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NOVEMBER 2004 36
物流を先行させたフルライン化
大手食品卸の菱食は、これまで一貫して生
き残りの条件を「ナショナル化」(全国化)と
「フルライン化」(取扱商品の拡充)の実現に
定めてきた。 一九八五年に業務提携した米国
の大手ホールセラー、フレミングから学んだ
リテールサポート(小売り支援)を実践する
ため、まず九〇年代には物流ネットワークの
全国展開を急いだ。
九〇年に「岡山RDC」を稼働したのを皮
切りに、約一〇年を費やして「RDC
―FD
Cネットワーク」と称する物流の全国ネット
ワークを整備した。 これは、商品を一個単位
でピースピッキングする作業と、箱単位でケ
ースピッキングする作業を二種類の施設で分
散処理することによって、中間流通の効率化
を図る大がかりな物流網である。
ピース単位のピッキングを集中的に処理す
る後方支援型の物流拠点「RDC」(Regional
Distribution Center
)を全国一〇カ所に設置
し、各エリア内にはケース単位の商品をピッ
キングする複数の「FDC」(Front Distribution
Center
)を置く。 後方のRDCから
供給される「小分け商品」と、FDCで用意
する「ケース商品」を積み合わせて、FDC
から一緒に得意先へと納品する。 二〇〇〇年
に全国ネットワークを完成させた菱食は、こ
れによって?物流に強い先進卸〞という評価
を確立した(図1)。
食品のフルライン化を実現する
汎用センターを横須賀で稼働
菱食グループの“フルライン構想”が
本格的に動き出した。 加工食品だけでな
く、菓子や酒など常温帯の食品すべてを
扱う一括物流センターを、今年5月に横須
賀と盛岡で稼働。 これまでは特定の小売
りチェーンに対してだけ提供してきたサ
ービスを、複数チェーンを対象とする汎
用センターで全国展開しようとしている。
菱食
――物流拠点
37 NOVEMBER 2004
その一方で同社は、取扱商品のフルライン
化に向けた準備も進めた。 日本では食品卸の
世界だけをみても細かい縦割り構造がある。
加食卸や菓子卸、酒類卸といった専業卸が存
在し、さらにメーカーの特約店制度や、酒類
を取り扱う規制などがあるため、過去には業
種ごとの住み分けがなされてきた。 加食卸と
して高い評価を得ている菱食といえども、こ
の壁を乗り越えるのは容易ではなかった。
そこで同社は一計を案じた。 がんじがらめ
になっている商流の集約は後回しにして、物
流だけをまず一本化する。 物流の集約を先行
させて、小売事業者の納品時の負担を実際に
軽減してみせる。 その効果を認めてもらうこ
とで将来的に商流を集約していく、という戦
術をとったのである。 その一方で企業買収な
どを通じて加食以外の分野に進出し、フルラ
イン化への布石を打ち続けた。 規模がなければ成立しないSDC
ひとたび小売事業者の側に立って考えれば、
店舗への納品物流を集約するメリットは明ら
かだ。 荷受け作業の手間が減るため、小売事
業者はそこに割いていた人件費を削減でき、
店舗オペレーションの生産性は確実に高まる。
こうした点に着目したからこそ、一部の小売
事業者は、店舗納品の手前でいったん物流を
集約する?一括物流〞や?共同配送〞のため
の専用センターを積極的に設置してきた。
ただし、小売り自身が一括物流センターの
運営ノウハウを有しているケースは稀だ。 こ
のためほとんどは、取引卸や外部事業者に専
用センターの運営を委託した。
卸が歴史的に果たしてきた役割を考えれば、
複数のメーカーと、複数の小売店の中間に位
置して流通を効率化するのが本来の姿だ。 現
に菱食が構築してきた「RDC
―FDCネッ
トワーク」は複数の小売りを対象とする汎用
インフラとして設計されている。
特定の小売事業者の専用センターは、卸に
とっては必ずしも好ましい存在ではない。 し
かし、これまで卸側の事情でフルライン化を
実現できずにきたことも事実であり、一括物
流を志向する小売りの流れを押し止めること
はできなかった。
こうした小売側のニーズに対しても、菱食
はしたたかに応えた。 やはり物流を先行させ
て小売事業者の懐に入りこんでいったのであ
る。 同社は九三年に、神奈川県の中堅スーパ
ー・相鉄ローゼン向けの一括物流センターの
運営を受託した。 既存の汎用センターの一部
スペースを専用で使うという形態ながら、菱
食として初めて「SDC」(Specialized Distribution
Center:
特定企業向けの物流セン
ター)の運営に乗り出した。 このとき物流を
先行させた結果、相鉄ローゼンの商流はかな
り菱食に移った。
その後、菱食はSDCの運営受託を積極化
した。 コンビニエンスストアや小売りチェー
ン専用のセンター運営を受託し、商流はさて
おき、物流はフルラインで一括納品するとい
う事業を拡大していった。 現在では全国三〇
カ所に常温帯のSDCを構えている。 その代
表的かつ最先端の事例が、相鉄ローゼン向け
の一括物流を新たに拡充させて二〇〇二年に
稼働した「愛川物流センター」である(本誌
二〇〇二年十一月号参照)。
もっとも現在の菱食にとってSDCは、両
ロジスティクス本部・情報リテ
ラシーチームの楠堂昌純チーム
リーダー
北海道RDC 6FDC 961店舗
東北RDC 11FDC 1,714店舗
関東RDC 9FDC 3,173店舗
首都圏RDC 7FDC 2,172店舗
酒類RDC 25FDC 6,326店舗
東海RDC 10FDC 2,487店舗
北陸RDC 3FDC 729店舗
近畿RDC 8FDC 2,391店舗
岡山RDC 8FDC 2,717店舗
九州RDC 9FDC 1,867店舗
接続数24,537店舗
(2004年3月現在)
図1 全国を網羅するRDC-FDCネットワーク
●北海道
RDC
●
東北RDC
●関東RDC
●
首都圏
RDC
●
酒類RDC
●
東海RDC
北陸RDC
●
●
近畿
RDC
岡山RDC
●
●
九州RDC
刃の剣ともいうべきものだ。 物流を武器に商
流を拡大できる一方で、汎用センターによる
既存の物流ネットワークの効率を落としかね
ない面を持つ。 そうでなくともウォルマート
のような有力小売事業者は、3PL事業者な
どを使って専用センターを自ら運営しようと
する。 さらにSDCは、対象となる小売事業
者の規模がある程度なければ実現できないと
いう宿命を持つ。
「専用センターを構える規模はないが、地
域で優良な小売業さんは数多く存在する。 そ
うした顧客に一括物流サービスを提供するには、汎用センターのフルライン化がどうして
も避けられなかった」と、菱食のロジスティ
クス本部でユーザーの視点から仕組みの高度
化に取り組んでいる情報リテラシーチームの
楠堂昌純チームリーダーは説明する。
RDC--
FDCネットワークの刷新
こうした状況のなかで今年五月に稼働した
物流拠点が「横須賀フルライン物流センタ
ー」だ。 ?SDC並みのサービスを汎用セン
ターで提供する〞という謳い文句のこの拠点
では、菱食グループの三社が看板を掲げてい
る。 加食を扱う菱食、菓子のリョーカジャパ
ン、酒のリョーショクリカーである。
グループ会社を集結して、商流上も常温食
品をフルラインで扱えるようにした。 さらに
同センターの稼動にあわせて、菱食はこのエ
リアのRDCの機能もフルライン化している。
これによって横須賀センターがカバーする神
奈川県全域と静岡県東部については、常温帯
の食品を一括で扱える体制が整った。
今後、菱食は全国のRDCをフルライン化
し、横須賀センターと同様のフルラインの汎
用センターを各地に設置していく(図2)。
「遅くとも二〇〇六年末までには、RDC
―
FDCネットワークをフルラインに対応でき
るものに作り変えていく」と楠堂リーダーは
言い切る。 その尖兵ともいうべき役割が横須
賀センターには与えられている。 ここで培っ
たノウハウを全国に横展開していく、いわば
試金石である。
横須賀センターでは、過去の同社の物流拠
点にはない多くの課題に対応する必要があっ
た。 何よりも汎用センターのため、納品対象
の店舗数が桁違いに多い。 一般的な菱食のS
DCが数十から数百の店舗を対象としている
のに対し、横須賀センターは約一四〇〇店を
まかなっている。 単にフルラインで商品を扱
うだけでなく、カテゴリー別・通路別に品揃
えできることもセールスポイントとして掲げ
ているため、極めて高度な処理能力が欠かせ
なかった。
ただし、いくらサービスレベルを高めても、
コスト競争力がなければ顧客に利用してもら
えない。 高レベルのサービスを、いかにロー
コストで提供できるかがカギになる。 そのた
めの工夫は、基本的に現場で手探りで高度化
していくしかない。
同センターの現場運営で豊田自動織機と業
務提携したことからも、横須賀センターに対
する菱食の意気込みの大きさが窺える。 楠堂
リーダーは「豊田自動織機さんと一番考え方
が一致したのは、小売業さんを起点として物
流改善を行い、そこで発生していたムダな経
費を削減することで利益を生み出そうという
考え方だった」と提携の背景を説明する。
横須賀センターからスタートした物流ネッ
トワークの整備を、菱食は、二〇〇〇年まで
の物流網の構築とは別次元の「第四期」と位
NOVEMBER 2004 38
フルライン化
図2 RDC-FDCネットワークのフルライン化
加食メーカー
菓子メーカー
酒類メーカー
加食メーカー
菓子メーカー
酒類メーカー
加食RDC
加食FDC
菓子DC
フルラインRDC
フルラインFDC
スーパー・小売店
スーパー・小売店
消費者
消費者
酒類FDC
酒類RDC
小分品
横持ち
小分品
横持ち
小分品
横持ち
39 NOVEMBER 2004
置づけている(図3)。 ここにトヨタ流の改
善ノウハウを導入することで、生産性の向上
が期待できるのであれば利用しない手はない。
まずは豊田自動織機のお手並み拝見といった
ところだろう。
自動倉庫の中での人力作業
横須賀センターで活用しているマテハンは、
前掲の通りSDC「相鉄ローゼン愛川物流セ
ンター」の仕組みをベースにしている。 ピー
スピッキングをRDCで行うことと、対象の
店舗数が桁違いに多いことを除けば、横須賀
センターと愛川センターの自動化機器の使い
方はほぼ同じだ。
横須賀センターには三種類の自動倉庫が所
狭しと並んでいる。 高さを活かしてスペース
効率を向上させる狙いがまずあった。 三機の
内訳は、パレット自動倉庫が二機(幅十一メ
ートル×奥行き八五メートル×高さ二〇メー
トル、パレット収容能力四三四八枚、同十
一×七〇×八、収容能力七五二枚)と、セン
ターの機能を特徴づけるケース自動倉庫(同
二〇×五一×十一、収容能力三万三六〇〇
〜五万八八〇ケース)が一機である。
一方、自動仕分け機(ソーター)は小規模
のものしかない。 バラピッキングを別途、R
DCで行っているという役割分担もあって、
店別仕分けに使うシュート九本(リジェクト
ライン一本含む)のソーターが一機あるにす
ぎない。 ケース自動倉庫への搬入にも自動仕
分け機を使っているが、これは自動倉庫の一部と言うべきだろう(次ページ図4)。 センター内でのモノの流れは意外にシンプ
ルだ。 ケース単位で取引先から納品される商
品を、入荷バースで専用パレットに積み換え、
いったんパレット自動倉庫に格納する。 ここ
から必要に応じてケース自動倉庫に商品を補
充し、顧客からのオーダーに基づいて排出。
これをソーターで店別に仕分け、シュート下
で作業者がカゴ車などに積み込む。 最後に出
荷バースで、RDCから届くピースピッキン
グ済みの折り畳みコンテナと荷合わせし、納
品車両に積み込めば作業は完了する。
センターの鳥瞰図を見ると、自動化機器だ
らけのような印象を受けるが、実はそうとも
言えない。 高度に自動化機器を活用している
ことは確かだが、あえて人手による作業を差
し挟むことでオペレーションの柔軟性を確保
している。 パレット自動倉庫からの出庫作業
を見ると、これが如実に分かる。
二種類あるパレット自動倉庫の中央部分に
は、いずれも幅二メートル程度の通路がある。
自動倉庫でありながら、この通路に面した最
下段は格納商品を固定したパレットラックの
ように使っており、大量に動く定番商品を中
心にここから人力でケースピッキングしてい
る。 その手順は次の通りだ。
ピッキング作業者は乗車・歩行型兼用のバ
ッテリー式ローリフト(BT製)に、空のカ
ゴ車やパレットを積んで指示されたロケーシ
ョンに行く。 そして自動倉庫の最下段から、
必要な商品を手作業でピッキングする。 その
際、携行しているハンディ端末でITFコー
ドをスキャニングし、配送先を示すラベルを
添付する。 ピッキング作業を終えた作業者は、
そのまま商品をローリフトで出荷エリアまで
搬送すれば作業が完了する。
当然のことながら、最下段にある物量だけ
ではすべての注文には応えられない。 そのた
め作業者は間口ごとに付いているデジタル表
図3 菱食のRDCの進化
RDC
庫内主要マテハン
能力関係
センター名
開設時期
入庫系
格納:補充系
ピッキング系
出庫系
年間稼働能力
倉庫面積
(RDC部分)
庫内人件費
ピッキングミス率
岡山 首都圏 九州 北陸 東海 東北 北海道 近畿 関東
1990年
(H2年)
1993年
(H5年)
入庫検品システム
フォーク無線補充 自動倉庫80m
×2基
自動倉庫100m
×3基
DPS
DPS+
スキャン検品
SAS
自動積み付け
マニュアルピッキング
シュート&プレソート
手積み
入庫検品
システム
1994年
(H6年)
1995年
(H7年)
2000年
(H12年)
2,412坪2,983坪4,000坪1,043坪1,600坪1,319坪1,111坪1,611坪1,637坪
170
億円
200
億円
90
億円
60
億円
145
億円
115
億円
100
億円
180
億円
180
億円
2.3%以下目標 1.9%以下目標 1.6%以下目標
第1期 第2期 第3期 第4期
10,000
2
以下 100,000
2
1,000 以下
2
以下
フルラインRDC―FDCネットワーク
2004年
5月
稼働
※上記はいずれも設立時期での設備および目標値。 現在は第1期、第2期のRDCにもその後開発
した新システムを導入済。
NOVEMBER 2004 40
示機を確認しながら、商品補充の指示を出す。
最下段のパレットを空にしてからボタンを押
すと、通路と反対側を走っているクレーンが
空パレットを回収して、代わりに指定の商品
を満載したパレットを自動的に補充する。 作
業者は補充を待つことなく次に進み、一巡し
て戻ってくると必要な商品が用意されている
というわけだ。
ケース自動倉庫への商品の補充も、似たよ
うな手順で行っている。 そもそも同センター
でのケース自動倉庫の使い方は、保管のため
というより、商品を店別・カテゴリー別・通
路別に切り出してくる?並べ替え〞を主目的
としている。 このため毎日、実際のオーダー
に応じた商品を、保管用のパレット自動倉庫
からケース単位で補充する必要がある。
この作業は、高さ二〇メートルのパレット
自動倉庫の内部で行う。 自動倉庫の中央通路
の最下段では、前述したピッキング作業をし
ている。 その頭上に、さらに二段(中二階と
二階)にわたって別の通路が渡されていて、
これらの通路に面した自動倉庫の間口では最
下段と同様に人手でケースピッキングをでき
るようになっている。
最下段での作業とは違いバッテリー式のロ
ーリフトは使わない。 通路の中央にコンベヤ
が走っており、作業者はピッキングしたケー
ス商品をすぐにコンベヤ上に投入する。 これ
がケース自動倉庫までつながっているため、
後は店別仕分けまですべて自動で処理される。
最後にソーターのシュート下で店別のカゴ車
ケース自動倉庫(フレックス)
2階ラックエリア
ケースソーター&オートラベラー
ケース出庫シュートライン
カートラック対応垂直搬送機
1階事務所
2階事務所
ケース自動倉庫直行ライン
パレット自動倉庫(8m)
パレット自動倉庫(20m)
2階ラウンジルーム
入庫パース
出庫パース
大量品保管エリア
保冷設備スペース
図4 横須賀フルラインセンターの鳥瞰図
ラックエリアに例外商品を格納
9シュートある自動仕分け機
シュート下の作業
出荷エリアで車両積載に備える
倉庫最下段の通路に面した間口自動倉庫の最下段で使うBT車菱食の社員が駐在する事務所センターの外観(出庫バース)
パレット自動倉庫への商品入庫
パレット自動倉庫内の中央通路
中空の通路にはコンベヤを装備
ケース自動倉庫の入庫口
41 NOVEMBER 2004
などに積み込む作業まで、人手は不要だ。
飽くなき自動化の損得勘定
要所で人手を活用しているとはいっても、
横須賀センターの自動化レベルが高いことも
事実だ。 同施設の自動化の度合いは菱食の物
流拠点のなかでも、愛川センターと並んで高
い。 それでも菱食の試算によると、こうした
先進センターのトータル運営コストは、既存
のセンターより安価なのだという(図5)。
それによると愛川センター(図5のC―S DCクラス)の「設備費指数」は、一般的な
同社のSDC(A
―SDCクラス)に比べて
三十三ポイント高い。 だが「作業人件費指
数」が三九ポイント低くなるため、トータル
では他のSDCより約八ポイント優れている
ことになる。 汎用センターである横須賀セン
ターの試算値は出していないが、自動化のレ
ベルが愛川センターと同様のため、同じよう
に効率がいいと菱食は判断している。
ただし、その結果はまだ実績値としては得
られてはいない。 特殊なマテハンを使ってい
ないことからも分かるように、横須賀センタ
ーの本当の先進性は情報管理をはじめとする
ソフト面にある。 ここでは顧客ごとにオーダ
ーの締め時間や納品ルールが異なる。 こうし
た顧客にストレスを与えることなく、あたか
も専用センターのように利用してもらうには、
ソフト面の高度なノウハウが欠かせない。
顧客とやりとりをする情報システムとして
は、菱食が長い年月をかけて構築してきた
「NEW
―TOMAS」がある。 これを使って
オーダー情報を制御し、ケース自動倉庫にき
ちんとした指示さえ与えれば、店ごとにカテ
ゴリー別・通路別に仕分けるのも簡単だ。
問題は、そのための作業を、素早く、正確
に、しかも安くできるかどうかだ。 これが現
場レベルの判断で大きく左右される。 自動倉
庫の最下段の固定ロケーションをどう割り振
るのか、ケース自動倉庫の格納順や、商品ご
とのロケーションをどうルール化するか――
そういった工夫によって自動倉庫のクレーン
の動く距離が大きく変わる。 当然、作業の生
産性も一変する。
現在、横須賀センターはまだ採算割れの状
況にある。 センター運営を現場で仕切ってい
る菱食・ロジスティクス本部の大城茂嗣セン
ター長は、現場オペレーションを高度化する
難しさをこう説明する。 「二つ目、三つ目の
フルラインの汎用センターが稼働する前に、
コストを計画値に抑える体制を実現したい。
しかし、専用センターとは違って、ここでは
店舗の方やチェーン本部と直接話すことがで
きない。 すべて当社の営業を介して運用を改
善していかなければならない」とは言え、悲観してはいない。 現在、同セ
ンターには菱食の社員が一〇人常駐している
が、大城センター長は「これだけ自動化して
いるのだから、社員がいなくても運用できる
体制を作りたい」という。 当面は商品ロケー
ションの見直しと、作業者の人員配置などの
改善でコストを最適化していく方針だ。
菱食にとって物流ネットワークのフルライ
ン化は、競合他社との差別化を決定的なもの
にするための有力な武器になる。 ここで競争
力のある仕組みを実現できれば、物流の優位
性を活かして商流のフルライン化を進められ
る可能性も高まる。 思惑通りに事を運べるか
どうかは、横須賀センターの今後の運用レベ
ルにかかっている。
(岡山宏之)
図5 比較対象センターの主要設備・運用コスト
A SDC B SDC C SDC
A SDC B SDC C SDC
100.0
100.0
100.0
119.2
78.7
96.0
133.1
61.0
91.7
主要設備
・ケース系パレット自動倉庫
・ケース自動倉庫(ファインストッカー)
・ボール系パレット自動倉庫
・コンベヤソーター
・デジタルピッキングシステム
・オリコン高速仕分け機(SAS)
・オリコン自動積付機
・無線端末(WinCE、HHT)
・固定ラック
・ボール系パレット自動倉庫
( スロームーヴケース含む)
・コンベヤソーター
・無線ピックカート
・固定ラック
・無線端末
( WinCE、HHT)
・固定ラック
設備費指数
作業人件費指数
合計指数
指数グラフ
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
●システムによる設備生産性の改善
●システム化により物流精度を高め
ると同時に運用コストを下げる 設備指数
42.6
人件費指数
57.4
50.8
45.2
56.7
35.0
100.0 96.0 91.7
|