2005年3月号
欧州通信
欧州通信
クーネ&ナーゲルの4PL戦略
最新現地レポート 欧州ロジスティクス通信 MARCH 2005 58外注化失敗の原因は荷主にも私の手元に 物流のアウトソ スに関する二つの最新の調査結果があります 一つは 物流業務をアウトソ スした荷主に対して 契約更新時に以前と同じロジステ クス業者と再契約を交わしたかどうかという内容です 同じ業者と契約を更新したと回答したのはわずか四〇%で 残りの六〇%はロジステ クス業者を新たに選んだか 外注そのものをやめて自社でやるようにした と答えています 別の調査でも同じような結果が得られています 昨年 物流をアウトソ スした荷主のうち 四九%が業務の実態に不満を持 ているという数字です そのような荷主は 一日でも早く現在取引のあるロジステ クス業者を切り替えたいと思 ているのです どうして荷主は物流のアウトソ スに こんなにも不満を抱いているのでし うか 多くの場合 その原因としてロジステ クス業者の能力不足が挙げられています 業界誌を開けば そのような記事ばかりが並んでいます このような会議 欧州3PL会議 でも同じ傾向があるようです 悪者はロジステ クス業者だ と そう決めつけるのは簡単なことですが 一つひとつの事例を丹念に調べていくと 必ずしもロジステ クス業者の責任だけではないことがわかります ロジステ クス業者を一方的な悪者に仕立てあげることは 冒頭に挙げた荷主の不満を解消することにはならないのではないかと思 ているのです そして 調べていくと物流をアウトソ スする荷主の準備不足に問題があるということに行きつくのです この講演では どのようにすれば 物流のアウトソ スが失敗しないのかについて 荷主側でできることを中心に話していきます 物流業者はROIが低いその前に われわれの組織についてお話しまし う ク ネ&ナ ゲルは一八九〇年に創業しました まず海上貨物と航空貨物のフ ワ デ ング業務をスタ トさせました 本社はスイスのシンデレギにあり 現在は世界約一〇〇カ国に二万人近い社員を抱えています 私が属しているのは サプライチ ン・ソリ シ ンという部門で MBA 経営修士号 を持 たロジステ クス業界のベテラン社員二五人が働いています われわれは荷主にコンサルテ ングを行い 必要な場合には 実際の業務にも携わ ています 話を物流のアウトソ スに戻しまし う さきほど 物流のプロジ クトの失敗は ロ第 2 回ク ネ&ナ ゲルの4PL戦略一〇〇年以上の歴史を持つスイスの総合物流企業 ク ネ&ナ ゲルはここ数年 4PL フ スパ テ ・ロジステ クス に力を入れている 4PLは荷主の要望を受けてロジステ クスをト タルコ デ ネ トしたり 複数の3PLをコントロ ルする役割を担う 同社の4PL部隊で 社内の頭脳集団という位置付けである サプライチ ン・ソリ シ ン部門 を率いるレインハ ド・シ リラス上級副社長が欧州3PL会議で物流アウトソ シングの問題点などについて講演した その内容を紹介する 59 MARCH 2005ジステ クス業者の実力不足や革新性のなさに帰結される傾向にあると説明しましたが ロジステ クス業者は何でもかなう魔法の杖を持 ているわけではありません それどころか ロジステ クスというのは 低い利益しか上げることのできない業務であることを認識する必要があります イギリスの主要業者の昨年の決算数字から税引き前のROI 投資収益率 を見てみまし う エクセルが三%台 ウ ンカントンが二%台 買収される前のチベ ト&ブリテンが一%未満 クリスチ ン・サルベ センが五%台 DHLのイギリス部門が三%台 となります つまりロジステ クス業界は いつも同業他社との競争にさらされる結果 とても利幅の薄い業態なのです 投資をしてもその見返りが期待できないことは 新しいサ ビスが生まれにくいことを意味しています これは世界中のロジステ クス企業に ついてまわる宿命ともいえるかもしれません だからこそ アウトソ スする荷主の側が準備万端で臨む必要が出てくるのです アウトソ スの理由 現状への不満同時に 物流のアウトソ スは矛盾を含んでいることを 頭の片隅に入れておくのも大切なことです われわれは今日 優れたサプライチ ンを構築することが 企業の競争優位性を高めることを知 ています しかし多くの荷主にと てサプライチ ン・マネジメントは 本業以外の部分なので できれば外部の専門家に丸投げしたいという気持ちがあります いかなる企業もその顧客との接点は大切にしたいと思う反面 サプライチ ンをアウトソ スすれば 一番大切な顧客との接点を他の会社の人間 例えばドライバ などに任せることになるのです 荷主が物流のアウトソ スを決める方法は 大きくわけて三つがあります 一つは 社内で十分に協議・検討されて 必要な部署には根回しされた結果のアウトソ ス 二つ目は 経営権を握る一部の人間の鶴の一声で決まる場合 オレがアウトソ スするとい たら するんだ という格好で だれもその意義を尋ねたり 反対することはできない状態で決まるケ スです 最後は ライバル企業がアウトソ スを始めたので うちもや てみよう というように流行に乗ろうとする場合 自社の必要性を考えずに ただ流行だからアウトソ スする というものです アウトソ スという企業の一大事を決定する態度としては 大変頼りなく見えるのですが この最後のケ スが意外と多いのです もちろん 一番望ましいのは最初の社内で十分に協議された結果のアウトソ スであることは言うまでもありません さて 荷主はどうして物流をアウトソ スするのでし うか アウトソ スしたい理由というのは 裏を返せば現状への不満でもあるわけです この点をじ くり考えることが 物流のアウトソ スを成功させる大事なカギとなります 最初は 物流にかかるコストの削減があります アウトソ スの主要な理由でありながら またアウトソ スの結果に対する主な不満でもあります ロジステ クス業者のパンフレ トにはよくこんな宣伝文句が書いてあります われわれは ロジステ クスに特化した人材やノウハウを持 ています またすでに一定の物量があるので 下請け会社からのボリ ムデ スカウントが得られます 貴社の業務を効率化するネ トワ クもあります そうい た宣伝文句にウソはありませんが 物流をアウトソ スして コストを削減するのはそう簡単なことではありません 一番のネ クとなるのは 荷主自身が それまで社内でまかな ていた物流業務にどれくらいのお金がかか ているかを知らないことにあります われわれが昨年 コンサルテ ング業務をクーネ&ナーゲルのレインハード・シュリラス上級副社長MARCH 2005 60請け負 た ある大手の清涼飲料水メ カ の話です インバウンドの業務のコストを削減したいというので 実際これまでどのくらいかか ていたか と尋ねると 五億 十二億ドル 約五五〇億 一三〇〇億円 の間 という答えが返 てきて驚いたのを覚えています 五億ドルと十二億ドルでは 全然違います 例えば 社内でプロジ クトと立ち上げるときに 経営のト プから予算を尋ねられて 五億か十二億ドルぐらいでし うかねえ と答えれば ト プは予算すらは きりわからないような人間に会社のプロジ クトを任せていいのかと不安になるでし う われわれはこれを聞いたとき このまま物流をアウトソ スしてもいい結果は生まれないので まずは社内での準備に力を入れまし うと提言しました コスト削減の話を続けると 新しいサプライチ ンを導入するときは いろいろな諸経費が発生するので 一時的にコスト高につくことがあります 荷主はこの点についてあまり考慮に入れていません スタ トア プのコストは多少割高につくことがありますが 一年 二年という単位で見た場合 コスト削減のメリ トが出てくると理解する必要があります もう一つは サプライチ ンにおける条件が変わ た場合です 例えば 小売りの場合で 当初は週三日の店舗配送を 週五日に変えたとします 当然 コストは上がりますが 条件が変わ ても同じ支払い金額でできるはずだという荷主も少なくないのです しかしこれは現実的ではないでし う 財務担当者の理解が必要次に サプライチ ンは本業ではないのでアウトソ スする場合です この場合 大切なのは 業務をアウトソ スしても 業務に関する責任は荷主に残るという点です 話は サプライチ ンとは少し離れますが 私が住んでいる地域の地方自治体がゴミの処理を外部の業者にアウトソ スしたときの話です そのゴミ業者が 一週間ほど ゴミを集めに来ないときがあり 町の担当者に問い合わせたところ ゴミの回収は業者に委託しているので 当方ではわかりかねます という返事が返 てきたのです そこで私は 例え業務をアウトソ スしても 責任は町に残るのだということを説明しなければなりませんでした サプライチ ンのアウトソ スも同じです 荷主がよく口にする言葉に 細かい業務まではわからない ロジステ クス業者はその道のプロなんだから全部任せているよ というのがあります 例えば出荷したはずの荷物が 客先に届かないような場合にこのように言うことがあるのです しかしそんな言い訳が通用しないことは ビジネスに身を置く方ならだれでもわかるはずです 確かに 現場の細かい作業にまで精通する必要はありません しかし日々の業務をコントロ ルして 全般にわた て支障なく進めていくのは荷主の責任です ロジステ クス業者を管理する技術を身につける必要があります それは 実際の業務を行うのとは別の技術であり その点については われわれのような4PL業者がお手伝いすることができると思います 次は コスト部門であるサプライチ ンへの投資は できるだけロジステ クス業者に肩代わりしてもらいたい という理由です 既存の自社のトラ クが古くな たり 倉庫が手狭にな たり 立地が悪か たりした場合 新たに投資するのは できるだけ避けたい できれば 本業である営業活動や研究開本 社 設 立 業 種 資 本 金 C E O ネットワーク 従 業 員 数 売 上 高 スイス シンデレギ 1890年 1億2千万スイスフラン (約100億円) 95億4800スイスフラン (約8300億円=2003年決算) クラウス・ハーンズ 96カ国 600拠点 約2万人(グループ合計) 総合物流業者(サプライチェーンに関するコンサルティングを含む) クーネ&ナーゲル 会社略歴 欧州ロジスティクス通信 61 MARCH 2005発に資金を回したい ロジステ クスに関する自社のアセ トを抑えるにしても アウトソ スはお金がかかることは先に述べました ですから 投資の優先順位として低いロジステ クスをアウトソ スする場合でも 社内の財務担当者を立ち合わせることをお薦めします そこで 金銭面における 短期的なプラスとマイナス それに長期的なプラスとマイナスの理解が得られると スム ズに会社全体のコンセンサスを作ることができます もう一つは ヨ ロ パ特有の問題ですが サプライチ ンにかかる雇用問題を解決する手段として アウトソ スするというのがあります これは とくに季節波動の大きな業界で ピ クの二 三カ月で 一年の物量のほとんどをさばくような企業です そういう企業では 作業員を年間通じて雇用することは負担となりますので 業務のアウトソ スを選ぶ傾向があります それと関連した問題で 政府が毎年のように作る新しい規制への対応策として アウトソ スを選ぶ企業もあります 例えば あと数カ月で イギリスではトラ クドライバ を対象とした時短が始まり ドライバ のコストは三〇%増となります そうい た各種の新しい規制に対応するために プロの手腕を借りようとするのです 藁にもすがる思い では失敗する自分たちはなぜアウトソ スするのかという理由をじ くりと分析したなら 次は自分たちの会社がどんな会社であるのかを考えてください セ ルス中心の会社なのか 製造部門が主導している会社なのか 権限は分散されているのか それとも一部の経営陣が独占しているのか どれほどコンプライアンスを重視しようとしているのか 季節波動はあるのか ないのか アウトソ スの理由に加えて 自分たちの会社がどんなタイプの会社であるのかがわかれば 次のステ プである実際のロジステ クス業者選びの半分は済んだようなものです なぜなら 業者を選ぶ際には 企業が目指す価値や企業文化とい たものが一致していることが重要だからです 次の図表は アウトソ スをする前のチ クリストとして使 てください 図参照 そして 最初に挙げた二つの調査に出てくるアウトソ スしたことを後悔する荷主とならないように役立てていただけるなら幸いです 最後に一番大切なことを申し添えておきます それは 自社のサプライチ ンがぐち ぐち にな ていて 自分たちの手に負えないからとい てアウトソ スしないということです われわれではお手上げなので 全部プロに任せよう という態度です こうい た 藁にもすがる 態度では 間違いなくアウトソ スは失敗に終わるからです サプライチ ンがうまく機能していないのは表面的なことであり その原因がわからないかぎり だれにも問題は解決できないのです そして問題は しばしばサプライチ ン以外の部分にあるからです サプライチ ンは 企業内のいろいろな活動と密接に結びついていますから サプライチ ンに手を加えることは セ ルス部門や製造部門 財務部門などに多大な影響を及ぼします サプライチ ンを変更しようとするなら 会社の事情に通暁した荷主の社内の人間が主導権を握らない限り 成功は望めないのです 本誌欧州特派員 横田増生 物流アウトソースのチェックリスト □ なぜアウトソースするのかという明確な理由がわかっている □ サプライチェーンのどの部分をアウトソースするのかを決めている □ アウトソースの担当者を決めて十分な責任と権限を持たせている □ 顧客を含めた関係者にアウトソースの概要を説明した □ 物流部門内でのコンセンサスがとれている □ これまでの物流コストを正確に把握している □ 社内で物流アウトソースに貢献できるような人材を探した □ アウトソースで大きな影響を受ける部門の人間を巻き込んでいる □ アウトソースが完了するまでの細かいタイムテーブルができている
