省令の施行が決まった。
従来の薬機法では対面での服薬指導が義務付けられていたが、改正によって適切な服薬指導が実施できる場合においては、オンラインなどでの服薬指導が可能となった。
患者は薬局を直接訪れなくても、遠隔処方によって処方箋医薬品が受け取れるようになる。
 これは医薬品の最終輸送先が従来の薬局や病院から、個人宅などへと広がることを意味する。
当初、遠隔処方は20年9月から始まる予定だったが、新型コロナの感染拡大によって状況が変化。
時限的な特例措置として、電話や情報通信機器などを用いた服薬指導が20年4月から認められ、遠隔処方が事実上前倒しでスタートすることになった。
 当初予定よりも早く遠隔処方が始まったことで、ヤマトには処方箋医薬品を宅配するための問い合わせが調剤薬局から相次いで寄せられた。
こうした動きに対応して、ヤマトは20年6月、調剤薬局向けの専用サイトをオープンした。
 ヤマトロジスティクスの内藤典靖執行役員は「専用サイトでは『ネコポス』や『宅急便コンパクト』『クール宅急便』といった輸送商品や決済関連のサービスなどをパッケージ化して調剤薬局向けに案内している。
数は公表できないが、多くの薬局さまと新たな契約も結んだ。
ただし、調剤薬局から遠隔処方で処方箋医薬品が出ている量は現状ではまだ多くはない」と話す。
 調剤薬局が処方箋医薬品を宅配便で送るケースは一部ではあるが、従来から存在した。
重量があるため、高齢者などが薬局から持ち帰るのが難しい輸液の宅配、患者が来訪時に在庫が切れていた医薬品を後日宅配するといったケースだ。
ただし、いずれも調剤薬局で対面の服薬指導を受けた後の配達で物量は限られていた。
 遠隔処方の開始でその流れが変わる可能性が高い。
各薬局では処方箋薬の梱包や伝票を貼付して集荷に引き渡すといった、さまざまな付帯業務が新たに発生する。
梱包用の専用資材を求める声などが既に上がっている。
新たなニーズに対応したサービスの開発を進めている。
 遠隔処方の開始に伴い、宅配と並んで調剤薬局で必要となるもうひとつの機能が決済だ。
ナショナルチェーンの大手薬局は自前の決済サービスを備えている例も多いが、数店舗規模のエリア薬局や個人経営の薬局などの多くは遠隔処方で利用可能な決済の仕組みを持っていない。
そこでヤマトから遠隔処方の決済に使用できる各種のサービスを案内している。
 また、遠隔処方は始まっても、処方箋自体はまだ電子化されていない。
患者は紙の処方箋を撮影してのメール送付やFAXなどで調剤薬局に送るといった作業が必要になる。
調剤薬局側では対面以外の方法で処方箋を受け取り、処方した医薬品を発送するという、これまでなかった業務が発生する。
いずれも電話やFAXなどで注文を受け、紙で管理するというアナログ業務が中心だ。
そのデジタル化を支援する新たなサービスも検討している。
 どの薬局で遠隔処方が可能なのかといった情報が現状では一般消費者に認知されていない。
ヤマトは遠隔処方領域で契約している調剤薬局の情報をまとめることで、患者と遠隔処方可能な調剤薬局を結びつけるような仕組みの構築も視野に入れている。
流通の変化に対応した取り組みを推進  メーカー向けではスペシャリティ医薬品などにも力を入れていく。
新薬メーカーが開発を進めている新しい領域の医薬品は温度管理などの面で従来の医薬品とは異なる品質が求められる。
流通が変化する可能性がある。
メーカーや卸の支援に結びつく特殊輸送のスキームを念頭に置いて取り組みを進める方向だ。
また、ヤマトロジスティクスはアルフレッサとの間で遠隔処方領域における調剤薬局向けサービス開発の共同研究や営業支援などで合意しており、今後も連携していく方針だという。
 内藤執行役員は「今後も医薬品流通全体のサプライチェーン効率化に向けた取り組みを進めていきたい。
調剤薬局さま、医薬品卸さま、医薬品メーカーさまと一体になってヤマトが何を提供できるのかを模索していく。
われわれが得意とする全国ネットワークを活用した取り組みが軸になる。
調剤薬局から遠隔処方で発送されていく医薬品の物流や調剤薬局の中の業務改善支援などもそこに含まれるだろう」という。
 新型コロナウイルスのワクチンを始め、今後、新しい医薬品が出てくると配送のレギュレーションや流通が変わってくる可能性もある。
「そうした動きに対応した幅広い取り組みを進めていきたい」と内藤執行役員は市場の変化をうかがっている。

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