ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2003年4号
ケース
コマツ物流--情報システム

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

銅鐸繍盟ゆき/ コマツ物流 情報システム 外販強化に向けた基盤づくりとして 約13億円投じ情報インフラを再構築 ブルドーザー、ショベルカーといった建設 機織の需要低迷が深刻化している。
とりわけ 日本国内での落ち込みが激しい。
日本建設機 械工業会の建設機械出荷金級統計によると、 二OO二年度の悶内(内需)出荷笑級はニ OO二年四月1 二OO一二年-月までの紫計 で前年間期比一六%減だった。
二月、そして 三月に入っても不振は続いており、最終的に ニOO一一年度は前年比二O%減という結果 になる見通しだ。
当然、こうした閣内での栃要減は建機メー カー各社の業績に多大な影響を及ぼしている。
業界最大手のコマツ(小松製作所)も例外で はない。
同社の二OO一二年三月中間期(述結 べlス)の国内建機事業の売り上げは一一二 七億円(前年同期比十三%減)だった。
需要 が旺盛な中国ビジネスが好調で、海外事業が 前年同期比一五七%増を記録したため、慾 機事業全体では同五・七%増を縦保した。
し かし、主職場である日本市場での急激な収入 の務ち込みは阿社に とって悩みの秘の一 つとなっている。
建機の悶内マーケ ットはバブル全膝期 を一OOとすると、 凶Oの水準にまで萎 んでしまった。
ニO 建機最大手コマツの物流子会社。
国内の建 線開署婆低迷の影響で、親会社向け物流業務の 収入がダウン。
外郎荷主の開拓が急務の課題 に。
攻めの営業を展開するための下準備とし て情報システムの見直しに着手した。
事業所 別に各種情報システムを用意していた従来体 制を改め、全社統一製の情報システムを新た に導入した。
親会社の物涜改箪 APRIL2003 LOG 卜BIZ 42 コマツ物流の宿西昭夫社長 o=一年度以降、公共事業削減などの影響でマ l ケyトはさらに縮小すると見られている。
そのためコマツではレンタル事業や中古車事 業などの強化で収益を確保する一方で、近年 は生産体制の見直しといったリストラ策にも 力を注いできた。
コスト削減策の一環として物流改革にも来 り出している。
目標は従来比二O% のコスト カットの途成だ。
具体的には支払い輸送費の 削減を狙い、「建機製品輸送用システム(I CH)」を導入。
これまで各工場に委ねてい た製品輸送の配車業務を一カ所で集中管理す る体制に改めることで、片荷輸送を無くし車 両-台当たりの稼働率を高めた。
製品欄包に掛かる外注貨を削減するため、 生産ラインで綱包作業を済ませる「インライ ン捌包」も開始した。
さらに補修都品の分野 01 (年度3 単位檀円 日g 。

コマツ物流の売上高縫移 95 96 97 98 500 450 ・ 4001-1 350 ・300 250 日 200 150 100 50 0 図1 ではユーザー納品時の術姿でサプライヤ1に 部品を納品してもらう「サプライヤ梱包」を 尖施。
捌包そのものの附紫化や梢包材のリタ l ナプル化に取り組んでいる。
主力の大阪工場では制述物流のμU組みにメ スを入れた。
従来、工場への部品納入は各サ プライヤl に任せていたが、これをコマツ側 が仕立てたトラックで各サプライヤーから部 品を集荷する「ミルクラン方式」に改めた。
部品の正味価絡と物流授を明確に切り分けた うえで、サプライヤl任せの物流と自社主導 の物流のどちらが低コストなのかを比較する。
そうすることで、制嗣迷物流に掛かるコストを 削減している。
子会社ゆえのジレンマ こうした一辿の物流改革の影轡をもろに受 けているのは、物流子会社のコマツ物流だ。
岡村は七二年三月、工場内での捌包・防鉛 倒山公判業の苅け負い会制として発足して以来、 コマツの元前け物流梁者として機能してきた。
業績はここ数年、親会討の国内での不振と歩 調を合わせるかのように怒化する傾向にあっ た。
売上高は九六年度の凶七一億円をピークに、 九九年度には三七二億円まで務ち込んだ。
二 000 年度、ニOO 一年度は再びm 加に転 じているが、これは組会相の部品調迷代行、 つまり卸機能を有したことによるもので、本 業である物流事業での純粋な収入は依然とし て減少を続けているという(図11 親会社の物流コスト削減は物流子会制にと って収入滅に直結する。
相相会制への貢献が子 会社の役目で、収入減はやむを得ないと捌り 切ってもらえればいいのだが、現笑にはそう 甘くはない。
通常、子会社は収入の務ち込み 分を外部顧客の獲得で補填するよう親会制か ら求められる。
実際、コマツ物流も同級の総 題を突きつけられている。
「建機業界の低かれている環境からすると 今後、親会批やグループ会社向けの売り上げ の拡大はそれほど期待できない。
親会制への 依存度が高い典型的な物流子会社とい、2uL 場 から脱却しないと、じり貧は免れないだろう」 とコマツ物流の板商昭夫社長は危機感を募ら せている。
とはいえ、岡村はこれまで手をこまねいて いたわけではない。
収入滅に幽止めを儲ける ための外販拡大策を矢継ぎ早に打ち出してき た。
特に注力しているのは企業の倉庫巡営を 府代わりする「物流センター事業」と、大型 機械の述搬・扱付サービスである「機工事 業」だ。
一一OO 一年にスタートした中期経営 計蘭「Dash 引」でも外販の中核事業と して位置付けている。
物流センター事業の代表例は神奈川県川崎 市の「東扇品物流センター」だ。
延べ床開制 約一万八000 平方メートル、五階建ての肉 センターでは現在、家具や一屯化製品、ベット 7l ドなど、建機とはまったく黙なる分野の 43 LOG 卜BIZ APRIL2即3 製品を扱っている。
業務範聞は入庫、保管、 ピァキング・仕分け、配送まで。
物流アウト ソl シングの受け皿として機能している。
収 益も安定しており、年間売り上げは二OO一 年度が十三億六一OO万円、ニOO二年度 は十三億六人OO万円を確保した。
さらに昨年四月には新たに「西神物流セン ター」(神戸市、延べ床面積約一万二000 平方メートル)を稼働させた。
同センターが 扱っているのは主に機械部品。
こちらも対象 は外部の企業だ。
現在、部品ベンダー1生産 工場関の調達物流用拠点として活用されてい る。
もう一つの柱である機工事業も順調に業容 を拡大させてきた。
スタート当初は・自動車や 半灘体の製造機械、その他産業機械の扱いが 中心だったが、新たに医療機器や厨房機務を 受注するなど守備範囲を拡げている。
さらに 日本国内にとどまらず、生産拠点の進出が相 次ぐ中国や東南アジア向け案件の取り込みに も成功している。
また、二つの事業のほかにも外販の芽が少 しずつ出始めてきた。
注目縁は二OO一年に スタートさせた求貨求事事業「KLITne t」だ。
コマツ物流は荷主(もしくは元請け 運送会社)の貨物情報と遼送会社の空事情 報をマッチングして仲介手数料を得ている。
もともとこの事業は関東地区の一営業所での サービスだったが、徐々に対象を拡大。
それ に伴い、収入も増えつつあるという。
鳥居建一物流システム開発部長 板商社長は「外販ではまず当社が得怠とす る中・重量物の物流を重点的に攻める。
次が 部品物流。
この分野は特に調達物流の分野を 開拓していきたい。
圏内でのビジネスが軌道 に乗ってきたところで、海外への本格進出も 検討していく」と意気込んでいる。
外販篠大の阻書要因 ただし、コマツ物流の客先別収入比率(二 00 二年度)は「コマツ本体」が四O%、「コ マツグループ関係」が三六%。
肝心の「外 阪」は二四%にとどまっているのが笑怖だ。
外販比率は前年度に比べ三ポイント低下した。
「これまで他社に流れていたレンタル建機の 輸送業務を当社が担当するようになり、『コ マツグループ関係』の比率が高まった結果、 相対的に外販比率が落ち込んだだけ。
外販収 入そのものは務実に仲びている」(福西社長) ものの、一般に親会社からの自立という意味 で及第点とされる外阪比率一ニO%という数字 にはまだ胞かない。
外販鉱大の剤師題も少なくなかった。
例えば 営業体制。
同社では荷主へのアプローチを各 支店営業所に委ねていた。
オペレーション の管理も各支店・営業所の担亘。
外販は全社 的なプロジェクトというよりも支店や営業所 が個別に対応するという体制だった。
その結 果、「受注できる案件の規燃が限られてしま う。
ある荷主企業から全国の物流を一括で委 託したいと打診されても、そうした要請には 応えられなかった」(福西社長)。
こうした問題を解消するため、各事業部か ら営業部門を分離。
外販営業部隊をすべて営 業本部に編入するといった組織の見直しに着 手した。
外販の受注窓口を一本化することで、 いわゆる3PL 的な業務を受注しやすい環境 を整、えたわけだ。
しかし実はさらに厄介な問題が未解決の ままだった。
情報システムである。
同社はこ れまで支店・営業所単位でバラバラに情報 システムを構築してきた。
そのため、例えば、 拠点問で情報のやり取りを行うことができな かった。
「配車システムや倉庫管理システムなど各 種情報システムの開発、さらにメンテナンス やバージョンアップは各拠点で対処してきた。
それだけではない。
拠点ごとに商取引上の ルI ルや物流作業の手順などもまったく奥 なっていた。
とても全国規模でのオペレーシ ョンを丸受けできるような状態にはなかっ た」と鳥居建一物流システム開発部長は説 明する。
APRIL2ω, 3 LOG 卜BIZ 44 コマツ物涜システム関連図 岡京 支払い コマツsystem 普畠 aaan コ'X'Y 園内工相 粉幌地法人 国E コマツ物流では外販比率三O%の達成を中 長期的な経営目標として掲げている。
しかし、 従来のように支店・営業所がそれぞれに細々 とした仕事を積み上げていくやり方では外阪 での大幅な収入増は期待できそうにない。
複 数拠点が関与するような大型案件の獲得が欠 かせなかった。
ただし、そのためには情報シ ステムの再構築が必須であった。
これを受けて、情報システムを刷新するた めの大掛かりなプロジェクトを立ち上げた。
そのミッションは「機能別に全社統一型の情 報システムを新たに稼働させること」(鳥居 部長)。
つまり、これまで拠点ごとに用意し てきた情報システムを捻てて、一つのルlル に基づいた標準化された新しい情報システム にすべて置き換える、という内容だった。
コンセプトは理に適っていた。
しかし、プ ロジェクトの進行は一筋縄にはいかなかった。
使い慣れた情報システムを手放すことを余儀 なくされる現場の社員から猛反発を受けてし まったのだ。
しかもプロジェクトの陣頭指搬 を執るべき立場にある福西社長も前向きでは なかった。
「投資に見合うだけの効果が得ら れるかどうか疑問だった」(福西社長)から だ。
情報システムのリプレース費用として予算 計上した額は約十三億円。
年商四OO億円 規模の同社にとっては決して小さな投資では なかった。
それでも最終的には「二、三年で 投資を回収できるだけの効果を必ず出す。
失 45 LOG トBIZ ペPRJL 2叩, 3 \ h 敗に終わったら担当者は全員クピ(笑)」(領 西社長)という条件でゴlサインを出した。
「もともと当社の情報システムは親会社向 け業務をサポートする目的で設計されている。
それに改良を加えながら、外販業務にも対応 してきた。
それだけに外販の仕事では使い勝 手の悪い面も少なくなかった。
一度、親会社 向け業務用の情報システムと外販周の情報シ ステムをきちんと整理する必繋があった」と 鳥居部長はシステム刷新に踏み切った経緯を 説明する。
ERP パッケージ春場入 今回のプロジェクトでコマツ物流が開発、 あるいは既存の情報システムの改修などによ って、新たに用意した物流系情報システムは 一0 種類に及ぶ。
?建設機械輸送用の「ICH」、?輸出書 類作成朋の「KLIEXPORT 」、?補給 部品用の「pwins 」、?CKD 部品輸 出入・バルク部品分譲用の「五LlpATR ACS 」、?梱包・荷姿を管理する「KLlp ACS 」、?ミルクラン用の「TyoTaT SU」、?求貨求車用の「KLlTnet 」、? 東扇島物流センター(大型物流センター)向 けWMS( 垣間各050ggm問。
ョg 同 印万円。
自)の「KLGNS 」、?中規模物流 センター向けWMS の「KLlWMM」、?小 規模物流センター向けWMS の「KLlWM S 」ーーである。
特鍛すべきは完全な自社開発ではなく、既 存のパッケージソフトをうまく活用している 点だ。
例えば、?の「KLlTnet 」はキ ヤノン販売のASP サービス「キヤノピ1ネ ット」がベl スとなっている。
求貨求車事業 で成功を収めている定温物流業者、キユl ソ l流通システムの「QTIS 」のノウハウが 盛り込まれている「キヤノピlネット」の利 用で、システムの完成度を高めるとともに、 開発費用やランニングコストを低く抑えるこ とに成功した。
一方、?1?の物流センター管理システム は東芝物流のWMS 「LIGNS 」をベl ス に改良を加えるかたちで開発した。
センター の規模に合わせて三種類のWMS を用意した のは「対象となる荷物の特性などによって倉 庫の運営の仕方は奨なってくる。
例えば、部 品に適したWMS で消費財を管理しょ、?とす ると、パフォーマンスが落ちてオペレーショ ンに支障を来す可能性もある」(鳥居部長) からだ。
物流系情報システムの再構築と並行して、 基幹系情報システムの刷新にも着手した。
全 国約二O カ所の拠点を対象に、蘭パ1 ン社製 のERpg ロZ弓江見問。
ER222E2 開) パッケージを導入。
これまで拠点ごとに用意 していた購買管理、販売管理、会計管理の各 システムを一本化すると問時に、拠点ごとに 決められていた決済処理などに関するルI ル の統一化を図った。
LOGI-BIZ 46 物流システム開発部ERP グル ープの長谷川英男主査 λPRl L 2003 従来、コマツ物流では拠点ごとに売り上げ 集計の締め日などを決めていた。
各拠点から 本社に営業実績が報告される日はバラバラだ った。
そのため、例えば月次予算に対して売 り上げが未逮の場合には締め日を多少遅らせ て帳尻を合わせることも不可能ではなかった とい、っ。
しかし、ERP導入後はそうしたn装技H を行使することができなくなった。
月次一括 処理ではなく、システムに日次でデータ入力 することを義務付けたからだ。
その結果、「リ アルタイムでの損益計算が可能になったほか、 顧客別に損益を割り出せるようになった。
ま た、会計処理の月末集中も回避できるように なり、事務処理業務の平準化も実現した」と 鳥居部長は満足している。
コマツ物流に先立ち、親会社であるコマツ は昨年四月、約一OO低円を投じ、五年の歳 月を費やして基幹系情報システムの全面刷新 を完了させた。
一部モジュールで独SAP社 の「R/3」を採用しているものの、メーン のERPパッケージは前パl ン社製を採用し ている。
実は今回のERP 導入には組会制の 情報システムとの述助制を尚めるという日的 もあった。
外販を強化しているとはいえ、コマツ物流 にとって親会制のコマツは段大のクライアン トだ。
作業量も圧倒的に多い。
それだけに 「閃じERP パッケージを採川することで組 会社向け業務の処刑仕スピードが上がれば、会 制全体としての業務の効率化がさらに進むは ず」と物流システム開発部ERP グループの 長谷川英列主査は説明する。
営業利益率三%目指す 今回の情報システム再開刑築は外阪営業を強 化するための基捻づくりが狙いだった。
実際、 各拠点が個別に的報システムを別意する体制 から、全社統一型の様車化された情報システ ムを巡用するかたちに改めたことで、「成功 している外販裟刊のノウハウを全制民で共有 できるようになり、営業活動の一怖が広がった」 (物流システム洲発部WEB グループの背山 雅時主幹)といった効果が出始めている。
しかし、それだけではなかった。
的報シス テムの務備、とりわけERP の導入で、事務 処理など間接業務の簡素化が一気に進んだこ とが大きかった。
拠点独自の処理方法などを 原則として認めないようにしたことで、経験 の浅い社民やパl ト・アルバイトでもベテラ 物流システム開発部WEB グ ループの南山総憎主幹 ンに遜色なく円滑に作業をこなせる。
また、 間後業務に携わっていた初日の数を削減して、 将いた人民を営業部隊に振り分けることも可 能になったからだ。
もともと岡村にはピl ク時に一OOO 人近 い社員が在籍していた。
それを現在、六七O 人に減らしている。
さらに二OO 三年度には 六五O 人体制にする方針だ。
ERP の羽入で 間接業務の見直しが進んだ結来、リストラ計 画音M倒しで達成できる可能伯も出てきた。
岡村の場合、メーカー系の物流子会社とい うこともあって一般の物流企業に比べて社員 の給与水準は-Mめ。
それだけに人民削減で総 人判貨の圧縮が進めば、利益率の改善が期待 できる。
これまで同社の営業利益率は一1 二%台を行き来していた。
これを「常時三% 台を確保できる体制にすることが当而の目 椋」(偏西社長)だという。
(刈屋大輔) 47 LOG 卜BIZ APRIL2003

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