ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2003年2号
リーダーシップ論
ECRのロジスティクス・ツール

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

FEBRUARY 2003 74 カテゴリー・マネジメントのフレー ムワークに基づく分析の結果として、 ビジネス(販売)計画が立案される。
これがロジスティクス戦略・施策の立 案時の主要な要件となる。
そして最終 的に消費者価値が高まるように、販 売計画を支えるロジスティクスの打ち 手を適用することによってECRが具 現化されていくのである。
前に紹介したように、消費者価値 とは、得られる成果(商品の品質やサ ービスの品質)と、その成果を入手す るために費やされる犠牲的要素(費用 や時間)とのバランスで決まる。
ここ には消費者の価値観という主観的な 要素が含まれてくることに留意する必 要がある。
ロジスティクスの役割としてはコス トが重視されがちだが、必要な時に、 必要な場所に、必要な量を消費者が 入手できるという「便利さ」は大切な サービスの一つである。
また商品の品 質のためには、鮮度管理なども重要な 要素となる。
日本では「サービスはタ ダ」と言われるが、消費者は便利さに 価値を認めれば、対価を払ってくれる。
実際、最近では生活時間帯が変化し たことで時間節約型のサービスに対価 が払われたりしている。
消費者価値を実現する方法は一つ ではない。
従ってマーケティングとロジスティクスの組み合わせには教科書 的な模範解答は存在しない。
ロジステ ィクスの戦略そして施策の決定は、最 終的な消費者価値や、マーケティン グ・マーチャンダイジングの指針、輸 送・保管という観点からの商品特性、 そして実際の物量規模やインフラ環境 なども考慮して、複合的かつ包括的 な視点から判断されなくてはならない。
ロジスティクスは常に数値管理を伴 うため、そこに論理性が求められるの はもちろんだが、一方で現代のロジス ティクスは多種・複雑な要件を扱わ なければならない。
そのため論理性と 同時にクリエイティブであることが求 められているのである。
部分最適の目立つ日本 ECRにおけるロジスティクスの代 表的な打ち手としては、主に発注・在 庫管理のための施策として、EDI、 CAO(コンピューター・アシステッ ド・オーダリング)、CRP(コンティ ニュアス・リプレニッシュメント・プ ログラム:連続自動補充)、CPFR (コラボレーティブ・プランニング・フ ォーキャスティング・アンド・リプレ ニッシュメント)などがある。
また輸送に関わるツールとしては、 クロスドック(ケース・レベルとパレ ット・レベル)、マルチドロップ、バッ クホール(帰り便)、カスタマー・ピッ クアップ(引き取り)などが挙げられる。
さらにITソリューションの総称 としてのDRP(ディストリビューシ ョン・リソース・プランニング)やW MS(ウェアハウス・マネジメント・ システム)なども広く利用されている。
これらのロジスティクスの個々のツ ールには、それぞれ長所・短所があり、 実際の施策として適用するにはその特 色を理解しておく必要がある。
本誌の 読者に対して、ツール一つひとつの解 ECRのロジスティクス・ツール 楢村文信 
弌G 
釘達劵優奪肇錙璽ング・マネージャー ECR型ビジネスモデルには、ロジスティクスに関する様々な施策が用 意されている。
そのなかには米国で大きな成果を上げているにもかかわら ず、日本では上手く活用されないという施策が少なくない。
ロジスティク ス戦略の担当者がシステム全体を総合的に捉えきれていないことが、その 一因になっている。
﹇第5回﹈ 75 FEBRUARY 2003 説を行う必要はないと思われるので、 ここでは省かせていただく。
それよりも、筆者が懸念しているの は、「それぞれのツールは単体ではな く、それぞれのツールを補完する仕組 みがあってこそ成り立つ」ということ が日本では十分に認識されていないの ではないかという点である。
日本企業のロジスティクス・システ ムの多くは、極めて高水準な部分最 適の集合体となっている。
しかしシス テムとは本質的には総合的なものであ る。
部分を完全に切り離して考えるこ とは難しい。
それでは、どういう視点 から総合的なシステムを評価すればよ いのだろうか。
その答えはアウトプッ トの価値である。
すなわちサービスに 対するKPI(主要業績指標)とコ ストのバランスである。
欧米の流通業と比較すると、日本 の小売業の売上高・利益に対する販 管費比率は非常に高い。
売り上げを つくるのに多くの経費をつぎこんでお り、しかも多額の経費の割には利益が 出ていないということである。
生産性 が低く、「利益なき繁忙」と言われて いる。
日本の社会インフラコストが諸 外国に比べて高いのは事実だが、日本 にも国際水準に近い経費率・利益率 の小売業があることを考えれば、それ だけを原因とすることはできない。
総合的なシステムにはITや機械 化されたものだけではなく、いわゆる 人間系のシステムまで含まれる。
ロジ スティクスは企業というシステムの一 部であると同時に、社会全体の輸送・ 交通システムの一部ともなっている。
また取引企業と構成するサプライチェ ーンは、ある産業の全体システムの一 部であり、経済システムの一部である。
個別の部分と、総合的なシステム は常に作用し合っている。
そのためロ ジスティクス戦略の立案者には、実務 に関する理解だけではなく、包括的な ビジョンを描く力が必要となってくる。
その中で、各種のツールの使い方を考 えなければならない。
ところが日本国内の現状をみると、 残念ながら非常に近視眼的にツール を捉えてしまっているケースが目立つ。
そのために海外で有効活用されていな がら日本では活用されていないという ツールが少なくない。
海外と日本との 外部条件の違いなども含めて俯瞰す れば、上手くツールを活用することが できるのではないだろうか。
そこで、 ECRにおける代表的な打ち手に関 して、いくつか指摘をしておきたい。
EDI→CRP→CPFR ロジスティクス・ツールの進化 日本ではEDI、CRP、CPF Rが、SCMのなかで別々に議論さ れているようだが、この三つの打ち手 は一つの進化軸上にあると考えるほう が適切である。
米国ECRにおけるC RPのレポートの中でも、CRPの進 化型としてCPFRが位置付けられ ている。
事実、米国でCPFRの父 と呼ばれているJoe Andraski 氏も、E CRにおけるCRPプロジェクトから 一連の取り組みに参画している。
また日本の消費財業界では時折、E DI=EOS(電子受発注)として いる場合がある。
しかしECRにおい ては、EOSは統合的なEDIの中 の一要素という位置づけでしかない。
ECRではEDIが様々なデータの 交換に活用されている。
補充の分野 では、商品マスターから、受発注、事 前出荷通知、仕切書(インボイス)、 請求から決済処理まで、トータルに基 幹システムとの連動の中で活用されて いる(図1)。
これらの統合的なEDI活用は、C RPで成果を上げるための基盤条件 となる。
さらにCPFRでは販売動向 データなどより多くのデータ交換が必 要となってくる。
ところが日本の消費 財業界ではオンライン接続はされてい ても、EOSによる受発注率は一〇 〇%にはほど遠いのが現状である。
その一因はリベートなどの複雑な取 引条件にあると考えられる。
この複雑 かつ適用原則が明確でない流動的な 取引制度は、補充発注の自動化をも 阻害している。
補充を自動化すれば、 取引条件交渉がなくなる。
そうなると 有利な条件を引き出す機会が失われ てしまうのではないかという懸念が買 い手側に存在している。
また従来のシステムでは、取引条件 (特に販売促進の条件)マスターのリ アルタイムでの更改や、個別得意先ご とへの条件設定などが技術的に実現で きなかったことも遠因となっている。
CRPのもつ需要予測機能は「ハ イ&ロー」と呼ばれる販売促進によっ て生じる極端な価格の上下動への対 応には限界がある。
極端なハイ&ロー は価格弾力性の観点からも、その有 効性には疑問符が付く。
さらに需要 の変動を大きくしてしまうことから補 充プロセスへの負荷が大きくなり、オ ペレーション・コストの増加を招くと 図1 統合的なEDI活用 商品・価格・販促マスター 販売動向データ 発  注 確認通知 ASN(事前出荷通知) 受取確認 請  求 支払通知 サプライヤー 流通業 入金 支払指示 銀  行 FEBRUARY 2003 76 いう悪影響を及ぼす。
消費者から見ても、店頭価格の極 端なハイ&ローは、価格に関する不信 感を招いてしまう。
高い時に買うと、 損をした気分になりそのリスクを避け るために、値段が下がるのを待つよう になる。
そこでEDLP(エブリデ ー・ロー・プライス)という価格戦略 が活きてくる。
ただし、EDLPはEDLC(エ ブリデー・ロー・コスト)のオペレー ションが実現できなければ、自社の利 益を削っての消耗戦となってしまう。
それを避けて業務を効率化するには、 やはりIT活用が鍵となる。
価格の変 動幅が小さいこともあり、CRPのよ うな仕組みが、ここでは上手く機能す る。
そして、そのために取引条件も長 期的なパートナーシップを考えたもの に変革が求められるようになる。
その 結果、取引先との戦略的同盟という 考え方が採用されるのである。
しかし極端なハイ&ローには問題が あるものの、需要刺激策としての価格 プロモーションは依然として有効な打 ち手の一つであるのも事実である。
こ れを上手く行うために販売促進のコス ト管理や価格弾力性に基づくプロモ ーションが「販促の最適化戦略」とし て行われるようになっている。
そういった中で、より高い精度の需 要予測に基づくサプライチェーン最適 化のための取り組みとしてスタートし たのがCFAR(コラボレーティブ・ フォーキャスティング・アンド・リプ レニシュメント)である。
さらにCF ARの課題を克服する狙いで生まれ たのがCPFRである。
CFARは需要予測のコーザル(要 因)情報となる販売計画の共有が行 われなかったため上手く機能しなかっ た。
その反省に立ち、CP(共同販 売計画立案)を組み込んだ「CPF Rの九ステップ」と呼ばれるモデルが 構築された。
米国のVICS(米国 流通標準化機構)が発行した「CP FRガイドライン」では、この九ステ ップの二番目のステップである「共同 ビジネス計画立案」として、前号で解 説した「カテゴリー・マネジメントの 八ステップ」が採用されている。
VICSでは、CPFRを行うた めの標準化されたビジネス・モデルと、 それをサポートするEDIメッセージ の標準を提供している。
ビジネス・モ デルは九ステップを核としたものであ る。
CPFRでもCRP同様、統合 的なEDIが基盤となってくる。
このような基盤構築をせずに、関連 性を無視して一足飛びにCPFRを 実現しようとしても、それは非常に困 難なものとなる。
トレーニングもせず にフル・マラソンに挑むようなもので ある。
大きなコンセプトになればなる ほど、じっくりと腰を据えて取り組む 必要がある。
製販同盟に対する誤解 一般にはCRP=VMI(ベンダー・マネージド・インベントリー)と 考えられているが必ずしもそうではな い。
米国のCRPレポート中でも、V MI方式が多数であるとしながらも、 小売業によるRMI(リテーラー・マ ネージド・インベントリー)の事例に 触れている。
リテーラーとベンダーで の共同管理型のJMI(ジョイント・ マネージド・インベントリー)という 考え方も存在している。
VMI方式は日本ではベンダーに 発注権限を全て渡してしまうかのよう な誤解から否定的な見解も多い。
C RPのベスト・プラクティスでは、ベ ンダー(サプライヤー)と小売業(リ テーラー)が共同で目標値を設定し、 それに基づいた在庫管理を行わなけれ ば上手く機能しない。
日々の業務は 任せても、数値管理などは確実に行 わなければならない。
さらに付け加え るなら、CRPそのものがベンダー (サプライヤー)と小売業のコラボレ ーティブなビジネスプロセスでなくて はならない。
このコラボレーティブなビジネスプ ロセスを実行するには、部門横断型でミラー型の組織体制が必要となってく る(図2)。
この部門横断型&ミラー 型の組織体制は、カテゴリー・マネジ メントの推進においても必要とされる 体制であり、戦略的同盟の実現に必 須の組織構造である。
また、先にも触れたように、とりわ け日本市場においては、取引慣行と いう壁もいまだに根強く存在している。
取引慣行・制度もシステムであり、こ 図2 部門横断型ミラー・チーム チーム責任者 カテゴリーマネージャー(チーム責任者) 営業担当 財 務 I T ロジスティクス マーケティング M D バイヤー 財 務 I T ロジスティクス・ オペレーション マーケティング M D 77 FEBRUARY 2003 の機能によって、ロジスティクスの打 ち手がメリットを生まなくなることが ある。
例えば、価格設定の問題である。
日本の消費財業界では、売り手側 が買い手側の指定場所まで商品を届 けることが慣例になっている。
そのた めの輸送費用は基本的には納入価格 の中に含まれている。
店着価格という 考え方であ る。
そこで起こってくるの は、価格以 外の納入に 伴う付帯サ ービスの問題 である。
どこ まで届けるか について明確 な条件は明 記されていな い。
納品場 所が店舗の 荷受場なの か、フロアの ストックルー ムなのか、売 場なのか、そ れぞれの企業 によって異な っているのが 実情だ。
この店着 価格制度に おいて、買い 手側は取引 企業間の業務改革を行っても、それ によるコスト削減などのメリットを目 に見える形で受け取れない。
業務改革 のインセンティブがないのである。
む しろ要不要とは関係なく、より多くの サービスを追加費用無しにベンダーか ら提供してもらおうとする方向に動機 付けされてしまう。
日本の小売業者がベンダーに求め るセンターフィーの問題にしても、サ ービスとコストの関係の不明瞭さに、 その原因がある。
現状では通過型セン ターの必要性を、それがサプライチェ ーン全体において提供する付加価値 とコストから議論することは困難であ る。
こうして取引条件を不透明にして きた売り手側と、その裏をかこうとす る買い手側の交渉ゲームが繰り返され ていることで、ロジスティクスの最適 化のための協働が進まなくなってしま っている。
硬直化した商慣習の影響 EDIによる電子決済でも、取引 慣行の影響は見られる。
欧米では一 回の発注毎に決済が行われるのに対 し、日本では毎月の取引をまとめて精 算するのが一般的である。
発注毎に決 済が行われる環境においては、売掛管 理上過去の出荷に対する決済が完了 していない場合、次の出荷が行われな いことがある。
最終的には与信の問題であるが、こ のような取引慣行下においてはEDI の活用によって決済を正確かつ迅速 することが意味を持つ。
マスターから 決済までをシステムとして統合しよう という動機が生まれる。
しかし日本の ような決済慣行では、相対的な重要 度は低くなる。
ちなみに日本では銀行 業務への政府規制も企業間取引にお ける電子決済システムのサービスの実 現に影響を与えている。
このように現在の日本の硬直化し た取引慣行や諸制度によって、ロジス ティクスにおける打ち手の活用の可能 性は狭められてしまっていると言わざ るを得ない。
しかし、構造改革におけ る規制緩和や、市場圧力による合理 化の中で日本の取引慣行も近年変わ り始めている。
筆者の属する日用雑貨 業界ではメーカーと卸売業の取引にお いて、機能・サービスに基づいた取引 条件という考え方が実際の制度の中 に採り入れられている。
情報化それからIT化が進むなか で、経済システムとそこで活動する企 業は否応なしに構造変革を迫られて いる。
それに伴い、ロジスティクスに はよりクリエイティブで、高度な戦略 的機能を求められるようになっている のである。
(財)流通経済研究所「VICS CPFRガイドライン」より 例外規定 図3 流通業の戦略 流通業の例外基準 流通業者の意思決定 支援データ POSデータ 流通業の例外基準 流通業の活動 どちらか一方あるいは両方の活動 受注の通知 配送の実施 フィードバック ?発注 例外アイテムの修正データ ?例外アイテムに関する協働/問題解決 ?発注予測における例外アイテムの識別 凍結予測 発注予測 ?発注予測の作成 ?例外アイテムに関する協働/問題解決 例外アイテム ?販売予測における例外アイテムの識別 ?販売予測の作成 ?共同ビジネスプランの作成 ?CPFR合意書の策定 例外規定 メーカーの例外基準 メーカーの意思決定 支援データ 供給上の誓約 未解決の供給上の制約 注文 メーカーの活動 例外アイテム メーカーの意思決定 支援データ 流通業者の意思決定 支援データ 小売店舗 流通業の荷受け メーカーの例外基準 メーカーの戦略 資材及び生産計画 製造 受注出荷 計画 補充 予測 消費者

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