ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2003年1号
リーダーシップ論
カテゴリー・マネジメントの実務

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

JANUARY 2003 60 需要を把握し、施策を導き出す 消費者をセグメント化し、カテゴリ ーという管理単位に基づいて需要を管 理し、供給サイドと連動させていく ――それがカテゴリー・マネジメント であるわけだが、実際にはどのように 仕事を進めるのであろうか。
現実のマーケティング活動では、消 費者セグメントや、カテゴリーあるい は商圏特性、競合環境など、様々な 要因を考慮しなければならない。
これ らに関するデータの収集・分析、そし て施策決定、実施という仕事の流れ は複雑なものになる。
小売業だけでは なく、そこにサプライヤー(メーカ ー・卸)も参加してくるとなると複雑 さはいっそう増す。
そこでカテゴリー・マネジメントで はフレームワークと業務プロセスの構 築が必要とされた。
カテゴリー・マネ ジメントが戦略的マーケティング手法 として、欧米の先進的な小売業で広 く採用されている理由の一つは、この フレームワークと具体的な業務プロセ スの体系化に成功したことにあると考 えられる。
この体系には、実務での具体的な 分析を行うためのテンプレートも含ま れている。
テンプレートを使いながら 実施プランを明確にしていく。
このことは、ロジスティクスとマーケティン グ戦略を連動させる上での第一歩と も言える実施プランの共有のために重 要である。
また、このフレームワーク は量販小売業をモデルとはしているが、 マーケティングの要点を押さえており、 様々な業種にも応用可能だと考えら れる。
カテゴリー・マネジメントの体系は ここ一〇年程で大きく進化してきてお り、現在では図1のようなフレームワ ークとなっている。
まず大きな枠組み として、「1 小売業の戦略」、「2 カテゴリー計画立案」、「3 実施」、 「4 評価」の四つのステージがある。
このうち「1 小売業の戦略」は 小売業全体のマーケティング戦略であ る。
「2 カテゴリー計画立案」は、 「1 小売業の戦略」から導き出され たターゲット顧客や、市場機会に基づ いて、それぞれのカテゴリーの戦略的 カテゴリー・マネジメントの実務 楢村文信 
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釘達劵優奪肇錙璽ング・マネージャー カテゴリー・マネジメントに影響を与える様々な要因は、複雑に絡み合 っている。
それを整理し、分析する実務家のためのフレームワークと業務 プロセスの体系化が進んでいる。
ロジスティクス戦略の担当者も、マーケ ティング戦略との整合性のために、それを理解する必要がある。
﹇第4回﹈ 図1 カテゴリー・マネジメントにおけるビジネス計画立案のフレームワーク 4つのステージ 6ステップ カテゴリーの定義 カテゴリーの役割 カテゴリーの評価 評価指標の規定 カテゴリーの戦略 カテゴリーの戦術 品揃え 価格 販売促進 売場レイアウト 小売業の 戦略 評価 実施 カテゴリー 計画立案 61 JANUARY 2003 な位置付けを定め、それに沿った店頭 施策を立案する。
この「2 カテゴリ ー計画立案」には六つのステップがあ り、様々な分析を経て、品揃え、棚 割、販促、売場作りの具体的施策を 導き出す。
そして施策を「3 実施」し、その 結果を測定し「4 評価」すること で、いったん完結する。
そして、この 評価結果を次の「1 小売業の戦略」 と「2 カテゴリー計画立案」の改善 に生かす。
以前は、カテゴリー計画立案の六 つのステップと、これに続く「3 実 施」、「4 評価」をあわせて八ステッ プと呼んでいた。
こうしたプロセスの 繰り返しにより、企業のマーケティン グ活動全体にTQM(トータル・ク オリティ・マネジメント)の考え方を 導入するための、PDCA(Plan 、 Do 、 Check 、 Action )的なサイクルを確立 しようとしているのである。
戦略を整理し、焦点を定める 「1 小売業の戦略」、「2 カテゴ リー計画立案」、「3 実施」、「4 評 価」の四つのステージは、組織内での 担当部門の仕事と結びついている。
戦 略はマーケティングや経営戦略・企画 部門の仕事だ。
カテゴリー計画立案 は商品カテゴリー部門が担い、これを 「カテゴリー・キャプテン」と呼ばれ るサプライヤーとの協働で実現する。
実施は店舗運営部門の仕事である。
補足になるが、欧米の小売業の一 部では、カテゴリー・マネジメントを 進める中で、カテゴリー部門に、売 上・利益両方の責任を持たせている。
そのような企業では、カテゴリー部門 が立案した店頭施策を適切に実施す るのが店舗の仕事になっており、店舗 は「オペレーションの質」によって評 価される。
これは日本の常識とはかなり異なっ ている。
日本では、仕入担当部門(商 品部)は「粗利」で評価され、また店 舗(営業)部門は「売上」で評価さ れることが多い。
そのため、仕入担当 部門が、時に売れる商品よりも粗利 の取れる商品を仕入れてしまうことが ある。
前号で紹介した「細分化への対 応と、規模メリットの相反」が生まれ てくる理由の一つでもある。
最初のステージである小売業の戦略 では、小売業全体のマーケティング戦 略を市場データや、世帯調査などの消 費者データ含め、様々なデータから導 き出していく。
このためのポイントは 次の六点に要約されている。
?ターゲット顧客はどういう人々か? ?ターゲット顧客に対してどういうビ ジネス機会が存在するのか? ?ターゲット顧客を考えた時に競合す る相手はどこか? ?競合より優位になれる機会はどこ か? ?ターゲット顧客に対して戦略的なカ テゴリーはどれか? ?カテゴリーの優先順位を設定し、ど う資源配分するのか? このうち?のターゲット顧客の選定 においては、消費者を様々な属性軸 (所得、年齢など)で分類し、支出金 額や購買頻度などを商圏や地域など の平均値との比較を行う。
自社によ く来店している層はどのような属性の グループか。
そして多く買物をしてく れているのはどのようなグループか。
それらのグループは過去と比べて増え ているのか。
そのようなデータを元に ターゲット顧客を選定する。
?では、このターゲット顧客グルー プの購買動向をさらに深く分析し、ビ ジネス機会を見つけ出す。
このターゲ ット顧客は商圏内で、月平均○○円 買物をしているのに、自社ではXX円 しか買物をしていない。
このギャップ はビジネスを伸ばす可能性である。
別 のデータでは、来店頻度や買い上げた 商品カテゴリー数を分析する。
お店に 来る機会が少ないから買い上げ金額 が少ないのか。
あるいは、買い上げ商 品カテゴリー数が少ないからなのか。
このような問題が見えてくれば、可能 性が見えてくるのである。
?、?では、商圏内での小売業の シェアなどから、競合相手の分析を行 う。
競合と自社の比較の中で、ターゲ ット顧客属性に対して市場での浸透 率や支出金額などから比較を行い、自 社の強み弱みを分析し、競合に対し てどういう対策をとるのかを決める。
?、?ではターゲット顧客に対して 戦略的なカテゴリーはどれか。
ここで は、カテゴリー毎の支出や購買頻度な どのデータから分析を行う。
ターゲッ ト顧客が頻繁に買物をしたり、多くの 金額を支出しているカテゴリーは相対 的には重要なカテゴリーと言える。
このようにして、それぞれのカテゴ リーを分析すると、相対的な優先順 位が見えてくる。
その優先順位に基づ いて、カテゴリーに経営上どのような 役割を持たせるかを決める。
ターゲッ ト顧客の来店を促進するためのカテゴ リーなのか、あるいはワン・ストッ プ・ショッピングの利便性を提供する ために揃えておくカテゴリーか、など である。
そして、その役割に応じた経 営資源の配分もここで定める。
戦略のステージにおける分析の結果 として、「ターゲット顧客」「戦略指 針」「競合」「カテゴリーの役割」「経 営資源の戦略的配分」が定まってく る。
この考え方は、別に小売業だけに当 てはまるものではないだろう。
例えば ロジスティクスサービスであれば、自 JANUARY 2003 62 社の営業圏内には、どのような業種・ 規模の企業があるのか。
どういった企 業がどのようなロジスティクス関連サ ービスに、どれほどお金を使っている のか。
自社と同じようなサービスにど れほど支出しているのか。
さらには顧客は自社に対して、これ まで以上にに支出を増やす余地がある のか。
競合との比較で、自社は顧客 からどのように位置付けられているの か。
顧客が重要視しているサービスは どのようなもので、実際にそのサービ スを顧客はどのように利用しているの か。
そして、自社としてそれぞれのサ ービスをどのように位置付け、経営資 源の投入を行い、顧客価値を高めて いくのか――ということである。
現実には、このようなデータを全て 集めて教科書通りに分析することは難 しいであろう。
しかし、実際にセグメ ント化から始まって、意思決定に必要 な要件を整理するなかで、五段階程 度のレベルにでも分類できると、市場 環境と戦略的な指針が浮かび上がっ てくるはずである。
ターゲット顧客の設定がカギ こうしたカテゴリー・マネジメント の戦略設定のプロセスから見た時の、 今日の日本の流通業が抱える課題の 一つは、ターゲット顧客の設定である。
画一化された消費構造から多様化へ 移行したことで今日、様々な消費者 ニーズが市場に混在している。
こうした環境下で、店舗小売業が 来店客すべてを満足させるのは容易で はない。
しかし、現実には一〇〇円シ ョップが流行る一方で、最近都内で は高級食品スーパーが増えている。
賢 い消費者は「買い分け」を行うように なっているのである。
消費の多様化が進むということは、 様々な種類の業態が存在可能になっ てくるということである。
それなのに 全てのニーズを満足させる店舗にしよ うとすると、いわゆる「焦点」を失っ てしまう。
そこでターゲット顧客の明 確化が必要になるのである。
その一方で小売業ゆえのジレンマも 存在する。
昨今では「集中と選択」を スローガンに、効率の悪い分野や将来 性の低い分野を切り捨てることが重要 かのように言われているが、店舗小売 業においてはそうとは言い切れない側 面がある。
店舗は顧客サービスという観点から、 様々アイテムを抱え、販売しなければ ならない。
つまり扱うカテゴリーや品 揃えの幅は重要である。
そこでターゲ ット顧客を明確にすることで、どの商 品カテゴリーに力を注ぐのか、その配 分を上手く考えること、つまりポート フォリオ管理が鍵となってくる。
さらに経営の効率性を考えると、経 営戦略レベルの方向性と、現場の施 策との整合性が重要になる。
経営戦 略は集約されたデータをもとに市場全 体を俯瞰しながら意思決定される。
し かし、日々の現場では目の前で起こっ ている局所的な現実への対応が求め られる。
マクロ的な方向性と、そうし た現実の狭間で「焦点」が曖昧にな ってしまう恐れがある。
カテゴリー・マネジメントのフレー ムワークでは、この整合性も実現でき るようになっている。
店舗からのPO Sデータや自社で持つ顧客データ、市 場データ、外部からの消費者データな どの様々なデータを使って、経営戦略 から商品カテゴリー毎の戦略、そして 戦術レベルでの売場作り、棚レベルで 実現される品揃え、棚割、価格設定 に至るまで、バランスの取れた意思決 定を実現しようとしている(図2)。
市場分析から施策を導きだす 「小売業の戦略」のステージでは経 営戦略という観点から「ターゲット顧 客」「戦略指針」「競合」「カテゴリー の役割」「経営資源の戦略的配分」を 図2 顧客ニーズ、企業戦略、カテゴリー戦略、 店頭活動の整合性 企業戦略 カテゴリー カテゴリー カテゴリー 店 店 店 店 店 店 店 売場 売場 売場 売場 売場 棚 棚 棚 棚 棚 棚 棚 棚 顧客 顧客 顧客 顧客 図3 カテゴリー市場分析から施策を導き出す カテゴリー計画立案 カテゴリーの定義 カテゴリーの役割 カテゴリーの評価 評価指標の規定 カテゴリーの戦略 カテゴリーの戦術 カテゴリー計画の実施 カテゴリーのレビュー 消費者の意思決定を助けるグルーピングを規定する 決定されたカテゴリーの戦略的役割を規定する カテゴリーを分析し、ビジネス機会を発見する 具体的な指標および目標を規定する カテゴリーのマーケティング戦略、補充戦略を規定する カテゴリーの戦術(品揃え、棚割、販促、価格など)を規定する 規定した戦術に基づき、プランを実施する 実施された結果をレビューする 63 JANUARY 2003 導き出した。
今度はこれらに基づいて 商品カテゴリー毎の具体的な施策を 導き出す。
前述のようにカテゴリー・ マネジメントでは従来から八ステップ と呼ばれる意思決定プロセスを活用し てきた。
カテゴリー部門でも、この八 ステップを通じてサプライヤーとの協 働を進めていく (図3)。
戦略のステージでもそうであったが、 ここでも分析テンプレートを活用して、 分析・意思決定を繰り返す。
市場・ 消費者データや、分析結果をインプッ トとして、それらを分析した結果から 意思決定(アウトプット)を行ってい く(図4)。
この繰り返しによって、実 際の店頭施策までを分析する。
カテゴリーの定義では、商品カテゴ リーの構成群を整理する。
サブ・カテ ゴリーという形で、カテゴリーを消費 ニーズの観点から分類していくのであ る。
ここで重要なのは、消費 者が購買選択する際の意思決 定のツリーを考えることであ る。
例えば飲み物を買う時に、ブ ランドで選ぶのか、あるいはお 茶類、炭酸飲料といった種類 で選ぶのか。
お茶類であれば、 日本茶か烏龍茶か。
またサイ ズは2リットルのペットボトル か缶入りか、などといった選 択肢を消費者は持っている。
こ れを整理し、階層化する。
こ のツリーがカテゴリーを分析 する際のクラスターとなり、品 揃えの配分決定や、棚割での グルーピングの基礎になる。
カテゴリーの役割は、戦略 のステージで決められるが、こ こでカテゴリー・キャプテンの サプライヤーと確認を行う。
カテゴリーの評価では、戦略レベル で行った市場や属性別の消費者分析 を、カテゴリーレベルに落とし込む。
それによって機会ギャップなどを見出 す。
そして具体的なビジネスの目標と 評価指標を定める。
売上、利益だけ でなく、そのカテゴリーを店で買う人 の数や、在庫回転率など、それぞれの カテゴリー毎に定める。
カテゴリー戦略・戦術では、カテゴ リーの機会や目標と店舗の戦略との 整合性をとる。
それによって具体的な 施策を方向付けする。
カテゴリー戦略 の方向性には主に「来店促進」、「購 入量拡大」、「競合からの防衛」、「利益 増加」、「キャッシュフロー改善」、「エ キサイトメントの創造」、「イメージ強 化」などが上げられる。
このうち例えば「来店促進」つまり 自店へのターゲット顧客の来店を増や すのであれば、顧客数を増やすか、来 店頻度を上げるというアプローチがあ る。
来店頻度を上げるのであれば、消 耗が早く購買頻度の高い必需品的な カテゴリーの扱いは鍵になる。
ターゲ ット顧客に対するそのカテゴリーの魅 力を高めていかなければならない。
品 揃えを増やし、競争力のある価格設 定を実現し、店内でも目立つ場所に スペースを取る必要が出てくる。
このように小売業の戦略に沿って、 そのカテゴリーで何を行うべきかを、 このプロセスで検討して決める。
その 結果、戦術の四つの領域である、「売 場」、「品揃え」、「棚割」、「価格」まで を結びつけるのである。
このようなプロセスを経ることで、 小売業のマーケティングおよびマーチ ャンダイジングが明確になってくる。
ここからロジスティクスの打ち手も導 き出されてくる。
例えば、カテゴリー 毎の売上の目標から、物流におけるキ ャパシティの目安が見えてくる。
必要 な在庫スペース、カテゴリー毎のスペ ース配分などの計画の指標となるもの が得られる。
また具体的な店頭施策の展開に応 じて、ロジスティクス手法の選択肢が 決まってくる。
店頭回転率の高い商 品あるいは低回転率とみなしている商 品、低い価格で販売し、数量で稼ぐ 商品や、高いマージンを目指す商品な ど、各カテゴリーの扱い方がロジステ ィクス戦略の重要な指標となる。
ECRには、EDI、CRP、ク ロスドックなど補充の最適化のための 様々な手法がある。
このような手法の 特性に応じて、カテゴリー戦略・戦術 に応じて適用していくことで、マーケ ティング・マーチャンダイジングとロ ジスティクスの連動を実現しようとす るのである。
図4 テンプレートを活用した分析 インプット 分  析 アウトプット 消費者アセスメントデータ 消費者アセスメント 市場アセスメント 小売アセスメント 世帯浸透率 購入サイクル 計画購入比 カテゴリー/ サブカテゴリー ・年間購入額 ・購入サイクル ・1回当り購入額 等 市場アセスメントデータ ・シェア ・市場規模 ・市場成長率 等 小売アセスメントデータ ・売上高 ・利益率 等 消費者アセスメント 成長率 Winner GAPS シェア 備考 カテゴリー名 分析結果 カテゴリー/ サブカテゴリー カテゴリー シェア 市場成長率 平均シェアとの ギャップ カテゴリー/ サブカテゴリー 利益変動 年間利益 利益率

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