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DECEMBER 2004 80
者は壊れ方を分析して対処方法を考えるものであり、後者は磨耗や故障
期間を予測して整備方法を考えるものだ。 保全計画では経済性も無視で
きないため、費用対効果の観点からの整備分析やロジスティクス所要分
析も行う。
(4)新しいアプローチ
各種の分析に基づいて保全計画を立案するが、その進め方に最近では
大きな変化が生まれている。 従来はMIL―Spec(米国国防総省DoDが定
めた軍用の規格)に基づく分析が行われていた。 これは、まず製品の設
計を行い、設計された製品に対してどのような保全を行うかを検討する
というものであった。
対象製品について故障分析、信頼性・保全性分析、整備分析、所要
分析などを行い、最後にコストとの関係についてのトレードオフ分析を
行い、保全計画を確立する。 ただし、このやり方ではコスト上折り合わ
ないことが分かった段階で、また製品設計にもどることになる。 これが
大変な開発期間の延長や、開発コストのオーバーをきたし、大きな問題
となっていた。
この問題を克服するため、ロッキードマーチン社は戦闘機F―22の開
発において画期的な方法をとった。 航空機の運用目的と運用環境を調
査・分析し、ロジスティクスへの要求を明確にした上で製品設計を行う
のである。 ボーイング社も旅客機B―777の開発において同様のアプロー
チをとった。 顧客である各エアライン(JALやANA)に対する需要調
査に基づいてデザインコンセプトを明らかにし、エアライン側の運用上
の経験を製品設計に反映させる形をとった。 その結果、両社とも大幅な
コスト低減につながったという。
(5)考察
ロッキードマーチンやボーイングにおけるアプローチも、旧MIL―Spec
に基づくアプローチも、採用する分析手法はほぼ同様だ。 違いは分析要
素を評価するためのアプローチの仕方である。
1980年代の後半に米国でCALSの推進が強力に進められ、日本でも
1995年から本格的な活動が開始されたが、そのときに「DFx」(Design
For x)という一つのキーワードが注目された。 これはxを目指した設
計、xを前提とした設計といった意味で、xには運用性、リサイクル性、
安全性、保全性などを入れる。 ここにロジスティクス支援性を入れれば、
ロッキードマーチンやボーイングにおけるアプローチが理解できる。
このことは、システム製品に対するロジスティクスもさることながら、
コンシューマグッズの製品開発、ロジスティクス計画についても当ては
まる。 すなわち顧客主導の発想である。
航空機におけるこのような顧客主導型のアプローチを可能にするには、
いくつかのクリアすべきポイントがありそうである。 まず第一に、シス
テム製品供給サイドの発想の転換(プロダクトアウト→顧客主導)が必
要であろう。 次にシステム製品運用段階のコンセプトを検証するための
運用経験の蓄積の有無が問題になるはずだ。 さらに、運用段階のロジス
ティクス支援活動を定量的に評価するための基礎データの蓄積(データ
ベース)という問題も考えられる。
RAMS研究会は今後も継続し、以上のようなテーマ、課題について検
討、研究をしていく予定である。
今年度の新しいフォーラムのシリーズ(10回分)が11月から始まった。
12月度のテーマは「AIDC」となっている。
このフォーラムは基本的に年間計画に基づいているが、単月のみの参
加も可能。 1回の費用は6,000円。 参加希望の方やSOLE東京支部の活動
内容に関するお問い合わせはSOLE_consult@jmac.co.jpまで。
SOLE報告
The International Society of Logistics
次回フォーラムのお知らせ
SOLE東京支部では毎月「フォーラム」を開催し、ロジスティクス技
術やロジスティクスマネジメントに関する活発な意見交換、議論を行い、
会員相互の啓発に努めている。
10月はフォーラムを実施しなかったため、今回は「RAMS研究会」で
の研究内容を報告する。
* * *
1 はじめに
本欄でも過去に何度か紹介した通り、SOLE東京支部では「RAMS研
究会」を開催している。 「R」は信頼性(Reliability)、「A」は即応性
(Availability)、「M」は保全性(Maintainability)、「S」は支援性
(Supportability)で、頭文字を並べてRAMSと称している。 複雑な構造
を有し、長期間にわたって製品支援を必要とする、いわゆるシステム製
品に対するロジスティクスの研究である。
コンシューマグッズと呼ばれる類の製品のロジスティクスでは、物流
機能が非常に重要になる。 一方、システム製品に対するロジスティクス
では、もちろん物流機能も大切だが、それに加えて各種の支援要素(保
全、教育訓練、サービスパーツ供給、マニュアル、技術データなど)を
統合的に捉え、ミニマムライフサイクルコストでいかに即応性を高める
かが課題となる。
最近の「RAMS研究会」では、システム製品に対する保全計画をどの
ように立案するかをめぐって活発な議論を展開している。
2 最近の研究内容
(1)保全計画
保全計画というのは、対象とするシステム製品の機能性能を維持・管
理するための計画である。 システム製品は非常に多くの部品やユニット
で構成されており、それらが有機的に統合されてはじめて所期の機能性
能を発揮する。 製品を構成する個々の部品やユニットは固有の寿命を有
しており、それらの一つないし複数に不具合が発生すると、システム製
品としての機能性能に影響が出てくる。
一つひとつの部品やユニットの不具合が全体に影響を及ぼさないよう、
製品の設計上いろいろ工夫がなされている。 しかし、長期間にわたって
運用していく過程では、各種の構成品に故障が発生したり、劣化する事
態が避けられない。 システム製品というのは、必要に応じて維持管理
(保全)していかなければならないのである。
(2)保全のやり方
保全のやり方としては、故障してから復旧させるというやり方(事後
保全)と、故障を予防するための措置をとるやり方(予防保全)に大別
される。 いずれの方法をとるかは、対象となるシステム製品の特性や、
発生が予想される故障の種類とその影響、保全コストなどを総合的に考
慮して決める。
(3)航空機の保全計画
航空機の場合、故障発生時の影響は極めて大きい。 このため故障ゼロ、
事故発生ゼロを期待したいところだが、実際問題としては限りなくゼロ
に近づけるしかない。 そのために、発生が予想される故障がどのような
影響を与えるかを分析し、事故被害を予測し、安全性を確保するための
努力をする。
そのための分析としてFHA(Fault Hazard Analysis)、FTA(Fault
Tree Analysis)がある。 また故障や磨耗の発生度合いを予測しシステ
ム製品の信頼性を維持するための分析としては、FMECA(Failure
Mode Effective & Critical Analysis)、信頼性・保全性分析がある。 前
SOLE東京支部フォーラムの報告
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