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佐高信
経済評論家
61 NOVEMBER 2004
驚くほど率直なそのトヨタ批判は『エルオ
ネス』という雑誌の一〇月号に載っている。
一時代を画したミサワホームの創業者、三澤
千代治の発言を紹介した形とはいえ、トヨタ
独り勝ちのこの時代に、それは異例だろう。
とりあえず、トヨタから提携を申し入れら
れた三澤が、オーナー名誉会長の豊田章一郎
に宛てたストレートな手紙から紹介する。
1
.
御社の住宅に関します販売力そして技
術力につきましては、大変申し上げ難いので
すが特色に欠けていると思われます。
2
.
車社会に於きましても、事故の多いこ
とに驚いております。 ‥‥御社に関して年間
一万人以上の方々が事故死されており、これ
は毎年イラク戦争を続けていることと同じで
して、いずれ社会的に非難されるリスクがあ
ると思われます。
3
.
現在ミサワホームに対する出資希望者
として、邦銀、外銀、流通業、商社二社、同
業者、デベロッパーがございます。
そして最後は「以上、申し上げました課題
等を考慮いたしますと、提携を進めますこと
は困難かと思います」と結ばれているのだが、
これが載った『エルオネス』の裏表紙がトヨ
タの広告である。
トヨタが了承したからこの記事が出たのか、
それともトヨタは知らなかったのか。 これか
らも同誌にトヨタ批判が載るかが注目される
が、多分これを読んで一番敏感に反応したのは電通だろう。 あるいはそれほどメジャーな
雑誌ではないから、電通のガードも甘かった
のかもしれない。
主にクライアントの会社に対する批判記事
に、時とするとゲラ刷りの段階でそれを入手
し、もみ消しに動いたりするのが電通である。
『週刊金曜日』が一〇月一日号から、集中連
載と銘打って、「マスコミ最大のタブー『電通』
の正体」をスタートさせた。 電通に依存して
広告を集めるほとんどのメディアではできな
い連載だが、第一回は上々の売れゆきらしい。
早速、電通のある部署から、『週刊金曜日』
に、おたくの一番高い広告頁はいくらか、と
問い合わせがあったと聞いた。 しかし、同誌
は企業広告を載せていない。 いつもやる電通
のコントロールの手法が通用しないのである。
「『電通』の正体」という特集のリードにこ
うある。
「単体では世界最大の約一兆四〇〇〇億円の
年間売上高を誇るガリバー広告代理店・株式
会社電通(東京、社員約五七〇〇人)。 メディ
ア、政財界に巨大な影響力をもつが、実態は
ほとんど報道されてこなかった」
そして第一回の見出しが「五輪ビジネスを
喰った影の金メダリスト」。
メダルラッシュに日本中が沸いたこの夏に
一番笑いが止まらなかったのは電通だという
のである。 サッカーのワールドカップでも?活
躍〞した。
同誌に「アテネ五輪JOC協賛社」が載っ
ている。
ミズノ、アシックス、デサント、ファース
トリテイリング(ユニクロ)、丸大食品、EH
(エクセルヒューマン)、トヨタ自動車、野村
證券、キリンビール、新日本石油、クボタ、
読売新聞社、味の素、ウィル・コーポレーシ
ョン、佐川急便、コナミスポーツ、NTTド
コモ、ヤフー、松下電器産業の一九社だが、
印刷のウィル・コーポレーションは別として、
ミズノ、アシックス、デサントのスポーツ用
品社をはじめ、丸大食品、トヨタ、野村證券、
キリンビール、新日本石油、読売、NTTド
コモ、松下電器産業とほとんど大どころの
「扱い代理店」は電通となっている。
トヨタ、松下、そして野村と、日本を代表
する会社と電通の親密関係がうかがわれるだ
ろう。
これまで電通批判の書は猪野健治の『電通
公害論』や大下英治の『小説電通』ぐらいし
かない。 『金曜日』はこれらに続けるか。
広告主を批判できないメディアの自縄自縛
この構図を担う電通に挑む『週刊金曜日』
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