2023年5月号
特集
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アサヒロジスティクス 女性ドライバーの育成・活用で道を切り開く
女性専用トラック「クローバー号」
アサヒロジスティクスは、埼玉県・大宮に本社を置き、首都圏を地盤とする定温物流会社だ。
2022年3月期売上高は前年同期比7%増の388億円。
3月末現在、1509台のトラックを保有し、2300人超のドライバーを抱えている。
ドライバー不足は働き方改革関連法の成立以前から課題と認識していたが、経験者の獲得競争より、新しくドライバーを生み出すことを重視してきた。
そのために17年には研修施設「滑川福田センター」(埼玉県滑川町)を開設した。
面積約3500坪の敷地内にトラック専用コースを設け、3泊4日の運転訓練などを行っている。
22年10月には埼玉県川越市の川越自動車学校を買収、免許取得から人材育成を一気通貫で行える体制を整えた。
未経験者の育成と並行して、女性ドライバーの活躍環境を整える「クローバープロジェクト」を19年末にスタートした。
同社では以前から女性ドライバーが働いていたが、たばこのニオイなどが原因で男性の後ではトラックを運転するのがつらいといった相談が寄せられていた。
そこで新たに女性専用トラック「クローバー号」の導入を決めた。
クローバープロジェクトの責任者を務める朝日奈緒美営業企画グループブランド戦略担当アシスタントマネージャーは「他社の女性専用トラックと異なり、当社のクローバー号は女性向けに独自の改修を施している」と強調する。
着替えや休憩時のストレスを軽減するため、運転席には車内をぐるりと隠すことのできるカーテンを装着した。
ラッシングベルトの収納フックの位置は、女性の身長に合わせて10センチ前後低くした。
荷台扉のロックをワンタッチで開閉できるドアも採用した。
20年3月に1号車が納車されて、現在では1トン車から6トン車まで計10台が稼働している。
改修内容は車種や業務によって異なるが、おおむね1台当たりの改修費用は10万円程度となっている。
新車の導入と並行して今後は既存車両の改修も進めていく計画だ。
車両以外にも女性ドライバーの要望を聞き入れてきめ細かく対応している。
その一環でユニホームのウェブ申請を始めた。
サイズなどを周囲に知られることなく申請できる。
納品時も不透明な袋に封入して配布するなど配慮している。
AT車への切り替えも進めている。
川越自動車学校の過去3年間の普通免許取得者データでも、女性はAT限定免許を取得する傾向が非常に強い。
23年3月末現在のAT車は、全車両の82%に相当する1232台だが、24年3月末までに、切り替え可能な残り91台を全てAT車とする計画だ。
クローバープロジェクト開始時には、あえて男女を区別する必要があるのかという疑問の声もあった。
特別扱いされることで男性ドライバーから批判的に見られるのでは、と危惧する女性ドライバーもいた。
現在もクローバー号を男女共用にすべきとの意見がある。
朝日アシスタントマネージャーは「バランスを取るのは難しい。
それでも女性にとって働きやすい環境は、男性にとっても働きやすい。
女性が活躍できる体制づくりを推進することは、全社で意思統一できている」と語る。
男性の働きやすさにも寄与 実際、男性ドライバーの働き方も変化している。
一例が育児休暇だ。
同社は従来から育児休暇制度を設けていた。
出産前から子どもが1歳になるまで取得できる。
2歳まで延長もできる。
さらに小学校入学前までは時短勤務を認められる。
最近まで取得者のほとんどは女性だったが、22年には女性ドライバー4人に加え、男性ドライバー6人が取得した。
人材育成の責任者を務める井上健採用育成グループグループ長は、「5年ほど前に男性ドライバーが初めて育児休暇を取得した時は驚いた人が多かった。
それを考えると、明らかに職場の雰囲気は変化している」と話す。
将来、育児休暇を取りたいという男性ドライバーも増えている。
「プライベートを重視する若者の傾向は、子育て中の女性と似ている」(朝日氏)ことから、クローバープロジェクトなどの取り組みは若者ドライバーも視野に入れている。
3月末現在、20代ドライバーは男女合わせて169人、ドライバー全体の7・2%を占めている。
この数年は横ばいだが、17年の5%程度と比べて高まっている。
4月には3人の高卒ドライバーも入社した。
一方、転職者の確保に効果を上げているのが、「子育て支援手当」だ。
20年3月までは「家族手当」の名目で配偶者2500円、子ども1人1500円を支給していた。
同4月に配偶者手当てを廃止する代わりに、23歳未満の子供を扶養している社員に対して子供1人当たり1万円を支給する新制度を開始した。
入社志望動機にこの子育て支援手当を挙げる中途採用ドライバーは多いという。
研修施設の開設など人材確保を強化し始めた17年時点で、同社の女性ドライバーの数は44人、全体の2・7%だった。
それが現在は140人・6%に増えている。
これを24年3月末までに10%まで引き上げることを目指している。
囲み記事 女性ドライバーに聞く狭山チルド物流センター サービスドライバー 北岸 かおり氏 ──トラックドライバーになったきっかけは。
「ファーストフード店でアルバイトをしていた頃、食材を納品しに来た男性ドライバーが『重いだろうから』と、庫内で賞味期限順の並べ替えまでしてくれたことに感動したのが始まりでした。
同時期、街中でも女性ドライバーを目にすることが増えてきて、ドライバーとして働くことを意識するようになりました。
周りの後押しもあり4年前、この狭山物流センターの採用に応募しました。
トラックの運転経験はなかったですが、入社後は滑川福田の研修センターで、交通ルールの講習から運転訓練まで丁寧に教えていただきました」 ──狭山物流センターには何人の女性ドライバーがいますか。
「ドライバーは全員で149人、そのうち女性は7人です。
お互いの配送先の情報交換をしたりと、活発にコミュニケーションを取っています。
子どものいる女性ドライバーも多いので、子どもの行事や体調不良で休みを取る際にセンター全体で支えていただけて、とても助かっています」 ──ドライバー業務はいかがですか。
「楽しいですね。
運転しているときはもちろん、荷台に荷物をぎっしり積み込んだときには、〝さあ運ぶぜ〟と闘志が湧いてきます。
荷物が多いと積み降ろしがたいへんですが、女性だからと特別扱いされないよう心掛けています。
4トン車を運転していますが、もっと大型のトラックも運転できるようになりたいです」 ──クローバープロジェクトに対するご意見は。
「車体に描かれたクローバーマークのおかげで、幸せを運んでいる気持ちです。
センター内のトイレの数も不自由はなく、快適に過ごしています。
今後はクローバー車を、男女関係なく使えるようにした方が良いかもしれません。
女性専用だと、女性不在時に稼働しないのでもったいないです。
ラッシングベルトの収納位置が低いことなど女性に合わせた仕様は、小柄な男性にも使いやすいでしょうし」 「先輩女性ドライバーは、ドライバーになるというだけで大変だったと思います。
その方々が道を切り開いてくれたおかげで今がある。
最近は他のセンターでも女性ドライバーを見かけることが多くなりました。
今後も増えていってほしいです」
2022年3月期売上高は前年同期比7%増の388億円。
3月末現在、1509台のトラックを保有し、2300人超のドライバーを抱えている。
ドライバー不足は働き方改革関連法の成立以前から課題と認識していたが、経験者の獲得競争より、新しくドライバーを生み出すことを重視してきた。
そのために17年には研修施設「滑川福田センター」(埼玉県滑川町)を開設した。
面積約3500坪の敷地内にトラック専用コースを設け、3泊4日の運転訓練などを行っている。
22年10月には埼玉県川越市の川越自動車学校を買収、免許取得から人材育成を一気通貫で行える体制を整えた。
未経験者の育成と並行して、女性ドライバーの活躍環境を整える「クローバープロジェクト」を19年末にスタートした。
同社では以前から女性ドライバーが働いていたが、たばこのニオイなどが原因で男性の後ではトラックを運転するのがつらいといった相談が寄せられていた。
そこで新たに女性専用トラック「クローバー号」の導入を決めた。
クローバープロジェクトの責任者を務める朝日奈緒美営業企画グループブランド戦略担当アシスタントマネージャーは「他社の女性専用トラックと異なり、当社のクローバー号は女性向けに独自の改修を施している」と強調する。
着替えや休憩時のストレスを軽減するため、運転席には車内をぐるりと隠すことのできるカーテンを装着した。
ラッシングベルトの収納フックの位置は、女性の身長に合わせて10センチ前後低くした。
荷台扉のロックをワンタッチで開閉できるドアも採用した。
20年3月に1号車が納車されて、現在では1トン車から6トン車まで計10台が稼働している。
改修内容は車種や業務によって異なるが、おおむね1台当たりの改修費用は10万円程度となっている。
新車の導入と並行して今後は既存車両の改修も進めていく計画だ。
車両以外にも女性ドライバーの要望を聞き入れてきめ細かく対応している。
その一環でユニホームのウェブ申請を始めた。
サイズなどを周囲に知られることなく申請できる。
納品時も不透明な袋に封入して配布するなど配慮している。
AT車への切り替えも進めている。
川越自動車学校の過去3年間の普通免許取得者データでも、女性はAT限定免許を取得する傾向が非常に強い。
23年3月末現在のAT車は、全車両の82%に相当する1232台だが、24年3月末までに、切り替え可能な残り91台を全てAT車とする計画だ。
クローバープロジェクト開始時には、あえて男女を区別する必要があるのかという疑問の声もあった。
特別扱いされることで男性ドライバーから批判的に見られるのでは、と危惧する女性ドライバーもいた。
現在もクローバー号を男女共用にすべきとの意見がある。
朝日アシスタントマネージャーは「バランスを取るのは難しい。
それでも女性にとって働きやすい環境は、男性にとっても働きやすい。
女性が活躍できる体制づくりを推進することは、全社で意思統一できている」と語る。
男性の働きやすさにも寄与 実際、男性ドライバーの働き方も変化している。
一例が育児休暇だ。
同社は従来から育児休暇制度を設けていた。
出産前から子どもが1歳になるまで取得できる。
2歳まで延長もできる。
さらに小学校入学前までは時短勤務を認められる。
最近まで取得者のほとんどは女性だったが、22年には女性ドライバー4人に加え、男性ドライバー6人が取得した。
人材育成の責任者を務める井上健採用育成グループグループ長は、「5年ほど前に男性ドライバーが初めて育児休暇を取得した時は驚いた人が多かった。
それを考えると、明らかに職場の雰囲気は変化している」と話す。
将来、育児休暇を取りたいという男性ドライバーも増えている。
「プライベートを重視する若者の傾向は、子育て中の女性と似ている」(朝日氏)ことから、クローバープロジェクトなどの取り組みは若者ドライバーも視野に入れている。
3月末現在、20代ドライバーは男女合わせて169人、ドライバー全体の7・2%を占めている。
この数年は横ばいだが、17年の5%程度と比べて高まっている。
4月には3人の高卒ドライバーも入社した。
一方、転職者の確保に効果を上げているのが、「子育て支援手当」だ。
20年3月までは「家族手当」の名目で配偶者2500円、子ども1人1500円を支給していた。
同4月に配偶者手当てを廃止する代わりに、23歳未満の子供を扶養している社員に対して子供1人当たり1万円を支給する新制度を開始した。
入社志望動機にこの子育て支援手当を挙げる中途採用ドライバーは多いという。
研修施設の開設など人材確保を強化し始めた17年時点で、同社の女性ドライバーの数は44人、全体の2・7%だった。
それが現在は140人・6%に増えている。
これを24年3月末までに10%まで引き上げることを目指している。
囲み記事 女性ドライバーに聞く狭山チルド物流センター サービスドライバー 北岸 かおり氏 ──トラックドライバーになったきっかけは。
「ファーストフード店でアルバイトをしていた頃、食材を納品しに来た男性ドライバーが『重いだろうから』と、庫内で賞味期限順の並べ替えまでしてくれたことに感動したのが始まりでした。
同時期、街中でも女性ドライバーを目にすることが増えてきて、ドライバーとして働くことを意識するようになりました。
周りの後押しもあり4年前、この狭山物流センターの採用に応募しました。
トラックの運転経験はなかったですが、入社後は滑川福田の研修センターで、交通ルールの講習から運転訓練まで丁寧に教えていただきました」 ──狭山物流センターには何人の女性ドライバーがいますか。
「ドライバーは全員で149人、そのうち女性は7人です。
お互いの配送先の情報交換をしたりと、活発にコミュニケーションを取っています。
子どものいる女性ドライバーも多いので、子どもの行事や体調不良で休みを取る際にセンター全体で支えていただけて、とても助かっています」 ──ドライバー業務はいかがですか。
「楽しいですね。
運転しているときはもちろん、荷台に荷物をぎっしり積み込んだときには、〝さあ運ぶぜ〟と闘志が湧いてきます。
荷物が多いと積み降ろしがたいへんですが、女性だからと特別扱いされないよう心掛けています。
4トン車を運転していますが、もっと大型のトラックも運転できるようになりたいです」 ──クローバープロジェクトに対するご意見は。
「車体に描かれたクローバーマークのおかげで、幸せを運んでいる気持ちです。
センター内のトイレの数も不自由はなく、快適に過ごしています。
今後はクローバー車を、男女関係なく使えるようにした方が良いかもしれません。
女性専用だと、女性不在時に稼働しないのでもったいないです。
ラッシングベルトの収納位置が低いことなど女性に合わせた仕様は、小柄な男性にも使いやすいでしょうし」 「先輩女性ドライバーは、ドライバーになるというだけで大変だったと思います。
その方々が道を切り開いてくれたおかげで今がある。
最近は他のセンターでも女性ドライバーを見かけることが多くなりました。
今後も増えていってほしいです」
