ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2003年1号
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郵船航空サービス

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

JANUARY 2003 52 米国港湾ストで特需発生 二〇〇三年三月期中間決算の発表が一巡 したが、業績が好調であったのは国際航空 貨物事業者(航空フォワーダー)だった。
その中でも専業事業者である郵船航空サー ビスの決算が、一番ポジティブサプライズ となった。
事業環境の改善に加えて、コス ト削減が予想以上に進み、当初の業績見通 しを大幅に上回る好決算だった。
二〇〇二年一〇月以降、米国西海岸の港 湾ロックアウトなどの影響で自動車部品関 連の荷動き特需が発生。
下期の業績への収 益貢献も大きくなると見られる。
来期はこ うした特需の一時的な反動も考えられるが、 国際航空貨物事業は中期的にも物流業界の 中で数少ない成長分野になるはずだ。
同社の二〇〇三年三月期中間期の連結業 績は、売上高五〇五億円(前年比一三・ 九%増)、営業利益二八・五億円(同二〇 八・八%増)、当期利益十三・三億円(同 一五七・八%増)だった。
前二〇〇二年三 月期の通期決算、売上高九一五億円、営業 利益二二・七億円と比較すると、半期で既 に前期の利益水準を上回ったことになる。
通期の会社計画は、売上高一〇五〇億円、 営業利益五九億円、経常利益六二億円、当 期利益三二億円で、見通しも明るい。
売上 高営業利益率は五・九%、連結ROE(株 主資本当期利益率)は十二%台と予想され、 物流業界の中でも、高い収益率となる可能 性が高い。
海外の航空フォワーダーと比較 しても、トップクラスとなるだろう。
株式市場全体が低迷している中で、株価 も一〇〇〇円前後の水準を維持。
二〇〇二 年十一月二二日の決算発表後にはストップ 高(一日で最大の上昇率となる)を記録、 現在は一四〇〇円前後で推移している。
時 価総額は依然として二五〇億円程度である が、下期も好業績が期待されており、今後 は拡大の進む可能性が高い。
同社の地域別事業セグメントは、?日本 (二〇〇二年三月期中間期の売上高三〇三 億円、売上構成比六〇・一%)、?北米 (同五一億円、同一〇・一%)、?欧州(同 四四億円、同八・九%)、?東アジア(同七〇億円、同十三・九%)、?南アジア・ オセアニア(同三五億円、同七・一%)と なっている。
この地域セグメントを前年同期比の伸び 率で順位付けると、南アジア・オセアニア (前年同期比六三・一%増)、東アジア(同 二四・一%増)、欧州(同一六・一%増)、 日本(同十一・七%増)、北米(同七・ 一%減)となる。
同社にとってアジアの 重要性が非常に高まっていると言えるだ ろう。
また、事業別に見ると、主力の貨物運送 事業(四八七億円)だけでなく、連結子会 社の郵船トラベルで行っている旅行事業 第22回 郵船航空サービス 郵船航空サービスの業績が好調だ。
中間期は米国 港湾ストに伴う特需の発生で大幅増益を記録した。
決算発表後、株価はストップ高に。
時価総額拡大の 可能性も高い。
ただし、不振の続く旅行事業をどう 合理化していくかなど課題も残されている。
北見聡 野村証券金融研究所 運輸担当アナリスト 53 JANUARY 2003 親会社の日本郵船は中国最大のコンテナ 船会社であるCOSCOと中国のロジステ ィクス事業での提携を決めている。
提携効 果を最大限発揮するためにも、郵船航空サ ービスの役割が重要になってくると思われ る。
第二に、航空貨物事業ばかりでなく、国 内外の戦略的なロジスティクス事業の再構 築が求められる。
直近では、日立物流との 戦略的アライアンスを構築することで合意 した。
荷主側のグローバル規模での生き残 りをかけた事業統合や、サプライチェーン マネジメント展開による物流合理化とコス ト削減の急速な進展など、物流業界を取り 巻く環境は激しく変化している。
それに柔 軟に対応していくための体制づくりが提携 の目的だった。
具体的には総合システム物流業者として 成長を続ける日立物流が郵船航空サービス の国際物流ネットワークとサービス網を活 用することで、世界規模での事業拡大と競 争力の強化を図る。
一方、郵船航空サービ スは日立物流のシステム物流事業の提案力、 ソフト力、運営ノウハウおよび国内外のシ ステム物流センターなどの活用で、さらな る事業領域の拡大と顧客サービスの向上を 図る、という計画となっている。
旅行事業のリストラが課題 第三に、旅行事業の去就である。
前期の 営業利益は一・八億円の赤字であったが、 今上期の営業利益は四五〇〇万円の黒字と なった。
合理化施策を進めた結果、最悪期 からは脱しているように見える。
しかしながら、日本の旅行業界を概観す ると、料金のディスカウント合戦や、景気 低迷を背景にした団体旅行の不調に加え、 何よりもインターネットの普及で従来のビ ジネスモデルが収益を生み出さなくなって きているなどマイナス要素が多い。
郵船ト ラベルはビジネス顧客向けの業務渡航を中 心としてきたが、主力の航空貨物事業との シナジー効果は年々薄れてきているように 思われる。
事業売却を含めた抜本的な対応 策が必要とされよう。
いずれにしても、同社は今、国際航空貨 物専業事業者というポジションから、世界 にネットワークを拡げる物流企業へ変身す る過渡期にあると考えられる。
社内的なコ スト削減などリストラ策は既に効果が出始 めている。
しかし親会社である日本郵船の グループ戦略の中で、同業他社との差別化 をどのように図っていくのかなど課題も少 なくない。
今後の経営の手腕が問われてい る。
きたみ さとし 一橋大学 経済学部卒。
八八年野村 証券入社。
九四年野村総 合研究所出向。
九七年野 村証券金融研究所企業調 査部運輸セクター担当。
社団法人日本証券アナリ スト協会検定会員。
プロフィール (一七・八億円)がある。
同社の中期成長のポイントとして次の三 点に注目している。
第一に、主力の航空貨 物事業では、前述したように近年はアジア、 特に中国のウエイトが高まっている。
アジ ア域内の経済成長に加えて、世界の交易条 件が南北トレードから中国を中心とする東 西トレードに変化しているのが要因であ る。
こうした構造的な変化に対応するた め、中国拠点の一段の整備拡張が求めら れよう。
郵船航空サービス過去5年間の株価推移 (円) (出来高)

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