ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2003年2号
特集
物流企業番付 物流費を減らしても売り上げは増やせる

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

FEBRUARY 2003 18 「物流費を減らしても売り上げは増やせる」 親会社のコスト削減と物流会社としての自立――オムロンロジスティ ッククリエイツは、物流子会社の抱える二律背反を物流業の新しいモデ ルを構築することで克服した。
「物流商社」というコンセプトを打ち出 し、親会社の物流費削減による収入減を商社機能の拡大で補っている。
オムロンロジスティッククリエイツ上田人志社長 ――九七年の会社設立から現在までの展開をどう自 己評価しますか。
「ここまで比較的、苦労しないで成長することがで きました。
結果を見る限り、当社の『物流商社』とい うコンセプトが受け入れられたのだと思います」 ――「物流商社」とは? 「物流業者との最大の違いは金融機能です。
一方、 商社には金融機能も調達機能もある。
物流部門もあ るかも知れない。
しかし商社は顧客が求めるようなき め細かな物流サービスには対応できない。
そこは物流 業者の専門領域です。
当社はその両方ができる」 「世間に物流業者はたくさんいます。
彼らと差異化 するために、我々はサプライチェーンの最上流にある 『開発』というプロセスから事業コンセプトを検討し ていきました。
『開発』の使命とは製品を設計するこ とです。
そこで調達業務が派生的に発生するわけです が、調達先を見つけて品質を評価するのは本来、設計 者の仕事ではない。
そこに我々の仕事があると狙いを つけました」 「ただし、その業務は物流とは言えない。
『物流』と 『商社』を組み合わせた新しい事業です。
ならば『物 流商社』として出発しよう。
そうすれば必ず成長軌道 に乗ることができる。
そう考えました。
もともと私自 身が物流ではなく、生産畑、購買出身の人間であるこ とも、そこには影響していると思います」 ――アセットについては、どういう方針なのですか。
「完全にノンアセットです。
これも私が生産部門に いた時に痛感したのですが、これからの製造業はグロ ーバル展開が加速される。
そんな時にアセットを持っ ていたら身動きがとれなくなる。
そのため『持たざる 経営』を徹底しようと決めました。
もちろんノンアセ ットの弱点もある。
特に経済が右肩上がりの時代であ れば、アセット型のほうが圧倒的に強い。
しかし経済 が成熟化したり、衰退している場合にはノンアセット のほうが有利です。
変化に柔軟に対応できることのほ うが現在は大事です」 ――ノンアセットの場合、顧客にその価値を認めても らうことが難しくなる。
とくに日本はそうだと思いま す。
物流子会社は単にマージンを抜いているだけでは ないかという批判です。
「そこは提案力に尽きます。
『コストゼロ、品質不良 ゼロ』が当社の目標です。
それには『時間』をゼロに すればいい。
ヒトが全くタッチしないような仕組みを 作る。
そうすればコストもミスもなくなる。
それを荷 主に提案している」 ――しかし、ゼロ化を進めていくと、物流業者として は収入がなくなってしまいます。
「確かに提案を進めていくと、物流事業だけなら売 上げまでゼロになってしまう。
だから『商社』なんで す。
物流が減る分は商社事業の拡大で補えばいい。
物 流事業収入は下がっても販売の通過量を増やす」 ――実際の業績もそういう形で推移している? 「そうです。
当社も会社を設立した当初の売上構成 は物流事業一〇〇%でした。
それが今は商社事業の 収入と半々程度になっています」 ――これまでの業績を見ると二〇〇一年三月期に売上 高がポンと伸びている。
前年の一三五億円から一八七 億円ですから四割近い売上増です。
「それも調達です。
オムロンは海外に生産を展開し ている。
そうした海外工場には日本から調達しなけれ ばならない部品が少なくない。
従来はそれを日本国内 の親工場を通して調達していました。
その調達業務を 当社に委託してもらったのです。
当社が日本で必要な 部材を調達し、海外の工場に販売する。
もちろん物流 Interview 総合5 位 19 FEBRUARY 2003 も当社が提供する。
これが二〇〇一年三月期から全 く新しい仕事としてまとまって入ってきた」 ――それでは親工場の売り上げが減ってしまう。
「確かにそこは調整が必要でした。
しかし工場だっ て、そんな業務にしがみついていても、しょうがない ことは承知している。
そもそも当社はオムロンの一〇 〇%子会社で連結対象ですから、グループ内の取引を どうしようが本来は一緒です。
それよりもグループの 外部に支払う費用をどれだけ減らせるかが問題になる。
そこを限りなくゼロにしていく必要がある」 「グループ内で綱引きしても意味はありません。
その グループの全体の力は弱いグループ会社のレベルで決 まります。
制約理論の教科書通りだと思います。
グル ープ経営のやり方は会社によって様々でしょうが、オ ムロンの場合はそうしたコンセンサスがグループ内で きちんととれている」 分社化で経営のスピードを確保 ――今期二〇〇三年三月期の業績見込みは。
「売上高が二三〇億円程度。
前年比で四〇〜五〇億 円増加します。
理由は先ほどの海外工場の調達業務 が拡大しているのに加え、今期は国内の調達業務が増 えました。
国内の工場が海外から調達する業務を当社 が請け負うようになったのです。
工場に代わって当社 が海外から部材を購入し保管しておいて、ジャスト・ イン・タイムで工場のラインに供給します」 ――確かに商社的ですね。
「ただし当社は商品の販売マージンをとらない。
当 社の購入価格で工場に販売する。
その代わり在庫金 利と物流費を頂く。
最終的な買い取り責任も工場側 に持ってもらう。
これによって工場側ではマージン分 だけ購入価格が下がり、しかも一日四回納品といった きめ細かい物流サービスを受けられる」 ――直近の二〇〇二年三月期は若干ですが減収減益 となっている。
これは? 「グループ向けの国内の物流拠点を大阪一カ所に集 約しました。
それまでは東京、名古屋、大阪、福岡と いった消費地に流通センターを設けて、そこからユー ザーに翌日配送をしていました。
これらの流通センタ ーを潰して、体制を改めました。
その結果、在庫は大 幅に削減されましたが、それだけ当社の売り上げも減 った。
二割ぐらい減った。
それでも商社機能による新 しい仕事が増えているから業績としては微減で済ん だ」 ――手元の資料では社員数が三九人と、売上規模を 考えると極端に少ない。
今後は増やしていくのですか。
「今は三三人に減っています。
流通センターを集約 した時に、オムロングループの早期退職制度を利用し て八人が退社しました。
入れ替わりに新しく二人採っ た。
社員数は今後も大きく増やすつもりはありません。
社員を増やすのではなく、外部の物流業者の実務家と 必要に応じてチームを組んで、プロジェクトチーム型 で進めていきたい」 ――数値的な経営目標は持っていますか。
「特にありませんね。
外販比率の数値目標や予算も 必要でしょうけれど、私としてはその達成に力を入れ ているわけではありません。
それよりも、いかにビジ ョンに沿って仕事をしていくかのほうが、ずっと大事 だという考え方です」 ――結局、分社化して良かったと思いますか。
「思います。
何より自由がある。
コンセプトがしっ かりしているので、親会社にいちいち報告する必要も ない。
今日の経営に一番大事なスピードが分社化で確 保できました」 オムロン ロジスティクス クリエイツの業績 200 180 160 140 120 100 80 60 40 20 0 98.3 99.3 00.3 01.3 02.3 6 5 4 3 2 1 0 売上高 当期利益 (単位:億円) 97年にオムロンのロジスティクス部門を分社化 する形で100%子会社として設立。
「物流商社」 をコンセプトに、主に工場の調達業務を担うこと で業容を拡大している。
資産を持たないノンアセ ット型を徹底。
2003年3月期は社員1人当たり の売上高が約7億円に達する見込み。
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