ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2003年3号
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近鉄エクスプレス

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

MARCH 2003 40 アジア事業が伸長 近鉄エクスプレス(KWE)は東証二部、そ してヘラクレス(旧ナスダックジャパン)市場 に上場している関係で、四半期決算の開示を義 務付けられている。
そのため先月一〇日には二 〇〇三年三月期の第3四半期決算(四〜十二 月)を発表した。
連結業績は売上高一四三一億円(前年同期比 七・七%増)、営業利益四一・八億円(同四四・ 九%増)、経常利益四三・二億円(同四四・九% 増)だった。
売上高一八六六億円、営業利益四 二・三億円という前期(二〇〇二年三月期)通 期決算の数字と比較すると、今期は四〜十二月 で前期の営業利益水準にほぼ到達しており、業 績が堅調に推移していることが窺える。
同時に発表した今期の通期計画は売上高一九 五八億円、営業利益六二億円、経常利益五八億 円、当期利益二八億円。
従来予想の売上高一九 一七億円、営業利益五四・七億円からそれぞれ 上方修正している。
?中国発着の貨物需要が拡 大している、?米国西海岸の港湾ロックアウト による航空貨物特需発生後も米国向けの輸出が 好調に推移している、?イラク問題などを背景 に原油価格が急騰しているが、そのコスト負担 を荷主に転嫁できている――ことが寄与する。
し かし、来期は米国西海岸の港湾ロックアウトに よる特需が一巡してしまう。
今後は中国関連貨 物を取り込む姿勢をより鮮明にしていくだろう。
第3四半期の地域別事業セグメントは、?日 本(売上高六七一億円、売上構成比四六・九%)、 ?北米(同二四六億円、同一七・二%)、?欧 州・アフリカ(同一一七億円、同八・二%)、? アジア・オセアニア(同三九六億円、同二七・ 七%)――となっている。
さらに、この地域セ グメントを前年同期比の伸び率で順位付けする と、?アジア・オセアニア(前年同期比一七・ 〇%増)、?欧州・アフリカ(同十三・三%増)、 ?日本(同九・四%増)、?北米(同九・八% 減)――となる。
他の航空フォワーダーに比べ てアジアのウエイトが高いのが特徴である。
昨年、同社は中期経営計画(二〇〇二〜二〇 〇四年度)を策定した。
その中で最終年度であ る二〇〇五年三月期に売上高二四〇〇億円、営 業利益八五億円、経常利益八〇億円、当期利益 四五億円、EPS(一株当たり利益)一三二・ 四円を達成するという目標を掲げている。
ちな みに基本方針は「高品質なサービスをワンスト ップで提供する?グローバル・ロジスティクス・パートナー〞を目指して」である。
さらに「二一世紀KWEグランドデザイン」 として以下の四つの基本戦略を打ち出した。
?プロフィタブル・フォワーディング(コアビ ジネスでの利益拡大):フォワーディング事 業での利益志向を強め、自動車部品、医療・ 医薬品の取り扱いを収入構成比で二〇%程度 にまで高める。
加えて半導体製造装置、温度 管理貨物、高級アパレル、化学・危険品など の特殊輸送サービスを強化する。
?バリュアブル・ロジスティクス(ロジスティ クスサービスの提供):フォワーディングで 取引のある顧客にロジスティクスサービスを 提供する。
ロジスティクスサービスはグロー 第24回 近鉄エクスプレス 中国市場への先行投資が結実したことで、先月発表した 第3四半期決算は増収増益に。
通期の業績予想を上方修 正するなど今後の見通しも明るい。
ただし、陸上輸送や海 上輸送の機能の強化といった課題も残されている。
株式市 場では近鉄グループからの独立を期待されている。
北見聡 野村証券金融研究所 運輸担当アナリスト 41 MARCH 2003 継承するだけでは達成の可能性は低い。
しかし 高い目標を掲げ、さらなる成長を遂げようとす る姿勢は株式市場では好感されるに違いない。
M&Aで物流機能強化を 中期経営計画を達成するためのポイントとし て次の点に注目している。
第一に中国関連事業 の成長性である。
同社はアジアビジネス、特に 中国への展開が同業他社よりも先行している。
拠点数も多いし、売上高構成比も高い。
世界の 交易条件が南北トレードから中国を中心とする 東西トレードへと変化している動きを的確に捉 え、先行者利益を享受することに成功した。
しかし、その後中国の物流市場には数多くの 国内外プレーヤーが参入を果たした。
今後は熾 烈な競争が展開されることが予想される。
また、 中国進出の遅れを挽回するため現地の有力物流 事業者に出資したり、事業提携を結ぶ日系物流 企業も出始めた。
アライアンスが収益拡大に直 結するわけではないが、少なくともスピーディー な事業展開が可能になることは間違いない。
こうした後発組の攻勢に対抗し、中国ビジネ スでの成長性を確保するためにKWEに求めら れるのは資金の上手な使い方だ。
具体的には M&A(企業の合併・買収)などが想定される。
二つ目のポイントは物流機能の強化だ。
国際 航空事業の拡大には国内外の海上輸送や陸上輸 送の機能強化が欠かせない。
またロジスティク スサービスのためのインフラも十分な機能が備 わっているとは言い難い。
自社で保有していな い機能はアウトソーシングによって補完するこ とも可能だが、アウトソーシングにはサービス 品質の低下を招くという負の側面もある。
世界のロジスティクス事業者はトータルサー ビスの提供のために事業領域を拡大する傾向に ある。
その際、単に倉庫やトラックといったハ ードを増やすのではなく、むしろ能動的にコン トロールが可能な機能を付け加えている。
KW Eもこうしたグローバル企業の戦略を見習うべ きである。
ただし機能補完には当然、中国ビジ ネスと同様に新たに資金を投じる必要がある。
第三のポイントは株主構成だ。
現在、同社の 株式は親会社の近畿日本鉄道およびグループ企 業が五〇%以上を保有している。
ただしグルー プ企業の業績、そしてグループ企業と同社の事 業のシナジー効果などを考えた場合、果たして 近鉄グループに属していることが賢明なのか。
独立した企業体として成長を維持していくうえ で、むしろ近鉄グループの一員であることが足 枷となるのではないかと懸念する声もある。
もちろん、親会社やグループ企業の意向に対 して外部の人間は口を挟む立場にはない。
ただ し、こうした株式市場の生の声をこれまで以上 に経営に反映させることが期待されているのも 事実だ。
同社の株主構成がこのまま安定性を保 つのか。
株式市場では懸念材料の一つになって いる。
独立系の国際航空貨物専業事業者としての効 率経営や、経営の意志決定のスピード感などに 対して市場は高く評価している。
将来への期待 も高まっている。
中期経営計画の達成の向けて、 従来とは異なる視点からの経営が求められてお り、実際に見直しに取り掛かる時期を迎えてい ると見ている。
バルスケールで展開し、日本、アジア、米国 での物流施設の拡充を図るとともに、販売を 強化する。
?グローイング・オーシャン(海上事業の拡 大):中国発日本・米国向けの海上貨物路線 を最重要レーンとして海上通関などを含めた 物流商品の販売を強化する。
?チャイナ・リンケージ(成長市場である中国 での先行展開):中国国内の配送網を充実さ せる。
さらに華東・華南を中心としたVMI ( Vendor Managed Inventory )や3 P L ( Third Party Logistics )、特殊輸送の各サー ビスを高度化し、内陸地域へ進出する企業を 支援する。
?〜?までの事業計画には高いハードルを設 定したという印象を受ける。
これまでの事業を 近鉄エクスプレスの過去1年間の株価推移 (円) (出来高)

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