2020年3月号
特集
特集
佐川急便 Interview 本村正秀 社長 「商宅分離」を進めてスコープを拡大する
戦略拠点「Xフロンティア」竣工
──1月末に総額840億円(うちマテハン施設に260億円)を投じた「Xフロンティア」(東京都江東区)を竣工しました。
「狙いの一つは輸送ネットワークの効率化です。
これまでは東京本社の周りだけでも4カ所に中継センターを構えて方面別に使い分けていました。
他に営業所と中継センターを兼ねている拠点もあった。
それらを集約することで営業所と中継センターを結ぶ車両や幹線車両の積載率が上がります」 「新しいターミナルは1時間当たり10万個を236方面に仕分ける処理能力があります。
車の回転も良くなります。
ドライバーを待たせずに済む。
大規模拠点は増便にも柔軟に対応できます。
波動対応力が上がります。
ただし、日々変化する取扱個数に合わせて配車を組むのは容易ではありません。
AIを活用して取扱個数を予測できないかなどさまざまな検討をしています」 ──現在は年間の宅配便の取扱総量を13億個程度に抑えています。
来年1月にターミナルが稼働したら、取扱個数の上限を引き上げますか。
「理論上はセンターを設計した時点と比較してキャパシティが16%上がります。
年間取扱個数で15億個程度まで増やせる計算です。
ただし、サービス品質の維持が大前提ですので、一歩ずつ慎重に進めていきます」 「Xフロンティアのもうひとつの狙いは、やはり先進的ロジスティクス・プロジェクト・チーム『GOAL』です。
佐川急便のGOAL専任メンバーは現在全国に200人強いるのですが、そのうち70人余りがXフロンティアに集結します。
Xフロンティアに入居する3PLの佐川グローバルロジスティクス(SGL)、国際物流のSGHグローバル・ジャパン、引っ越し・大型輸送のSGムービングのGOAL担当者を加えると100人ものメンバーが集まる。
お客さまへの提案や対応のスピードが間違いなく早くなります。
グループ内の情報連携も深まります」 ──EC向けにはどう対応しますか。
「SGLがXフロンティアに中小EC事業者向けの『プラットフォームセンター』を新設した他、お客さまのECセンターや流通センターの運営を効率化するソリューション『スマート納品』をさらに強化していきます。
たくさんのサプライヤーからの納品を当社のセンターで受けて、顧客の要望に合わせた事前仕分けや荷受け側のスケジュールに合わせて納品するサービスです。
大手EC事業者のセンターを中心に既に多くのお客さまにご利用いただいています。
これを営業所ではなく、ターミナル機能を持つXフロンティアで運用して、そこから直接ECセンターに納品することで経路が1段階減ってさらに効率が上がります」 ──ラストワンマイルの配送は? 「BtoBはセールスドライバー(SD)による自社配送、BtoCのラストワンマイルは各地の配送パートナーへの業務委託が基本です。
ご存じの通り、当社のビジネスモデルの最大の強みはお客さまと相対するSDの情報収集力です。
これをさらに進化させるために『商宅分離』を推進しています」 「もちろん一般宅への配達でも『受取人確認サポート』や冷凍車両が必要なクール便、あるいは地区によってはSDを投入する必要もありますが、基本的には『toC』はパートナー企業にお願いして、SDは『from B』の仕事により集中させる。
そしてSDは宅配便を集めるだけでなく、『TMS(佐川急便が元請けとなって特定顧客のニーズに合わせた輸送を構築・運用するサービス)』やGOAL案件につながる営業情報をキャッチする」 「宅配便の市場規模は現在約2・4兆円です。
トラック運送全体だと約14・4兆円、3PLや国際物流などを含めた物流市場全体だと約24兆円と言われています。
宅配便の10倍もある。
そして当社のSDは全国約100万軒のお客さまに毎日集荷にうかがっています。
そのネットワークと営業力を生かして物流ニーズを発掘し、GOALがソリューションを開発して案件に落とし込む。
物流市場全域にターゲットを広げていきます」 ──アマゾン系のデリバリープロバイダをはじめとするBtoC特化型宅配会社の台頭は脅威では。
「基本的に『軽』に積める荷物は多くの個人事業主が参入している領域で価格競争が非常に厳しい。
われわれのドメインとは使用する施設や設備が違います。
私たちにしかできない付加価値のあるサービス提供に社員を投入したい」 「軽やバイクでも『60サイズ(縦・横・高さの合計が60㎝以内)』以下の荷物ばかりであれば運べますが、140サイズクラスになると1台に何個も積めません。
それと比べると当社は車両のサイズはもちろん、営業所の規模も大きい。
当社の営業所は仕分け用コンベアを備えていて、もともとBtoB向けに設計した施設なので比較的大きな荷物でも高速に仕分けることができます。
そうした拠点が営業所だけで全国約430カ所、デポまで含めると全国に800以上ある。
そのインフラを生かせる荷物を適切な価格で取り扱いさせていただきます」 SDの働き方も多様化 ──佐川急便の「toC」の配送パートナーはどのような人たちなのですか。
「ほとんどが長い付き合いの地域運送会社でドライバーも当社専属の方ばかりです。
彼らの仕事が成り立つように従来から個数や密度に配慮して委託してきました。
当社は社員の独立開業を支援する制度を設けていて、SDが退職後に軽貨物や一般運送の事業主として独立するというパターンもかなりあります。
当社のオペレーションとサービスを完全に理解している人たちです。
そうしたパートナーに、増員・増車をお願いすることで『toC』の増加に対応しています。
実際この2年でも、かなり台数を増やすことができました」 「幹線輸送やTMSの配送パートナーに関しても支店の担当者や営業所長たちが地元の運送会社や協力会社と日頃から密に連携しています。
契約を結ぶときにはその会社の経営者ときちんと面談して、事業や車両の状況、コンプライアンスを確認した上で本社の輸送ネットワーク部の承認を受けています。
そうやって昔から培ってきた協力会社との関係性はわれわれの武器と考えています」 ──佐川急便のSDといえば、かつては激務だけれど飛び抜けた高給で知られていました。
しかし、環境は大きく変わりました。
今は無理をせずに働けるけれど昔ほどは稼げない。
営業力を維持するのは難しいのでは。
「私は1980年の入社ですが、実は当時からSDは歩合制ではありませんでした。
それでも時間をかけてお客さまとの信頼関係を作り、いろんな工夫をして提案した。
そうやって初めて仕事をもらえた時には大変な充実感があります。
届ける仕事も同じてす。
お客さまに喜んでいただくことがやはりSDの最大のモチベーションです。
当社の企業姿勢は昔も今も変わりませんし、SDの営業力は今後も当社の大きな強みです」 「一方で『軽四セールスドライバー(軽四SD)』という職制を設けています。
契約社員としての就労も可能です。
女性でも働きやすいようにオートマの軽自動車で比較的小さな荷物を一般宅へ配達します。
軽四SDから正社員SDにステップアップしていく人もかなりいます。
多様な働き方のニーズに対応しています」
「狙いの一つは輸送ネットワークの効率化です。
これまでは東京本社の周りだけでも4カ所に中継センターを構えて方面別に使い分けていました。
他に営業所と中継センターを兼ねている拠点もあった。
それらを集約することで営業所と中継センターを結ぶ車両や幹線車両の積載率が上がります」 「新しいターミナルは1時間当たり10万個を236方面に仕分ける処理能力があります。
車の回転も良くなります。
ドライバーを待たせずに済む。
大規模拠点は増便にも柔軟に対応できます。
波動対応力が上がります。
ただし、日々変化する取扱個数に合わせて配車を組むのは容易ではありません。
AIを活用して取扱個数を予測できないかなどさまざまな検討をしています」 ──現在は年間の宅配便の取扱総量を13億個程度に抑えています。
来年1月にターミナルが稼働したら、取扱個数の上限を引き上げますか。
「理論上はセンターを設計した時点と比較してキャパシティが16%上がります。
年間取扱個数で15億個程度まで増やせる計算です。
ただし、サービス品質の維持が大前提ですので、一歩ずつ慎重に進めていきます」 「Xフロンティアのもうひとつの狙いは、やはり先進的ロジスティクス・プロジェクト・チーム『GOAL』です。
佐川急便のGOAL専任メンバーは現在全国に200人強いるのですが、そのうち70人余りがXフロンティアに集結します。
Xフロンティアに入居する3PLの佐川グローバルロジスティクス(SGL)、国際物流のSGHグローバル・ジャパン、引っ越し・大型輸送のSGムービングのGOAL担当者を加えると100人ものメンバーが集まる。
お客さまへの提案や対応のスピードが間違いなく早くなります。
グループ内の情報連携も深まります」 ──EC向けにはどう対応しますか。
「SGLがXフロンティアに中小EC事業者向けの『プラットフォームセンター』を新設した他、お客さまのECセンターや流通センターの運営を効率化するソリューション『スマート納品』をさらに強化していきます。
たくさんのサプライヤーからの納品を当社のセンターで受けて、顧客の要望に合わせた事前仕分けや荷受け側のスケジュールに合わせて納品するサービスです。
大手EC事業者のセンターを中心に既に多くのお客さまにご利用いただいています。
これを営業所ではなく、ターミナル機能を持つXフロンティアで運用して、そこから直接ECセンターに納品することで経路が1段階減ってさらに効率が上がります」 ──ラストワンマイルの配送は? 「BtoBはセールスドライバー(SD)による自社配送、BtoCのラストワンマイルは各地の配送パートナーへの業務委託が基本です。
ご存じの通り、当社のビジネスモデルの最大の強みはお客さまと相対するSDの情報収集力です。
これをさらに進化させるために『商宅分離』を推進しています」 「もちろん一般宅への配達でも『受取人確認サポート』や冷凍車両が必要なクール便、あるいは地区によってはSDを投入する必要もありますが、基本的には『toC』はパートナー企業にお願いして、SDは『from B』の仕事により集中させる。
そしてSDは宅配便を集めるだけでなく、『TMS(佐川急便が元請けとなって特定顧客のニーズに合わせた輸送を構築・運用するサービス)』やGOAL案件につながる営業情報をキャッチする」 「宅配便の市場規模は現在約2・4兆円です。
トラック運送全体だと約14・4兆円、3PLや国際物流などを含めた物流市場全体だと約24兆円と言われています。
宅配便の10倍もある。
そして当社のSDは全国約100万軒のお客さまに毎日集荷にうかがっています。
そのネットワークと営業力を生かして物流ニーズを発掘し、GOALがソリューションを開発して案件に落とし込む。
物流市場全域にターゲットを広げていきます」 ──アマゾン系のデリバリープロバイダをはじめとするBtoC特化型宅配会社の台頭は脅威では。
「基本的に『軽』に積める荷物は多くの個人事業主が参入している領域で価格競争が非常に厳しい。
われわれのドメインとは使用する施設や設備が違います。
私たちにしかできない付加価値のあるサービス提供に社員を投入したい」 「軽やバイクでも『60サイズ(縦・横・高さの合計が60㎝以内)』以下の荷物ばかりであれば運べますが、140サイズクラスになると1台に何個も積めません。
それと比べると当社は車両のサイズはもちろん、営業所の規模も大きい。
当社の営業所は仕分け用コンベアを備えていて、もともとBtoB向けに設計した施設なので比較的大きな荷物でも高速に仕分けることができます。
そうした拠点が営業所だけで全国約430カ所、デポまで含めると全国に800以上ある。
そのインフラを生かせる荷物を適切な価格で取り扱いさせていただきます」 SDの働き方も多様化 ──佐川急便の「toC」の配送パートナーはどのような人たちなのですか。
「ほとんどが長い付き合いの地域運送会社でドライバーも当社専属の方ばかりです。
彼らの仕事が成り立つように従来から個数や密度に配慮して委託してきました。
当社は社員の独立開業を支援する制度を設けていて、SDが退職後に軽貨物や一般運送の事業主として独立するというパターンもかなりあります。
当社のオペレーションとサービスを完全に理解している人たちです。
そうしたパートナーに、増員・増車をお願いすることで『toC』の増加に対応しています。
実際この2年でも、かなり台数を増やすことができました」 「幹線輸送やTMSの配送パートナーに関しても支店の担当者や営業所長たちが地元の運送会社や協力会社と日頃から密に連携しています。
契約を結ぶときにはその会社の経営者ときちんと面談して、事業や車両の状況、コンプライアンスを確認した上で本社の輸送ネットワーク部の承認を受けています。
そうやって昔から培ってきた協力会社との関係性はわれわれの武器と考えています」 ──佐川急便のSDといえば、かつては激務だけれど飛び抜けた高給で知られていました。
しかし、環境は大きく変わりました。
今は無理をせずに働けるけれど昔ほどは稼げない。
営業力を維持するのは難しいのでは。
「私は1980年の入社ですが、実は当時からSDは歩合制ではありませんでした。
それでも時間をかけてお客さまとの信頼関係を作り、いろんな工夫をして提案した。
そうやって初めて仕事をもらえた時には大変な充実感があります。
届ける仕事も同じてす。
お客さまに喜んでいただくことがやはりSDの最大のモチベーションです。
当社の企業姿勢は昔も今も変わりませんし、SDの営業力は今後も当社の大きな強みです」 「一方で『軽四セールスドライバー(軽四SD)』という職制を設けています。
契約社員としての就労も可能です。
女性でも働きやすいようにオートマの軽自動車で比較的小さな荷物を一般宅へ配達します。
軽四SDから正社員SDにステップアップしていく人もかなりいます。
多様な働き方のニーズに対応しています」
