2019年12月号
特集
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メディパルHD 「メディセオ関東ALC」――既存施設を最先端拠点にリノベーション
圏央道を生かし郊外型を都市型に転用
メディパルホールディングス(以下、メディパルHD)傘下で医薬品卸売事業に従事するメディセオは「ALC・FLC(エリア・ロジスティクス・センター/フロント・ロジスティクス・センター)構想」に10年越しで取り組んでいる。
以前は、「NLC(ナショナル・ロジスティクス・センター)」と呼ぶ“郊外型”の大型拠点を各地に配置し、そこから各エリアの支店に必要な医薬品を総量で供給。
支店に付随する物流機能で顧客別に仕分けてから、営業と商品配送を兼務する担当者が得意先に納品していた。
これに対してALC・FLC構想は、支店への商品供給と顧客への配送拠点を兼ねる“都市型”の大型施設であるALCを中核とする。
メーカーからの納品を受け入れるだけでなく、顧客別の仕分け作業の多くをALCで実施。
個別の仕分けまで済ませた状態で支店に横持ちする。
支店の物流機能も順次、高機能のFLCに置き換えている。
以前は全国に約300あった物流関連施設を、約120カ所程度のFLCに統合・整理している。
2019年6月、メディセオは埼玉県加須市に最新物流拠点「関東ALC」を稼働した。
09年に神奈川で最初のALCを稼働して以来、同タイプの物流拠点は全国で11カ所目。
今後、20年に広島、22年に阪神でALCを稼働すれば、全国13拠点からなるALCネットワークが完成する。
旧NLCとは立地条件が異なり、しかも重装備のマテハンが必須のALCは、これまで全ての施設を新設してきた。
しかし、「関東ALC」はNLCだった旧「埼玉物流センター」をリノベーション(改修)したものだ。
メディパルグループの医薬品卸売事業の中核会社であるメディセオで、同事業全体の物流戦略を担っているロジスティクス本部の責任者を務める若菜純上席執行役員は、このような判断に至った経緯を次のように振り返る。
「埼玉県内にはすでに『埼玉ALC』(三郷市)があった。
このため当初はもっと西側の西東京や多摩地区で新しい土地を探したが、条件を満たす物件がなかなか見つからなかった。
そのうちに圏央道が開通し、加須からでも八王子などに1時間余りでアクセスできるようになった。
そこで私が所属していた経営企画部門から物流部門に、埼玉NLCの建物を活用することを提案した」 この提案は物流部門にとっては簡単に受け入れられるものではなかった。
既存施設の転用では庫内設計に制約が生じてしまう。
それでも投資対効果の向上などは見込めるため、両者は話し合いを重ねながらリノベーションの可能性を探った。
メディセオのロジスティクス本部の山本広一物流戦略部部長は、「あらためて物量を調べ、どの程度まで商品を入れられるのか、設備をどうするのか、具体的にどうやって置くのか、といったことをわれわれが検討した。
その結果、何とかいける見通しが立ったことで計画が動き始めた」という。
スペース効率を高めリスク対応も強化 「関東ALC」への投資総額は80億円。
土地・建物は既存施設を流用したが、建屋の一部に手を加える必要があった。
このため投資の内訳は、施設に約30億円、マテハンなどの設備に45億円、情報システムなどに約5億円となっている。
2年前に稼働した「埼玉ALC」の総投資額が235億円だったのと比べるとかなり抑制できている(本誌17年5月号ケース参照)。
さらに「埼玉」の稼働当初の出荷額が約3500億円だったのに対し、「関東」は半分以下の延床面積で約2300億円を扱う。
「埼玉」の増設余地を考慮しても、リノベーションという手法の効果は小さくない。
物流部門は新設のALCとは異なる発想で多くの課題をクリアした。
取扱品目は「埼玉」が医薬品と医療機器を含めて3万SKU余りなのに対し、「関東」は約2万5千SKU余り。
一部の商材については在庫を持たず、50キロメートルほどの距離に立地する「埼玉」から横持ちする。
マテハン設備にも多くの工夫を凝らした。
最先端のALCでは現在、5種類の自動倉庫(パレット、ケース、ピース、ユニシャトル、分割自動倉庫)を使い分けている。
出荷量の多い商品はパレット自動倉庫に入れ、出荷量が比較的少なければケース自動倉庫に格納。
必要に応じて出庫する。
ALCはピース単位の出荷が多い。
そのピッキング作業を効率化するため、自動倉庫とクロスベルトソーターを組み合わせた独自のGTP(グッズ・トゥー・パーソン)方式の設備を3年前から導入している。
通常は、この構成のマテハンを機械停止などに備えて2セット導入し、2フロアに分けて設置してきた。
これを「関東ALC」では、2セットのクロスベルトソーターを同一フロアにL字型に配置するように変更。
これが結果としてスペース効率と労働生産性の向上につながった。
かつて物流戦略部で「関東ALC」の設計に従事し、現在は物流子会社の物流二十四に籍を置いて現場責任者を務めている井原直之関東ALCセンター長は、「この施設は決まったスペースに設備を収める工夫を重ねたためムダがない。
作業動線も短い。
ワンフロアで全体を見渡せれば、作業者の適正配置やマネジメントを非常にやりやすい。
それが効率的な運用につながっている」という。
地震や停電への対策にも工夫 リスク対応でもリノベーションならではの工夫を重ねた。
ALCを新設するときは通常、免震構造の建物を採用している。
だが「関東ALC」の建屋は、もともと地盤が強固ということもあって免震構造ではなかった。
そこで「ミューソレーター」という床免震装置を本格的に導入した。
この装置は2枚の薄いプレートを重ねた構造で、震度5以上の地震が発生すると下側のプレートだけが揺れに応じて動く。
この動きから上側のプレートが取り残されることで揺れを吸収する。
これを自動倉庫の支柱の下などに敷き、大規模な工事を施すことなく免震化を実現した。
旧埼玉物流センターの時代から使っていたパレット自動倉庫は、スタッカークレーンこそ新しくしたが、ラック(棚)は流用した。
このラックは建屋に据え付けられているため「ミューソレーター」は使えない。
そこで新たな工夫として、ラックの下段部分に制震ダンパーを付けた。
さらに揺れが相対的に大きくなる上段部分にはパレットの落下を防ぐ“爪”を設置して地震に備えている。
北関東で頻繁に発生する落雷対策にも万全を期した。
停電時に建物全体の電源を2~4日間確保できる自家発電設備と、短時間の電圧低下に対応する瞬時電圧低下補償装置を導入した。
停電の発生時に自家発電が動きだすまでには約40秒かかる。
このタイムラグは自動倉庫のデータのズレなどを引き起こし作業の停滞を招く。
瞬低対策装置がこのタイムラグを埋めてくれる。
対応すべき課題は多かったが、「関東ALC」の運営は順調に軌道に乗った。
「10月中旬に計画通り業務を取り込めば稼働率は100%になる。
トラブルもなく想定した物量を扱えるようになり、生産性も上がってきた。
さらなる効率化は現場のマネジメントにかかっている」と山本部長。
初のリノベーション案件にもかかわらず、大きな混乱がなかった理由の一つは、同じメディパルグループで医薬品卸売事業を営むエバルス(本社・広島と岡山)とアトル(本社・福岡)の物流担当者が応援に駆けつけたことも大きいという。
ALC構想は事業全体に浸透しつつある。
PALTACとの相乗効果 ALC構想の源流をたどると、05年にメディセオホールディングス(当時)と日用品卸最大手のパルタック(当時)が経営を統合したことに行き着く。
定評のあったパルタックの物流ノウハウをメディセオが生かすかたちで物流効率化に取り組み、その後は互いに切磋琢磨してきた。
「関東ALC」にも両社の関係を示す事例が複数ある。
たとえばピースピッキングの前工程としてピース自動倉庫に商品を補充する「トレー化」の工程は、PALTACが18年8月に稼働した新潟の拠点で実用化した仕組みを参考にしている。
その1年余り前に稼働したメディパルHDの「埼玉ALC」では、作業者が歩いてケース商品を作業台に運んでからトレーに移し替える。
これを「関東ALC」ではGTP方式に変更。
作業者はケース自動倉庫から目の前に搬出される段ボール箱のなかの商品を、モニターの指示に従って目の前にあるトレーに移し替えていく。
廃棄段ボールの処理までほとんど歩かずに済む。
医薬品の錠剤をアルミシートとプラスチックで挟んだ状態まで分割してピッキングする工程で使う「分割自動倉庫」にも、PALTACが村田機械と一緒に独自開発した「マルチタスク・クレーン」(MTC)という技術が使われている。
一般的な自動倉庫では、クレーン1台が1度にこなす作業は入庫か出庫の一つだけ。
だがPALTACはその約2・5倍の処理能力を必要としていた。
シャトルタイプの自動倉庫はコスト効率の悪化を招くため使いたくない。
そこでクレーン1台に四つのトレーがあり、1回の作業で入出庫を同時にこなせるMTCを開発した。
この技術を「関東ALC」の分割自動倉庫に適用した。
メディセオが先に導入した仕組みもある。
クロスベルトソーターを利用するピースピッキングは、長らく主力だったカートピッキングの限界を打破するために考案され、メディパルHDの「埼玉ALC」で先行導入された。
その後、同様の仕組みをPALTACも採用した。
メディパルグループが大型物流拠点を開設するスピードは、急成長を続けるネット通販大手にも匹敵する。
1カ所当たり数十億円、数百億円を投じる最先端拠点を毎年のように稼働させている。
このことはマテハン事業者やロボット事業者に、またとない活躍の舞台を提供している。
メディパルグループには物流センターの構築に関するノウハウが蓄積されている。
人材も育っている。
ベンダーは厳しい要求を通じてマーケットが求める物流ニーズや課題を知ることができる。
こうした関係がメディパルHDの物流効率化を押し上げることにもなっている。
変化に応じて構想をブラッシュアップ 3年前に発表した中期ビジョンでメディパルHDは、全国12カ所からなるALCネットワークが19年11月に稼働予定の「阪神ALC」で完成すると公表した。
ところが19年5月に発表した次の中期ビジョンでは、ALCが13カ所に増え、「阪神」の稼働予定は22年3月に延期された。
その理由を若菜本部長は、「18年11月に新たに『南九州ALC』を稼働したのは、熊本地震の後、九州全域を『福岡ALC』だけでカバーするのではなく2拠点体制にすることでリスクを分散させたかったから。
『阪神ALC』の稼働計画の延期は、少し待って新しい仕組みを考えるほうが得策と判断したためだ」と説明する。
厚生労働省が1年前に導入した「GDP(医薬品の適正流通基準)ガイドライン」への準拠や新しい物流技術を念頭に計画を練り直している。
働き方改革への関心の高まりや、深刻化する人手不足の影響もあって、物流に対する顧客の考え方も変化してきた。
発注するタイミングや発注量の最適化が、薬剤師や看護師の負担軽減につながることが理解され、従来のやり方を見直そうとする機運が顧客の間でも広がっているという。
若菜本部長は「メディセオが考えている物流に対して、お客さまもようやく『これ、いいじゃない』と言ってくれるようになってきた。
当社の営業担当者もお得意さまにとって一番良い方法、一番効率的な方法を一緒に考えようと意識し始めた。
この変化は大きい」と手応えを感じている。
以前は、「NLC(ナショナル・ロジスティクス・センター)」と呼ぶ“郊外型”の大型拠点を各地に配置し、そこから各エリアの支店に必要な医薬品を総量で供給。
支店に付随する物流機能で顧客別に仕分けてから、営業と商品配送を兼務する担当者が得意先に納品していた。
これに対してALC・FLC構想は、支店への商品供給と顧客への配送拠点を兼ねる“都市型”の大型施設であるALCを中核とする。
メーカーからの納品を受け入れるだけでなく、顧客別の仕分け作業の多くをALCで実施。
個別の仕分けまで済ませた状態で支店に横持ちする。
支店の物流機能も順次、高機能のFLCに置き換えている。
以前は全国に約300あった物流関連施設を、約120カ所程度のFLCに統合・整理している。
2019年6月、メディセオは埼玉県加須市に最新物流拠点「関東ALC」を稼働した。
09年に神奈川で最初のALCを稼働して以来、同タイプの物流拠点は全国で11カ所目。
今後、20年に広島、22年に阪神でALCを稼働すれば、全国13拠点からなるALCネットワークが完成する。
旧NLCとは立地条件が異なり、しかも重装備のマテハンが必須のALCは、これまで全ての施設を新設してきた。
しかし、「関東ALC」はNLCだった旧「埼玉物流センター」をリノベーション(改修)したものだ。
メディパルグループの医薬品卸売事業の中核会社であるメディセオで、同事業全体の物流戦略を担っているロジスティクス本部の責任者を務める若菜純上席執行役員は、このような判断に至った経緯を次のように振り返る。
「埼玉県内にはすでに『埼玉ALC』(三郷市)があった。
このため当初はもっと西側の西東京や多摩地区で新しい土地を探したが、条件を満たす物件がなかなか見つからなかった。
そのうちに圏央道が開通し、加須からでも八王子などに1時間余りでアクセスできるようになった。
そこで私が所属していた経営企画部門から物流部門に、埼玉NLCの建物を活用することを提案した」 この提案は物流部門にとっては簡単に受け入れられるものではなかった。
既存施設の転用では庫内設計に制約が生じてしまう。
それでも投資対効果の向上などは見込めるため、両者は話し合いを重ねながらリノベーションの可能性を探った。
メディセオのロジスティクス本部の山本広一物流戦略部部長は、「あらためて物量を調べ、どの程度まで商品を入れられるのか、設備をどうするのか、具体的にどうやって置くのか、といったことをわれわれが検討した。
その結果、何とかいける見通しが立ったことで計画が動き始めた」という。
スペース効率を高めリスク対応も強化 「関東ALC」への投資総額は80億円。
土地・建物は既存施設を流用したが、建屋の一部に手を加える必要があった。
このため投資の内訳は、施設に約30億円、マテハンなどの設備に45億円、情報システムなどに約5億円となっている。
2年前に稼働した「埼玉ALC」の総投資額が235億円だったのと比べるとかなり抑制できている(本誌17年5月号ケース参照)。
さらに「埼玉」の稼働当初の出荷額が約3500億円だったのに対し、「関東」は半分以下の延床面積で約2300億円を扱う。
「埼玉」の増設余地を考慮しても、リノベーションという手法の効果は小さくない。
物流部門は新設のALCとは異なる発想で多くの課題をクリアした。
取扱品目は「埼玉」が医薬品と医療機器を含めて3万SKU余りなのに対し、「関東」は約2万5千SKU余り。
一部の商材については在庫を持たず、50キロメートルほどの距離に立地する「埼玉」から横持ちする。
マテハン設備にも多くの工夫を凝らした。
最先端のALCでは現在、5種類の自動倉庫(パレット、ケース、ピース、ユニシャトル、分割自動倉庫)を使い分けている。
出荷量の多い商品はパレット自動倉庫に入れ、出荷量が比較的少なければケース自動倉庫に格納。
必要に応じて出庫する。
ALCはピース単位の出荷が多い。
そのピッキング作業を効率化するため、自動倉庫とクロスベルトソーターを組み合わせた独自のGTP(グッズ・トゥー・パーソン)方式の設備を3年前から導入している。
通常は、この構成のマテハンを機械停止などに備えて2セット導入し、2フロアに分けて設置してきた。
これを「関東ALC」では、2セットのクロスベルトソーターを同一フロアにL字型に配置するように変更。
これが結果としてスペース効率と労働生産性の向上につながった。
かつて物流戦略部で「関東ALC」の設計に従事し、現在は物流子会社の物流二十四に籍を置いて現場責任者を務めている井原直之関東ALCセンター長は、「この施設は決まったスペースに設備を収める工夫を重ねたためムダがない。
作業動線も短い。
ワンフロアで全体を見渡せれば、作業者の適正配置やマネジメントを非常にやりやすい。
それが効率的な運用につながっている」という。
地震や停電への対策にも工夫 リスク対応でもリノベーションならではの工夫を重ねた。
ALCを新設するときは通常、免震構造の建物を採用している。
だが「関東ALC」の建屋は、もともと地盤が強固ということもあって免震構造ではなかった。
そこで「ミューソレーター」という床免震装置を本格的に導入した。
この装置は2枚の薄いプレートを重ねた構造で、震度5以上の地震が発生すると下側のプレートだけが揺れに応じて動く。
この動きから上側のプレートが取り残されることで揺れを吸収する。
これを自動倉庫の支柱の下などに敷き、大規模な工事を施すことなく免震化を実現した。
旧埼玉物流センターの時代から使っていたパレット自動倉庫は、スタッカークレーンこそ新しくしたが、ラック(棚)は流用した。
このラックは建屋に据え付けられているため「ミューソレーター」は使えない。
そこで新たな工夫として、ラックの下段部分に制震ダンパーを付けた。
さらに揺れが相対的に大きくなる上段部分にはパレットの落下を防ぐ“爪”を設置して地震に備えている。
北関東で頻繁に発生する落雷対策にも万全を期した。
停電時に建物全体の電源を2~4日間確保できる自家発電設備と、短時間の電圧低下に対応する瞬時電圧低下補償装置を導入した。
停電の発生時に自家発電が動きだすまでには約40秒かかる。
このタイムラグは自動倉庫のデータのズレなどを引き起こし作業の停滞を招く。
瞬低対策装置がこのタイムラグを埋めてくれる。
対応すべき課題は多かったが、「関東ALC」の運営は順調に軌道に乗った。
「10月中旬に計画通り業務を取り込めば稼働率は100%になる。
トラブルもなく想定した物量を扱えるようになり、生産性も上がってきた。
さらなる効率化は現場のマネジメントにかかっている」と山本部長。
初のリノベーション案件にもかかわらず、大きな混乱がなかった理由の一つは、同じメディパルグループで医薬品卸売事業を営むエバルス(本社・広島と岡山)とアトル(本社・福岡)の物流担当者が応援に駆けつけたことも大きいという。
ALC構想は事業全体に浸透しつつある。
PALTACとの相乗効果 ALC構想の源流をたどると、05年にメディセオホールディングス(当時)と日用品卸最大手のパルタック(当時)が経営を統合したことに行き着く。
定評のあったパルタックの物流ノウハウをメディセオが生かすかたちで物流効率化に取り組み、その後は互いに切磋琢磨してきた。
「関東ALC」にも両社の関係を示す事例が複数ある。
たとえばピースピッキングの前工程としてピース自動倉庫に商品を補充する「トレー化」の工程は、PALTACが18年8月に稼働した新潟の拠点で実用化した仕組みを参考にしている。
その1年余り前に稼働したメディパルHDの「埼玉ALC」では、作業者が歩いてケース商品を作業台に運んでからトレーに移し替える。
これを「関東ALC」ではGTP方式に変更。
作業者はケース自動倉庫から目の前に搬出される段ボール箱のなかの商品を、モニターの指示に従って目の前にあるトレーに移し替えていく。
廃棄段ボールの処理までほとんど歩かずに済む。
医薬品の錠剤をアルミシートとプラスチックで挟んだ状態まで分割してピッキングする工程で使う「分割自動倉庫」にも、PALTACが村田機械と一緒に独自開発した「マルチタスク・クレーン」(MTC)という技術が使われている。
一般的な自動倉庫では、クレーン1台が1度にこなす作業は入庫か出庫の一つだけ。
だがPALTACはその約2・5倍の処理能力を必要としていた。
シャトルタイプの自動倉庫はコスト効率の悪化を招くため使いたくない。
そこでクレーン1台に四つのトレーがあり、1回の作業で入出庫を同時にこなせるMTCを開発した。
この技術を「関東ALC」の分割自動倉庫に適用した。
メディセオが先に導入した仕組みもある。
クロスベルトソーターを利用するピースピッキングは、長らく主力だったカートピッキングの限界を打破するために考案され、メディパルHDの「埼玉ALC」で先行導入された。
その後、同様の仕組みをPALTACも採用した。
メディパルグループが大型物流拠点を開設するスピードは、急成長を続けるネット通販大手にも匹敵する。
1カ所当たり数十億円、数百億円を投じる最先端拠点を毎年のように稼働させている。
このことはマテハン事業者やロボット事業者に、またとない活躍の舞台を提供している。
メディパルグループには物流センターの構築に関するノウハウが蓄積されている。
人材も育っている。
ベンダーは厳しい要求を通じてマーケットが求める物流ニーズや課題を知ることができる。
こうした関係がメディパルHDの物流効率化を押し上げることにもなっている。
変化に応じて構想をブラッシュアップ 3年前に発表した中期ビジョンでメディパルHDは、全国12カ所からなるALCネットワークが19年11月に稼働予定の「阪神ALC」で完成すると公表した。
ところが19年5月に発表した次の中期ビジョンでは、ALCが13カ所に増え、「阪神」の稼働予定は22年3月に延期された。
その理由を若菜本部長は、「18年11月に新たに『南九州ALC』を稼働したのは、熊本地震の後、九州全域を『福岡ALC』だけでカバーするのではなく2拠点体制にすることでリスクを分散させたかったから。
『阪神ALC』の稼働計画の延期は、少し待って新しい仕組みを考えるほうが得策と判断したためだ」と説明する。
厚生労働省が1年前に導入した「GDP(医薬品の適正流通基準)ガイドライン」への準拠や新しい物流技術を念頭に計画を練り直している。
働き方改革への関心の高まりや、深刻化する人手不足の影響もあって、物流に対する顧客の考え方も変化してきた。
発注するタイミングや発注量の最適化が、薬剤師や看護師の負担軽減につながることが理解され、従来のやり方を見直そうとする機運が顧客の間でも広がっているという。
若菜本部長は「メディセオが考えている物流に対して、お客さまもようやく『これ、いいじゃない』と言ってくれるようになってきた。
当社の営業担当者もお得意さまにとって一番良い方法、一番効率的な方法を一緒に考えようと意識し始めた。
この変化は大きい」と手応えを感じている。
