ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2003年2号
特集
物流企業番付 ベースカーゴ活かし路線業に進出する

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

FEBRUARY 2003 16 「ベースカーゴ活かし路線業に進出する」 キリンビールグループの地域別物流子会社の統合とグループ企業から の業務移管によって急成長している。
今後はチルド物流機能を強化し、 ビールから食品市場全体に事業領域を拡大する。
同時に親会社の安定 したベースカーゴと全国インフラを武器にして、新たな角度から路線業 にも参入するという。
キリン物流 篠岡方長社長 ――二〇〇〇年に全国七カ所の地域物流子会社を合 併して現在のキリン物流が誕生して以来、順調に業績 が伸びています。
「お陰様で二〇〇二年十二月期も売上高七八〇億円、 営業利益四三億円の増収増益になりそうです。
今期 の二〇〇三年は売上高八〇〇億円を予定しています。
ただし、営業利益は前年の約五%から、半分の二・ 五%に減ります。
タリフの値下げによって、親会社に 還元するのです。
これは合併前のシナリオ通りです」 ――シナリオと言うのは? 「私が親会社のキリンビールで物流を任されていた 九八年に『KL(キリン・ロジスティクス) 21 』とい う改革ビジョンを策定しました。
『二一世紀初頭の物 流のあるべき姿』という副題で起案して、二〇〇五年 をメドとした長期計画を作ったのです」 「具体的には三つの柱があります。
まずはキリンビ ール本体の物流部門の整理です。
工場に属していた物 流部門と、各地の支社に所属していた物流部門を統 合し、物流のスタッフ機能を東西二カ所の物流本部 に全て集約しました。
同時に現業部門をキリン物流に 移管しました」 「二つ目として清涼飲料を扱うキリンビバレッジの 物流もビールに統合します。
これも今年の春までに完 了する予定です。
そして三つ目が広域化対応です。
そ れまでキリンビールは地域別に七つの物流子会社を持 っていました。
その体制では全国規模の流通業者のニ ーズに対応しにくい。
そこで二〇〇〇年一月に七社を 合併して現在のキリン物流を作ったのです」 ――親会社やグループ会社からの業務移管を進めたこ とでキリン物流の売上高が伸びているのですね。
「そうです。
さらに現在、二〇〇三年をメドとして キリンビール内に残っているオペレーション業務、配 車計画やコールセンターの受注処理業務などが中心に なりますが、それをキリン物流に業務移管しています。
計画通りそれらの仕事は二〇〇三年四月一日をもっ て全て当社に移されます。
総勢で一五〇人分程度の 仕事です」 「そのために合併以降の三年間に渡って準備を進め てきました。
キリンビールから当社に担当者が出向し て、ノウハウの移植を進めたわけです。
現状では一五 〇人中九〇人近くが親会社からの出向です。
この出 向者を徐々に減らしていき二〇〇五年から六年までに、 全員親会社に戻ってもらうという段取りです」 チルド機能の整備進める ――「KL 21 」のコスト削減についての目標は。
「キリンビールに対して当社は二〇〇三年四月に一 〇%のタリフの値下げを約束しています。
約三八億円 です。
キリン物流は二〇〇〇年に合併したわけですか ら、これは見方によっては三年間の猶予期間をもらっ たということです。
この三年間でリストラを進め、値 下げの原資を捻出しました」 ――篠岡社長は、「KL 21 」計画の途中まで親会社で 物流子会社の尻を叩く立場だったのが、途中から叩か れる立場に変わったわけですが。
「自分が起案したシナリオ通りですから、違和感は ありませんでした。
ただし、物流事業者という立場に なって、改めてその重要性を意識するようになったテ ーマが二つあります。
一つはドライ貨物だけではダメ だということです。
二〇〇三年九月の酒の小売免許の 規制緩和によって今後は『酒食一体』の物流になって いくことが予想されます。
当社も酒の物流から広く食 品物流というカテゴリーで生きていく必要がある。
で あるならチルドもできる機能がないと、食品物流の事 Interview 総合1 位 17 FEBRUARY 2003 業者としての競争力を確保できない」 ――となるとライバルは他のビールメーカー系物流子 会社ではない。
「私としてはキユーソー流通システムと味の素物流 を意識しています。
とくにキユーソーさんは親会社の 荷物が三〇%強で七割近くが外部荷主という自立し た子会社です。
そしてチルド・フローズンに強く、ド ライ貨物に扱いを拡げている。
これに対して当社は現 在、ほとんどがドライ貨物ですが、いずれはチルドに 入って、キユーソーさんと比肩できるぐらいになりた い」 ――その場合には、末端配送も手がけるのですか。
「それは視野に入っていません。
当社の基本は大型 車での配送です。
従って納品先は卸か、もしくは量販 店の物流センターです。
ただし純粋な物流事業者とし て小売業者の一括物流センターの運営を請け負うこと はあります。
ことに合併後はそうした案件が増えてい ます。
収益的にはキツイ仕事ですが、体力のあるうち にノウハウを蓄積して外販の拡大に繋げたい」 幹線輸送に強み ――多頻度小口化が進んでいる現在、大型トラックを 中心としたサービスは時代と逆行しませんか。
「むしろ、我々にとっては現在の輸送能力を活かし た共同配送が今後の柱の一つになると考えています。
それが物流事業者のトップになって強く意識するよう になった、もう一つのテーマです。
運送業の規制緩和、 いわゆる改正物流二法によって今年、トラック運送の 営業区域が撤廃されますね」 「そこで当社は路線業に参入しようと考えています。
主なターゲットは現在、路線便を利用している中小の 食品メーカーです。
現在、路線便業者の多くが収益の 悪化に苦しんでいるのは知っています。
理由は簡単で 荷物が集まらないからです。
しかし当社にはキリンビ ールの荷物というベースカーゴがある。
そして毎日二 〇〇〇台から二五〇〇台、ピーク時には八〇〇〇台 の大型車を全国に走らせている。
しかも当社は幹線輸 送に強い」 ――路線業となると各地にターミナルが必要になりま すが。
「工場がターミナルとして機能します。
二〇〇〇年 四月に工場から物流機能を当社に移管した時に、工 場内の物流施設も所有権を移しました。
つまり当社は それを自由に使うことができる。
もともとキリン物流 自体が持っている拠点もある」 ――集荷はどうしますか。
「当社から集荷に行くのでも構いませんが、むしろ 工場に持ち込んで頂くほうが良いのかも知れない。
そ こを今、検討しています。
当社には食品メーカーとし て、国内最大級の物流規模があります。
それを上手く活かすことができるはずです。
二〇〇四年からの三カ 年計画に、それを具体的に盛り込んでいきます。
同時 に現在、埼玉に置いている定温物流センターと同様の 拠点を関西に設置する構想も持っています」 「現在、当社の外販比率は約二五%です。
残りの七 五%、約五〇〇億円はキリングループで売り上げてい る。
しかし、この五〇〇億円は今後、伸びないことを 前提にしています。
また親会社との取引で利益を上げ ても、グループ全体としては意味を持たない。
当社は やはり外販を拡大していくしかありません。
二〇〇三 年の外販比率は二七%が目標です。
二〇一〇年まで に外販比率を五〇%まで伸ばし、売上高一〇〇〇億 円を達成することを目標に掲げています。
そのために チルドや共同配送を進めるのです」 全国地域別に7社あったキリンビールの物流子 会社を2000年1月1日に統合して発足。
グループ 会社からの業務移管を進めている。
傘下にドライ バーやフォークマンなどの現場業務を担当するケ ービー物流を持つ。
現在の外販比率は25%。
これ を2010年まで50%にまで拡大し、売上高1000 億円を達成するという経営目標を掲げている。
キリン物流の業績 900 800 700 600 500 400 300 200 100 0 98.12 99.12 00.12 01.12 02.12 30 25 20 15 10 5 0 売上高 当期利益 (単位:億円) 会社概要

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