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JANUARY 2003 72
CLM(Council of Logistics Management)は、ロ
ジスティクス分野では世界最大の規模を誇る非営利
の研究団体です。 ロジスティクスに関わるあらゆる
業界の実務家、ベンダー、コンサルタントに学者も
含めて約1万2000人が所属し、本拠地である米国の
各都市だけでなく世界に100カ所を超えるラウンド
テーブル(支部)を設置しています。 1963年に設立
され85年に現在の名称になりました。
CLMはロジスティクスに関係する職能的専門家
の個人会員から成り立っています。 その目的は職業
的ロジスティクス専門家に対して教育の機会や最新
の情報を提供することによってロジスティクスの発
展を強化することにある、とうたわれています。 学
術論文誌も出していますが、いわゆるアカデミック
な学会ではありません。 このよ
うな組織は日本では未発達です。
たとえばJILSのような企業単位
の加盟による業界団体的組織と
も、物流学会などの文部科学省が管轄する学術団
体とも違うわけです。
その特性はCLMの年次総会によく現れています。
どのセッションでも具体的なソリューションや実施
事例、システムが次々に発表されていきます。 大学
の研究者の発表もありますが、それらは最新の学問
的研究成果ではなくて最近の技術のわかりやすい紹
介や業界に関する調査が主体で、それもごくわずか
です。 物流業界の実務家のためのコンベンションな
のです。 そこに大勢の人が詰めかけるのは、そこに
いけば業界の現状が分かる。 知人やキーマンにも会
えるからです。
一般に米国では、職能団体が自分達の仕事の社
会的地位や世間的な認知度を向上させるということ
に熱心です。 CLMも例外ではなく、待遇やスペック
に対する調査を定期的に行ったりしています。 優秀
な学生や研究者に奨学金を出したり、博士課程の学
生の研究発表と大学でのカリキュラムや教育方法を
研究することを中心にした教育者セッションも毎年
の年次総会の前日に設定されています。
このようなイベントに毎年会員の半数にも及ぶ
5000人以上の人間が集まり、早朝から夕方までいく
つものセッションや現場見学ツアーに参加して新し
い知識や事例を吸収し、昼食会と夕食会で一同に
会して意見の交換を行っているのは壮観です。 いい
意味でのアメリカ社会のダイナミズムを感じます。
日本からは今年も20人ぐらいの参加者がありました
が、まだアメリカから学ぶべき点は多いはずです。
前号の特集でも紹介されていたように2002年の年
次総会はサンフランシスコで開催されました。 全体
の印象としては、まずSCMの概念とシステムが完全
に普及したことを実感しました。 SCMはブームの時
期を過ぎて、完全に産業界に定着したようです。 CRM
とCPFRにも依然として注目が集まっていました。
システムに関しては、プラニングソフトよりも現
場の操業に直接関わるWMS(倉庫管理)とTMS
(輸送・配車計画)の実行系
ソフトが中心でした。 また将
来のロジスティクス管理に大
きなインパクトを持つと考え
られる非接触型の自動認識ツール、RFIDは広く実
用化されるまでには、まだ時間がかかりそうだとい
う印象です。
前年の同時多発テロの影響でロジスティクスのエ
マージェンシーリスクがトピックになっていたのは
予想通りでしたが、同時にシステム投資のコスト/
ベネフィット、ROIに対する意識が強まっているの
が印象的でした。 これも不況の影響なのでしょう。
各種のデータ、とくにKPIやメトリクス(測定)に
ついての発表が数多く見受けられました。
こうしてCLMの総会を振り返ってみると、米国
には工学的に課題を解決しようとする意識が強いこ
とに気付きます。 まず全体構造と部分の関係をはっ
きりと整理して、そこから論理的に導き出されるソ
リューションを実施して、きちんと数値的に評価す
る。 このようなエンジニアリングマインドは、日本
のロジスティクスを高度化していく上でも、とても
重要なカギになる。 私はそう感じました。 (談)
CLMの大会って、どんなところ?
ロジスティクスの高度化を目指す
実務家研究団体の大発表会です
たかい・えいぞうコロンビア大学工学部大学院経営科
学研究科修了(M.S)。 三菱石油を経て、平成6年より静
岡大学人文学部経済学科教授(経営情報論)。 平成13
年定年退官後現職に就任。 開発とコンサルティングの技
術指導に当たっている。 日本オペレーションズ・リサー
チ学会副会長、経営情報学会理事、エネルギー経済研究
所客員研究員等を歴任。 論文等多数。
フレームワークス 高井英造取締役
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