2023年6月号
特集

キユーソー流通システム 西尾秀明 社長 「お客さまと共にベストプライスを作り上げる」

BtoBの関係性は51:49が最適解 ──食品の物流に大きな変化が起きています。
 「私は前職のキユーピーで35年間にわたり業務用商品の営業職に就いていました。
業務用は『今日の仕込みができなければ明日の料理が出せない』という世界ですから、休みの日だろうが深夜だろうが、お客さまから『持って来い』と言われたら何がなんでも届ける。
スーツからTシャツとジーパンに着替えて、現場で納品を待ち構えてドライバーと一緒に荷物を納めたりしていた。
お客さまの言うことなら何でもやるぞ、という姿勢でした」  「しかし、キユーソー流通システムに移って、最初に1年間かけて現場を回ってみたところ、物流はこんな過酷な環境で我慢を強いられていたのか、荷主の無理難題に応えていたのか、と今さらながら驚きました。
この環境を変えなければといけない、と強く思いました。
そのため15年に社長になって最初に手を付けたのが、全国の倉庫をキレイにすることでした。
古かったり、和式だったり、男女共用だったりしたのをすべて改修した。
煙草のヤニで汚れた休憩室の壁もすべて塗り替えた」 ──業績には直接結びつかない投資です。
 「お金がかかってもいい。
それで社員のモチベーションが2%、3%上がれば業績は後からついてくるという考えでした。
キユーピーの本体は社員の半分以上が女性です。
われわれは『食』に携わっています。
食の世界は女性に優先権があるので、女性が活躍するのは当然なんです。
ところが物流は、人手不足だと散々言われているのに女性活用が遅れていた。
女性が活躍できる環境ではありませんでした。
そうした環境では男性社員も良い人材は寄りつきません。
そこでまずはそこを変えた」  「次に当社とお客さまとの関係を見ると、パワーバランスは荷主が90で、われわれは10しかない。
相手はお客さまですから50:50とは言いません。
しかし、お客さまに1を譲った51:49が本来のあるべき姿です。
それを私は信条として営業時代からずっとやってきました。
ところが、ここではお客さまから言われっぱなし。
逆に協力運送会社や仕入先に対しては、われわれが言いっぱなし。
そのために相手はものすごく疲弊しているのに、それが当たり前になっている。
そこで『90:10』を『51:49』に近づけることに取り組んできました」 ──無理を聞くのがサービスという考え方は?  「今や無理を通り越しています。
お客さまをそうさせてしまったのは、われわれ物流の責任でもあります。
われわれがお客さまのわがままを聞き入れるので、お客さまもそれでいいんだと思って、その先のお客さまのわがままを聞いている。
BtoCと違ってBtoBのビジネスは、お客さまと一緒になって改善なり、仕組みを作るなりして、お客さまに売り上げを伸ばしてもらい、お客さまと一緒に伸びていくのが基本です。
その基本の上に『このままでは運べなくなります。
だから一緒になって改善して下さい』とお願いする必要があります」  「われわれの共同配送は路線バスのように時刻表に合わせて運行しています。
そのためお客さまには決まった時間にバス停に来てもらう必要がある。
『ちょっと待ってくれ』と言うお客さまのわがままを聞いていたら、他の人たちみんなに迷惑をかけてしまう。
時間に遅れたらタクシーを使っていただくしかない。
そのことをわれわれがきちんとお客さまに伝える。
運賃を叩けばいいと考えている荷主には、叩いたら誰も運ばないことを伝える。
当社は食品物流会社としては、それなりの規模ですから、中小では荷主に言いにくいことでも言うべき立場にあると考えています」 ──荷主はコストアップを覚悟すべきですか。
 「運賃を叩かなくても物流コストを抑制する方法はあります。
例えば『デザイン・フォー・ロジスティクス』です。
ペットボトル一つにしても今は500ミリリットルもあれば、550ミリ、600ミリもある。
『増量』で差別化しているわけですが、その結果、箱の大きさがバラバラになって現場の大きな負担になっている。
メーカー同士で箱の大きさを取り決めれば、みんながコストを下げられます。
当社は物流コンサルもやっているので個別の倉庫の動線や作業改善をお手伝いすることもできる」  「ただし、改善はゲインシェアリングが大事です。
キユーピー時代に外資系大手外食チェーンの営業を担当しました。
恐らく外食産業で最も調達コストを抑えることのできている会社です。
彼らには安く調達できる理由があった。
彼らがキャンペーンで700万食やる、と言ったら、例え650万食に終わっても、残りの50万食を買い取ってくれる。
何とか消化してくれる。
だからベンダーはその会社にはベストプライスが出せる」  「その一方で、その会社の調達担当者がベンダーの工場の中に入り込んで歩留まりまでチェックする。
仮に工場が独自の判断で品質検査で20%はねていれば、はねた商品を確認して許容できる範囲を具体的に示す。
その結果、歩留まりが10%上がっても、それを全て自分のものにするのではなく、5%をベンダー側に還元する。
だから、現場も本気になる。
それが51:49の世界です」 外食・内食・中食から日配までカバー ──キユーソーは物流子会社でありながら外販比率が今や9割を超えています。
規模的にも食品物流会社としてトップクラスです。
その一方、営業利益率は2・1%と高くはありません。
 「これまで当社が長年にわたり成長を続けてこられた最大の理由は間違いなく品質です。
食品メーカーの中でもキユーピーと中島董商店は、品質へのこだわりで知られています。
その倉庫部門として出発した当社も品質で妥協することは許されなかった。
そのためにグループ外のお客さまにも安心してご利用いただける。
そしてキユーピーは外食・内食・中食をすべて取り扱っている。
サラダなど日配品もある。
中島董商店はワイン事業も手掛けている。
そのためキユーソーは、常温・定温・冷蔵・冷凍の4温度帯に加えて日配にも対応している。
そのサービスを全国で提供できるところが、われわれの圧倒的な強みです」  「一方で利益率はご指摘の通り、胸を張れるレベルではありません。
原因の一端は当社が全ての温度帯、全ての業態に対応していることにあります。
食品物流業界は基本的に温度帯別に分かれている。
端的には常温と冷蔵に分かれているのに、当社はそうではない。
そこはわれわれがもう一つ工夫しなければならないところです」  「しかし、当社の利益率が低いもう一つの理由に、過剰サービスがあるのも明らかです。
ドライバーの付帯作業に料金を請求することもできていない。
長年、何も言わないできたので今さら言えないんです。
そこで待機時間や付帯作業をすべてデータ化する『配送カウンターアプリ』を開発して2019年から運用しています。
キユーピーの営業を通して納品先に改善もお願いしています。
ドライバー不足の中、24年問題が迫っているわけですから、そうしないと現場を回せなくなってしまう」 ──国内の食品需要は縮小していきます。
今後の成長戦略をどう描きますか。
 「国内の食品物流市場は約3兆円とされています。
当社のシェアは5%余りに過ぎません。
拡大の余地はいくらでもある。
それを『面積から体積へ』という言い方で社員たちに説明しています。
現在、当社は1500社近くのお客さまと取引しています。
しかし、それぞれのお客さま物流の一部を請け負っているに過ぎません。
それを深掘りしていきます」 ──海外シフトも進めています。
中国に続いてインドネシアに進出し、業績にもかなり貢献している。
 「まずは国内の深掘りを徹底的にやる。
その上で将来の世代のために海外をやっていくというのが本来のかたちと考えています」 ──海外展開はキユーピーと歩調を合わせたものですか。
 「当社の主体的な経営判断です。
キユーピーは21年に当社の持ち株の一部を売却して連結対象から外しました。
それによって、キユーピーはグループの利益率が上がる。
当社としても、われわれの判断でスピーディにさまざまな施策が打てる。
設備投資も積極的にしていける。
設備投資をすれば減価償却が利益率を抑え込むことになるけれど、待ったなしで今やらなければ手遅れになってしまいます。
一方でキユーピーと中島董商店で今も当社の株式の49%を持っているわけですから、グループが社是とする『楽業偕悦』の理念や社訓はこれからも大切に守っていきます」

月刊ロジスティクス・ビジネス

購読のお申し込みはこちらから