*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。
SEPTEMBER 2004 58
3PL業務への需要
中国の市場は巨大だ。 しかし、そ
の中に占める物流市場となると、い
ったいどれくらいの規模になるのだ
ろうか。 中国におけるロジスティク
ス・コストはGDP(国民総生産)
の約二割と推定されている(前回八
月号「中国のロジスティクスの現状
と課題」参照)。
中国倉庫協会が二〇〇一年に行っ
た市場調査によると、製造業のうち
七一%が社内で調達物流を行ってお
り、外注しているのは二一%でしか
ない。 完成品の輸送についても、外
注しているのは二一%で、四三%は
社内で行い、三六%がその両方を使
っている。
これが小売業者と卸売業者となる
と、ロジスティクス業務を外注して
いるのはわずか十三%の企業にとど
まっている。 それでも、二〇〇〇年
から二〇〇一年にかけて外注してい
る企業の比率は五ポイント増えては
いるのだが、全体のごく一部でしか
ない。
ロジスティクスに対する需要その
ものは全体として、GDPの成長に
比べ速いペースで増加している。 ロ
ジスティクス業務を外注したいとす
る企業の数も毎年一割程度は増えて
いると推定されている。 これは、中
国のGDPの伸びである年率七・
五%という成長率を上回る。 中国は
ロジスティクスのインフラの整備を
急ピッチで進めている。
外注化に関する現状調査
中国総合開発研究院(CDI)(The
China Development Institute
)は
二〇〇三年に、中国でロジスティク
スがどのようなパターンで外注化さ
れており、どんな特徴を持っている
のかに関する調査を行った。 回答の
大半は、中国の大生産地域の代表と
も言える珠江デルタから寄せられた
ものだ。
珠江デルタ地域は、中国にいくつ
かある大規模な生産地域の代表格だ。
ここでロジスティクス需要を調査するために荷主企業八七社への対面調
査が行われた。 広大な面積を持つ中
国の多様さゆえに、これから引用す
る調査結果が、中国全体の動向を完
全に網羅するには至っていない点に
は留意してほしい。 調査結果の概要
は以下の通りだ。
■ロジスティクスの外注内容
中国におけるロジスティクス業務
「中国における3PL企業の台頭」《中》
国内市場と主要プレイヤーの分析
ジェラルド・チャウ
ブリティッシュ・コロンビア大学
助教授
チャールズ・グウェン・ワング
中国開発研究所 ロジスティクス・マネジメント・センター
主任
ロバート・ヤング・ジュン・ウィーチャイナ・マーチャンツ・ロジスティクス・グループ
チーフ・マーケティング・ディレクター
本論文は二〇〇三年一〇月に米CLM年次総会で発表された。 前回
は「中国のロジスティクスの現状と課題」と題した第一部を掲載し、中
国の輸送モードや物流施設が抱える課題と、それへの官民の対応を解説
した。 今回は3PL事業の可能性について紹介する。
(本誌編集部)
59 SEPTEMBER 2004
の外注率は、産業全体を見渡すと決
して高くないのが現状だ。 荷主の中
では製造業者は外注率が一番高く、
一六%の企業がロジスティクス業務
のすべてを外部の業者に任せている
と答えた。 そして一八%は外部業者
と社内部門の両方を使っていると回
答している。
これが小売業者となると、わずか
四%の企業だけがロジスティクス業
務のすべてを外部の業者に任せてい
ると回答。 六%は外部業者と社内部
門の両方を使っていると答えた。 卸
売業者の外注の状況については、現
在のところ製造業者と小売業者の間
に位置している。
外注される業務は、主に伝統的な
ロジスティクス・サービスである。 最
も多いのは、輸送(transportation
)
サービスで二七%、次が配送(distribution
)サービス一五%、混載サ
ービス十三%、IT(情報技術)十
一%、倉庫業務十一%。 次いでサプ
ライチェーン・マネジメントの構築
が一〇%で、梱包が七%、仕分けが
六%。 そして在庫管理も、わずかな
がら外注されている。
■外注化を阻む壁
荷主がロジスティクス業務の外注
化に二の足を踏む理由は、すでに社
内に物流部門を抱えているためだ。 そ
う答えた企業が全体の二四%を占め
た。
中国には「うまみのある仕事を見
つけたときには決して他人と共有す
るな」という格言がある。 3PL部
門は利益につながるとみなされてお
り、荷主はロジスティクス業務を外
注するよりも社内にとどめておきた
いと考えている。
また同調査によると、一七%の企
業が期待通りの実力を持った3PL
業者が見つからなかったと答え、一
五%の企業が利用できる3PL業者
がなかったと回答している。 さらに、
情報システムが不十分であるため3
PL業者を使わなかったという企業
も十三%あった。 また十一%の企業
は3PLサービスの料金は高すぎた
と答え、八%の企業は3PL業者を
信頼できないと答えている。
外注したいと答えた荷主企業は、
その目的として以下の四つの点を挙
げた。
●ロジスティクスの資産を圧縮する
……二六%
●顧客サービスの向上を図る
……二六%
●在庫を削減する……………二四%
●社内資源を本業へと集中する
……二四%
■3PL業者の選定基準
中国で3PL業者を選定する段になると、製造業者は、小売業者や卸
売業者とはやや異なる選定基準を使
っている。 製造業者が最も重視する
のは3PL業者の過去の実績であり、
次にコスト面を考える。
一方で小売業者や卸売業者は、ま
ずコスト削減とサービスのネットワ
ークに関心を示し、次に過去の実績
を考える。 また小売業者が自らの企
業戦略を3PL業者と共有すること
を望んでいるのに対し、製造業者や
卸売業者はこの点にはあまり関心を
示していない。
3PL業者の選択肢としては、国
内の事業者か、香港系や台湾系、あ
るいは外資系などの事業者の中から
選ぶ。 四六%の荷主企業は、中国の
地場の業者を選んでいると答え、香
港系や外資とのジョイントベンチャ
ー企業を選んだ荷主も何社かあった。
しかし、外資系のロジスティクス
業者を選んだ企業はごくわずかだっ
た。 外資系の事業者は料金が高く、
中国の行政府とのつながりが希薄で
あると思われているためだ。 中国の
企業は、行政とのつながりを大変重
要視する。 行政とのつながりなしに
は、ビジネスを円滑に行うことがで
きないと信じているためだ。
3PL業者と本当の意味でのパー
トナーシップを結ぼうと思えば、通
常、三年から五年の契約期間が必要
といわれている。 しかしCDIの調
査によると、多くの荷主が短期間の
契約しか結んでおらず、しかも期間
が終われば契約の更新はしない。 三
六%の契約がわずか一年で終わって
おり、また三六%は一回限りの契約だった。 これは依然として荷主と3PL業
者の間に、真のパートナーシップが
築かれていないことを示している。
荷主は「ビジネス上の関係が続けば、
それがパートナーシップに発達する
SEPTEMBER 2004 60
ようになる」という。 しかし、多く
の荷主企業は3PL業者をどのよう
に使ったらいいのかという具体的な
戦略を描けていない。 その結果、必
要なときに一回だけロジスティクス・
サービスを購入している。 中国の荷
主企業は、3PL業者とのパートナ
ーシップを確立するだけの人材や企
業文化をまだ持ち合わせていない。
ITの活用に関しても、中国の製
造業者はまだ発展途上にある。 六
〇%の製造業者は基本的なITシス
テムを持っていない。 ただし残り四
〇%は、以下に挙げるいずれかのア
プリケーションを使っていた。
MIS(経営情報システム)九%、
OA(オフィスオートメーション)
八%、ERP(企業資源計画)七%、
WMS(倉庫管理システム)六%、
VMI(ベンダー主導型在庫管理方
式)五%、MRP(資材所要量計画)
三%、MRP2(製造資源計画)
一%、CRM(顧客関係管理)一%。
ERPやWMS、CRMといった諸
外国で一般的に使われているシステ
ムは、中国ではまだ普及していない。
図1は、各物流業者を縦横二つの
基準で分類したものである。 縦軸に
はサービスの内容を置いてある。 下
段には輸送業務や倉庫業務などの従
来からある業務を置いて、上段には
荷主に代わって輸送業者や倉庫業者
の手配したり管理するといったサー
ビスや、生産や販売計画に関わるサ
ービスを配置。 横軸には、サービス
内容の多寡を置いた。
輸送や倉庫業務など単一サービス
を提供する事業者は、左下の枠に入
る。 仮に倉庫業者が、輸送業務まで
を請け負うようになると、右下の枠
に収まる。 ロジスティクス業者が、荷
主に代わって、輸送業者や倉庫業者
の選定やサプライチェーン業務の代
行を行うようになると、3PL業者
の意味合いを帯びてきて左上の枠に
収まる。
本当の3PL業者とは、右上の枠
に収まる事業者を指し、サプライチ
ェーンを設計・実行し、そして実行
の際には下請け業者を束ねることに
よって多岐にわたるサービスを提供
できるような事業者を指す。 そうい
う事業者がサプライチェーンを管理
すれば、日々の業務を遂行するのと
同じくらいに全体のマネジメントに
おいて荷主に付加価値を提供するこ
とができるようになる。
中国の3PL事業の現状
まだ中国においては、3PL業者も発展段階にある。 多くは伝統的な
輸送業者やインターネットをベース
に発足した情報系の企業が、自ら3
PL業者を名乗っており、それらの
事業者のほとんどは、まだ図1の左
下の枠に位置している。 彼らの多く
は輸送業務や倉庫業務、フォワーデ
ィング業務や通関業務など一つのサ
ービスを提供しているにすぎない。 サ
プライチェーンを設計したり、さま
ざまな機能を持つ複数の下請業者を
束ねるロジスティクス業者は、現在
の中国にはほんのわずかしか存在し
ない。
大手事業者が業界を仕切ってきた
鉄道輸送部門を除けば、多くの輸送
業者は保有する車両台数二、三台と
いった弱小トラック業者である。 九
〇年代後半になって、ロジスティク
スの重要性がクローズアップされる
と、車両を一台しか持たない一人親
方までもが、その社名に?ロジステ
ィクス〞とつけはじめた。
同じように、倉庫業者の多くが、
サプライチェーン・マネジメント(S
CM)が何であるのかもわからず、ま
図1 ロジスティクス業者の分類基準
輸送業務管理業者 4PL業者
インデグレイテッド・ロジスティクス業者
リード・ロジスティクス業者
コントラクト・ロジスティクス業者
輸送のコンサルタント
倉庫業者
フォワーダー
通関業者
ロジスティクス・コンサルタント
在庫管理の専門業者
貸し切り輸送業者
貸し切り倉庫業者 倉庫兼輸送業者
3PL業者
従来型の業者
計画・管理と
日常業務の両方
計画・管理か
日常業務のいずれか
マネジメントの範囲
難しい
安易
単機能 複数機能
サービス内容の多寡
ソフトウエアベンダー
出典:ブリティッシュ・コロンビア大学 輸送研究センター
61 SEPTEMBER 2004
た全国ネットワークも持たず、地場
のコネと免許だけを持っているだけ
で3PLサービスを提供できると言
い出した。 つまり、実体よりも3P
Lという言葉ばかりが先行してきた
のである。
それらの中小業者が本当の3PL
業者に育った事例もいくつかはある。
しかし、中国の3PL市場における
現在の主力プレーヤーは、外資系の
ロジスティクス業者たちだ。 海上貨
物出身のAPLやマースク、航空貨
物出身のUPSやフェデラル・エク
スプレス、DHLなどがそこに含ま
れる。
海外から中国に進出してくる小売
業者は、ロジスティクスの分野にお
いてそれまで中国国内に存在してい
た以上のサービスレベルを求めて市
場に参入してくる。 米ウォルマート
や仏カルフール、独メトロなどの大
企業がそうだ。
中国には中国外運股分公司(シノ
トランス)や中国遠洋運輸総公司
(COSCO)など大手の国営ロジス
ティクス業者や倉庫業者が存在する。
倉庫業者の一例としては、中国誠通
発展集団(Cheng Tong Group
)が
あり、主要大都市や駅周辺に計三〇
〇万平方メートルの倉庫スペースを
持っている。 ただし同社の施設の多
くは一九五〇年代に作られたもので
あり、倉庫施設や情報設備をアップ
グレードしなければならないという問
題に直面している。
APLロジスティクスやダンザス、
TNTやマースク・ロジスティクスの
ような外資系だけでなく、Inchcape
や
St Anda
のような中国国内の事業
者もジョイント・ベンチャーを立ち
上げている。 中国国内の業者が参加
したジョイント・ベンチャーの例としてはShenzhen St Anda
ロジステ
ィクスがあり、同社はシンガポール
の
Sembcorp
ロジスティクスとチャイ
ナ・マーチャンツ・ロジスティクスの
子会社であるShenzhen Shekou Industrial
Zone Co.
による事例である。
日本の日立物流も深と上海で、
地元業者とのジョイント・ベンチャ
ーを立ち上げている。 また、Baogong
や
Jiuchuan
などのIT系の企業も、
3PLや4PL業者としてのサービ
スを提供している。
行政が3PL事業を後押し
中国で手掛けられている3PL業
務は地域ごとに異なっている。 例え
ば、経済発展の目覚しい上海では、
四つのタイプの3PL業者が存在す
る。 第一のグループは外資系の企業
群でAPLやOOCL、UPSやフ
ェデラル・エクスプレス、DHLな
どだ。 第二のグループは小売業者や
卸売業者にサービスを提供している
国営ロジスティクス業者だ。 Hualian
や
Dazong
ロジスティクスなどが該当
する。
第三のグループは、中国全土でサ
ービスを提供しているチャイナ・マ
ーチャンツ・ロジスティクスやChina
Shipping
、中国外運股分公司や
Baogong
などである。 そして第四の
グループとしては、Hongxing
ロジス
ティクスやBeifang
ロジスティクスな
ど地場の3PL業者がある。
こうした企業の多くは、3PL業
者として発展中の事業者であり、
徐々に本当の3PL業者、4PL業
者に発展している途上にある。 いくつかの中国の事業者はすでに3PL
の名にふさわしい実力を持っている
が、多くの事業者は従来通りの方法
で業務を行っており、これから3P
L業者となりつつあるというのが現
状だ。
図2 中国のロジスティクス業者の分布図
Chengtongグループ
APL ロジスティクス
OOCL ロジスティクス
チャイナ・マーチャンツ・
ロジスティクス・グループ
上海の国営業者
(Dazhong ロジスティクス)
民間業者
(RedStar, North)
UPS
フェデラル・エクスプレス
DHL
Baogong
ロジスティクス
3PL業者
従来型の業者
計画・管理と
日常業務の両方
計画・管理か
日常業務のいずれか
マネジメントの範囲
難しい
安易
単機能 複数機能
サービス内容の多寡
Gongsuda
ロジスティクス
SEPTEMBER 2004 62
上海ではロジスティクス市場の発
展を促すことを目的として、政府が
製造業者にロジスティクス業務を外
注するよう働きかけている。 また国
営企業には外注を命令することもあ
る。 一例としては、上海汽車工業
(
Shanghai Auto
)が政府に従うかた
ちで、ロジスティクス業務をTNT
に外注している。
政府はまた、3PL業者同士や荷
主同士のM&Aも後押ししている。
米ウォルマートのような巨大な流通
外資に対抗するために、上海では大
手百貨店同士だったLianhua
と
Hualian
が合併して中国トップの小売
業者兼卸売業者が誕生した。 ほかに
も小売業者や3PL業者同士のM&
Aの事例は枚挙に暇がない。
中国におけるビジネス文化
中国で3PLビジネスに参入しよ
うとしたら、同国のビジネス文化に
ついて十分に考慮する必要がある。 こ
うした側面をしっかりおさえておけ
ば、割合と容易にビジネスを行うこ
とができるようになるはずだ。
この国に「うまみのある仕事を見
つけたときには決して他人と共有す
るな」という格言があり、こうした
考え方が、荷主がロジスティクス業
務を外注したがらない理由の一つで
あることは前述した通りだ。 ロジス
ティクス業務を外部業者に委託する
ことは、荷主にとって利益を分け与
えているのと同様にとらえられてい
るのである。
もう一つのポイントは、取引先と
の関係には属人的な要素が強く働く
ということである。 ある荷主がロジ
スティクス業者の担当者と良好な人
間関係を築いていて、その担当者が
別のロジスティクス会社に移ったと
すると、それに合わせて荷主は、た
とえサービスの質が落ちるのであっ
ても外注先を変えることがある。
また荷主が3PL業務を必要とす
るときに最も重要な要素は、どれだ
けロジスティクス・コストを削減で
きるかだ。 何よりもまずコストに関
心を寄せる。 コスト削減の数値が明
確になった後で、はじめてサービス
の質や3PL業者の実績や評判を考
慮するようになる。
ビジネスを効率的に運営するため
に必要な情報が、中国ではしばしば
欠落している。 企業は市場調査やデ
ータの収集に多くの関心を払おうと
はしない。 企業が日々の業務を遂行
する基盤は、多くは彼らがこれまで
独自に蓄えてきた考え方であり、これが戦略的な企業戦略を欠くことに
つながる。 3PL業者との契約の多
くも短期的なものとなり、荷主と3
PL業者が一緒になって戦略を練る
という段階にまでには発展しない。
さらに現在の中国ではITがほと
んど普及していない。 3PL業者の
方でもITシステムの利用が進んで
いないし、製造業者もまたITシス
テムを積極的に活用しているとは言
い難い状況にある。
繰り返しになるが、中国でビジネ
スを行おうとしたら、人とのつなが
りや人間関係が非常に重要になる。
中国では企業の管理職といえども比
較的、安い給与しか手にしていない。
にもかかわらず重い責任を負わされ
ている。 企業が予算を組むとき、管
理職は何百万ドルという単位で利益
を上げることを求められるのにも関
わらず、その給与はわずか数千ドル
に過ぎないのである。
外資系3PL業者の進出は、中国
のロジスティクス市場におけるサー
ビス内容に大きな変化をもたらした。
彼らは、厳しい要求を突きつけてく
る海外での荷主との取引から作り上
げられたサービスと業務哲学を中国
に持ち込んだ。
こうした3PL業者は、高いレベ
ルのサービスを提供することが当然
と思っているし、事業者同士の激し
い競争や、荷主から常に業務内容を
査定されることにも慣れている。 外
資系3PL業者の多くは、日々の業
務内容の細かい査定を、基本的なマ
ネジメントの手法であり、また業務
の改善に欠かせない手法とみなしている。 こうした事業者の業務レベル
は中国企業の考えをはるかに上回る
ものだった。
そして、より重要な変化は外資系
大手小売業者の中国市場への参入だ
った。 中国のサプライヤーが流通外
資のサプライチェーンに組み込まれ
た結果、そのサプライヤーと取引の
ある地場のロジスティクス業者まで
もが従来以上のサービスを求められ
63 SEPTEMBER 2004
るようになった。
中国の荷主企業は、企業マネジメ
ントのレベルにおいてまだ初期の段
階にあるようだ。 荷主が業務を外注
する際に公開コンペを行う例も増え
てきたが、コンペを通じて契約を結
ぶときにも、依然として人とのつな
がりが重要な要素として残っている。
ウォルマートを筆頭とする外資系流
通業者が中国に参入してきてから、
中国の小売業者もロジスティクスや
サプライチェーン・マネジメントの
重要性に気がついたが、その変化は
現状ではゆっくりしたペースでしか
ない。
3PLの可能性のまとめ
結論として、中国のロジスティク
ス産業は発展途上にある。 その水準
が上がると同時にコストは下がって
きた。 しかし、ロジスティクス業者
間の業務提携が少ないことや、全国
を網羅してサービスを提供できる事
業者の数が少ないことから、効率的
なロジスティクスによって生み出さ
れるはずの結果にはまだたどり着い
ていない。 そこにたどり着くための
重要なステップとして、荷主とロジ
スティクス業者間のパートナーシッ
プが必要だ。
中国のロジスティクス市場には、海
外の投資会社が資金を投じようと考
える多くのチャンスが存在している。
インフラ面では、ハブ機能を持つ施
設や道路、空港などの面で今後の改
善が求められている。 こうした状況
下で3PLサービスへのニーズが高
まっている理由は、中国の高い経済
成長率のためだけではない。 消費者
の要求が高まってきたことと、3P
L業者のレベルが上がってきたこと
が大きい。
これは特に小売業界に当てはまる。
中国の小売業界では現在、参入して
きた外資系の有力企業が、サプライ
チェーンの最適化を中国国内の小売業者との差別化要因としている。 同
じことは今後、製造業でも起こるで
あろう。
ITがあまり活用されていないと
いう現実は今後、3PL業者が荷主
企業のIT戦略において重要な位置
を占める可能性があることを示唆し
ている。 また、国営企業が中心とな
ったM&Aが増えていけば、ロジス
ティクスに関するコンサルタント業
務や啓蒙・教育といったことも、さ
らに重要になってくる。 二〇〇八年
の北京五輪や、二〇一〇年の上海エ
キスポなどの国際的な行事の動きが
本格化すれば、ロジスティクス・サ
ービスに関する要求も今まで以上に
高くなるはずだ。
外資系のロジスティクス業者が、中
国に参入して成功を収めようと考え
るのなら、中国のビジネスにおける
文化と、地方企業の発展の現状を理
解する必要がある。 国際的なベスト・
プラクティスを中国に当てはめるこ
とが、外資系の3PL業者が中国で
成功するカギとなる。
(以降、次号に続く)
|