ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
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2004年9号
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近鉄エクスプレス

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

SEPTEMBER 2004 46 ここ数年、航空貨物の輸出量(日本発)が 拡大を続けている。
航空貨物フォワーダーは その恩恵を受けているわけだが、なかでも取 扱重量の伸長が目立つのは業界第二位(二 〇〇三年度実績)の近鉄エクスプレスである。
同社の二〇〇三年度の日本発輸出取扱重量 の伸び率(前期比約二〇%増)は、業界全 体の伸び率(同約一〇%増)を大きく上回 った。
今年度に入ってからも好調を維持して おり、四〜六月の輸出取扱重量は前年同期 の水準を三割程度上回ったようだ。
取扱重量の大幅拡大によって、同社の業 界内シェアは二〇〇二年度の約十二%から 二〇〇三年度には約十三%に上昇した。
背 景には同社が強みを持つハイテク部品の中国 向け輸送需要が増大していることがある。
さ らに他社に先駆けて強化した中国ネットワー クや物流サービスメニューの多様化(海上貨 物、国内航空、倉庫など)といった顧客サー ビス向上のための施策も効果を発揮した。
同社は二〇〇〇年九月にナスダックジャパ ン(現ヘラクレス)に、二〇〇三年九月には 東証一部に上場した。
二〇〇二年三月期の 業績はITバブル崩壊などによって大きく落 ち込んだものの、二〇〇三年三月期以降の 業績は順調に拡大している。
三菱証券では、 同社の二〇〇五年三月期の連結業績を売上 高二二五〇億円(前期比十一%増)、営業利 益八六億円(同一四%増)、経常利益八九億 円(同十二%増)、当期利益四六・五億円 (同六一%増)と予想している。
これは、?日本からの輸出重量増加、海 外現地法人での輸入件数増加による「国際 航空貨物事業」の増収効果、?現場オペレ ーション部隊を中心とした人件費見直し効果、 ?スペース仕入れ部隊の強化に伴う運賃原 価率の圧縮効果――を見込むためである。
わ れわれの業績予想が経常利益と当期利益の 部分で会社計画を大きく上回るのは、会社 計画に計上されていないとみられる外国為替 差益(営業外収益)を織り込んだことや、前 期の中南米法人解散に伴う一括損失処理の ような大きな特別損失を見込んでいないこと によるものだ。
今期の業績計画を達成するにあたってのリ スクファクター(要因)は、最近の原油価格高騰に伴うエアライン(航空会社)からのフ ューエル・サーチャージ(燃料代上昇に伴う 仕入れ運賃の付加料金)導入コストと考えら れる。
ただし、このコストも足元の輸出取扱 重量の増加に伴う増収効果によって吸収でき ると予想している。
航空貨物輸送量の中期的な見通しを考え るうえで、市況変動に大きく左右されやすい ハイテク関連貨物の荷動き変動リスクがある が、ここ数年の航空輸出拡大テンポからみる と輸送量は引き続き増加基調で推移する可 能性が高い。
ハイテク製品のライフサイクル が短縮化する傾向にある中、緊急輸送に適し た航空輸送がリードタイム短縮や在庫削減な 第5回 近鉄エクスプレス 近鉄エクスプレスの躍進が続いている。
日本からの輸出航空 貨物の取り扱いが好調で、業績は堅調に推移している。
将来の 見通しも明るく、当面は高い利益成長率を維持できそうだ。
現 在、二〇〇〇円台前半で推移している株価には割安感がある。
土谷康仁 三菱証券 アナリスト 47 SEPTEMBER 2004 どの荷主ニーズにマッチした物流手段として 認知され始めており、利用頻度が徐々に高ま ってきていると考えられる。
年率一〇%の利益成長を見込む このような中期的な航空貨物輸送量の拡 大を背景に、同社では中期経営計画「 21 世 紀グランドデザイン(二〇〇二〜二〇〇四年 度)」を策定した。
同計画の基本戦略では、 ?国際航空貨物輸送での利益拡大、?高品 質なロジスティクスサービスの提供、?海上 輸送事業の拡大、?他社に先駆けた成長市 場での事業展開――を目標に掲げている。
計 画自体は今期が最終年度となるが、基本戦 略部分については十分クリアできていない面 もあると考え られるため、 それらは次期 中期経営計 画に受け継が れるであろう。
三菱証券 では、同社の 中期経営計 画の進捗状況 について以下 のように考え ている。
?について は二〇〇三年 度の輸出シェ ア上昇が確認 できたため、一定の成果が出ているとみてい る。
しかし、同社は同業他社に比べてハイテ ク関連貨物に強い反面、非ハイテク関連貨 物に弱い面がある。
自動車関係やメディカル 関係での取扱量をさらに増加させることが今 後の課題になりそうだ。
自動車部品はハイテク関連貨物に比べて 物量が安定しているため、収益変動リスクを 回避する効果がある。
また、同社が経営資源 を集中している中国では自動車メーカーの進 出が相次いでおり、今後取引を拡大できる余 地は大きいはずだ。
?、?については売上高のウエイトが相対 的に小さいものの、取扱収入は順調に伸びて いる。
三菱証券では一般的なロジスティク ス・サービス事業について、増収効果は見込 めるが、現場オペレーションの生産性向上に は時間を要するため、早期の利益貢献は難し いと考えている。
同社のロジスティクスサービス事業につい ては、千葉県原木地区における新ターミナル 稼動などの増収効果が見込めると予想してい るが、早期に利益貢献する事業に育てること が今後の課題になる。
また、海上貨物の収入 は航空輸出入事業部門とのシナジー効果など によって順調に拡大しているが、今後は港湾 事業の強化による国際一貫輸送のサービスも 必要になってくるだろう。
?の中国展開は順調に推移している。
過 去三年間、同社の中国向け貨物取扱量は大 手三社の中で最も高い伸び率を記録している。
中国における早期展開の効果が発揮されてい るためだ。
ただし、中国の航空貨物市場では 二〇〇五年後半から規制緩和の影響で、同 国の航空輸出シェア拡大を狙う業者間の競 争が激化することが予想される。
さらなる優 位性確保の施策が必要になりそうだ。
三菱証券では、二〇〇六年三月期の連結 業績を売上高二三九三億円(前期比六%増)、 営業利益九六億円(同十二%増)、経常利益 九九億円(同十一%増)、当期利益五二・五 億円(同十三%増)と予想。
今後三年間で 年率一〇%程度の利益成長を見込む。
同社の中期的な成長モデルとして注目でき る欧米系のロジスティクス企業はEPS(一 株当たり利益)成長率やROE(株主資本 利益率)などの水準が高い。
これらの企業に 比べると、ロジスティクスサービス事業には 多くの課題があるが、同社には中国を中心と するアジア域内の営業ネットワークという強 みもある。
地域特化の戦略が今後の国際物 流競争における武器になると考える。
以上のような短期的な業績モメンタムの好 調、中期的な利益成長見通しなどからみて、 現状の株価水準は割安な水準にあると考えて いる(七月二十三日現在)。
つちや やすひと 九七年三 月神戸大学大学院卒。
九八年 四月和光証券入社。
その後い ちよし証券を経て、二〇〇一 年三月国際証券(現三菱証券) 入社。
現在、リサーチ本部エ クイティリサーチ部のアナリ ストとして活躍中。
著者プロフィール 近鉄エクスプレスの過去2年間の株価推移

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