2020年12月号
特集
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トヨタL&F 「CASE」の世界を物流現場で実現する
自動フォークはどこまで来たか
──トヨタグループが、モビリティ社会のキーワードとされる「CASE(Connected・Autonomous・Sharing・Electric:ケース)」戦略を鮮明にしています。
それはトヨタL&Fの経営にどう反映されているのでしょうか。
「『CASE』に象徴される技術や考え方は、一般の自動車よりもむしろ、産業用車両の領域で先に注目されてきました。
私自身1990年代から、自動運転技術や、『すべてのモノがネットでつながる世界が来る。
その時にどういう進化があるか』といったテーマで研究をしてきました。
そうした構想はそれこそ80年代からありました。
産業用車両は構内に限定されているため、公道を走る自動車と比べてテクノロジーを社会実装するハードルが低い。
それだけCASEが先に進むんです」 「その一方でわれわれは、自動車用に開発された技術を産業用車両に利用しています。
例えばトヨタ自動車の『MIRAI』の燃料電池を使ってフォークリフトを動かしています。
当社の自律走行ロボット『AiR』シリーズにも自動車の技術が応用されています。
公道ではまだ無理でも構内であれば使える技術が他にもたくさんあります。
われわれがトヨタグループに所属している強みを生かせるところです」 ──CASEの進展によって物流の在り方はどう変わっていきますか。
「いわゆる『スマート物流』の在り方として、トヨタ マテリアル ハンドリング ヨーロッパが2年前に『AI-based future logistics by Toyota』と題した動画をYoutubeにアップしています(図)。
『パレットドローン』や各種の無人リフトが連係して、アリのように社会的な動き方をします。
動画はCGですが、今では現物の試作品ができあがっています」 「物流センターはこれまで、各種の物流機器を組み合わせて人が動かしていました。
それが大型投資を伴う自動化センターに代わり、情報収集から判断、指示、確認まで人に依存しないで動くようになります。
その際にはAIがシステムの最上位でセンター全体の動きが最適になるように指示を出します。
そうしたビジョンを前提に技術開発を進めています」 ──具体的には? 「CASEの『E』に当たるのが、リチウムイオン電池や燃料電池を使ったフォークリフトの電化です。
リフト業界では既に60%以上が電動化されているのですが、それをさらに安全、省エネ、クリーン、CO2フリーといった方向性でより高性能化していく」 「『A』は知能化、自動化、ロボティクスです。
現在のフォークリフトが人間の『手』と『足』を拡張したものだとして、そこにセンサーとAIで『目』と『頭脳』を加える。
『C』はシステム化とコネクテッド化です。
すべてをネットでつないで情報を吸い上げ、指示を出す。
そして今、一番の課題と考えているのが『S』です。
われわれはそれをシェアリングではなく『ソリューション&サービス』と定義して、これから当社がシフトしていく方向性と捉えています」 ──自動フォークの実用化はどこまで進みましたか。
「当社の『Renova AGF』は、リーチ式電動フォーク『Rinova(リノバ)』の自動運転カスタムモデルで既に多くのお客さまから好評を得ています。
人が運転することもできるし自動でも動く。
スイッチ一つで無人・有人を切り換えられます。
『レーザーSLAM』という技術を使って誘導線なしで動くので初期工事が要らず、庫内レイアウトの変更にも容易に対応できます」 「その発展形として今年10月には、ニチレイロジグループ本社さんの協力を得て、低温倉庫における運用テストを行いました。
冷蔵・冷凍のゾーン間を移動すると、急激な温度変化でカメラに結露やもやが発生するため、これまでは自動フォークの導入は困難とされていました。
今回、これに対応した車両を国内で初めて実用化しました」 「屋内と屋外を行き来する自動運転も実現しています。
屋内は『Visual SLAM』、屋外はGNSS(全世界測位システム)、日本であればGPS『みちびき』の電波で自分の位置を認識して動く。
屋外でアスファルト路面のひび割れから位置を測定する技術も開発しています。
結構な雨が降っていても問題なく測定できています」 ──自動フォークの性能はどこまで上がりましたか。
「まだトップクラスのプロには適いませんが、一般的なオペレーターに比べれば速く正確に作業できるところまで来ました。
パレット積みした荷物を左右20㎜の隙間でスムーズに積み降ろしできます」 オープンイノベーションで低コスト化 ──残る課題は。
「やはりコストです。
そのために、先ほどの路面のひび割れを見る装置や、自動車の自動運転で使用されている『3D-LiDER』、360度見える全天球カメラなどを車両に搭載して、どれが一番安く確実に動くのか実証実験しています。
それともう一つ、AIによる画像認識処理は負荷が大きく、それを車両に搭載したコンピューターで処理する必要があるのですが、そのコストや消費電力をどう抑えるかという課題があります」 「そこではオープンイノベーションを採り入れています。
NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)と半導体開発のソシオネクスト、スタートアップのArchiTek、そしてわれわれで、小型低電力のAIチップを共同開発しています。
その試作品は既存の汎用GPU(画像処理半導体)と比較して電力効率が10倍以上、SLAMで位置を測定するための処理時間がCPUとの比較で20分の1という性能を実現しています。
現在、製品化向けて当社の協働型ロボット『AiR-T』に搭載して実験しています」 ──GPUの開発では米エヌビディア(NVIDIA)が先行していると聞きます。
「現状で市販されている製品と比べる限り、コスト、性能、信頼性などのバランスでわれわれの開発しているチップの方が優れていると評価しています」 ──トヨタL&Fのビジネスモデルは、リフトやマテハン設備の販売からソリューションにシフトすることでどう変わっていくのでしょうか。
「ここ数年、欧米のグループ会社では、お客さまの設備の稼働状況を分析して改善策を提案するデータアナリストが活躍するようになりました。
日本でもリフトの投入台数や配置を最適化したり、安全レベルを向上するため『Toyota T_Site』と呼ぶテレマティクスサービスを導入して、稼働状況を見える化するユーザーが大手物流会社を中心に出て来ています。
そうしたサービスがこれから普及してくるとみています」 「2017年にトヨタL&Fにグループ入りしたオランダのファンダランデ、アメリカのバスティアンはいずれもソリューションを得意としています。
彼らとテクノロジーや製品を共有して一緒に開発を進めていくとともに、われわれが大切にしてきたトヨタ生産物流方式のノウハウやサポート体制を組み合わせて、お客さまに最適解を提供していきます」
それはトヨタL&Fの経営にどう反映されているのでしょうか。
「『CASE』に象徴される技術や考え方は、一般の自動車よりもむしろ、産業用車両の領域で先に注目されてきました。
私自身1990年代から、自動運転技術や、『すべてのモノがネットでつながる世界が来る。
その時にどういう進化があるか』といったテーマで研究をしてきました。
そうした構想はそれこそ80年代からありました。
産業用車両は構内に限定されているため、公道を走る自動車と比べてテクノロジーを社会実装するハードルが低い。
それだけCASEが先に進むんです」 「その一方でわれわれは、自動車用に開発された技術を産業用車両に利用しています。
例えばトヨタ自動車の『MIRAI』の燃料電池を使ってフォークリフトを動かしています。
当社の自律走行ロボット『AiR』シリーズにも自動車の技術が応用されています。
公道ではまだ無理でも構内であれば使える技術が他にもたくさんあります。
われわれがトヨタグループに所属している強みを生かせるところです」 ──CASEの進展によって物流の在り方はどう変わっていきますか。
「いわゆる『スマート物流』の在り方として、トヨタ マテリアル ハンドリング ヨーロッパが2年前に『AI-based future logistics by Toyota』と題した動画をYoutubeにアップしています(図)。
『パレットドローン』や各種の無人リフトが連係して、アリのように社会的な動き方をします。
動画はCGですが、今では現物の試作品ができあがっています」 「物流センターはこれまで、各種の物流機器を組み合わせて人が動かしていました。
それが大型投資を伴う自動化センターに代わり、情報収集から判断、指示、確認まで人に依存しないで動くようになります。
その際にはAIがシステムの最上位でセンター全体の動きが最適になるように指示を出します。
そうしたビジョンを前提に技術開発を進めています」 ──具体的には? 「CASEの『E』に当たるのが、リチウムイオン電池や燃料電池を使ったフォークリフトの電化です。
リフト業界では既に60%以上が電動化されているのですが、それをさらに安全、省エネ、クリーン、CO2フリーといった方向性でより高性能化していく」 「『A』は知能化、自動化、ロボティクスです。
現在のフォークリフトが人間の『手』と『足』を拡張したものだとして、そこにセンサーとAIで『目』と『頭脳』を加える。
『C』はシステム化とコネクテッド化です。
すべてをネットでつないで情報を吸い上げ、指示を出す。
そして今、一番の課題と考えているのが『S』です。
われわれはそれをシェアリングではなく『ソリューション&サービス』と定義して、これから当社がシフトしていく方向性と捉えています」 ──自動フォークの実用化はどこまで進みましたか。
「当社の『Renova AGF』は、リーチ式電動フォーク『Rinova(リノバ)』の自動運転カスタムモデルで既に多くのお客さまから好評を得ています。
人が運転することもできるし自動でも動く。
スイッチ一つで無人・有人を切り換えられます。
『レーザーSLAM』という技術を使って誘導線なしで動くので初期工事が要らず、庫内レイアウトの変更にも容易に対応できます」 「その発展形として今年10月には、ニチレイロジグループ本社さんの協力を得て、低温倉庫における運用テストを行いました。
冷蔵・冷凍のゾーン間を移動すると、急激な温度変化でカメラに結露やもやが発生するため、これまでは自動フォークの導入は困難とされていました。
今回、これに対応した車両を国内で初めて実用化しました」 「屋内と屋外を行き来する自動運転も実現しています。
屋内は『Visual SLAM』、屋外はGNSS(全世界測位システム)、日本であればGPS『みちびき』の電波で自分の位置を認識して動く。
屋外でアスファルト路面のひび割れから位置を測定する技術も開発しています。
結構な雨が降っていても問題なく測定できています」 ──自動フォークの性能はどこまで上がりましたか。
「まだトップクラスのプロには適いませんが、一般的なオペレーターに比べれば速く正確に作業できるところまで来ました。
パレット積みした荷物を左右20㎜の隙間でスムーズに積み降ろしできます」 オープンイノベーションで低コスト化 ──残る課題は。
「やはりコストです。
そのために、先ほどの路面のひび割れを見る装置や、自動車の自動運転で使用されている『3D-LiDER』、360度見える全天球カメラなどを車両に搭載して、どれが一番安く確実に動くのか実証実験しています。
それともう一つ、AIによる画像認識処理は負荷が大きく、それを車両に搭載したコンピューターで処理する必要があるのですが、そのコストや消費電力をどう抑えるかという課題があります」 「そこではオープンイノベーションを採り入れています。
NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)と半導体開発のソシオネクスト、スタートアップのArchiTek、そしてわれわれで、小型低電力のAIチップを共同開発しています。
その試作品は既存の汎用GPU(画像処理半導体)と比較して電力効率が10倍以上、SLAMで位置を測定するための処理時間がCPUとの比較で20分の1という性能を実現しています。
現在、製品化向けて当社の協働型ロボット『AiR-T』に搭載して実験しています」 ──GPUの開発では米エヌビディア(NVIDIA)が先行していると聞きます。
「現状で市販されている製品と比べる限り、コスト、性能、信頼性などのバランスでわれわれの開発しているチップの方が優れていると評価しています」 ──トヨタL&Fのビジネスモデルは、リフトやマテハン設備の販売からソリューションにシフトすることでどう変わっていくのでしょうか。
「ここ数年、欧米のグループ会社では、お客さまの設備の稼働状況を分析して改善策を提案するデータアナリストが活躍するようになりました。
日本でもリフトの投入台数や配置を最適化したり、安全レベルを向上するため『Toyota T_Site』と呼ぶテレマティクスサービスを導入して、稼働状況を見える化するユーザーが大手物流会社を中心に出て来ています。
そうしたサービスがこれから普及してくるとみています」 「2017年にトヨタL&Fにグループ入りしたオランダのファンダランデ、アメリカのバスティアンはいずれもソリューションを得意としています。
彼らとテクノロジーや製品を共有して一緒に開発を進めていくとともに、われわれが大切にしてきたトヨタ生産物流方式のノウハウやサポート体制を組み合わせて、お客さまに最適解を提供していきます」
