ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2004年10号
SOLE
SOLE報告

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

87 OCTOBER 2004 の契約上、民間人の危険に対する配慮が議論されていた。
だが今回は、 やはり戦場に民間人を投入することはいろいろな問題があるということ であった。
例の米民間人ドライバーの誘拐事件が大きな影響を与えたよ うである。
この事件の後、数百人の民間人ドライバーが戦場から離脱し たそうだ。
さらに問題になったのは、民間人が戦場で携帯電話を勝手に 使用し、軍の行動予定や、部隊の所在地をしゃべってしまったというこ とだ。
後述する「ロジスティクス改革」にも通じることだが、セキュリ ティ問題が軍民共同作戦や活動のネックになるということであった。
最後に「ロジスティクス改革」について。
一昔前にはBPRが、そして 今回はトランスフォーメーションとかリフォームといった言葉が頻繁に 使われていた。
いつも「改革」の必要性と具体的な取り組みが議論され、 多くの官民の事例が語られるなかで、お互いに学ぶべき点は学ぼう(デ ュアルユース)という姿勢が強調されていた。
もちろん今回もそのような方向ではあったが、その一方で、なかなか 上手くいかない理由や原因も論じられていた。
最大の問題はセキュリテ ィ、機密、情報開示の限界のようだ。
民間は、軍に要請された研究開発 の成果を民間領域でも活用しR&Dコストの回収を図りたいと考えてい るが、軍の方では機密保持を要請するため、民間業者としてはなかなか 上手い取り組みができないのだという。
前述した民間ドライバーによる情報漏洩の危険に対しても、軍側から は、やはり民間人ではダメだから、軍の経験のある人材を活用すべきだ との主張があった。
軍の経験者であれば、機密や情報の扱いについての トレーニングを受けており、危険に対する対処方法も知っているからと いうのだが、一方それに対して「映画『華氏911』を見よ」と言う主張 もあった。
なかなか難しいようである。
「改革」について多くのスピーカーが主張していたのは「トレーニン グ」が決め手であるということだ。
とくに新しい仕組み、たとえばサプ ライチェーン(ロジスティクスチェーンという言葉も聞かれた)の構築 には関係者への徹底したトレーニングが必要だという。
当然と言えば当 然ではあるが、人材育成の考え方が従来とは違ってきたのかなという印 象を受けた。
このトレーニングについては、とくに「ハンズオントレー ニング」という言葉が強調されていた。
今回のSOLE2004では「ホワイトペーパーディベロップメント」とい うセッションがあって大変面白かった。
会場には、まさにホワイトペー パー(白紙)の状態でフリップチャートが置かれている。
司会があるテ ーマを取り上げ、そのテーマについて会場の参加者の意見や考え方を述 べさせる。
そこでの発言をアシスタントが要約してチャート上に記述し ていく。
そして、意見交換を通じて、取り上げたテーマについての会場 の見解を取りまとめると言う趣向である。
取り上げられたテーマは、「リスクの新しい定義は必要か」、「組織の フレキシビリティへの要求」、「支援性設計へのニーズ」、「顧客満足のた めのトータルライフサイクル支援とは何か」、「SCMからLCMへの転換 の必要性」、「全ての要素、関係者を統合するリアルエンタープライズ構 築の必要性」など。
大変、熱心な議論が展開されていた。
(次回11月号の本コーナーでも引き続きSOLE2004の報告を予定) 今年度のフォーラム(10回)は9月で終了した。
SOLE東京支部では 11月からフォーラムの新しいシリーズを予定している。
その内容につい ては次号でご紹介したい。
このフォーラムは基本的に年間計画に基づいているが、単月のみの参 加も可能。
1回の費用は6,000円。
参加希望の方やSOLE東京支部の活動 内容に関するお問い合わせはSOLE_consult@jmac.co.jpまで。
SOLE報告 The International Society of Logistics 次回フォーラムのお知らせ SOLE東京支部では毎月「フォーラム」を開催し、ロジスティクス技 術、ロジスティクスマネジメントに関する活発な意見交換、議論を行い、 会員相互の啓発に努めている。
8月のフォーラムは休会とし、9月の会合では8月31日〜9月2日に米国 で開催された「SOLE2004」の視察報告を行った。
今回と次回の2回に わたって、その模様を紹介する。
*       *       * 今年の年次総会は「SOLE2004」と銘打って、米国の東部、バージニ ア州のノーフォークで開催された(昨年はアラバマ州ハンツビル市のフ ォンブラウンセンターで開催。
来年はフロリダ州のオーランド)。
読者 の方々にとってノーフォーク市はあまり馴染みがないかもしれないが、 ワシントンDCの南方にある港町だ。
人口24万人で、世界最大の海軍基 地を擁する。
NATOのヘッドクォータが設置されている。
ここから車で小一時間のところに、かつて昭和天皇が訪問、宿泊した こともあるウイリアムス・バーグ市がある。
ここは「米国の京都」と称 される、昔の姿をそのままとどめている静かな町である。
また、かつて CALSが盛んに取り上げられた際にしばしば登場した造船の町、ニュー ポートニュースからも近い。
ノーフォーク市にはマッカーサー元帥のミ ュージアムがあって銅像が立てられていた。
日本人としては大変懐かし く、複雑な思いにとらわれる場所だ。
今回のシンポジウム「SOLE2004」は従来とやり方がだいぶ変わって いた。
多くのパネルディスカッションが催されていた一方で、論文の発 表は少ない印象を受けた。
多彩なスピーチやパネルが繰り広げられてい たが、あえて本稿では今回のSOLE2004を特徴づける3つのキーワード に注目して会合の模様を紹介したい。
それは「PBL」、「ミリタリーロジ スティクス」、「ロジスティクス改革」である。
最初に「PBL」とは、パフォーマンス・ベースド・ロジスティクスの 略である。
多くのスピーカーが「伝統的ロジスティクス」にとらわれる ことなくPBLでなければいけないと主張していた。
あるスピーカーによ ると、PBLとは契約の一形態で、ロジスティクスのパフォーマンスを厳 密に測定することが基本になっている。
ロジスティクスの目的を明確に して、測定可能な目標を設定し、測定された活動実績に基づいて支払い をするという契約形態を指している。
湾岸戦争の後の90年代初めにペリー国防長官はMILスタンダードの全 面的な見直しを指示し、パフォーマンス・ベースド・スタンダード (PBS)の必要性を説いた。
PBLはその流れを汲むものと思われる。
MIL-STD/SPECは軍用品の仕様や規格、標準について厳密に規定した ものであるが、調達に際してその標準や規格を遵守するあまり、新しい 可能性やコスト低減の可能性を否定しかねない危惧があった。
そこで一 度その標準/規格をキャンセルし、調達に際しては製品/システムの機 能・性能(パフォーマンス)のみを提示して、世界中から優れた提案を 求めるというのがPBSである。
インターネットによって調達先を世界に 求めるという発想も、PBLと同じである。
次に「ミリタリーロジスティクス」について。
もともとSOLE-The International Society of Logistics(ロジスティクス学会)にとっては、 流通、供給、サプライチェーンマネジメントも主要なテーマではあるが、 システム製品のライフサイクルサポートの必要性を強調してきた。
そこ では宇宙開発や環境問題などに焦点が当てられ、必然的にミリタリー色 が強くなっていたのだが、今回はより一層その観を強くした。
米軍は現 在、イラクで戦闘を継続しており、その戦闘におけるロジスティクスの 状況について興味深い話題が数多く語られていた。
昨年のSOLE2003においては、これからはハイテク製品(武器システ ム)のサポートに民間人が参加しなければならず、武器システムの調達 SOLE東京支部フォーラムの報告

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