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2020年7月号
特集

【EC】物流リソースの制約を情報基盤が解消する

パンデミックはEC化を加速する ──コロナの影響は?  「われわれオープンロジは、EC事業者を対象にスマートフォンやPCから物流業務を外注できるプラットフォームを提供していますが、どのお客さまも物量が大変に伸びています。
前年の3倍、5倍、8倍という話がザラにある。
その結果、オープンロジ全体の出荷件数も過去のピーク時の120%程度に達しています。
また、倉庫や輸送が止まってしまった時の対策として、拠点を分散したいとか、複数の輸送キャリアを並行して使えるようにしたいという、BCP(事業継続計画)を念頭に置いたご相談が増えています」  「今回のコロナをきっかけに従来の方針を大きく転換する事業者が、これからたくさん出てきます。
どのチャネルで、どう売って商売を伸ばしていくのか、オフラインの店舗とオンラインのネット通販の、どこにどれだけの経営資源を投入するのか、あらためてどこも戦略を練り直している」 ──今は戦略というより、店舗が使えないので、とりあえずECで売っているという状況です。
 「しかし、コロナが収束してもネットの売り上げは下がらない。
少なくともビフォーコロナには戻りません。
そうなると店舗を再開するにしても、その固定費、プロモーション費用、ネット販売の物流費などをあらためて比較検討することになる。
費用対効果を最適化するため店舗展開は見直していかざるを得ない」  「2003年にSARS(重症急性呼吸器症候群)が流行した時も、日本は幸いにして被害を受けませんでしたが、中国では猛威を振るって人々が外出を控えたことで、店舗からECへの移行が一気に進みました。
それを契機にネット通販で買い物する習慣が広く定着した。
同じことが今回は日本を含めた世界中で起きる。
国内ECはもとより越境ECも大きく伸びていく」  「小売り市場に占めるECの比率(EC化率)は今や中国が22、23%、アメリカで12%近くに達していると言われています。
日本はまだ6%余りです。
他の主要国と比べて極端に低い。
しかし、コロナを機に伸びが加速して短期間で12%くらいにはなるでしょう。
今の約2倍です。
当然、物量も今の2倍の水準に近付いていく。
その時にドライバーは足りるのか、物量を処理できるのかという問題が、物流業界に突き付けられています。
そのニーズに応えられないと、物流がネックになって経済が停滞する事態を招いてしまう」 ──有効な打開策はありますか。
 「物流のリソースは限られています。
増え続ける物量に対応していくには、1社単独で何とかしようという考えから脱皮しなくてはなりません。
物流の世界にはもはや “ウィナー・テークス・オール(勝者総取り)”はない。
リソースを共有して、全体のモノの流れをデータで捉えて物流のフローや配送の経路を最適化することで、みんなで乗り越えていくしかない。
そのためには情報プラットフォームがどうしても必要になります」  「その将来像に向けて僕らがベンチマークしているのは、一つは中国アリババグループの物流会社『菜鳥(Cainiao)』です。
『淘宝(タオバオ)』や『天猫(T-mall)』などのECモールに消費者から注文が入った瞬間に、その商品の在庫が今どこにあるのか、出荷作業のキャパシティはどうか、作業はいつ終わるか、集荷にはいつ行けるのか、リードタイムやコストなど購入者が重視する項目に沿って最適なフルフィルメントの方法を計算する。
それが現状どこまで実現できているかということは別にしても、そういう世界観を持って菜鳥は動いている。
あるべき物流の姿の一つだと思います」 ──同じモデルを日本に適用できますか。
 「アマゾンはやろうとしています。
楽天も自社でやるという方針を打ち出し、ヤフーはヤマトと手を組みました。
しかし、最適解の精度は基本的にデータ量に比例します。
データが増えれば増えるほど優れた最適解が出せるわけですから、そこは競争ではなく協働していくべきだと考えます」 二極化するプラットフォーム ──最終的に目指すモデルは同じでも、そこに到るプロセスや誰がどうリソースを用意するかという点で、大手EC3社はそれぞれに違う絵を描いて垂直統合を進めています。
 「それに対してわれわれは独り勝ちとは対極にあるプラットフォームを目指します。
メーカーにしても、これからは『D2C(ダイレクト・ツー・コンシューマー:ブランドEC直販)』にどんどんシフトしていきますが、従来のようにモールに出店すればいいということではもはやない。
モールに集客や物流を依存して購買データを握られたり、ごっそりマージンを抜かれるより、自社サイトで売りたいと考えている。
“アマゾンキラー”と呼ばれる『Shopfy』をはじめ、自社EC用のプラットフォームも成長してきました。
当社のお客さまにもShopifyのユーザーが100社以上います。
結局、プラットフォームは二極化していくことになるとみています」 ──大手ECをクローズ型とすると、オープン型はどのような発展のシナリオを描けるでしょうか。
 「われわれはまだ、やりたいことの1合目にしか来ていませんから偉そうなことは言えませんが、まずはデータ連携です。
現状では倉庫会社によって、荷主企業によって、データの持ち方からシステムまで全て違う。
そのため同じ倉庫内でも荷主によって作業のやり方が違う。
倉庫と配送会社の連携もできていません。
どの拠点にどのサイズの荷物がどれだけあって、どこにどれだけ送るのか、倉庫会社は分かっているのに配送会社にはその情報がない。
それを連携するだけでもリソースの稼働率は大きく向上します」  「われわれが今回、ECの物量の急増に対応できたのも、当社のWMSが提携先の営業倉庫に入っていて、どの倉庫にどれだけの余力があるのか、仕事量とリソースを把握した上で業務を配分しているからです。
パートナーの倉庫会社にはそれぞれオープンロジ向けのスペースや作業員を増やしてもらいましたが、それにしてもリソースを投入することでどれだけ収益が増えるのか事前に計算できるので、安心して商売を伸ばしてもらえる。
しかも作業は全て標準化されていて、荷主の数がいくら増えようが作業内容は同じなので現場運営が混乱することもない」 ──オープンロジはこれまで物流パートナーの数を積極的には増やしてきませんでした。
 「そう簡単には増やせなかったんです。
荷主がウェブで業務を依頼する画面と倉庫会社のWMSは表裏一体です。
荷主の依頼にはさまざまなバリエーションがあるけれど、WMS側ではそれを一元化して表さなければならない、そのアーキテクチャをこれまで作り込んできました。
しかし、ようやく準備が整いました。
容易には真似のできない仕組みが出来上がった。
これから次のフェーズに移ります。
いくら理想的なモデルであっても物量がなければインパクトは出てきませんから。
倉庫と配送の連携についても近く新しい発表ができる見込みです」

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