2004年11月号
特集
特集
中国シフトで変わる国際物流 グローバル・ロジスティクスの虚実
NOVEMBER 2004 16
グローバル3PLで勝つ秘訣
――海外でロジスティクスサービスを展開する場合、
自国で積んだサービスのノウハウをそのまま持ち込め
ば成功するのでしょうか? それとも違ったソリュー
ションを用意する必要があるのでしょうか?
フェデックス
デイヴィッド・B・エドモンズ
セー
ルス部門シニアバイスプレジデント(以下、フェデッ
クス)
簡単な質問をありがとう(笑)。
答えはもちろん 後者だ。
ロジスティクスに関する顧客企業のニーズが それぞれ異なるのと同じように、国や地域によって求 められるロジスティクス機能もまったく異なる。
そこ がグローバル・ロジスティクスのオペレーションの難 しさだ。
本来、ロジスティクスのサービスプロバイダ ーはあらゆるニーズに対応できる体制を構築すること を理想としているが、すべてをカバーするのは容易な ことではない。
多くの物流会社が現有の機能で断片的 に顧客のニーズに対応しているのが実情だ。
ベクターSCM ゲーリー・D・コワルスキー CEO (以下、ベクターSCM) 顧客のニーズに対してカバ ーできない領域を可能な限り小さくしていくことが、 今後のわれわれの課題だ。
自社の機能や能力でカバー できない部分を穴埋めするのに有効な手段の一つに企 業買収や業務提携がある。
実際、ロジスティクスの分 野ではここ数年、サービスメニューの統合・拡充を目 的とした買収や提携が盛んに行われている。
――現在、物流会社の多くがグローバル・ロジスティ クスのニーズへの対応を経営課題の一つに掲げていま す。
この分野で勝者になるための条件はありますか? フェデックス まず資本力が必要だ。
世界の主要なマ ーケットにロジスティクスの拠点網を張り巡らせるこ とができるかどうかが成功のカギを握っている。
自社 でネットワークを構築できるプレーヤーとなると自然 と経営規模の大きな会社に限られてくる。
グローバル ロジスティクスの分野は大企業を中心とした競争が繰 り広げられると見ている。
ただし、大企業だけでグローバルなロジスティクス の仕事をすべて取り込めるわけではない。
規模の小さ い会社にも十分チャンスはある。
資本力のない会社は 顧客企業が進出している地域や国にだけ拠点を構えて サービスを提供すればいい。
もっとも、サービスに何 か特徴がないと、中小はいずれ大手に顧客を奪われて しまうだろう。
グローバル・ロジスティクスで成功するための秘訣 はできるだけ現地のスタッフを雇用することだ。
サー ビスが充実しているだけでは顧客はパートナーに選ん でくれない。
進出先の国や地域の文化や常識をきちん と理解したうえで事業を展開すべきだ。
現地スタッフ はわれわれと現地の顧客との橋渡し役を演じてくれる。
シュナイダー・ロジスティクス トム・エスコット 社 長(以下、シュナイダー) 具体的な社名はあえて伏せ ておくが、グローバル・ロジスティクスの分野で未来 の明るい会社が五つほど頭に浮かぶ。
想像はつくと思 うが……。
この分野での優勝劣敗は「統合力」で決ま ってくると思う。
顧客に対して様々なロジスティクス サービスを一つにまとめて提供できるかどうか。
そし て世界のどの地域・国でもカバーできる体制を構築し てグローバル展開する企業のロジスティクス業務を一 括して管理できるかどうかがカギだ。
頭の中でイメー ジしている五社というのは将来のビジョンが明確で、 サービス統合化に向けて実際に行動している。
ベクターSCM グローバル・ロジスティクスで成功 している企業、つまり勝者というのはどの国の企業で あっても目指している方向性が共通する。
エスコット グローバル・ロジスティクスの虚実 拡大を続けるグローバル・ロジスティクスの ニーズに物流会社はどう対応していけばいいの か。
そしてこの分野ではどのようなサービス機 能を持つプレーヤーが競争に勝ち残ることがで きるのか。
米国の有力3PLの経営トップが集ま って今後の戦略などについて語り合った。
米CLM報告2004 【第1回】 座談会 シュナイダー・ロジスティクストム・エスコット社長 ベクターSCM ゲーリー・D・コワルスキーCEO フェデックスデイヴィッド・B・エドモンズ セールス部門シニアバイスプレジデント ジョージア工科大学C・ジョン・ラングレーSCM学科教授 シュナイダー・ロジスティクスブライアン・D・ハンコック 副社長兼ゼネラルマネージャー 出席者 司 会 17 NOVEMBER 2004 特集 中国シフトで変わる国際物流 さんと同じように、キーワードはやはり「統合化」に なると見ている。
勝者はどういった会社をパートナー に組み込めば、自社の競争力が高まるのかを熟知して いる。
これに対して敗者は自社の競争力を過信してい て、対策を怠っている。
あるいはライバルが実力を上 げているのを見過ごしてしまっている。
ジョージア工科大学 C・ジョン・ラングレー SC M科教授(以下、ラングレー教授)将来、グローバル・ ロジスティクスで成功を収める可能性があるのは資本 力のある大企業だけとは限らない。
中小規模の企業に も参入の余地はある。
国際インテグレーターのトップ 一〇社のロジスティクス・マーケットにおけるシェア は全体のわずか十三%にすぎないという現状がそのこ とを物語っている。
中小も工夫次第では大手と互角に 張り合える。
中国マーケットは未知数 ――マーケットの拡大が期待されている中国とインド のロジスティクスの現状について教えてください。
両 国における物流インフラの整備はどこまで進んでいる のでしょうか? 中国では内陸部のネットワークが整 備されるまで一〇年以上掛かると言われていますが、 それは本当ですか? フェデックス 中国のなかでも沿岸部のインフラ整備 状況は決して悪くない。
他の先進国に比べれば見劣り するが、高速道路、鉄道、港湾施設は充実しつつある。
問題は内陸部だ。
沿岸部からたった一〇〇マイルくら い内地に足を踏み入れただけで、深刻な問題にぶち当 たる。
内陸部は物流インフラの整備が極端に遅れてい る。
われわれや顧客企業が満足するレベルに達するま でには少なくても五〜一〇年掛かるだろう。
中国のビジネスではインフラだけではなく、政治的 な問題も見逃せない。
中国は驚異的なスピードで経済 発展を続けているが、それがいつまで続くかは未知数 だ。
政治の動向によって発展のスピードが鈍化する可 能性も十分考えられる。
実は中国についてはつい最近も随分と時間を割いて 議論したばかりだ。
当社はこれまで中国への投資を積 極的に行ってきたが、これからは中国マーケットが抱 えているリスクというものを慎重に分析したうえで、 投資を続けていくべきかどうかを判断していきたいと 思っている。
シュナイダー エドモンズさんが中国について詳しく 説明してくれたので、私はインドについて少し触れた い。
インドの問題点も中国と同じように物流インフラ の整備にある。
都市部はまだいいが、内陸部はひどい。
とりわけ鉄道インフラの整備が遅れているという印象 を受けた。
道路網も未完成で、スピードの出る車を運 転していても、しばらくして内陸部に入ると遅い車を 運転しているような気分になる(笑)。
もっとも、インドが中国と同様、将来的に無視でき ないマーケットであることは確かだ。
まず人口が多い 点が魅力だ。
経済が発展するにつれてロジスティクス の需要も拡大していくと見ている。
将来の有力なマー ケットの一つとして今後も市場調査などを継続してい きたい。
ベクターSCM 実は私はちょうど中国から帰ってき たところなんだ。
インフラ整備の遅れなど中国にはロ ジスティクスの問題が山積しているが、結局のところ 中国への投資を積極化するかどうかは顧客企業の動 向に大きく左右されると思う。
当社のように、中国に 進出済みの大企業との取引が多い物流会社は中国に 拠点を置かないわけにはいかない。
中国に拠点がない ことが原因で、米国でのビジネスを失ってしまう恐れ 本社‥‥‥米国ウィスコンシン州グリーンベイ 創立‥‥‥1993年 拠点‥‥‥北米を中心に欧州、アジアなどに展開 従業員数‥1400人 米国の大手トラック運送会社シュナイダー・ナショ ナルの3PL子会社。
米国を中心に約250社から業務 を受託している。
実運送を担当する協力物流会社は 8000社に上る。
2001年には米国の物流専門誌が 選ぶ「TOP 100 3PL」で第5位にランクインした。
シュナイダー・ロジスティクス NOVEMBER 2004 18 もあるからだ。
ただし、中国一辺倒となってしまうのは危険だ。
皆 さんのご指摘の通り、中国は政治的な問題で経済がど ちらに転ぶか分からない。
外資系企業に課している規 制もまだまだ多い。
当社の顧客の中には将来のリスク を懸念して「中国シフト」の戦略を見直し、米国やメ キシコに生産拠点を戻している企業もある。
内陸部のインフラ整備の遅れに頭を悩ませているの は物流会社だけではない。
GMをはじめとする自動車 メーカー、他産業のメーカーもまた内陸部におけるロ ジスティクスのサービスレベルの低さに不満を持って いる。
彼らは現地の物流会社にロジスティクスを任せ られない。
自分たちで投資してロジスティクスの問題 を解消していくしかないと考え始めている。
ラングレー教授 中国における社会的、経済的規制 は緩和される方向にある。
今後は現在よりもビジネス が展開しやすい環境になるはずだ。
中国から引き揚げ るという戦略は吉と出るか凶と出るか……。
日本とは 違い、中国には世界の資本を取り込もうという前向き な姿勢がある。
それは評価できる。
ただし中国人は世 界経済の主要プレーヤーになるという野望を持ってい る。
ノウハウだけ吸い取られて、「あとは知りません」 という事態だけは避けなければならない。
――中国のマーケットは安定するまでどのくらい掛か るのでしょうか? フェデックス それは分からない。
今後の見通しが立 たない中で中国への投資を加速させるのは非常に危険 だ。
しかし顧客が生産シフトを続けている以上、中国 には進出せざるを得ない。
ではどうやってリスクを回 避すればいいのか。
一つの手段としてジョイントベン チャーのかたちで中国に進出するというやり方がある。
現地企業と合弁会社を設立してマーケットに参入する。
これなら投資は少なくて済む。
シュナイダー 短期間では中国のマーケットは安定し ないと見ている。
中国には政治や規制の問題など不確 定要素が多い。
そのため長期計画が立てにくい。
いつ でも引き揚げられるというスタンスでいるのは物流会 社だけではない。
自動車メーカーも家電メーカーも同 じような考え方で中国に対応している。
――生産拠点の移管先としては中国のほかにメキシコ が挙げられます。
メキシコのロジスティクスの現状に 課題はありますか。
シュナイダー メキシコは海外というよりも北米の一 部と見ている。
米国内の輸配送ネットワークを見直す 際にはメキシコもその計画の中に含めて考えるように している。
メキシコは米国と陸続きだ。
中国のロジス ティクスにどう対処するかを考えることに比べれば、 話はそれほど複雑ではない。
ベクターSCM しかしメキシコで米国内と同じよう なロジスティクスのオペレーションが展開できるかは 疑問だ。
国境で通関のためトラックが長い列をなして いるなどメキシコはロジスティクスの面で様々な問題 点を抱えている。
通関での渋滞を避けるため、当社で はトラックの代行手段として航空機で一五〇マイル程 度の距離を輸送することさえ検討している。
インフラ 整備は不十分だ。
テロ後のサプライチェーン戦略 ――二〇〇一年の同時多発テロ以降、セキュリティー 上の問題でロジスティクスに関連する各種規制が強化 されました。
それが3PL企業や顧客企業のビジネス にどのような影響を及ぼしていますか。
ベクターSCM 顧客企業はサプライチェーン・マネ ージメントを展開することで原材料・部品の調達から 本社‥‥‥米国テネシー州メンフィス 創立‥‥‥1971年 拠点‥‥‥世界215カ国に展開 従業員数‥13万6000人 小口貨物のドア・ツー・ドアサービスを提供 する国際エクスプレス会社。
全世界で1日に 310万個の貨物を取り扱う。
自社運航機を 645機保有。
配送車両は4万2000台に達する。
フェデックス 特集 中国シフトで変わる国際物流 19 NOVEMBER 2004 生産、販売までのスピードを高めようと努力してきた。
通関強化などセキュリティーを目的とした規制はスピ ーディーなロジスティクスの妨げとなっており、結果 としてサプライチェーンのスピードが落ちてしまって いる。
そのため、顧客企業はとても苦痛を感じている。
テロは3PL企業、そして顧客企業の双方に負のイン パクトを与えたと言えるだろう。
ラングレー教授 海外からの貨物の玄関口である港湾 施設や空港はセキュリティー強化で混雑が深刻化して いる。
通関に何日掛かるのか読めないという事態はサ プライチェーンにとって大きなダメージとなっている。
テロの脅威が消えない限り、こうした状況は続くであ ろう。
――テロを契機に顧客企業のサプライチェーン戦略は 大きく変わりました。
ベクターSCM テロのような不測の事態が発生して 生産が滞るのを避けるため、組み立てメーカーは世界 各地の複数のサプライヤーから原材料や部品を調達す るようになった。
リスク分散のため生産そのものも世 界各地で行っている。
在庫も一カ所に集めるのではな く、分散させて管理するようになった。
世界各国に在庫を抱えている顧客企業はこれをどう コントロールしていくかに頭を悩ませている。
どの国 にどれだけの在庫を抱えているのか。
それを常にきち んと把握できる体制にしておくこと。
つまりビジビリ ティー(Visibility= 可視性)の確保が重要視されるよ うになってきた。
調達のグローバル化、在庫のグローバル化でロジス ティクスはより複雑になり、管理が難しくなった。
ロ ジスティクスを本業としない顧客企業は煩雑な管理業 務から解放されたいと考えている。
実はそこに物流会 社のビジネスチャンスがある。
グローバルのロジステ ィクスを一括管理するサービスを提供できれば、顧客 企業との結びつきはより一層深まる。
フェデックス ただし大企業のグローバルなサプライ チェーンを自社ですべてカバーできる能力を持った物 流会社は少ないのが実情だ。
当面は顧客企業の窓口 的な役割を果たす物流会社があって、その会社が各エ リアでロジスティクスの実務を担当する物流会社を統 轄していくかたちになるだろう。
米国内の物流トレンド ――最後に米国内のロジスティクスの最近の動向と今 後の見通しについて教えてください。
ラングレー教授 まずロサンゼルスなど西海岸の港湾 施設の動向について触れておきたい。
セキュリティー 強化やキャパシティー不足の影響で西海岸の港湾施 設の混雑ぶりはより深刻化している。
通関に時間が掛 かれば、当然サプライチェーンのリードタイムは長く なる。
二〇〇二年に労働者のストライキで港湾封鎖が発生して痛い目に遭った顧客企業はリスク回避のため 西海岸から東海岸の利用に切り替えている。
そうした 動きは今後もしばらく続きそうだ。
フェデックスロスを中心にサプライチェーンを動か している企業にとって混雑解消が一向に進まないこと は頭痛のタネになっている。
このままだと西海岸から 東海岸へロジスティクスの基地を移す企業が相次ぐだ ろう。
西海岸は元気がない。
一方、東海岸の港湾施 設は貨物取扱量を年々増やしている。
西海岸の港湾 施設の不振は西海岸を中心にビジネスを展開してきた トラック運送会社にも大きな影響を及ぼしそうだ。
――西海岸が競争力を取り戻すまでにはどのくらい時 間が掛かりそうですか? ラングレー教授 先は見えない。
それが本音だ。
本社‥ミシガン州ノビ 創立‥2000年 拠点‥北米を中心に欧州、アジア、オセアニア などに展開 ゼネラルモータース(GM)と、メンロ・ロ ジスティクスを傘下に持つCNFグループが合 弁で設立した4PL会社。
ノンアセット型のサー ビスを展開している。
GMのほか、大手メーカ ーからサプライチェーンの運営を任されている。
ベクターSCM
答えはもちろん 後者だ。
ロジスティクスに関する顧客企業のニーズが それぞれ異なるのと同じように、国や地域によって求 められるロジスティクス機能もまったく異なる。
そこ がグローバル・ロジスティクスのオペレーションの難 しさだ。
本来、ロジスティクスのサービスプロバイダ ーはあらゆるニーズに対応できる体制を構築すること を理想としているが、すべてをカバーするのは容易な ことではない。
多くの物流会社が現有の機能で断片的 に顧客のニーズに対応しているのが実情だ。
ベクターSCM ゲーリー・D・コワルスキー CEO (以下、ベクターSCM) 顧客のニーズに対してカバ ーできない領域を可能な限り小さくしていくことが、 今後のわれわれの課題だ。
自社の機能や能力でカバー できない部分を穴埋めするのに有効な手段の一つに企 業買収や業務提携がある。
実際、ロジスティクスの分 野ではここ数年、サービスメニューの統合・拡充を目 的とした買収や提携が盛んに行われている。
――現在、物流会社の多くがグローバル・ロジスティ クスのニーズへの対応を経営課題の一つに掲げていま す。
この分野で勝者になるための条件はありますか? フェデックス まず資本力が必要だ。
世界の主要なマ ーケットにロジスティクスの拠点網を張り巡らせるこ とができるかどうかが成功のカギを握っている。
自社 でネットワークを構築できるプレーヤーとなると自然 と経営規模の大きな会社に限られてくる。
グローバル ロジスティクスの分野は大企業を中心とした競争が繰 り広げられると見ている。
ただし、大企業だけでグローバルなロジスティクス の仕事をすべて取り込めるわけではない。
規模の小さ い会社にも十分チャンスはある。
資本力のない会社は 顧客企業が進出している地域や国にだけ拠点を構えて サービスを提供すればいい。
もっとも、サービスに何 か特徴がないと、中小はいずれ大手に顧客を奪われて しまうだろう。
グローバル・ロジスティクスで成功するための秘訣 はできるだけ現地のスタッフを雇用することだ。
サー ビスが充実しているだけでは顧客はパートナーに選ん でくれない。
進出先の国や地域の文化や常識をきちん と理解したうえで事業を展開すべきだ。
現地スタッフ はわれわれと現地の顧客との橋渡し役を演じてくれる。
シュナイダー・ロジスティクス トム・エスコット 社 長(以下、シュナイダー) 具体的な社名はあえて伏せ ておくが、グローバル・ロジスティクスの分野で未来 の明るい会社が五つほど頭に浮かぶ。
想像はつくと思 うが……。
この分野での優勝劣敗は「統合力」で決ま ってくると思う。
顧客に対して様々なロジスティクス サービスを一つにまとめて提供できるかどうか。
そし て世界のどの地域・国でもカバーできる体制を構築し てグローバル展開する企業のロジスティクス業務を一 括して管理できるかどうかがカギだ。
頭の中でイメー ジしている五社というのは将来のビジョンが明確で、 サービス統合化に向けて実際に行動している。
ベクターSCM グローバル・ロジスティクスで成功 している企業、つまり勝者というのはどの国の企業で あっても目指している方向性が共通する。
エスコット グローバル・ロジスティクスの虚実 拡大を続けるグローバル・ロジスティクスの ニーズに物流会社はどう対応していけばいいの か。
そしてこの分野ではどのようなサービス機 能を持つプレーヤーが競争に勝ち残ることがで きるのか。
米国の有力3PLの経営トップが集ま って今後の戦略などについて語り合った。
米CLM報告2004 【第1回】 座談会 シュナイダー・ロジスティクストム・エスコット社長 ベクターSCM ゲーリー・D・コワルスキーCEO フェデックスデイヴィッド・B・エドモンズ セールス部門シニアバイスプレジデント ジョージア工科大学C・ジョン・ラングレーSCM学科教授 シュナイダー・ロジスティクスブライアン・D・ハンコック 副社長兼ゼネラルマネージャー 出席者 司 会 17 NOVEMBER 2004 特集 中国シフトで変わる国際物流 さんと同じように、キーワードはやはり「統合化」に なると見ている。
勝者はどういった会社をパートナー に組み込めば、自社の競争力が高まるのかを熟知して いる。
これに対して敗者は自社の競争力を過信してい て、対策を怠っている。
あるいはライバルが実力を上 げているのを見過ごしてしまっている。
ジョージア工科大学 C・ジョン・ラングレー SC M科教授(以下、ラングレー教授)将来、グローバル・ ロジスティクスで成功を収める可能性があるのは資本 力のある大企業だけとは限らない。
中小規模の企業に も参入の余地はある。
国際インテグレーターのトップ 一〇社のロジスティクス・マーケットにおけるシェア は全体のわずか十三%にすぎないという現状がそのこ とを物語っている。
中小も工夫次第では大手と互角に 張り合える。
中国マーケットは未知数 ――マーケットの拡大が期待されている中国とインド のロジスティクスの現状について教えてください。
両 国における物流インフラの整備はどこまで進んでいる のでしょうか? 中国では内陸部のネットワークが整 備されるまで一〇年以上掛かると言われていますが、 それは本当ですか? フェデックス 中国のなかでも沿岸部のインフラ整備 状況は決して悪くない。
他の先進国に比べれば見劣り するが、高速道路、鉄道、港湾施設は充実しつつある。
問題は内陸部だ。
沿岸部からたった一〇〇マイルくら い内地に足を踏み入れただけで、深刻な問題にぶち当 たる。
内陸部は物流インフラの整備が極端に遅れてい る。
われわれや顧客企業が満足するレベルに達するま でには少なくても五〜一〇年掛かるだろう。
中国のビジネスではインフラだけではなく、政治的 な問題も見逃せない。
中国は驚異的なスピードで経済 発展を続けているが、それがいつまで続くかは未知数 だ。
政治の動向によって発展のスピードが鈍化する可 能性も十分考えられる。
実は中国についてはつい最近も随分と時間を割いて 議論したばかりだ。
当社はこれまで中国への投資を積 極的に行ってきたが、これからは中国マーケットが抱 えているリスクというものを慎重に分析したうえで、 投資を続けていくべきかどうかを判断していきたいと 思っている。
シュナイダー エドモンズさんが中国について詳しく 説明してくれたので、私はインドについて少し触れた い。
インドの問題点も中国と同じように物流インフラ の整備にある。
都市部はまだいいが、内陸部はひどい。
とりわけ鉄道インフラの整備が遅れているという印象 を受けた。
道路網も未完成で、スピードの出る車を運 転していても、しばらくして内陸部に入ると遅い車を 運転しているような気分になる(笑)。
もっとも、インドが中国と同様、将来的に無視でき ないマーケットであることは確かだ。
まず人口が多い 点が魅力だ。
経済が発展するにつれてロジスティクス の需要も拡大していくと見ている。
将来の有力なマー ケットの一つとして今後も市場調査などを継続してい きたい。
ベクターSCM 実は私はちょうど中国から帰ってき たところなんだ。
インフラ整備の遅れなど中国にはロ ジスティクスの問題が山積しているが、結局のところ 中国への投資を積極化するかどうかは顧客企業の動 向に大きく左右されると思う。
当社のように、中国に 進出済みの大企業との取引が多い物流会社は中国に 拠点を置かないわけにはいかない。
中国に拠点がない ことが原因で、米国でのビジネスを失ってしまう恐れ 本社‥‥‥米国ウィスコンシン州グリーンベイ 創立‥‥‥1993年 拠点‥‥‥北米を中心に欧州、アジアなどに展開 従業員数‥1400人 米国の大手トラック運送会社シュナイダー・ナショ ナルの3PL子会社。
米国を中心に約250社から業務 を受託している。
実運送を担当する協力物流会社は 8000社に上る。
2001年には米国の物流専門誌が 選ぶ「TOP 100 3PL」で第5位にランクインした。
シュナイダー・ロジスティクス NOVEMBER 2004 18 もあるからだ。
ただし、中国一辺倒となってしまうのは危険だ。
皆 さんのご指摘の通り、中国は政治的な問題で経済がど ちらに転ぶか分からない。
外資系企業に課している規 制もまだまだ多い。
当社の顧客の中には将来のリスク を懸念して「中国シフト」の戦略を見直し、米国やメ キシコに生産拠点を戻している企業もある。
内陸部のインフラ整備の遅れに頭を悩ませているの は物流会社だけではない。
GMをはじめとする自動車 メーカー、他産業のメーカーもまた内陸部におけるロ ジスティクスのサービスレベルの低さに不満を持って いる。
彼らは現地の物流会社にロジスティクスを任せ られない。
自分たちで投資してロジスティクスの問題 を解消していくしかないと考え始めている。
ラングレー教授 中国における社会的、経済的規制 は緩和される方向にある。
今後は現在よりもビジネス が展開しやすい環境になるはずだ。
中国から引き揚げ るという戦略は吉と出るか凶と出るか……。
日本とは 違い、中国には世界の資本を取り込もうという前向き な姿勢がある。
それは評価できる。
ただし中国人は世 界経済の主要プレーヤーになるという野望を持ってい る。
ノウハウだけ吸い取られて、「あとは知りません」 という事態だけは避けなければならない。
――中国のマーケットは安定するまでどのくらい掛か るのでしょうか? フェデックス それは分からない。
今後の見通しが立 たない中で中国への投資を加速させるのは非常に危険 だ。
しかし顧客が生産シフトを続けている以上、中国 には進出せざるを得ない。
ではどうやってリスクを回 避すればいいのか。
一つの手段としてジョイントベン チャーのかたちで中国に進出するというやり方がある。
現地企業と合弁会社を設立してマーケットに参入する。
これなら投資は少なくて済む。
シュナイダー 短期間では中国のマーケットは安定し ないと見ている。
中国には政治や規制の問題など不確 定要素が多い。
そのため長期計画が立てにくい。
いつ でも引き揚げられるというスタンスでいるのは物流会 社だけではない。
自動車メーカーも家電メーカーも同 じような考え方で中国に対応している。
――生産拠点の移管先としては中国のほかにメキシコ が挙げられます。
メキシコのロジスティクスの現状に 課題はありますか。
シュナイダー メキシコは海外というよりも北米の一 部と見ている。
米国内の輸配送ネットワークを見直す 際にはメキシコもその計画の中に含めて考えるように している。
メキシコは米国と陸続きだ。
中国のロジス ティクスにどう対処するかを考えることに比べれば、 話はそれほど複雑ではない。
ベクターSCM しかしメキシコで米国内と同じよう なロジスティクスのオペレーションが展開できるかは 疑問だ。
国境で通関のためトラックが長い列をなして いるなどメキシコはロジスティクスの面で様々な問題 点を抱えている。
通関での渋滞を避けるため、当社で はトラックの代行手段として航空機で一五〇マイル程 度の距離を輸送することさえ検討している。
インフラ 整備は不十分だ。
テロ後のサプライチェーン戦略 ――二〇〇一年の同時多発テロ以降、セキュリティー 上の問題でロジスティクスに関連する各種規制が強化 されました。
それが3PL企業や顧客企業のビジネス にどのような影響を及ぼしていますか。
ベクターSCM 顧客企業はサプライチェーン・マネ ージメントを展開することで原材料・部品の調達から 本社‥‥‥米国テネシー州メンフィス 創立‥‥‥1971年 拠点‥‥‥世界215カ国に展開 従業員数‥13万6000人 小口貨物のドア・ツー・ドアサービスを提供 する国際エクスプレス会社。
全世界で1日に 310万個の貨物を取り扱う。
自社運航機を 645機保有。
配送車両は4万2000台に達する。
フェデックス 特集 中国シフトで変わる国際物流 19 NOVEMBER 2004 生産、販売までのスピードを高めようと努力してきた。
通関強化などセキュリティーを目的とした規制はスピ ーディーなロジスティクスの妨げとなっており、結果 としてサプライチェーンのスピードが落ちてしまって いる。
そのため、顧客企業はとても苦痛を感じている。
テロは3PL企業、そして顧客企業の双方に負のイン パクトを与えたと言えるだろう。
ラングレー教授 海外からの貨物の玄関口である港湾 施設や空港はセキュリティー強化で混雑が深刻化して いる。
通関に何日掛かるのか読めないという事態はサ プライチェーンにとって大きなダメージとなっている。
テロの脅威が消えない限り、こうした状況は続くであ ろう。
――テロを契機に顧客企業のサプライチェーン戦略は 大きく変わりました。
ベクターSCM テロのような不測の事態が発生して 生産が滞るのを避けるため、組み立てメーカーは世界 各地の複数のサプライヤーから原材料や部品を調達す るようになった。
リスク分散のため生産そのものも世 界各地で行っている。
在庫も一カ所に集めるのではな く、分散させて管理するようになった。
世界各国に在庫を抱えている顧客企業はこれをどう コントロールしていくかに頭を悩ませている。
どの国 にどれだけの在庫を抱えているのか。
それを常にきち んと把握できる体制にしておくこと。
つまりビジビリ ティー(Visibility= 可視性)の確保が重要視されるよ うになってきた。
調達のグローバル化、在庫のグローバル化でロジス ティクスはより複雑になり、管理が難しくなった。
ロ ジスティクスを本業としない顧客企業は煩雑な管理業 務から解放されたいと考えている。
実はそこに物流会 社のビジネスチャンスがある。
グローバルのロジステ ィクスを一括管理するサービスを提供できれば、顧客 企業との結びつきはより一層深まる。
フェデックス ただし大企業のグローバルなサプライ チェーンを自社ですべてカバーできる能力を持った物 流会社は少ないのが実情だ。
当面は顧客企業の窓口 的な役割を果たす物流会社があって、その会社が各エ リアでロジスティクスの実務を担当する物流会社を統 轄していくかたちになるだろう。
米国内の物流トレンド ――最後に米国内のロジスティクスの最近の動向と今 後の見通しについて教えてください。
ラングレー教授 まずロサンゼルスなど西海岸の港湾 施設の動向について触れておきたい。
セキュリティー 強化やキャパシティー不足の影響で西海岸の港湾施 設の混雑ぶりはより深刻化している。
通関に時間が掛 かれば、当然サプライチェーンのリードタイムは長く なる。
二〇〇二年に労働者のストライキで港湾封鎖が発生して痛い目に遭った顧客企業はリスク回避のため 西海岸から東海岸の利用に切り替えている。
そうした 動きは今後もしばらく続きそうだ。
フェデックスロスを中心にサプライチェーンを動か している企業にとって混雑解消が一向に進まないこと は頭痛のタネになっている。
このままだと西海岸から 東海岸へロジスティクスの基地を移す企業が相次ぐだ ろう。
西海岸は元気がない。
一方、東海岸の港湾施 設は貨物取扱量を年々増やしている。
西海岸の港湾 施設の不振は西海岸を中心にビジネスを展開してきた トラック運送会社にも大きな影響を及ぼしそうだ。
――西海岸が競争力を取り戻すまでにはどのくらい時 間が掛かりそうですか? ラングレー教授 先は見えない。
それが本音だ。
本社‥ミシガン州ノビ 創立‥2000年 拠点‥北米を中心に欧州、アジア、オセアニア などに展開 ゼネラルモータース(GM)と、メンロ・ロ ジスティクスを傘下に持つCNFグループが合 弁で設立した4PL会社。
ノンアセット型のサー ビスを展開している。
GMのほか、大手メーカ ーからサプライチェーンの運営を任されている。
ベクターSCM
