ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2003年1号
特集
欧州市場の現場 3PLの揺り戻しが起きている

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

JANUARY 2003 10 「3PLの揺り戻しが起きている」 90年代以降、欧州ではロジスティクスのアウトソーシングが活発にな り、それに伴い3PLが急成長を遂げた。
ところが最近になって再びロ ジスティクスを内製化する企業が出始めている。
サービスを高度化でき ない3PLはいずれ淘汰されていく運命にある。
フランダース・ロジスティクス研究所 フランシス・ローム研究員 3PLサービスに不満 九〇年代以降、欧州ではロジスティクスをアウトソ ーシング(外注化)する動きが活発になった。
本業で はないロジスティクス業務を物流専業者に委託するこ とで、ロジスティクスコストを削減。
自らは生産や販 売といったコアコンピタンスに専念する。
欧州企業の アウトソーシングの目的は米国、日本とまったく同じ だった。
こうした企業の意向を受けて急成長を遂げてきたの が3PL(サードパーティー・ロジスティクス)だ。
当初、3PLは倉庫内でのオペレーションや輸配送と いった単機能の物流サービスを提供するにとどまって いた。
しかし、年を追うごとに様々な付加価値サービ スを提供できるまでに進化した。
現在では顧客企業の サプライチェーンをコントロールしたり、サプライチ ェーン戦略そのものを立案するまでに至っている。
ここまで守備範囲を拡げてきた3PLを最近では4 PL(フォースパーティー・ロジスティクス)と呼ん でいる。
4PLは保管、輸送などロジスティクスの現 業部分を担当する3PL各社を顧客企業に代わって 一括で管理する役割を担う。
顧客企業はサプライチェ ーンのマネジメントそのものを4PLに丸投げできる ため、とても使い勝手がいい。
実際、欧州では多くの 企業が4PLを活用することで成果を上げている。
欧州の4PLの代表格はドイツポストだ。
同社はも ともとドイツを本拠地とする国営の郵便業者だったが、 民営化されたのを機に3PLのダンザス、国際宅配便 業者のDHLなど有力物流業者を相次いで傘下に収 めてきた。
自らは4PLとして機能し、日々のオペレ ーションは傘下の企業に担当させる、という体制を確 立することが一連の企業買収の狙いだった。
3PLから4PLへ、サービスプロバイダー側の物 流業者がレベルアップしたのに伴い、欧州ではロジス ティクスのアウトソーシング需要が拡大してきた。
そ の傾向は現在も続いている。
また、従来オランダやベ ルギーには物流センターで働く人々の雇用を守るため の法的規制が存在していたが、これが撤廃されてアウ トソーシングしやすい環境になってきたことも、3P Lや4PLにとってはビジネスを拡大させていくうえ で追い風となっている。
しかしその一方で?揺り戻し現象〞も発生している。
3PLへのアウトソーシングに踏み切ったものの、期 待した効果が出ないために再び内製化に切り替える企 業が増加しているのだ。
例えば、スウェーデン出身で 現在デンマークに本拠地を置く大手家具チェーンの 「IKEA(イケア)」。
同社は家具の配送をある3P Lに全面委託してきたが、再び自社で配送する体制に 戻している。
ちなみに同社は内製化を機に環境問題へ の配慮からトラック中心だった配送を鉄道利用へとシ フトさせたという。
アウトソーシングを中止した理由の一つは3PLの 提供するサービスに満足できなかったからだ。
家具は 大型貨物であるため、荷扱いなど作業面で特殊なノウ ハウが必要になる。
それでも同社は外注化できると判 断して3PL利用に踏み切った。
ところが実際には、 荷物事故が発生するなど顧客の満足度が以前に比べ 低下してしまったという。
このように欧州では4PLの登場でアウトソーシン グに前向きな企業が増えている反面、内製化に逆戻り する企業も出始めている。
ロジスティクスの二極化が 進んでいるわけだ。
そこで肝心なのは外注化と内製化 のどちらが自社に適しているのかをきちんと見極める 能力を身につけることだ。
Interview 11 JANUARY 2003 欧州市場の現場 第1特集 一方、アウトソーシングニーズの高まりでビジネス チャンスが拡大しているとはいえ、物流業者にとって 現状は決して安泰とは言い切れない。
顧客企業を納 得させるサービスを提供できなければ、遅かれ早かれ 淘汰されてしまう。
競合企業と共同物流 最近、荷主企業サイドでは「コラボレーティブ・ネ ットワークス(Collaborative Networks )」という言 葉がロジスティクスのキーワードの一つとなっている。
この言葉は簡単にいえば共同物流のことを意味してい る。
欧州でも共同物流はすでに広く浸透しているにも かかわらず、改めて注目されているのは何故か。
これ まで共同物流は競合関係にない企業同士によるものが 主流だったが、それが競合する企業同士による取り組 みへと発展しているからだ。
例えば、英国の老舗スーパーマーケットチェーンで あるセインズベリー(Sainsbury )。
もともと同社は各 店舗への商品供給のために自社で専用の物流センター を用意してきた。
ところが、その一方で最近ではライ バル企業と物流センターを共用するという取り組みを 始めている。
物流センターの空スペースをライバル企 業に開放することで、施設の稼働率を上げてコストダ ウンに結びつけようという狙いだ。
過去に欧州の小売業界では激しい競争が繰り広げ られてきた。
鎬を削ってきた企業同士が「商いと物流 は別次元である」という認識の下、ロジスティクスの 共同化に踏み切ったという事例は世界でもまだ数える 程度しかないだろう。
また、ビール業界ではとても興味深いプロジェクト が新たに動き出した。
一般にビール業界では生産工場 から流通倉庫を経て顧客に配送するという物流体制 がメーカーごとに構築されている。
これに対して、こ のプロジェクトは複数メーカーの製品を共同配送し、 しかも個々で用意してきた流通倉庫を廃止してしまお うという試みである。
仮にベルギーで生産されたビールをドイツのある都 市まで運河を利用してバージ(艀=はしけ)で幹線輸 送後、個配するとしよう。
各ビールメーカーはまず生 産工場から港まで製品を運んで、バージに載せる。
そ の後、顧客から注文を受けた時点で、各メーカーはバ ージで輸送中の製品に在庫引き当てをする。
次に各メ ーカーの出荷情報(届け先やケース数)が確定した段 階で、情報システムを使ってその情報を摺り合わせる。
最後に届け先が共通する場合はドイツの港で製品を陸 揚げ・仕分け後、混載トラックを仕立てて配送する、 というフローである。
このプロジェクトによるロジスティクスコスト削減 効果は大きい。
共同配送によってトラックの積載効率 が上がる。
さらに、バージを倉庫と見なす(これを 「フロントウエアハウス」と呼ぶ)ことで、ビールメー カーが各地に設置してきた物流センターが要らなくな るからだ。
ちなみに運河を利用するのはトラック輸送とは異な り、交通渋滞に巻き込まれることがなく、安定したリ ードタイムを維持できるため。
もちろん、CO2(二 酸化炭素)の排出量削減など環境問題への配慮とい う意味合いもある。
すでにオランダでは二〇〇二年九月に実証実験をス タートさせており、一定の成果を上げている。
これを 受けて、ベルギーでもフランダース政府主導で、国内 最大のビールメーカーであるインターブリュー社を中 心としたプロジェクトを二〇〇三年一月に立ち上げる 計画だ。
(談) フランダース・ロジスティクス研究所 (FLANDERS HOUSE OF LOGISTICS= VLAAMS HUIS VAN DE LOGISTIEK) ベルギー・フランダース政府が出資するロジスティクス専 門の研究機関。
2002年末に発足した。
フランダース地区に 進出するメーカー、3PL企業などにロジスティクスのノウ ハウや最新トレンド情報を提供することを目的としている。
将来はコンサルティングサービスや物流情報システムの開発 なども手掛ける計画だ。
創立メンバーの1人であるフランシ ス・ローム(Francis Rome)氏はDHL出身。
現在、ボス トン大学のブリュッセル分校でロジスティクス担当の教授と して活躍中。
この研究所のホームページアドレスは www.VlaamsHuisLogistiek.be

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