ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2005年3号
道場
在庫半減への処方箋―1

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

MARCH 2005 62社長から在庫半減を命じられた物流担当者が助けを求めてきた日本列島が寒波に襲われた凍えるようなある日 某メ カ の物流担当者二人が大先生の事務所を訪ねてきた 訪問者のうちの一人が 入 てくるなり挨拶もそこそこに 寒いですね 今日も と元気よく大先生に声を掛ける 初対面とは思えない馴れ馴れしさに大先生が戸惑 ていると 寒いですよ 外は とたたみかけてきた 面倒くさくな た大先生が だから? と問い返す 思いがけない大先生の言葉に さすがに元気のよい訪問者も言葉を失 てしま た 傍らで二人のやり取りを見ていたもう一人の訪問者が 大先生に名刺を差し出した 続いて 元気のいい方も名刺を出す 元気のいい方が課長で もう一人が部長だ さ そく部長が用件を切り出した 実は先日 社長から呼ばれまして 在庫を減らすように指示されました 大先生が頷くのを見て 課長が口をはさむ なんか 新聞でライバル会社が在庫を三割減らしたとかいう記事を見たらしいんです 社長が それで うちもやらねば とこういうことらしいのです 部長が 余計なことを という顔で ちら と課長を見る 大先生が課長をあおるような質問をする それで 社長は在庫をどれくらい減らせ て? ライバルが三割なら うちは五割だなんて むち くち 言 てます 課長が即答するのを嬉しそうに見て 大先生がさらに突 込んだ 旧知の仲間内のような感じで話しが弾む 課長の性格がそうさせているようだ でも おたくは在庫 たくさん持 てるでし う 在庫半減なんて簡単なことだよ? は たくさんあることはありますが これを減らすとなると 生産や営業の連中もなんだかんだ言 てくるでし うから そう簡単にはいかないと思います 生産や営業の連中を敵に回して 在庫を減らす戦いをしよう てこと? 《この連載について》主人公の“大先生”はロジスティクスに関するコンサルタントだ。
これまでコンサル見習いの“美人弟子”と“体力弟子”と共に多くの企業を指導してきた。
本連載の「サロン編」では大先生の事務所で起こるさまざまなエピソードを紹介している。
通称“大先生サロン”と呼ばれる相談コーナーを訪れる相談者の悩みに、その場で大先生がアドバイスを与えるという設定である。
今回は、社長から在庫半減を命じられたメーカーの物流担当者の相談に応えて、在庫管理の考え方と技法について2回にわたって解説する。
湯浅コンサルテ ング代表取締役社長湯浅和夫湯浅和夫の  第35回 サロン編 在庫半減への処方箋 1 63 MARCH 2005あまりにいい加減な課長の返事に大先生が呆れ顔で聞く 何か言おうとする課長を遮 て すかさず部長が割り込んできた この課長と一緒では発言権を確保するのが大変なのだろう 大先生と初顔合わせの会話にしてはめずらしい展開だ 在庫は完全に無管理状態です 訪問者が自信た ぷりに答える 在庫に手をつけようとすると うちの社内はだいたい敵対関係にな てしまいます でも敵対関係では 在庫に手をつけることなんてできません それに 私としては 単なる在庫削減ではなく 在庫を適正に維持するマネジメントを導入したいと思 てます そこで 先生にご指導をお願いできないかと思いまして お伺いしたわけです 課長に割り込まれまいとするかのように部長が一気に話す 案の定 部長が一息ついた途端 課長が口をはさんだ よそさんは知りませんけど うちでは 社内の人間だけでは在庫に手をつけることはできません 自慢じ ありませんけど たしかに 自慢にはならねえ 大先生の一言に課長が はい と素直に返事をする その課長の顔を見ながら 大先生が聞く 営業は 在庫についてどんな感覚を持 ている? 嬉しそうに頷きながら 自信ありげに課長が話し始めた 隣に座 ている部長は諦めたようにソフ にからだを沈めてしま た Illustration 
釘味丕函升烹瓧遑筍瓠。
烹瓧筍瓧 MARCH 2005 64 まず 営業の連中は 在庫意識 てものがま たくありません 欠品にはうるさいですが 在庫が溜まるのは平気です 営業所間で在庫の取り合いをしてますし 取 た在庫は絶対に手放しません ですから 他の営業所にたくさん在庫があるのに なくなりそうな営業所が生産依頼を掛けるなんてことがし ち うあります これは営業マンの間でもあります あ 自慢にはなりません はい 大先生に言われる前に 課長が先取りして首をすくめる 大先生は楽しそうだ 思い出したように名刺の社名を見ると 独り言のように呟いた そうか おたくは受注生産品もあるな 受注生産とはいいながら これも在庫がある? はい ご賢察です 営業は納期が心配だとか言 て先行生産をさせてますし 生産も平準化とか何とか言いながら喜んで事前に作 てます なぜか 課長も嬉しそうに答える 大先生と勝手に意気投合しているようにみえる ひとり部長だけが仲間外れだ その部長を仲間に引き入れようと 大先生が声を掛ける おたくでは 誰か在庫に責任を負えと言われている部署か人はいる? まあ 物流部に在庫削減をしろと言 てくるくらいだから いないか? からだを起こして部長が答えようとする前に 課長が答えてしま た はい いません 在庫は完全に無管理状態です 部長に聞いてるんだよ おれは さすがに大先生が怒る 済みません と頭を下げる課長を部長が睨み付けている 大先生がまるで部長を慰めるかのように提案した もし このコンサルをやるようにな たら プロジ クトの御社側の責任者は彼にや てもらうことにしまし う はい 私に異存はありません 部長が 溜飲を下げたように笑顔で応じる ち と待 てください 間違いなく損な役割ですよ それは 勘弁してください 課長が慌てて辞退するが そんなに嫌が ている風でもない それじ 決まりだ 大先生が結論を下す すかさず部長が 大先生に念を押す それでは コンサルをお引き受けいただけるということで よろしいですか? あ そうか そういうことになるか 課長がプロジ クトを引 張るということなら それでいい 今度は課長もしぶしぶ頷いた 在庫はマネジメントの失敗の産物です 部長がずばりと本質を突いた課長の顔を見ながら 大先生が本質的な質問をした それじ 在庫プロジ クトのリ ダ に聞くけど 在庫 て何? 課長の顔に不安がよぎる 社内の在庫事情ならいくらでも話せるが この手の質問は苦手と言いたげな表情で部長を見た ところが部長も愉快そ 65 MARCH 2005うに課長を見ながら 何? と発言を促す え や ぱり販売のために事前に準備しておくものかと 途中で 大先生が首を振 たためか 最後は消え入るような声にな てしま た 大先生が今度は部長を見た 思わず部長の目が天をあおぐ しかし 答えないとまずいと観念したのか あらためて大先生の視線を見据えながら答えた これは どこかで読んだのですが あるアメリカの化粧品会社の社長が たしか 在庫は 企業内のあらゆるマネジメントの失敗の産物だ というようなことを言 ていたような記憶があります 実感としては これが正しい位置づけかと思 てるのですが 最後は自信なさげだ たが 大先生が大きく頷くのを見てほ とした表情を見せる 大先生が 課長に同意を求めるように部長をほめる さすが部長だな いいこと言う 頼もしいな? 大先生の問い掛けに課長が屈託なく頷き あからさまにほめる はい 部長は勉強家ですし し かり理論武装しているので 他部門との交渉なんかでも頼りになります 在庫以外は か? 大先生がち ち を入れる めげない課長がぬけぬけと部長を持ち上げた は いえ き と在庫も頼りになりますよ 部長 頼りにしてます それは おれのせりふだ リ ダ 頼むぞ 部長も乗 てきた ようやく仲間に入 てきた感じだ 座が楽しく賑わ てきたところで 女史がコ ヒ を持 てきた コ ヒ を飲みながら 大先生が課長に聞く 倉庫の中には何がある? なぜか嬉しそうに課長が答える はい たくさん在庫があります しかし よく見ると 在庫の裏にはマネジメントの失敗がぎ うさん隠されています 元気がいいだけではなく結構 飲み込みもいいし 変わり身も早い 大先生は手応えを感じたようで 質問を続けた 何のマネジメントの失敗? はい 作り方の失敗はもちろんありますし 売り方のまずさもあります 商品企画やマ ケテ ングの失敗も隠れているはずです うちの会社のよくないところが見事に揃 てます き と この課長らしい率直な表現だ 苦笑しながら大先生が 部長に向か て質問する 在庫を持 てていいことは何だと思います?き といいこともあるでし う いいことと よくないことを識別して 適正在庫なるものを明らかにすることから始めますか? 大先生の持論である 在庫など無用の長物だ という在庫不要論を知 ている部長は 大先生の問い掛けに引 掛からず き ぱりと言い放 た たしかに 私も以前は 在庫を持つメリ トもあると考えていたこともありました でも よくよく考えると そんなメリ トなどありません あるのは 持ちたくないけど持たざるを得ないという よく先生がお し る制約条件です 制約条件があ MARCH 2005 66るから在庫があるんだと いまはそう考えています 隣で課長が感心したように頷きながら メモをしている 大先生が課長にそ と聞く リ ダ としては 部長の言葉をどう解釈する? ち と考えたあと 課長が相変わらず元気よく答えた は 私が思いますには そもそも在庫はないのがいいという位置づけからスタ トしないと 在庫問題の本質は見えてこない 少しでも在庫を持つことを許容してしまうと それに流されて本質的な解決はできない ということを言おうとしているんだと思いますが 違いますか? 部長に確認を求めるが 部長が答える前に大先生が軽く拍手をする か こいいな 二人とも 結構 論理的に考えてるじ ん そこまでわか ているなら コンサルは楽でいい いや コンサルなんかいらないかもしれない 二人でタ グを組めば大丈夫だよ 大先生の言葉に部長が慌てて 真顔で否定する とんでもありません 頭の中ではそう考えてはいますが それでは実際にどうしたらいいかとなると 正直なところ何もわかりません そう言 て にや としながら一言付け足した リ ダ はわか ているのかもしれませんが 自慢じ ありませんが 間違いなく私もわか ていません 先生のご指導どおり 部長の指示どおり 動くつもりです はい あくまでも屈託なく課長が答える この屈託のなさは どちらかというと大先生の苦手なタイプだ そのせいか 何か言おうとしていたのを大先生はやめてしま た ち とした沈黙のときが流れる それを打ち破るように 部長が口を開いた 私としましては 在庫問題を解決するプロジ クトなどとい て 生産や営業などの人間を集めて検討するというやり方はしたくないと思 てます 在庫の何が問題なのかを数字で見せ 在庫管理の技法を導入することを先行させたいと思 てるのですが 大先生が頷くのを見ながら 課長がぽつりとつぶやいた しかし 在庫管理論というのは 論者の数だけ理論がある て感じですね こうして 話題は在庫管理論に移 てい た 本連載はフ クシ ンです ゆあさ・かずお一九七一年早稲田大学大学院修士課程修了 同年 日通総合研究所入社 同社常務を経て 二〇〇四年四月に独立 湯浅コンサルテ ングを設立し社長に就任 著書に 現代物流システム論 共著 有斐閣 物流ABCの手順 かんき出版 物流管理ハンドブ ク 物流管理のすべてがわかる本 以上PHP研究所 ほか多数 湯浅コンサルテ ングhttp://yuasa‐c。
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jpPROFILE 本誌2002年4月号から本誌で好評連載中の湯浅和夫氏の「物流コンサル道場」が単行本になりました。
『物流コストを半減せよ』(かんき出版・本体1500円税別)。
連載スタート時から25回分(メーカー編&卸売業編)が収録されています。
本連載を最近読み始めた方は、ぜひ御一読ください。
 大先生が 本になって登場  

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